不動産価格の評価手法には3つの方法がある

一般的に不動産価格の評価手法として用いられるのは、「収益還元法」「取引事例比較法」「原価法」の3つである。

■「収益還元法」
収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと予測される純収益の現在価値の総和を求めることによって、対象不動産の試算価格(収益価格)を求める手法。個人的には、不動産価値の基本となる指標は収益還元法で求められ、取引事例比較法及び原価法によって調整するのが最も妥当ではないかと考える。
■「取引事例比較法」
取引事例比較法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法である。取引事例比較法の要諦は取引事例の多さである。しかし、成約事例や取引事例の公表が日本ではあまり進んでいないのが実情である。
■「原価法」
原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である。主には建物の価値を判断する場合に用いられる。

不動産の経済的価値は、貸した時の想定賃料

不動産の経済的価値は、貸した時の想定賃料であると考えるのが一般的ではないかと思う。
ゆえに、収益還元法により求められる不動産価値がその不動産の価値と言っても過言ではないだろう。対象不動産の収益価格は以下の計算式で求められる。

     対象不動産の収益価格 = 一期間の純収益 ÷ 還元利回り

例えば、年間の収益が120万円、年間経費(維持管理費・修繕費・公租公課・損害保険料・空室等損失相当額等)が20万円だったとする。
利回りが3%だと、(120万円-20万円)÷0.03=3,333万円
利回りが5%だと、(120万円-20万円)÷0.05=2,000万円
利回りが7%だと、(120万円-20万円)÷0.07=1,429万円

還元利回りは5%以上くらい無いと、恐らくアパートマンション経営は成り立たないだろう。賃料が月額10万円の物件の価格の妥当性は1500万円~2000万円というところだろうか。

取引事例比較法及び原価法で調整する

取引事例比較法はまさに読んで字のごとく、同じような物件の取引事例などを参考に価格の妥当性を導き出す手法だ。
この手法を用いてより精度を上げていくには、より多くの事例が必要となる。
取引の少ないエリアや、取引の少ない仕様の住宅(専有面積が大きすぎる、二世帯住宅等)については、参考にできる事例があまりないため、この手法は用いにくい。マンションなどの共同住宅の場合、他の住戸の取引事例や、新築時の販売価格等は結構履歴が残っている。住宅売却・購入時には、不動産仲介会社にそれらの情報提供を求めたい。

原価法は、対象不動産を新規で再び建築したらいくらかかるのか、経年によってどの程度減価しているのかを計算し、価格を算定する手法。
例えば、木造在来工法・耐用年数50年・再調達坪単価を30万円で設定し、30坪の家を築25年で売ると、
     30万円/坪×30坪×(1-25年÷50年)=450万円+土地価格
となるわけだ。

不動産価格の評価手法として「収益還元法」「取引事例比較法」「原価法」の3つがあげられる不動産価格の評価手法として「収益還元法」「取引事例比較法」「原価法」の3つがあげられる

原価法の難しさ(インフィルの価値化は困難?)

しかし、私は原価法の難しさを感じている。
どういうことかというと、「使えるから価値がある」というのは売主の理論であって、買主側からすると「例え使えても価値を認めにくい」ものがあるということ。例えば、トイレ。仮に法定耐用年数で計算すると、トイレの耐用年数は15年ということになる。トイレの再調達価格を30万円とする。5年使って中古住宅として売りに出た場合、あと耐用年数は2/3の10年あるから、価値は20万円ありますと言われても、多くの人には納得しがたいところがある。「例え使えたとしても人が使ったトイレは嫌だから交換する」と、購入者が考えたら、使えるトイレであっても購入者にとっては無価値のものとなるわけである。
このように、インフィル(内装)を価値化してそれを次代の人に納得して価値を認めてもらうというのはかなりハードルが高いと思われる。

それに対してスケルトン(構造)は、価値を認めやすいかもしれない。
壁の中の構造などは、普段目に触れたり肌に触れるようなものではないので、その性能が担保されていることが立証されていれば価値を認めやすいと思われる。それでは、スケルトンにはどれくらいの価値があるのだろうか?
木造在来工法2階建て30坪の家のスケルトン(土台・柱・梁・屋根・壁等)の再調達価格だが、せいぜい400万円くらいではないだろうか。仮に耐用年数が50年だとして、築25年で売却すれば、スケルトンはあと25年となるので価値は200万円程度。25年の間に劣化などがあれば、その分は低減されるので150万円程度ではないだろうか?もちろん、この150万、200万を価値化していくということは重要なことである。
現在、約20年で価値がゼロになって取引されている木造住宅をどうやったら以降も価値化できるかということは国を挙げて議論をしているところである。しかし、3000万円の住宅ローンを35年で組んだ場合、金利が0.2%変わると支払いが130万円内外変わってくる。価値化した建物の価値もたった金利0.2%程度の違いで飛んでしまうということも事実である。

インフィルの価値化も収益還元法であれば可能

前述の通り、原価法においてはインフィルの価値は見出しにくく、例え見出すことのできるスケルトンであっても大きな金額にはなりにくいのでは、と述べた。
しかし、賃貸市場において、きれいな設備が入っている住戸と、古い設備のままの住戸では賃料に差が出てくる。

例えば、先ほどの事例を用いて、
 (古い設備) 賃料10万円 
利回りが5%だと、(1,200,000円-200,000円)÷0.05=20,000,000円
 (新しく設備を更新) 賃料11万円 
利回りが5%だと、(1,320,000円-200,000円)÷0.05=22,400,000円
と、賃料が1万円高くすることができれば、利回り5%の仮定の場合その価値は224万円も増えることになる。だから私は、インフィルの価値化などについても収益還元法に基づいて算定した方が買主に対してその価値を説明しやすいのではないかと思う。
しかし、現在の居住用賃貸市場の賃料査定根拠はほとんどが取引事例比較法によるものだ。周辺の賃料相場と比較して、駅からの距離、面積、設備、築後年数等で割り出す。これでは、不動産の収益性を正しく割り出しているとは言えない。

事業用不動産などではデューデリジェンス(不動産価値の精査、あるいは適正な評価手続きを行うための事前の調査・分析)の手続きを経て、さまざまな角度(物理的調査・経済的調査・法的調査)から総合的かつ精巧に調査するのがスタンダードだ。居住用賃貸市場においても賃料決定のプロセスにおいてデューデリジェンスが実施され、その内容が賃借人に公開される市場ができていくことが、不動産価格の妥当性をより確度の高いものとし、既存住宅流通活性化に大きく寄与するものであると考える。

旧耐震基準のマンションと新耐震基準のマンションでは、同じ場所にあっても賃料が大きく違うのが当たり前。駅の東側は液状化が予測されているエリア、駅の西側は台地、駅からの距離が同じであっても賃料が大きく違うのが当たり前。賃貸市場においても情報公開が重要だ。

賃貸市場においても賃料決定のプロセスにおいてデューデリジェンスが実施され、</br>公開される市場ができていくことが不動産価格の妥当性をより確度の高いものにしていき</br>ひいては既存住宅流通活性化につながると考える賃貸市場においても賃料決定のプロセスにおいてデューデリジェンスが実施され、
公開される市場ができていくことが不動産価格の妥当性をより確度の高いものにしていき
ひいては既存住宅流通活性化につながると考える

2014年 01月13日 10時47分