年間1万5000戸以上の事故物件が発生

これまで3回の記事は、「土地・立地」が不動産の資産性の多くを占めるということについて、都市計画や人口問題、ハザードマップ等で説明してきた。
しかし、せっかく資産性の高い立地に住宅を購入したのに、物件の個別要因でその資産性を大きく損なってしまう場合がある。

その一つが「事故物件」だ。
宅地建物取引業法47条1項に「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」は禁止とされており、「事故物件」の情報は告知事項として扱われる。事故物件は、物件の概要資料(販売図面)に「告知事項あり」と記載されている。告知事項(心理的な瑕疵)で最も多いのが、自殺に関するもの。殺人事件や転落死等も対象となる。火事(人的被害の有無と程度により異なる)も該当する。自然死(病死等)は該当しないとされる。しかし、マンションの共用部分や取引対象ではない部屋の場合の情報入手は難しい。さらには告知事項内容が、何代か前であったり、相当な時間を経過した場合もその特定や、告知の必要性の有無についての判断は難しくなる。例えば自殺の告知についてだが、前居住者が自殺した場合は当然告知事項だが、2代前、3代前の居住者が自殺した場合は告知の必要性があるのか、何年経過したら告知の必要が無くなるのか(一般的には10年前後と言われているそうだが)等については、既存住宅の流通活性化する中、大いに議論すべき点であろう。

ちなみに、年間の自殺者数は平成10年以降、毎年3万人を超えている。
以下の円グラフ(警視庁自殺統計より)は平成22年の自殺場所別の自殺者数の構成割合である。自殺場所の55%は自宅だそうだ。自殺が原因の事故物件は毎年1万5000戸以上増殖し続けていることになる。

平成22年の自殺場所別の自殺者数(警視庁統計より)平成22年の自殺場所別の自殺者数(警視庁統計より)

ユーザー投稿で事故物件を公示するサイトも

不動産選びの際、このような事故物件を選んでしまわないようにしたいというのは、多くの人にとっての願いであろう。それでは、このような事故物件を自ら見つけることができないのかというと、実は自分で見つけられるサイトがある。
「大島てる」というサイトである。「大島てる」この人の名前の様なタイトルは、事故物件を公示しているサイトの名称である。私の会社では事故物件の調査に同サイトも活用させていただいており、このサイトを運営する大島学氏にとても興味があった。そうしたら、会社近くのライブハウスで、『「大島てる」がやって来る!!事故物件ナイト!!!』なるイベントが11月に開催されると聞き、早速行ってきた。

まずは、サイト名「大島てる」さんは、このサイトを運営する大島学氏のおばあ様のお名前だそうだ。同氏はとても物腰が柔らかく、ゆったりと話される紳士的な人物であった。情報の蓄積は、ユーザーの投稿によるもの。私の知っている事故物件情報の掲出が無かったので、試しに投稿してみた。投稿は意外と簡単だった。ユーザーの投稿なので、基本的に情報の真偽については精査されていない。それを理解したうえで利用するサイトということだ。

賃貸物件オーナーの中には、自らの物件が事故物件になってしまい、同サイトに掲出された場合、削除要請をするオーナーも少なからずいるらしい。情報の真偽については、削除要請があった場合に調査し、事故が事実であった場合は削除要請には応じないというのが同氏の姿勢。物件名を変えるなどして物件が特定されにくいようにするオーナーもいるそうだが、その変更後の情報もきっちり掲出されていたりする。貸す側借りる側、売る側買う側では利益相反関係である。不動産を借りる・買う人にとっては強い味方だと言えるだろう。

ちなみに、都市再生機構では、居住者が住戸内で無くなった住宅については、「特別募集住宅」として募集している。(http://www.ur-net.go.jp/kanto/tokubetsu/)居住者の高齢化が進むベッドタウンの団地などでは、この様な問題はもっと切実になってくるものと思われる。
本稿執筆に当たり、大島氏に内容の確認を頂き、ご了承いただいた。ご協力いただいた大島氏に感謝申し上げる。

事故物件を公示しているサイト「大島てる」事故物件を公示しているサイト「大島てる」

嫌悪施設とは

NIMBY(ニンビー)という言葉をご存じだろうか?
“Not In My Back Yard”(自分の裏庭には来ないで)の略で、「施設の必要性は認めるが、自らの居住地域には建てないでくれ」と主張する住民たちや、その態度を指す語である。ニンビー施設のことを日本語では「嫌悪施設」等と呼称する。ちなみに、その反対はYIMBY(インビー)“Yes In My Back Yard”だそうだ。
「嫌悪施設」とは具体的には、ゴミ焼却場、火葬場、ガスタンク、下水処理場、火薬類貯蔵所、悪臭・騒音・振動などを発生させる工場、危険物を取扱う工場、高圧線鉄塔、墓地、ガソリンスタンド、その他大気汚染や水質汚濁・土壌汚染の原因となる施設、風俗店など住宅地としての品格を下げるような施設、廃墟、刑務所、精神科病院、食肉処理施設、軍事施設、原子力発電所とその関連施設等があげられる。
ただ、「嫌悪施設」と感じるのは人により感じ方が千差万別である。例えば宗教団体などは、物理的な瑕疵とは違い、客観性よりも主観性に基づくため、どこまで告知の必要があるのか、不動産の担当者でも悩む。告知する内容(程度)には、明確な決まりがなく、お客様の判断に影響を及ぼす可能性がある場合には知らせるべきという曖昧なものである。
だから、物件を選定する場合には自ら周辺環境を調べ、自らにとっての「嫌悪施設」や許容できる「嫌悪施設」からの距離などについては十分調べられることをお勧めする。

客観性よりも主観性に基づくことの多い「嫌悪施設」。工場やコミ処理場、ガスタンクなどもあげられる客観性よりも主観性に基づくことの多い「嫌悪施設」。工場やコミ処理場、ガスタンクなどもあげられる

<判例>不動産仲介会社の説明義務違反が認められたケース

①自殺事実説明義務違反賠償等請求 業者に170万円支払い命ず (松山地裁 平成25年11月7日)
二十数年前に起きた家族間の殺人事件の関係者が自殺した住宅の跡という事実を知らせず,土地の売買契約を結んだのは説明義務違反に当たるなどとして,購入した愛媛県松山市の40代の夫婦が,仲介した同市の不動産会社に購入時との差額や慰謝料など計約1815万円の損害賠償を求めた訴訟の判決言渡しがあり,西村欣也裁判官は,契約時に被告は自殺があったと認識していなかったが,代金決済や引き渡し手続きの完了前には認識しており,土地購入に重大な影響を及ぼす事実を説明する義務があったなどとして,慰謝料など計170万円の支払いを命じた。

②性風俗特殊営業に使用されていた住居である事実 業者に損害賠償命令(福岡高裁 平23年3月8日)
取引対象物件が、前入居者によって相当長期間にわたり性風俗特殊営業に使用されていたことを隠し(不利益事実の故意の不告知)売買された。そのような事実がない場合に比して本件居室の売買代金を下落させる(財産的価値を減少させる)事情というべきであり、本件居室を買った者がこれを使用することにより通常人として耐え難い程度の心理的負担を負うというべき事情に当たる(現に、購入者の妻はこの事実を知ったことから心因反応となり、長期間にわたり心療内科の治療を受けた)。したがって、本件居室が前入居者によって相当長期間にわたり性風俗特殊営業に使用されていたことは、瑕疵に当たるとし、売主に対して瑕疵担保責任、仲介事業者に対し説明義務違反を認め、100万円の支払いを命じた。

いずれも仲介事業者に説明義務違反が認められたケース。

知り得た事実について消費者に告知することはもちろん、事業者の情報収集に対する姿勢についても誠実さが求められている。

2013年 12月19日 10時06分