不動産賃貸仲介のフランチャイズブランドとして日本を代表する企業。APAMAN株式会社

日本の住まいは、昭和の需要を満たす時代から、平成・令和に入り、「自分らしい暮らし方・住まい方」が重視される時代に移り変わっている。少子高齢化、地球温暖化、エネルギー問題、現在は新型コロナウイルスへの対応で在宅テレワークが続くなど、社会や環境がより厳しい局面をむかえる中、安心・安全であり、命を守るという観点からも、住まいの役割はますます重要さを増していくと考えられる。

今回が2回目となる【NEXT 日本の住まい】。
本企画は、「日本の未来の住まいはどのように変化をし、住まいに関わる企業の使命はどういったものなのか」を、日本の住宅に関わる業界のリーディングカンパニートップにインタビューを行い、考えていくというものである。インタビュアーを務めるのは不動産ポータルサイトLIFULL HOME'Sを運営し、「あらゆるLIFEを、FULLに。」がコーポレートメッセージである株式会社LIFULL 井上 高志 代表取締役社長。

今回は不動産賃貸仲介のフランチャイズブランドをつくりあげた業界の変革者、APAMAN株式会社 代表取締役社長 大村 浩次氏に同社の事業の取組みと日本の不動産・住まいへの思いを伺った。

不動産業は情報産業。情報の正確さと効率化は必須である

井上氏:APAMAN株式会社は、「不動産総合サービスを通じ社会に貢献する」とし、不動産賃貸仲介のフランチャイズブランドとして日本を代表する企業様でいらっしゃいます。1999年に株式会社アパマンショップネットワークを起ち上げられた大村社長ですが、創業当時の業界が抱えている課題などをどう考えていらっしゃったのかお聞きしたいと思います。

大村氏:会社をつくる前からフィロソフィを決めていましたが、言葉としては「業界の質的向上に貢献する」ということで、業界が良くなっていただきたい、という思いを込めました。具体的には「顧客に対して正確な情報を提供すること」そして、「業界の生産性向上」です。当時の業界は、管理物件の情報を封筒に写真と間取り図を入れて広告会社に送る……という状況でした。このやり方では、情報比較ができないため整合性の取れない情報も多く、時間もかかった。他業界と比べても情報の正確性と業務効率に大きな課題がありました。
不動産業というのは情報産業ですから、当時からIT化は必須だと考えていました。創業の前に各都道府県の大手賃貸管理業経営者数人が集まって、業界の質的向上やIT化を目標にした研究会を行っていました。ちょうどインターネットが少しずつ世の中に出てきたころです。その後、創業となるのですが、創業時の弊社はシステム会社だったんです。弊社の創業自体が、テクノロジーを活用したイノベーションといっても過言ではありませんでした。

井上氏:情報の正確さと業務効率が課題ということでしたが、その当時と比べると現在はどのくらい改善されたのでしょうか?

大村氏:そうですね、現在は当時と比べると30倍、もしかしたらRPA(※1)を行っているところでは100倍くらい効率は違うのではないでしょうか?APSS(※2)とRPAで約600万件ほどのデータを自動連携させており、ほぼミスなく稼働させています。この業務を行うには1,000人、場合によっては2,000人近くの人手とコストがかかり、まず無理ではないでしょうか。
弊社の全加盟店舗には、IT化プラットフォームであるAOS(※3)という基幹システムを導入しています。情報収集と広告への情報提供、顧客のデータ管理・統計情報などをこのシステムで行っています。現在、加盟店では、朝業務前にパソコンを立ち上げるだけで、前日夜までの最新版に更新された情報が見られるという状態になっています。

井上氏:それは、素晴らしいですね。今までとは比較にならないほどの効率化と情報の正確化に取り組まれることで、業界が質的に向上する…それが業界の貢献につながるということを目指されたのですね。

大村氏:そうです。創業当時はまだまだITが普及しておらず、時間がかかると思っていたのですが、現在は"当時、目指した方向は間違っていなかった"と感じています。

※1:RPA  店舗スタッフの一部業務を自動化するロボット
※2:APSS 管理会社のデータベースと直接データ連携するシステム
※3:AOS  "アパマンショップ・オペレーション・システム":
      アパマンショップが独自に開発した賃貸斡旋業務基幹システム

<b>大村 浩次:</b>APAMAN株式会社 代表取締役社長。株式会社システムソフト 取締役。</br>内閣府 少子化戦略克服会議 委員。出会いサポートセンターJUNALL 顧問。DocuSign  Advisory Board大村 浩次:APAMAN株式会社 代表取締役社長。株式会社システムソフト 取締役。
内閣府 少子化戦略克服会議 委員。出会いサポートセンターJUNALL 顧問。DocuSign Advisory Board

バーチャルとリアル。組み合わせることで、さらに高いサービスを提供する

<b>井上 高志:</b>株式会社 LIFULL 代表取締役社長。1997年株式会社ネクスト(現LIFULL)を設立。インターネットを活用した不動産情報インフラの構築を目指して、不動産・住宅情報サイト「HOME'S(現:LIFULL HOME'S)」を立ち上げ、日本最大級のサイトに育て上げる。現在は、国内外併せて約20社のグループ会社、世界63ヶ国にサービス展開している井上 高志:株式会社 LIFULL 代表取締役社長。1997年株式会社ネクスト(現LIFULL)を設立。インターネットを活用した不動産情報インフラの構築を目指して、不動産・住宅情報サイト「HOME'S(現:LIFULL HOME'S)」を立ち上げ、日本最大級のサイトに育て上げる。現在は、国内外併せて約20社のグループ会社、世界63ヶ国にサービス展開している

井上氏:テクノロジーを駆使していくことによって、御社が今まで成し得てきたこと、そしてこれからのお取組みについてお聞かせいただければと思います。

大村氏:これまでは、当初掲げた目的である「テクノロジーを使って業務効率をあげる」こと、及び持ち主側から「正確な情報を収集する」ことに、かなりな資金と人材を投下してきました。先にお話ししたように、それによって、情報の正確性と速度・効率が飛躍的に向上したと思います。また、加盟店からの要望が年間に2,000~3,000件きますので、その要望の多いものをすべて手をつけて改善していくということをしてきました。現在動いているものの一例をあげると、物件の概要を入れる際、OCRでそのまま読むと、絵文字などが入る場合なかなか正確に読み取れない…それをAIをつかって自動で正確に読み取れるようにするなどの改善を続けています。チャットボット+AIの精度を上げて、お客様の物件問合せに自動対応できる仕組みをつくるなど、絶えず100ほどのプロジェクトを動かしています。

井上氏:それらのテクノロジーを使っていくと、最終的には大村社長の考える未来の賃貸仲介業、さらには不動産業全体はどうなっていくのでしょうか?ユーザーは店舗に行かなくても契約ができるとなると店舗はがいらなくなる、ということも考えられるのでしょうか?

大村氏:不動産業界だけでなく、今後、加速度的に業務が変化していくことは間違いないです。「消費者が欲しいと思うデータが、極めて安全に手軽に、手に入る」ということに尽きると思います。そういう意味では、テクノロジーを駆使しての業務効率の改善や情報の正確さの追求はさらに進めていきたいと思っています。しかし、決して人や店舗が必要ないとは思っていないんです。仲介業やその店舗には、もっともっと可能性がある、と思っています。たとえばAmazonがあそこまで効率化し、受注・流通システムを構築したにもかかわらず、今もって店舗を拡大している。テクノロジーと人を組み合わせる、バーチャルとリアルを組み合わせることで、更に質の高いサービスが提供できるのではないかと考えています。

業界と国の発展に大きく影響するテクノロジー。「日本発」のものをfabbitから

大村氏:また、今後のテクノロジーが起こす変化の一例ですが、弊社は現在、日本で一番売れているワンタイムキーを発行する次世代型Connected Lock「シェアリングキー」を共同開発し扱っています。すでに世界で100万IDとなっています。これを導入すれば、内見に伴う業務効率・コストが格段にアップするという試算があります。もう一歩進んで、例えばこのシステムを活用すれば、宅配便の不在配達など社会問題になっている課題も解決できるかもしれない。安心・安全を担保し、コンプライアンスを遵守しながら、仲介業はテクノロジーによってもっともっと生活のサービス産業になれる可能性を秘めていると思うんです。

井上氏:テクノロジーが変える業界の未来、日本の未来を考えるとわくわくしますね。

大村氏:業界と国の発展を考えたときに、そういったテクノロジーやイノベーションが生まれる場が必要だと思っています。自分のスマートフォンで使用しているサービスを見ると、ほとんどがサンフランシスコ・西海岸周辺から生まれたサービスとなっています。アメリカがリーマンショックであそこまで大きなダメージを受けたにもかかわらず復活をとげたのは、西海岸から多くの優秀なベンチャー企業が生まれ、育ったからだと思います。そういった場を提供するために、弊社はスタートアップ企業の創業・成長、中小企業の第二創業支援というイノベーションが生まれる場として「fabbit」というコワーキングスペースをつくったのです。
現在1万人ほどの会員がおり、スタートアップでは国内では最大級だと思います。この中からAPAMAN社へのオープンイノベーション募集をすると、少なくとも300を超える提案がきます。fabbitは、優秀なメンバーと世界的な企業のトップなどの非常に素晴らしいサポート体制を整えています。業界や国の将来と発展は、日本発のものをいかにつくれるかにかかっていると思います。fabbitのフィロソフィは「会員に寄り添う」なのですが、会員をどんどんサポートしていくということは、APAMANのフランチャイズの加盟店に対するサポートに似ているんです。

井上氏:fabbitは、単なるコワーキングスペースでなく、ベンチャーをどんどんインキュベートしていく場なのですね。イノベーションが業界と日本を強くしていくということですね。

様々なイノベーションを起こせる場として、場の提供とサポートを行う「fabbit」(写真提供:APAMAN株式会社)様々なイノベーションを起こせる場として、場の提供とサポートを行う「fabbit」(写真提供:APAMAN株式会社)

グローバル展開と社会的貢献について

井上氏:様々な取組みを行っていらっしゃいますが、国内だけでなく、グローバル展開についてもお聞きしたいと思います。

大村氏:既存のサービス展開としては、現在は日本向けですので、日本人が3万人以上いる都市に拠点をつくっていきます。fabbitは、現在サンフランシスコやボストンなどにありますが、最終的には500拠点、うち300は国内に200は海外に拠点をもつことを目指しています。

井上氏:fabbitも国の発展や業界の発展などに貢献する一つの例だと思いますが、他にも御社の社会貢献の取組みをお聞かせいただけるでしょうか?

大村氏:業界と弊社の社会課題に対する貢献としては、緊急的人道的見地から部屋を提供する仕組みをつくるということです。東日本大震災の時は、省庁から2万世帯くらい住居を用意できないか、とお声がけをいただき、次の日から仙台に行って人道支援を含め現地の加盟店と対応を始めました。震災後、人の命を考えると、いかに早く住宅に住まわせるかということが大切だということで、最終的には8万世帯くらいの住まいを提供したと思います。その時につくった「安心ちんたい検索サイト」(http://www.saigaishienjutaku.com/)は、その後さまざまな災害でも利用されています。
また、現在新型コロナウイルスの感染拡大が経済にも大きな影響を及ぼすことが懸念されていますが、勤め先の倒産や解雇によって住まいを失った人を支援するために、全国およそ200部屋の賃貸住宅を無償で貸し出すことを決めています。

井上氏:まさに御社の作り上げてきたネットワークがあってこその社会貢献ですね。続いて、大村社長が今までずっとやってこられた「未来を創るということ」に対してのお考えをお聞かせください。

大村氏:基本的に未来を創るには、やはり情報が必要だと思うんです。人と情報が交差するところに新たなものが生まれると思います。生活者や業務の利便性向上、そのために政府との連携も必要です。そして、贅沢を言うなら、世界で使われる「日本発」のモノをつくっていきたいと思っています。

井上氏:他にも取組んでいらっしゃる、社会への貢献などありますでしょうか?

大村氏:国難ともいわれる少子化防止については、NPO「出会いサポートセンターJUNOALL」をサポートしています。こちらは、行政とともに完全ボランティアで行っているITを使った結婚相談所です。アメリカでは4割の方がソーシャルかITで知り合って結婚しているといいます。こちらは真剣に結婚したい方が細かく自身のデータを入力して、まずはデータ上でお互いのことを知り合っているのが前提なので、結婚に至る割合はかなり高いです。行政と商工会議所が了承した場合のみ、サービスを展開をしていて、現在11カ所を運営し、多くの方が結婚に至っています。また福岡県の北九州市にはサブカルチャーの集積地である「あるあるCity」をつくって、イベントなども行っています。こちらは国内だけでなく多くの海外の方もいらっしゃって、地域活性に貢献しているようです。

井上氏:まさに幅広い分野で社会貢献をされ続けていらっしゃいますね。これからは大村社長個人としては、何かしていきたいことはございますか。

大村氏:個人でも会社でも、いずれにしても国や地域のためになることをしたいですね。そのためにはやはり、企業がしっかりしていないと挑戦もできないと思います。企業が継続的に社会貢献を続けていく方が成功率も高く、効率も良いと考えています。
「社会貢献の輪が広がれば、日本は必ず良くなる」という考えのもと、弊社グループとして、できる限りの貢献をしていきたいと考えています。

井上氏:たいへん貴重なお時間とお話、ありがとうございました。

■取材協力:
APAMAN株式会社 https://apamanshop-hd.co.jp/

写真左)APAMAN株式会社 代表取締役社長 大村 浩次氏。
写真右)株式会社 LIFULL 代表取締役社長 井上 高志氏写真左)APAMAN株式会社 代表取締役社長 大村 浩次氏。 写真右)株式会社 LIFULL 代表取締役社長 井上 高志氏

2020年 05月11日 11時05分