「終の棲家」と言う勘違い

住宅双六の「あがりがあがりではない」と思っている人が増えている住宅双六の「あがりがあがりではない」と思っている人が増えている

かつての住宅双六は「一戸建て住宅を買う」のは「あがり」だった。自分の家を買って居住することに何の疑問も感じていない人がほとんどである。だから、あがりは「終の棲家」となると思っている。
しかし、現実はどうであろうか?どこかの会社に勤めて、電車に乗って通勤する庭付き一戸建ては、恐らく終の棲家となりえないのではないだろうか。なぜなら、子育て世代には良い住宅が、高齢者世帯にも必ずしも良い住宅とは限らないからだ。子育てを終えたばかりのアクティブシニア世代ならまだしも、後期高齢者にでもなれば、「車に乗って買い物」「庭の手入れ」「2階を利用していない」「夫婦のどちらかが通院している・入院している」等、郊外の庭付き一戸建ては不自由を感じることが多くなる。恐らく終の棲家となり得るのは、「歩いて買い物に行ける」「家のメンテナンスが容易」「病院に近い」「子供達や親せきの家に近い」等の条件の家ではないだろうか。自身が高齢化してくると、思いもよらなかったことが次々襲ってきたりする。

そんなことに気付き始めた団塊の世代以降の人たちが、都心のDINKS向けのマンションなどに移り住んでいる。かつての住宅双六の「あがりがあがりではない」と思っている人が増えているのである。

自己都合の「立地」が最も危険

飛びたしたマンホールが今でも放置されている新浦安(H26.9撮影)飛びたしたマンホールが今でも放置されている新浦安(H26.9撮影)

終の棲家ではない可能性が高い住宅であれば、換金性が高くなければ将来困る。では、自宅の資産性のことを考えて住宅を買っている人はどれだけいるだろうか?
私が出会う顧客はほとんどと言っていいほど自宅の資産性のことを考えていない。買えるのであれば「自宅を買って住む」ことに疑問を感じる人は少ないだろう。しかし、ここに大きな落とし穴があると言いたい。自分が住むということは自分にとって都合がいいということ。住宅購入の3要素に「広さ」「立地」「価格」がある。実はこの3要素のうち「広さ」と「価格」は選択肢がほとんどない。「広さ」は居住人数で決まる。「価格」は収入と貯蓄で決まる。だから、「価格」と「広さ」は選択肢それほど多くなく、いわば自己都合しか選択肢が無い。
しかし、「立地」だけは違う。3要素では最も自由度の高い選択肢だ。しかし、この「立地」を自己都合で選択肢を狭めているケースが多い。「昔から住んでいる」「子供の学区域」「通勤に便利」等の理由だ。私は家を購入する際に資産性の事ばかりを考えて購入することを勧めているわけではないが、あまりにも資産価値の視点が抜けている人が多いので、あえて強めに主張したい。「あなたにとって都合の良い立地が必ずしも万人にとって都合の良い立地ではない」ということだ。
多くの人にとって都合がよくないということは、換金性が低いということ。ポイントはここにある。

資産は減らない方が良いのでは?

買って住んでいる今の家は、将来の資産価値のことを考えて買ったのだろうか?買って住んでいる今の家は、将来の資産価値のことを考えて買ったのだろうか?

ご自身のことを振り返ってほしい。買って住んでいる今の家は、将来の資産価値のことを考えて買ったであろうか?恐らく多くの人は、そんなことは考えもせず、購入していないだろうか。
住宅も資産であると考えれば、株と同じ。株は毎秒刻みで価格が変わる。だから今の価値がわかりやすく、「価格が下がりそうだから売る」「価格が上がったから売る」と言う自己都合ではなく投資的な判断がしやすい。でも、不動産の場合、実際は刻々と価値が変わっているのだが株と同じようにリアルタイムには価格は把握できない。もし、今の家の価値が急落していることがわかったら、皆さんはどうするだろうか?しかも、その下がっている事実を知らずに住宅ローンを返済し続けているとしたら・・・。考えるだけでゾッとする。挙句の果てには、価格を下げても売れない家になったら(株でいえば企業が倒産)、支払い続けている住宅ローンは全て捨て金になる。

極端な話、例え去年新築分譲マンションを買ったばかりの人であっても、もし資産価値が急落している状況がわかったら、被害が少ないうちに売却して対策を取るだろう。また、今住んでいる住宅がこの瞬間「購入価格の倍で売れる」と言うことがわかったら、例え住み続けようと思っていた家でも「売ろうかな」という心理にならないだろうか?

しかし、多くの人は不動産価値の騰落で家を売ったり買ったりするのではなく、自分の事情(ライフイベント)だけで家を買ったり売ったりする。株などの投資の世界では、そんな投資はあり得ない。

自宅は買わない方が良い?

私は「自宅は買わない方が良い」とあえて言いたい。かく言う私も、自宅を買って住んでいるのだから説得力は無いが…(近々売却しようと思っている(笑))
まず初めに購入する不動産は、賃貸で貸し出す。例えば、毎月のローン15万円、賃料収入15万円の様な物件を探す。しかも、その物件は値段が下がりにくいような物件を買う(※ここが最も重要)。
例えば、毎月15万円の返済、頭金1,000万円、金利3%(ここではアパートローンを想定)、返済期間35年でローンを組むと最大5,000万円の物件が購入できる。東京の事例で申し訳ないが、5,000万円も出せば40~50m2程度のマンションが新橋・飯田橋と言ったオフィス街の中でも購入可能だ。オフィス街にあるということは、居住ニーズもさることながら事務所利用ニーズもあり、賃料収入が安定しやすい。新橋駅から5分で40~50m2であれば、20~30万円程度で賃貸できる。家族4人で自宅にしようと思えば新橋駅5分の40m2のマンションを買うという判断にはならないだろう。
しかし、その入ってくる賃料収入で家を借りるのであればどうであろうか。毎月のローンで15万円払うつもりだったのだから、ローン分の15万円の家賃は支払える。分譲使用の賃貸物件も山ほどある。賃貸なので、子供の学区域の都合、会社に近い、昔から住んでいる等、目一杯自己都合で良いと思う。ローンの返済が厳しくなって来れば家賃10万円のところに引っ越し、少し余裕があれば20万円のところに引っ越すのも良い。ローンの支払いが困難になれば売ればいい。売った場合は、「価格さえ下がっていなければ」返済した元金は貯蓄として戻ってくる。

こんな自宅の買い方であれば、不動産購入をして資産を築く事ができ、しかも、住むところも自由になるという訳だ。さらには、貸し出し物件の金利・管理費・設備投資などは全て賃貸経営の経費となるので、節税効果も高い。(購入して住めば住宅ローン減税もあるが…)もちろん、空室や滞納リスク、貸し出しにあたってのメンテナンスなどが必要になるが、このような自宅の見つけ方だってあるのだと思う。

「買った家に住まなければいけない」と誰が決めたであろうか?不動産は買うけど、自宅は賃貸。そんな選択肢だってありだと思う。(気付いている人は既に実践していると思うが…)

「自己流のこだわりの家」は換金性が低い

終の棲家だと思って家を購入した多くの人は、家を買って住宅ローンを組んだら「住み続けて返済し続けることが当たり前だ」と思い込み、ほとんどの人は、住宅や住宅ローンのことについて思考停止している。だから、売却のことなんて考えるわけもなく、考えないから自宅の今の価値に興味がわかず、こんなに低金利なのに住宅ローンの借り換えすら実行しない。「好きで買って、好きで住んでるんだから放っておいてくれ。終の棲家なんだから」そんな声も聞こえそうだ。
しかし、前述の通り、残念ながらその家が終の棲家となる可能性は低いので、今の価値を把握しておくに越したことはない。

実力主義と称して終身雇用と年功序列を崩壊させてしまった日本の雇用制度。右肩上がり一本調子ではなくなった日本経済。時給1,500円でもアルバイトの応募がない居酒屋や、浪人生の激減等、既に直面している人口減少問題。7戸に1戸が空き家になっている空家問題。人口や空室の問題は、景気の様な一過性のものではなく、日本で生活する上において避けて通れない構造的な問題であると強い認識を持つ必要がある。これらの事象を捉えただけでも「今の家は終の棲家でもう引っ越しはしない」「住宅ローンを払い続けることができる」等、不確定要素が大きい事項の思い込みはやめた方が良いと思う。
私は、こんな時代だからこそ、いつでも住まいは移動でき、住宅ローンが返済できなくなっても大丈夫な自分であることが肝要だと思う。その為には、「換金性の高い」家であることが大変重要になってくる。
私の会社では、「買主に徹底的に寄り添う仲介」と言うサービスを提供している。買主の価値観の問題なので「何が買主の為」という判断が難しいが、私達は「買主の為」=「資産価値が下がりにくい」ということを第一に定義し顧客に伝えている。資産要素のほとんどは立地であるが、建物も資産価値に影響をする。住まいは、夢を実現する場であり、自分流にこだわって満足度を上げた方が良い、そのような提案があることも良くわかる。でも、自分の嗜好だけでリフォームするのはリスクが大きくないだろうか?この様な提案をしているのは建築会社やリフォーム会社なわけだが、事業者にとってはこだわりを持ってもらうほうが工事価格が上がるので、当然こだわりを提案する。しかし、「徹底的に自分好みにする=多くの人にとっての好みではなくなる」ということだ。
多くの人にとって好みではないということは、次の買い手を見つけることが困難になり、換金性が低くなるということ。だから私は顧客に、こだわりの家にするのは悪くないが、「私も70点=多くの人にも70点」、この様な家にしておかないと、将来換金する際に困ると説明している。

次回は、具体的な事例に基づいて話をしたいと思う。

多くの人にとって好みではないということは、次の買い手を見つけることが困難になり、換金性が低くなるということである多くの人にとって好みではないということは、次の買い手を見つけることが困難になり、換金性が低くなるということである

2014年 10月06日 11時29分