資産の組み替えを勧める不動産事業者

人気のない大学の学生をあてにしていたワンルームアパートなどは、賃貸経営は成り立たなくなるだろう人気のない大学の学生をあてにしていたワンルームアパートなどは、賃貸経営は成り立たなくなるだろう

ある不動産賃貸管理会社の話…。
自分の管理物件のオーナーで、ワンルームのアパートマンションを所有しているオーナーに、今すぐ売却するように勧めているという。埼玉県草加市でワンルーム6戸のアパートを持っているより、その売却した資金で、都心部の区分所有のマンション1戸を持っていたほうが価値が下がりにくいという提案だ。

このような提案をすると、「あんたが儲けたいだけでしょう?」って冗談のように返されるそうだが、私もこの提案は至極妥当な提案だと思う。今だったら、このワンルーム6戸を買ってくれる人がいる。私はこの状況を「日本全国不動産ババ抜き合戦」が始まっていると表現している。売れなくなる住宅を最後に手にするのは誰かという問題だ。バブルの時と同じで、売れずに最後に持っていた人が損をする。だから今のうちにという訳だ。

都心のど真ん中で歩いて通勤するくらいの距離ならまだしも、30m2以下のワンルームに住んで電車に乗って通勤・通学するようなことは、これからほとんど無くなると思う。少子化の問題が現実になっている大学などは、借りたワンルームから電車に乗って通学なんてことはほとんどないのではないだろうか。まだ大学があるだけ良いのかもしれない。大学全入時代。これから大学が無くなる。人気のない大学から無くなる。人気のない大学の学生をあてにしていたワンルームアパートなどは、賃貸経営は成り立たなくなるだろう。

このような小型賃貸住宅のニーズは、学校や仕事場に歩いていける単身者のニーズが中心だ。ちなみに、ワンルームの中心的な利用者が25歳±5歳だとする。18年前は、この10代に1,900万人もいた。しかし、現在は1,400万人程度。ワンルームの空室が増えるのは、当たり前の話だ。趣味嗜好だけで買ってしまった住宅だが、このままローンを返済し続けても赤字が膨らむどころか、最後は換金できなくなる。換金できなくなるくらいなら、ある程度の損失は覚悟で、住宅ローンの返済が貯蓄となる家に投資したほうが良い。こんな選択だ。

以下に、ありがちな事例を紹介する。

1)親から相続した土地に注文建築で家を建てた

流動性の高い土地だったらまだしも、流動性の低い、もしくは流通しない土地に建物を建てても、それは資産の家ではなく趣味の家となる流動性の高い土地だったらまだしも、流動性の低い、もしくは流通しない土地に建物を建てても、それは資産の家ではなく趣味の家となる

東京から電車で1時間半、横須賀市。駅からバス便の土地。親から相続をし、そこに去年注文建築で家を建てた方。
私はこの方に、このようにアドバイスした。横須賀は人口減少が著しく、不動産の資産価値が大きく減る可能性が高い。幸いなことに、去年建築したばかりの家が建っているので、まだ売りやすい。今だったらまだ買ってくれる人がいるかもしれない。この不動産を売って、横浜などもっと流動性の高いエリアに資産の組み替えをしたらどうかと。

昔から住んでいた土地。離れるとなれば、多少なりとも感傷的にもなるだろう。だけど、ご両親はこの土地を守ってくれることを望んでいるのではなく、この土地の資産を守ってくれることを望んでるのではないだろうか。30分も電車に乗れば、昔住んでいたところを見に来ることもできる。資産の組み替えを検討してみてはどうだろうか?と提案した。もちろん、本人はとても驚いていた。終の棲家だと考えて建てた注文住宅。ましてや、親から相続した土地。しかも注文住宅で新築したばかりなので、売るなんてことは想像を絶していたに違いない。

流動性の高い土地だったらまだしも、流動性の低い、もしくは流通しない土地に建物を建てても、それは資産の家ではなく趣味の家。お金に余裕があるなら良いが、住宅を換金する必要性が将来発生する可能性があるのであれば(普通、ほとんどの人はそうだと思う)、そこで新築した住宅ローン2,500万円(土地持ちは土地購入費が不要なため、比較的価格の高めなハウスメーカーに建築を依頼していることが多い。)を返済し続けるのはあまりにもリスクが高い。今だったら、土地1,500万、建物1,500万、合計3,000万円の不動産として売れるかもしれない。建築費1,000万円分は赤字だが(建てちゃったのだからしようがない)、それでも、売れなくなる住宅にローンを返済し続けるよりは良いと思う。現実的には、なかなかそのような判断はしにくいと思うが、話を聞いて「なるほど、そういう考え方もあるな」と気づいてくれたことと思う。

平成26年12月1日の報道で「売れぬ注文住宅…『給付金30万円』に見向きもしない消費者、失政の感強く」という報道があった。給付金が失策と言わんばかりのタイトルだが、そもそも住宅は供給過剰であり、そのなかでも趣味嗜好性の強い注文住宅は今後の受注がさらに厳しいのではないかと思う。「消費増税後、軒並み2ケタの前年割れが続く」消費増税が受注を減らし、景気が後退していると言わんばかりの報道だ。問題がすり替わっている気がしてならない。もう、新築着工件数と景気はリンクしていない。この傾向は一過性のものではなくて、今後続くものだと私は思う。

「趣味の家から資産の家へ」と消費者の購買行動が移ってきている証ではないだろうか。

2)資産にならない住宅に住宅ローンを返済し続ける

早めに損切りをしないと、全く売れない物件に住宅ローンをこれからも払い続けることになりかねない早めに損切りをしないと、全く売れない物件に住宅ローンをこれからも払い続けることになりかねない

この方は、埼玉のある浦和周辺のターミナル駅から徒歩18分のところに、1992年に6,500万円で80m2で3LDKのマンションを買った。
6,500万円とは今考えるとかなり高い感じがするが、それでもその頃は手ごろ感があったそうだ。その方には2人のお子さんがいらしたのだが、3人目のお子さんが誕生にするにあたって4LDKの間取りが良いということで、学区域の問題もあったのだろう、同じ駅から徒歩14分のところにもう一つ90m2のマンションを2003年に4,500万円で購入した。今まで住んでいたマンションは賃貸で貸し出していたそうである。
今回、その入居者が退去したために、1件目のマンションを売却したいという相談だった。そのマンションにはまだ残債が2,300万円あるのだが、どう考えても2,000万以下でしか売れない。なんとか残債程度で売りたいという話だが、広告を出しても全く反響が出ない状況だ。私は、この方にこのように提案した。「ご自宅の売却も一緒に検討されたほうが良いのではないでしょうか?」自宅の方は残債が3,500万あるそうだが、この物件は恐らく2,500万円程度でないと買い手がつかないと思われる。両方売却すると1,500万円程度の損失になる。しかし、私はそれでも売却したほうが良いのではと話している。この方は収入がずっと多かった方なので、ローン破綻をきたすことなく返済し続けられた方。意外と、そこが傷口を広げる原因にもなっているのかもしれない。

株も同じであるが、早めに損切りをしないと、全く売れない物件に住宅ローンをこれからも払い続けることになりかねないからだ。1,500万の損になっても、価格の下がりにくい5,000万円くらいのマンションに引っ越し、そこで住宅ローンを払い続けているほうが資産が維持されるからである。

終の棲家だと思って買った最後のマンション。それを売れと言われているのだから、そう簡単には決断できないだろう。でも、前回も記述したが、その物件が終の棲家になる可能性は限りなく低い。
高齢になると、住宅の選択肢が広い方が豊かな老後を送れるに違いない。

3)社宅に入っているので、購入はもう少し先に

与信力のある人は、今のうちに不動産を買っておいて社宅に居られる間は人に貸して、出なくてはいけなくなったら自ら住めばいい与信力のある人は、今のうちに不動産を買っておいて社宅に居られる間は人に貸して、出なくてはいけなくなったら自ら住めばいい

この方は銀行マン。住宅ローンを借りれば、与信に全く問題が無い人。
転勤も多いし、現在はまだ社宅に入っていられるので、社宅を出なくてはいけなくなったら住宅購入を考えるとのこと。 家の購入時期を自らのライフイベントだけで決めてしまって本当に良いのだろうか?大手企業にお勤めの方や公務員の方に多い、購入時期の決め方だ。もちろん、安く住むことができるのだから、その選択肢を手放す必要はない。だから自宅は社宅でも構わないが、今のうちに不動産を買っておいて社宅に居られる間は人に貸して、出なくてはいけなくなったら自ら住めばいい。(この場合は、住宅ローンではなくアパートローンなどになると思うが…)

せっかくの与信力。放置するのはもったいない。その与信力と低金利で色々な選択肢があると思う。社宅に入っているからと言う理由で思考停止している方が非常に多い。(家を買ったら社宅を出なくてはいけない会社もあるようだが、親が住む住宅等を買うなどという方法もある)不動産も金融資産であれば、自分のライフイベントだけで購入時期を決めるのはリスクが高い。
例え、現在家は不要でも将来必要になる可能性があるのであれば、ライフイベントとは違う「買い時」を見極める目も必要であろう。

大事なことは、「思考停止しないこと」だと思う。

4)安い物件を買って思いっきりリフォーム

1,000万円の旧耐震マンションに、1,500万円のリフォーム。昨今のリノベーションブームで、リフォームに多額のお金を注ぎ込む消費者も増えている。
その様な住宅購入を否定することはしないが、そのような判断は資産防衛とは程遠いと言えるだろう。2,500万の予算があるのであれば、私であれば2,200万円でなるべく都心に近く駅からも近い新耐震のマンションを購入して、300万円程度のほどほどのリフォームをして住む。それの方が資産防衛になる可能性が高いからだ。

昨今のリノベーションブームに水を差すようで申し訳ないが、リフォームにお金をかけるよりも不動産にお金をかけた方が資産防衛につながりやすい。こだわりを強くしてリフォームにお金をかけるほど資産を失いやすく、私も70点他人にとっても70点のほどほどの家の方が資産防衛しやすい。

家は自分の夢を実現するステージでもあるので、資産価値ばかり言うつもりはないのだけれど、相変わらず「人口増加」「家不足」「右肩上がりの経済」「インフレ」と言った、過去の経済状況を前提とした住宅購入者があまりに多い。「人口減」「家余り」「停滞する経済」「デフレもしくはハイパーインフレ」こんな状況になっても生きていける自分である必要がある。資産を防衛するのも、資産を失うのも自分次第だ。

2014年 12月25日 11時22分