パナソニックが新時代の暮らしを実現するためのプラットフォーム「HomeX」を発表

HomeXはパナソニックホームズの最上位住宅ブランド「カサートアーバン」から導入される。「まずは設計通りにすべての機能を使ってもらいたいので、HomeXに最適化されたカサートアーバンから始めます」と村本さんHomeXはパナソニックホームズの最上位住宅ブランド「カサートアーバン」から導入される。「まずは設計通りにすべての機能を使ってもらいたいので、HomeXに最適化されたカサートアーバンから始めます」と村本さん

あらゆる物事がAIやIoT技術によりスマート化されていくなか、その波が住空間にも押し寄せてきた。2018年秋にパナソニックが発表した「HomeX」は、同社が目指す「毎日が昨日よりも良くなるくらし」をつくるために開発された「くらしの統合プラットフォーム」だ。

具体的にいうと、家電や住宅設備の機能を統合してインターネットと繋げることで、各機器の遠隔操作や相互連携が可能になり、さらにそれらの機能が日々アップデートされる。そんな次世代の暮らしを実現するための情報基盤がHomeXである。

このHomeXが導入されているのが、パナソニックホームズの最上位ブランドとなる注文住宅、「CASART URBAN(カサートアーバン)」だ。今回は東京の駒沢にあるモデルハウスでHomeXのプロジェクトメンバーである村本衛一さんにお話を伺いながら、これからやって来る新しい暮らしの片鱗を体験してきた。

住まいをコントロールし、住まいからの提案を受け取る「HomeX Display」

HomeXを導入した住宅には「HomeX Display」というタッチパネル式のディスプレイが設置され、このデバイスが住まいとユーザーをつなぐ「窓口」になる。窓口という言い方をしたのは、HomeX Displayが単に各機器を操作するだけのコントロールパネルにとどまらず、「制御」「提案」「拡張」という3つの役割を持っているからだ。

「制御」は家電や住宅設備を遠隔操作する統合リモコンのようなもの。従来の一般的な住宅はドアホン、空調、給湯器などのパネルがあちこちに点在して操作性もバラバラだったが、HomeX Displayはひとつのタッチパネルでそれらの機器をコントロールできる。またあらゆる機器の制御が統合されているため、「お出かけ」というアイコンをタッチするだけで、館内の照明や空調をオフにして窓の電動シャッターをすべて閉める、という外出時に必要な作業を一度で済ませることもできる。

「提案」はユーザーに対して、暮らしをより良くするためのアドバイスをしてくれるものだ。たとえばパウダールームで鏡の前に座ったとき、空気の乾いた日であれば乾燥に負けないスキンケアのコツや、肌に良い食べ物などを教えてくれる。将来的には、家族の会話のなかから「服が泥だらけ」というやりとりをキャッチすると、泥汚れを落とすコツを教えてくれるとともに、自動で洗濯機を「泥んこモード」に設定してくれることも想定しているという。人の行動を検知する技術とインターネットから収集する情報を合わせることで、いずれこのような体験も可能になるそうだ。

「拡張」は、スマートフォンと同じようにアプリをHomeX Displayに追加して家の機能を増やせるようにすること。村本さんは、「さまざまな開発者がつくったアプリが追加されていくことを想定し、自社製にはこだわらない」と話す。

HomeX Displayは各部屋ごとに設置されているので、リビングにいながら寝室の空調を制御することもできるし、誰かの来訪があったときにはどの部屋からでもドアホンとして対応ができる。また、キッチンならレシピ検索や調理アドバイス、洗面所なら歯を磨きながら見られる動画コンテンツの表示など、空間ごとに個別の機能も持っている。

(左上)HomeX Displayは、「明日は快晴です。今夜洗濯すると、明日はカラッと乾かせます。」と洗濯のタイミングを教えてくれたり、「暴風警報が発令されました。全室のシャッターを閉めますか?」と提案し、災害に備えて蓄電池への充電を開始するなど、シーンに合わせた提案をしてくれる(右上)広い家では特に、どの部屋にいてもドアホンの対応ができるのはうれしい(下)パウダールームでは、美容に関するアドバイスが表示される(左上)HomeX Displayは、「明日は快晴です。今夜洗濯すると、明日はカラッと乾かせます。」と洗濯のタイミングを教えてくれたり、「暴風警報が発令されました。全室のシャッターを閉めますか?」と提案し、災害に備えて蓄電池への充電を開始するなど、シーンに合わせた提案をしてくれる(右上)広い家では特に、どの部屋にいてもドアホンの対応ができるのはうれしい(下)パウダールームでは、美容に関するアドバイスが表示される

すべての設備をパナソニック製で揃える必要はない

ここまでの話を聞くと「設備はすべてパナソニック製で揃えないといけないのでは?」と思うかもしれないが、そうではない。家電の通信にしても標準化された既存の規格を採用するなど、オープンなプラットフォームになっているのだという。同じ通信規格に準拠していれば他社製の家電でも制御が可能で、実際にこのモデルハウスの電動シャッターは他社製だ。

それはGoogle HomeやAmazon Echoのようなスマートスピーカーでも変わらない。HomeXを導入している住宅でGoogle Homeに向かって「OKグーグル、リビングの電気を消して」と言って照明をオフにしても、その照明の状態はHomeXと同期されるので問題なく作動する。これらスマートスピーカーが果たすのは、先述したHomeXの3つの役割のなかの「制御」にあたる部分であり、HomeXと直接的に競合するものではないのだ。

パナソニック製でなくてもいいのは家電ひとつひとつの話に限らない。村本さんによれば、「将来的には他のハウスメーカーが建てた住宅にHomeXのシステムを導入するようなこともあり得ます」とのことだ。そう考えると、HomeXとは住まいを司るOS(オペレーティングシステム)のような位置づけなのかもしれない。アンドロイドというOSがソニーやサムスン製のスマートフォンを動かしているように、さまざまなハウスメーカーが建てた住宅にHomeXが導入され、住空間をコントロールするイメージである。

洗濯が完了したときの通知も受け取れるが、こうした機能は他社製の洗濯機でも作動する洗濯が完了したときの通知も受け取れるが、こうした機能は他社製の洗濯機でも作動する

毎日なにかが良くなる、日々アップデートされる暮らし

HomeXの大きな特徴のひとつは、住まいの性能が日を追うごとに高まっていくところにある。ここでもスマートフォンとOSを用いて例えてみよう。

買ったばかりのスマートフォンには最低限のアプリしか入っていないが、自分に合った多彩なアプリを追加していくことで機能を増やし、使い勝手を向上させることができる。またiOSやアンドロイドといったOSは、定期的にアップデートされることで新たな機能が増えていく。

HomeXもこれと同じで、HomeX Displayでさまざまなアプリを追加できるし、HomeXのシステム自体もアップデートを繰り返して性能を向上させてゆく。入居を始めた当初には実装が難しかった機能でも、1年後にはそれを可能にする技術が確立され、HomeXのソフトウェアアップデートによりその機能が使えるようになることもあるのだ。

従来の家電や住宅設備は購入したときに最高の機能や価値を持ち、徐々に陳腐化あるいは劣化していく。そのため人々は、数年に一度新しい製品を買うことによって生活を向上させてきた。これに対してパナソニックは、HomeXが日々アップデートを重ねることにより「毎日が昨日より良くなる」という暮らしを目指しているのだという。

HomeXにより住まいのイノベーションは起きるか

クックパッドとの協業により、調理を取り巻く体験も大きく変わるかもしれないクックパッドとの協業により、調理を取り巻く体験も大きく変わるかもしれない

モデルハウスで体験したことはあくまでもプロトタイプによるデモンストレーションなので、実際の使用感については未知数の部分も多い。実邸でユーザーがHomeXを使えるようになるのは2019年5月を予定しており、HomeXに対応するパナソニック製品も今後続々と登場するとのことだ。

他社との協業も積極的に進め、すでに30を超える企業とパートナー関係の構築を進めているので、いずれさまざまなメーカーがHomeXに対応する製品を出してくるだろう。

他社とのコラボレーションにより生まれるのは、家電のようにかたちあるものだけではない。たとえばクックパッドとの共同開発は、クックパッドが展開するスマートキッチンサービスを活用した「新しい料理体験」の創出を目指し、HomeX向けのサービスや機能の開発を進めるものだ。このように各分野に特化した多様な企業がHomeXと化学反応を起こし、これまでになかった便利な暮らしを実現していくようになるのかもしれない。

スマートフォンが登場してから10年以上が経ち、インターネットにつながるコネクテッド・カーの時代も幕を開けた。次なるイノベーションの場と目される住空間において、はたしてHomeXは進化の起爆剤となるだろうか。

2019年 01月25日 11時05分