「家族」とはなんだろうか?

奈良女子大学で都市住宅学会の、「一家族一住宅再考-非標準型の家族と住まい」というテーマの、ワークショップに参加した。
コーディネーターの東京大学の大月先生から、祖父母、父母、子供の世帯が、近隣の別々の家に住みながら、あたかも拡大家族によるネットワークが維持されているような住まい方を、どう評価するかという問題提起がなされた。経済学ではこのような住まい方をどう解釈するのだろうか。

そもそも「家族」とはなんだろうか。
「夫婦の共同効用を最大化するための試み」という解釈が一つ。「夫婦の共同効用」は、子育て、料理などの家庭財とその他の市場財の消費量に依存し、夫婦はそれぞれの保有する労働時間をその生産に割り当てる。市場財に関しては、直接それを生産するというよりは、市場で働き獲得した賃金をその購入に充てる。

「専業主婦世帯」の位置づけ

夫が市場での労働に、妻が家事労働に専念することによって、家計の効用を最大化するための選択と位置づけられる「専業主婦家庭」夫が市場での労働に、妻が家事労働に専念することによって、家計の効用を最大化するための選択と位置づけられる「専業主婦家庭」

こう考えた場合に、例えば「専業主婦世帯」をどうやって説明するのだろうか?
夫が市場での労働に、妻が家事労働に専念することによって、家計の効用を最大化するための選択と位置づけられよう。この分業関係は、貿易理論における「比較優位」と何ら変わるところがない。自動車とPCについて、日本と新興国を比較して、新興国の方がどちらの財も、日本よりも効率的に生産できる場合であっても、日本は自動車の生産が相対的に得意であって、新興国がPCの生産が相対的に得意であれば、それぞれが得意分野に特化して、貿易を行った方が双方の利益になる。仮に、家事、市場労働、いずれにおいても私より妻が生産的であるとしても、私が市場労働に専念し、妻は家事を行う、という状態がお互いにとって好ましい場合がある。

家事労働は片方が相手に対して直接提供する必要があるため、夫婦は一か所に住むことが求められていた。つまり、家族が家庭財と市場財の、分業された共同生産の仕組みであることを反映して、一家族一住宅が実現していた。

しかし、家事の市場調達がより可能になれば、「市場によって供給されない」財の範囲は狭まる。大きな収入が得られるのであれば、夫婦ともに市場で働くことを選択するようになるだろう。その場合、家庭財の提供を家族から受ける必要は必ずしもないため、家族が一緒に住む必要性も低下するかもしれない。

親との同居

それでは「親との同居」をどうやって説明するのだろうか?
日本では伝統的に、子供からの介護と不動産相続を交換することで、高齢時代の生活の質を確保していた。この場合、介護を引き受ける子供が親と同居することは、当たり前のように行われていた。

しかし、社会が豊かになることで、必ずしも親の資産に頼らなくてもQOLの急激な低下を回避できるようになった。また同時に、高齢者にとって快適な住宅、介護サービスを市場から調達することが可能な環境が整備されてきた。この場合、前述の戦略的遺産動機を背景とした「親との同居」は選択されなくなる。

2つの世代別の人口移動

図には、住民基本台帳ベースの15~29歳と55~74歳の人口移動について、都道府県間のウェイトをとったものである。

正の方向は転入であり、負の方向は転出である。年齢別の居住地選択の傾向は大きく異なる。若年世代は都市的な環境を志向し、壮老年世代はその逆の環境を志向する。このように選好が大きく異なる者の同居は、経済社会的な制約によってもたらされていたものかもしれない。

都道府県別の年代別人口移動(住民基本台帳より)都道府県別の年代別人口移動(住民基本台帳より)

家族の同居は変化するのだろうか

今後、家族が一つの住宅に同居するという住まい方は、大きく変化する可能性があるだろう。それは、なぜか?

世帯数に比べて住宅ストック数が大きく上回る状態は、既に到来している。不動産の供給量が過剰な状態においては、不動産価格が低下して、米国のように大きな不動産を家計が所有する時代が到来するだろうか?

それには、個々の住宅を再整理して大きなものに作り替えるという作業が必要になる。むしろ、耐震性能にも問題がない住宅については、それを活かして、家族が複数の住宅に住むという住まい方が、今後の日本においては合理的だろう。

それでは、一緒に住まない家族の意味はなんだろうか?
病気や失業などの何等かの外生的なショックに対する保険、お互いに困った時の保険としての機能がこれから求められるようになるのではないだろうか。

住宅については、それを活かして、家族が複数の住宅に住むという住まい方が、今後の日本においては合理的だろう。</br>一緒に住まない家族の意味が問われていく
住宅については、それを活かして、家族が複数の住宅に住むという住まい方が、今後の日本においては合理的だろう。
一緒に住まない家族の意味が問われていく

2015年 02月02日 11時10分