1964年と違う東京五輪再開催の意味とは?

アトランタ五輪会場跡地のセンテニアル・オリンピックパーク。会場の跡地隣地には観覧車や高層ビルが見えるアトランタ五輪会場跡地のセンテニアル・オリンピックパーク。会場の跡地隣地には観覧車や高層ビルが見える

東京五輪の2020年の開催が決定した。
このことは政権交代後の経済状態の好転と合わせて、明るい見通しを日本の社会に与えているように感じられる。しかし、なぜ東京は再度五輪招致をすることとしたのだろうか。
五輪の開催のためには、インフラ、公共施設のみならずホテルなどのホスティング関連施設を整備するために、非常に大きなコストがかかる。新興国が、例えば1960年代の日本が戦争からの復興を世界にアピールするために、比較的短期間に五輪と国際博覧会という大きなイベントを行うことは、大きな意味があっただろう。

だが、今、先進国とみられて久しい日本の首都東京が再度五輪を開催することには、どのような意味があるのだろうか。

都市経営としてのメガイベント戦略と消費者志向型の都市開発

アトランタ五輪跡地のセンテニアル・オリンピックパーク入口(筆者撮影)アトランタ五輪跡地のセンテニアル・オリンピックパーク入口(筆者撮影)

確かに、先進国のグローバル都市が五輪の開催地として立候補し、実際に五輪を開催することは相次いで行われている。このような行動は、都市が「生産の拠点」としての都市から「消費の拠点」としての都市に変貌していることを背景とした、都市経営における大きな戦略の変化が背景にある。
ポスト産業社会においては、消費者に対してどれだけ快適な環境を提供できるかが都市成長の成否を握り、その触媒としてメガイベントを活用するというものである。
これをメガイベント戦略と呼ぶ。

五輪、国際博覧会、サッカーの世界大会などのメガイベントは、観光客を大勢ひきつけ、その開催をきっかけに都市の国際的な認知度が大きく上がることになる。さらに五輪などの放映権が高騰するにつれて、それ自体が経済的な資源とみなされるようになっている。そのほかの大きな動機として、メガイベントをきっかけに、様々な開発事業、特に消費志向型の開発を進めたいというものがある。

そもそも、消費志向型の開発とはどんな開発だろうか。
その典型的な都市としてはニューヨークとサンフランシスコが挙げられるだろう。これらの都市にはコンベンションセンター、スポーツ施設、博物館、ショッピングモール、娯楽・ギャンブルコンプレックスが装備されている。消費者の志向を満たす都市開発は、観光客の需要も満たすものでもあるのだ。

既存施設の活用で効率化を評価されるアトランタ五輪

アトランタ センテニアル・オリンピックパーク管理施設入口アトランタ センテニアル・オリンピックパーク管理施設入口

消費都市への変貌をとげる触媒として五輪を活用した典型的な例で、アトランタ五輪をあげることができる。
私はこの2月に公益財団法人日本都市センターの調査で、米国アトランタ市の五輪パークなどを調査する機会を得ることができた。元々アトランタ五輪のビジョンとしては、「五輪を成功させればいい」というビジョンと、「五輪をインナーシティ開発の起爆剤にしたい」という二つの異なるビジョンが存在したようだ。
五輪の運営はACOG(Atlanta Committee for the Olympic Games)によって主に担当された。これも企業、市民のエリートたちによって運営される非営利団体である。
アトランタは、五輪で大成功をおさめたと言われるロスアンゼルスと異なり、十分な既存施設がなかった。十分な既存施設がない五輪は、ゲーム後大規模な遊休施設(White Elephant)を生み出してしまい、財政逼迫の一因となることがモントリオール、シドニー、アテネなどで指摘されている。

しかしアトランタ五輪は、既存施設の活用、暫定施設の活用によって比較的効率的に進められたと評価されている。

メガイベント戦略全体としてのアトランタ五輪の評価

一方、同時に行われたインナーシティ開発、特にオリンピックスタジアム、センテニアル・オリンピックパークなどの開発は地域住民の反対を誘発している。これらの反対は長い年月にわたって蓄積された人種、階級の対立が背景にあるようだ。
センテニアル・オリンピックパークはスポーツイベントのために必須の施設とは言えないが、ACOGは五輪の開催と結びつけることで、コンベンション、観光という面では大きな意味のある再開発を効果的に進めることができたと評価する。この点については消費志向型開発を進めたという評価がある一方で、低所得者用の住宅が減少、住民が移転を強いられることになったなどの根強い批判も行われている。
また交通やホスティングに関して不満がマスコミを通じて指摘されたり、テロ事件もあり、メガイベント戦略全体としての評価は微妙なところというのが、私が受けた印象である。

上記のことから、2020年の東京五輪開催をどうとらえることができるだろうか。
次回は、2020年の東京五輪について考える。

アトランタ五輪のオリンピックスタジアム。再開発が進んだと評価のある中、</br>低所得者用の住宅が減少、住民が移転を強いられることになったなどの根強い批判も行われているアトランタ五輪のオリンピックスタジアム。再開発が進んだと評価のある中、
低所得者用の住宅が減少、住民が移転を強いられることになったなどの根強い批判も行われている

2014年 05月22日 11時30分