一戸建てとマンションで違う、建物の修繕管理方法

いつもでも、新築のような建物や住みやすさを保持したいもの。そのために欠かせないのが、戸建ての修繕管理いつもでも、新築のような建物や住みやすさを保持したいもの。そのために欠かせないのが、戸建ての修繕管理

住宅購入を検討するとき、戸建派とマンション派で意見が分かれることがある。いくつかある一戸建てとマンションの比較項目の中に、建物の「修繕管理」があると思う。
分譲マンションの場合、契約者が管理組合を形成し建物の修繕管理を管理会社へ委託する。数十年という長期的な建物の修繕計画が立てられ、何年後にどれぐらいの修繕費が必要なのかという概算のもと毎月、管理組合に管理費や修繕費を納め積み立てる。その積立金で管理会社がマンションの外壁やエレベーター、屋上・バルコニーの防水工事などの修繕管理を実施し建物の保全が行われる。
一方、分譲一戸建てにおける修繕管理は、自己管理というケースが大半を締め、契約者の裁量に委ねられている。はたして、一戸建て所有者はどのように建物の管理を行っているのだろうか。

そこで、一戸建ての修繕管理を請け負っている株式会社日本戸建管理の代表取締役の吉村孝文氏に、その実情と対策となる取り組みについて伺ってみた。

住宅の重要な欠陥については、法律で保護されている

自然劣化や自然災害などで屋根の修復が必要になることもある自然劣化や自然災害などで屋根の修復が必要になることもある

「マンションには管理会社があって、管理人がいるので何かあってもほとんどのことは対応してくれます。でも、一戸建ての場合は自己管理になるので、工務店や事業主が倒産してしまうと、不具合が生じた場合など相談する場所がなくなってしまいます。日本全国に、欠陥住宅や一戸建てのメンテナンスについて、困っている人がたくさんいるのではないでしょうか」と吉村氏は言う。

欠陥住宅については、住宅購入者等の利益の保護を図るため、新築住宅を供給する事業者に対して、瑕疵の補修等が確実に行われるよう、保険や供託を義務付ける「住宅瑕疵担保履行法」が平成21年10月1日に施行されている。一戸建ての保証期間は、引き渡し日から10年間だ。
瑕疵担保責任の保険については、国土交通大臣指定の住宅瑕疵担保責任保険法人があり、10年保証については耐震性能に重要な「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」に、重大な欠陥が生じた場合に適応され、その他の内装や設備については2年の保証期間となっている。

この保険について吉村氏は「大手ハウスメーカーさんでも、保険加入と供託をそれぞれ使い分けていたりして、利用方法についてはパターンが色々あるようです」と話す。これらをしっかり対応してくれている事業主ならいいが、そうでない場合その費用が本当に捻出されるのかどうかが気になるところだ。また、住宅瑕疵担保履行法が施行される前に引き渡しを受けた住宅の所有者については、欠陥が見つかった場合どこに相談すればいいのか、分からないのではないだろうか。そうなると所有者は、住宅という資産を保全する術を見失ってしまう可能性がある。

一戸建て住宅の修繕管理と欠陥住宅への対処方法をサポート

長寿命の一戸建てを目指し、修繕管理の大切さを熱く語る、株式会社日本戸建管理 代表取締役 吉村孝文氏長寿命の一戸建てを目指し、修繕管理の大切さを熱く語る、株式会社日本戸建管理 代表取締役 吉村孝文氏

「住宅瑕疵担保履行法に、そぐわなかったとしてもそれを罰する法則はないんです。また、銀行が行う住宅ローンの審査では、借入される契約者の返済能力の有無だけをみていて、建物の品質はみていないんです」と吉村氏は語る。
そこで「修繕管理や欠陥といった一戸建て住宅の困り事を、少しでも解決できるようサポートしたい!」と同社を立ち上げ、一戸建ての修繕管理の業務に取り組みはじめ、各種サービスを提供する会員制「家ドック」会の会員数は拡大を続けているという。

個人が管理するには面倒になりがちな、一戸建ての修繕管理は外壁や屋根、床下、住居内の壁をはじめ、キッチン、浴室、トイレといった各設備まで、当然ながら屋外・屋内の全てが対象となる。だが「どこに相談すればいいのか、分からない」や工務店に修繕を依頼するにしても「信用できる工務店かどうか心配だ」といった所有者の不安がつきまとうのも事実。そこで同社では、所有者の不安が少しでも解消できるようなサービス内容を構築したという。

修繕計画や工事については、まず同社が提携する工務店の中から1社を専属の相談先として選定する。その工務店が年1回の点検から長期修繕計画・見積・施工・住宅履歴作成までの作業を行う。欠陥住宅についても同様に対応する方針だという。それぞれの箇所によって、修繕の周期は異なるため、その年によって必要になる費用も様々だ。いつ、どこを修繕するのかという長期的な修繕計画とその時に必要となる、おおよその費用が事前にわかれば、その時期に備えて預金しておくこともでき、家族のライフプランも立てやすくなる。

この「家ドック」会は、年1回の本格定期点検の他に、家の履歴書となる「家カルテ」の記録・保管、24時間緊急対応サービス、住まいの無料相談サービス、リフォーム相談といった6種類のサービスと、提携企業との特典などがついて、毎月の会費は1000円(税別)という。

「家の履歴書」の有無が買い手の心理を左右する?

快適な暮らしのためには、キッチンの換気扇や浴室、洗面、トイレなど住戸内の設備点検も大切な項目のひとつ。快適な暮らしのためには、キッチンの換気扇や浴室、洗面、トイレなど住戸内の設備点検も大切な項目のひとつ。

人には「定期健康診断」、車には「車検」があるように、家にも定期的な検査(点検・修繕)が必要なのは明らかだ。また、「これらの点検・修繕の内容を履歴として記録しておくことも、大切なことなんです」と吉村氏はいう。確かに健康診断も車検も、しっかり記録が残っているのに、数千万円もする住宅に履歴がないのは、おかしなことだ。
社会資産として住宅の適切な維持管理及び、既存住宅の適正な流通の実現に寄与することを目的とする「一般社団法人住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会」に加盟し普及活動に努める同社では、いつ、どの箇所を、いくらの費用で、どう修繕したのかを修繕前と後の写真とともに「家カルテ」として、独自開発したシステムに記録・保管している。

この「家の履歴書」の存在は、売却時や相続時に大いに役立つというから、その存在価値は意外に大きいようだ。一般的に一戸建ての評価額は年々低下し、約20〜25年でほぼゼロになると言われている。メンテナンスがされていなければ、建物の評価は無いと言っても過言ではないだろう。だが、この履歴(家カルテ)があることで、買い手の評価が上がることがあるという。それは、どのように手入れされてきた物件なのか、どれだけ愛着を持って大切に扱い、住んできたかということが分かることで、買い手が安心して購入を検討できるからだという。「履歴書のある物件とそうでない物件とでは、建物に対する心理的な評価が変わってくるんです」と吉村氏は語る。こういった状況を踏まえ、国土交通省でも家の履歴書の作成を推奨しているという。

長期優良住宅に盛り込まれた維持管理の義務

素人では見過ごしがちな外壁の亀裂や目地の劣化もプロの目で、しっかり点検・修繕してくれる素人では見過ごしがちな外壁の亀裂や目地の劣化もプロの目で、しっかり点検・修繕してくれる

日本の一戸建ての寿命は築30年程、住宅が解体されるまでの除却年数は築40年程ともいわれている。それぞれの築年数の考え方については、諸説あるがいずれにしても除却年数100年といわれるアメリカと比べると大きな差があることは間違いない。

ここ数年、政府も住宅の長寿命化に向けた動きを示している。「住宅瑕疵担保履行法」が制定される約4ヶ月前の平成21年6月4日、住宅を長く使用することによって、住宅の解体や除却に伴う廃棄物の抑制と、環境への配慮、建替えに係る費用の削減など国民の住宅に対する負担の軽減や、更なるより良い暮らしの向上を目的とした「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行された。

国土交通省のサイトには、長期優良住宅の認定基準の概要として、数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること、極めて稀に発生する地震に対し、継続利用のための改修の容易化を図るため、損傷のレベルの低減を図ること、構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について、維持管理(清掃・点検・補修・更新)を容易に行うために必要な措置が講じられていること、など複数の項目が記載されている。

その基準を満たせば、税制面での優遇が受けられるのだが、実はこの長期優良住宅の条件の中に
、住宅の維持管理の一貫として「建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること」という内容が盛り込まれている。また、建築・維持保全の状況について所管行政庁から報告を求められた場合、メンテナンスに関する記録を報告する必要があるのだ。一見、プレッシャーに感じる条件だが、それだけ政府も真剣だということだろう。

現在、一戸建てを所有している人にとって、永住・売却の可能性をはじめ長期優良住宅の認定の有無に関わらず、住宅の修繕管理は「資産の保全」や「心地よい住まいは家族の心身の健康を育む」といった観点からも心がけることに、こしたことはないようだ。

取材協力:株式会社日本戸建管理
http://www.k-nkk.com/

2014年 11月11日 11時10分