長期金利は一時0.5%を割り込む

住宅ローン金利は、住宅購入のフックには十分なっていると言える。問題は「常にフックとなっているか」である住宅ローン金利は、住宅購入のフックには十分なっていると言える。問題は「常にフックとなっているか」である

このコラムを執筆している2014年9月初旬の長期金利(新発10年物の国債金利)は0.5%前後で推移する“超低金利”水準が続いている。
各金融機関も企業向けのプロパー融資だけでなく、個人向けのリテール融資に力を入れ続けており、中でもリテール融資の中核となる住宅ローンの金利競争は固定、変動とも熾烈さが増している状況にある。

変動金利は借り入れた後、半年ごとに短期プライムレートを基準に金利を見直すが、固定金利は当然のことながら借入期間中の金利が固定されるので“金利が変わらない安心”を保険代わりとして根強い支持がある。
アベノミクスで景気が改善して金利も上昇するという単純な見立ては現状全く通じないが、金融機関が熾烈な金利競争を繰り広げている現状を考えると、固定でも変動でも、住宅ローン金利は住宅購入に向けての検討材料として重要視されている。
つまり今回のテーマである住宅購入のフックには十分なっていると言える。問題は「常にフックとなっているか」である。

金利が低位に推移する要因は?

9月の固定実施金利が1.0%とか1.2%とか、いずれの金融機関でも過去最低を記録するほど超低位なのは、冒頭に取り上げた固定金利を決める基準となっている長期金利が0.5%前後で推移しているからに他ならない。
変動金利の優遇適用金利もここ数年1%を切る水準なのはご存知の通りだが、固定金利が1%をやや上回る程度まで低下すると、変動金利の最大のメリットである“金利水準の低さ”がその優位性を保てるのかについても関心が及ぶ水準と言えるだろう。
この水準であれば、住宅ローンの商品性、具体的には繰り上げ返済手数料の額や有無、保証料の有無などの違いをもとに、好みでローンを選択できる状況にあるとも言える。
そもそも、なぜ長期金利の水準が他国と比較して極端に低いのかと言えば、まず国内投資家の保有率が極めて高い水準にあることが挙げられる。
ここ数年、海外の機関投資家が日本の国債購入に積極的であるという報道が繰り返されているものの保有比率は10%に満たず、アメリカの国債の海外投資家保有率が50%弱、ドイツでは50%を大きく超えて推移していることを考えると、1500兆円を超えるといわれる国内の潤沢な個人金融資産が国債を支えるという安定性が、金利を低位に誘導する大きな要因になっている。
また、アベノミクスで景気浮揚への期待が高まっているとはいえ、預金に見合うプロパー融資先はまだまだ少なく、依然として国内の機関投資家は国債購入を運用の柱に据えているということも要因の一つだろう。
さらに言えば、3%引き上げられて8%になった消費税率も先進諸国の中では最も低く、増税ののりしろがあることも財政改善の余地の大きさと捉えて金利低位誘導の一因とみる向きもある。

“永遠の命題のひとつ” 
固定か変動かは好みで選ぶものではない

住宅ローンの実施金利が固定で1%をわずかに上回る水準、変動の優遇金利だと0.7%前後が主流という状況で、住宅版“究極の選択”の一つである「固定と変動、どちらがお得?」という命題を検討することにそもそも大きな違いを見出すことは困難だが(ほかには「新築か中古か」や「買うか借りるか」などがあるが、結局自分の好みで決めれば的な結論になることがほとんどである)、強いてどのような家計に向いているのかという類型化を試みておきたい。

まず固定金利は、返済計画が借り入れ当初から決まっていてこれが変わるということはないので、いつまでにいくら返済する=完済&永住するという意向の強い購入者に向いているといえるだろう。
世帯の構成人数ではなく、ライフステージが変化しにくい、もしくは次に変化するまでの期間が長くなりそうな場合はこのケースに該当する可能性がある。
もちろん返済中に買い替えができないということはないが、買い替えを前提とした場合は変動金利よりもやや金利水準が高いという点に留意する必要はある。

変動金利は固定の反対のタイプ、つまり返済中に買い替えを検討している=ライフステージが変化しやすい職業や世帯構成である家計には比較的向いている。
金利が半年ごとに見直されて上昇するリスク(さらには元金が思うように減らないというリスク)はあるが、当初から低金利であることのメリットが発揮され、住宅ローン以外の支出に家計を振り向けられることもできる。
サイフは一つだから、極論すれば“住宅ローンのために生きる”というような生活を避けるためにも収入の上手な振り分けを意識すると、変動金利で借り入れることは十分に検討するに値する。
特にDINKSで収入もそれなりにあるが支出も相応という家計には、変動金利で借り入れるという選択肢は大いに検討余地があるだろう(参照:住宅ローンの極私的「心得」~住宅ローンはお金がないから組むものではなく、積極的・戦略的に組むものだ~

つまるところ「固定か変動か」という命題は、「買うか借りるか」と同じく性質の異なるものを比較してどちらにするかという選択を考えるという点で、実は大きな意義を見出すことができないと考えている。

戦略的に不動産を購入するには、
住宅ローン商品も戦略的に選択する必要がある

このように、住宅を現金で一括購入する場合を除いて、住宅ローンと不動産購入は切っても切れない関係にあるという意味で、金利も常に注目されていると言って良い。換言すれば、住宅価格の動向と同じレベルで金利動向も注視する必要があるということだ。
また、住宅の購入額は購入時点でフィックスされているのに対して、変動金利で借り入れれば返済総額は自ずと変わるし、固定金利での借り入れであっても、現在借り入れている住宅ローン商品よりも有利と考えられるものが登場すれば借り換える可能性も残されており、借り換えを前提とした“購入後もチェックし続ける必要がある”数字であることを意識する必要がある。
住宅ローン金利は住宅購入のフックになり続けるだけでなく、住宅購入後もアンテナを立てておく必要があると考えると、「常に」意識すべき数字だという結論が得られる。住宅購入前にほぼ毎日にらめっこしていた銀行のウェブサイトや金利比較サイトなど見たくもないだろうが、購入後も定期的なチェックは怠らずに行うべきだろう。
資産価値が高いと考えられる立地条件および属性の物件を購入しても、住宅ローン商品を同じ目線=経済合理性を重視した目線で選択しなければ、住宅購入における戦略性が低下することは否めない。
価格と金利の組み合わせだけでも、住宅購入の際の選択肢は大きく変わるのである。

住宅ローン金利は「常に」意識すべき数字である。銀行のウェブサイトや金利比較サイトなど</br>見たくもないだろうが、購入後も定期的なチェックは怠らずに行うべきだろう住宅ローン金利は「常に」意識すべき数字である。銀行のウェブサイトや金利比較サイトなど
見たくもないだろうが、購入後も定期的なチェックは怠らずに行うべきだろう

2014年 09月10日 11時18分