住宅の性能を表すものは様々ある

住宅を買う、もしくは建てるとき、誰でも予算内で「一番良い家」に住みたいと思うのは当然のことだろう。では、「一番良い家」とは具体的にどういう住宅のことを指すのか。

例えば、駅に近くて買物も便利で何かと使い勝手のいい住宅をよいと思う人もいれば、多少勤務先までは遠くても、自然豊かな環境で長閑な生活ができる広めの住宅をよいとし、そういった住宅が欲しいと考える人もいる。一軒だけでは理想の家は手に入らないので、普段は都心近郊の機能的な住宅で生活し、週末や休暇で人里離れた別荘地でストレス発散するという「マルチ・ハビテーション」(もはや死語に近いが)派もいる。
これら多岐にわたる好みや趣向を基準とすれば、「良い家」の基準は千差万別、人の数だけあることになる。

一方、住宅の性能や機能などで「良い家」を考えれば、頑健で高機能な住宅をイメージすればそれが優れた家ということになるが、これもわが国では一筋縄ではいかない。というのも、住宅の性能や機能だけでも幾通りもの基準が設けられていて一律に比較することが困難であり、それぞれが特定の目的で設定された基準でもあって、制度が重層化しているからだ。

いくつかの代表的な日本の住宅の性能・機能を評価する基準・仕組みを紹介したい。

「長期優良住宅」は、住宅を長持ちさせる目的で設けられた

長期優良住宅制度は、2009年6月に施行された『長期優良住宅の普及の促進に関する法律』(長期優良住宅法)に基づいている長期優良住宅制度は、2009年6月に施行された『長期優良住宅の普及の促進に関する法律』(長期優良住宅法)に基づいている

長期優良住宅(制度)は、今から10年以上前の2009年6月に施行された『長期優良住宅の普及の促進に関する法律』(長期優良住宅法)に基づいて造られた住宅のことだ。

日本の住宅は、それまでどちらかというと古くなったら建て替えて新しくする「スクラップ&ビルド」が一般的であり、長持ちさせるというよりは、住宅も“寿命のあるもの”という考え方だった。
この考え方では少子高齢化を迎える日本の社会の住宅政策がいずれ瓦解してしまう、ということで住宅を長持ちさせ、ながく快適に暮らせる、さらに解体する際にも廃棄物の分量を減らして環境にも優しい住宅を普及させることを目的として長期優良住宅制度は設けられた。

従来の「スクラップ&ビルド」では、繰り返し建て替えたり造り替えたりする毎に建築コストが発生し、原材料となる木材やコンクリート、鉄などの資源も使われることになるが、そういうコストも含めた大量消費を無駄と捉えてコストも資源も削減していこうという発想に基づいている。長期優良住宅は、インセンティブとして税制上の優遇措置もあり、社会と環境に優しいことを評価する仕組みも用意されている。長期優良住宅(制度)は、効率を最優先せずに、環境にもコストにも負荷が少ない住宅と生活の実現を目指してつくられたということになる。

長期優良住宅の認定基準は9項目あり、住宅の劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、省エネルギー性能、将来の可変性、バリアフリー、居住環境、住戸の延べ床面積、今後の維持保全計画の策定となっている。ここでは各項目の詳細説明は避けるが、項目ごとに細かい基準が設定されており、長期優良住宅の認定を得るためのハードルは決して低いものではない。

特に中古住宅に至っては、リフォームや改築によってハード面での性能を高めることは現実的にはなかなか困難で(コスト負担が大きいことが指摘されている)、現状では新築住宅で活用されるケースが圧倒的多数を占めている。

「住宅性能表示」は、質だけでなく居住性に着目した住宅の普及を目的としている

住宅性能表示制度は、2000年4月に施行された『住宅の品質確保の促進等に関する法律』(通称:品確法)に基づいて造られた住宅に対しての制度を指す。

品確法では、新築住宅の基本構造部分の瑕疵担保責任期間が「10年間義務化」され、住宅の性能をわかりやすく表示する「住宅性能表示」を実施すること、および住宅に関するトラブルが発生した場合に迅速に解決するための「指定住宅紛争処理機関」を予め用意すること、が求められている。つまり、住宅性能表示(制度)は、良質な住宅を建設し増やすということだけでなく、市場で将来流通する可能性も考慮して制度設計したことが窺える。

住宅性能表示の項目は長期優良住宅よりも1つ多い10項目となっており、それぞれ劣化の軽減、構造の安定、維持管理・更新への配慮、温熱環境、空気環境、高齢者への配慮、防犯、火災時の安全、音環境、光・視環境である。長期優良住宅と比較してみると、同様の項目でも表現が微妙に異なっていてハード面はもちろんのこと、防犯や音環境、光・視環境ほかソフト面および住環境を特に重視していることが明確に伝わってくる。これだけでも長期優良住宅と住宅性能表示とでは、進もうとする方向性に違いがあることがわかる。

こちらも基準が細かく設定されており、各項目をすべてクリアするにはなかなかハードルが高いということもあって、長期優良住宅同様、専ら新築住宅で活用されている。

新設された「安心R住宅」とは何か

既存住宅において、その流通促進のために設けられた制度が安心R住宅既存住宅において、その流通促進のために設けられた制度が安心R住宅

上記2つの住宅の性能に関する基準は、専ら新築住宅で活用されている現状である旨を説明した。
3つめの「安心R住宅」は既存住宅(国交省は中古住宅という表現は印象が悪いとのことで数年前から「既存住宅」に表記・表現を統一)において、その流通促進のために設けられた制度である。

法律によって制定された制度ではなく2017年末に公布・施行され、翌2018年4月から「安心R住宅」のロゴマークの使用が始まっている。制度の趣旨は、既存住宅は新築と違って保証面が手薄だから不安、誰かが住んでいた住宅だから汚れているのではないか、建物の状況がどうなっているのかよくわからない、といったネガティブなイメージを解消し、安心して既存住宅の購入につなげてもらおうとするものだ。

具体的には、住宅に①現在の基準を満たす耐震性があり、②インスペクション(建物状況調査等)が実施されていて専門家に住宅の各部位が使用に問題ないことを確認してもらっていること、③将来のリフォームなどについて予め情報提供がなされている既存住宅に、国が商標登録したロゴマークを事業者が広告時に使用することを認めるという立て付けになっている。

ポイントは、国が直接安心R住宅を認定するのではなく、安心R住宅制度に精通した事業者団体(概ね都道府県ごとに専門家で組成された任意団体)が国の許可を得て、独自に認定しロゴマークの使用を許可する仕組みだ。しかも認定する事業者団体ごとに追加基準(追加条件)を設定することが可能になっている。
一例をあげれば(一社)石川県木造住宅協会の認定基準は、耐震性、インスペクション、リフォーム情報提供に加えて、既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に適合していること、リフォーム済みであること、広告時には今までに実施した点検・修繕の内容や保証、省エネ性能が開示されること(商談時にはさらに詳しい情報が提供されること)などが条件として加えられている。

他の認定事業者団体も独自の基準を設けているため、一概にどのような基準を満たせば安心R住宅かということがわかりにくくなってはいるが、最低基準として国が示した3条件を満たす必要がある。

住宅に対する考え方が多様化するなか、性能・機能に対する評価はどう考えるのがよいか

現状では、専ら新築住宅に対して(もちろん中古住宅でも基準を満たせば認定は可能)長期優良住宅と住宅性能評価の基準が並行して運用されていて、中古住宅(既存住宅)については安心R住宅という機能維持・向上していることを保証する制度が運用されている。

整理してみるとそれぞれ役割が異なり、使い分けることで住宅性能を補い合うことは可能と考えられる。しかし、統一されているものではないため、一般にわかりにくいとの指摘を受けしまうのも現状では仕方がないのかもしれない。

頑丈で長持ちする住宅は優れているといえるが、頑丈であるが故に改修やリフォーム費用に大きなコストがかかる可能性は否定できないし、可変性や市場での流通性を高めることを主眼とすれば、環境面での負荷を考慮していないとの指摘を受ける可能性もある。また既存住宅の耐震性を高めるには大きなコストが発生するため取り壊して建て替えたほうがコスト負担が小さく済むケースも当然出てくる。

さらに、こういった公的な制度とは別に民間事業者が独自に耐震性や建物のエネルギー使用に関する効率を高めて商品化したり、太陽光発電機と電気自動車(=蓄電池)を組み合わせて制度面・税制面での優遇を受けて魅力的な住宅を発売するケースもあり、こういった住宅性能・機能面での公的な評価と住宅としての住み心地や快適性が一律に評価できないというジレンマも生まれている。ただ、現状の住宅性能は、数多くの地震や自然災害を経験して、より高いものに設定されているもののようだ。

住宅の基本性能に不安や疑問があれば都度インスペクターやマンション管理士などの専門家に相談することも可能だし、事業者に確認を取ることで一定の安心感を得ることもできる。
制度はうまく活用しながらも、最終的に「自分と家族にとって一番良い家=住み心地が良く、安心して暮らせる家」のために何が必要なのかを考える必要がありそうだ。

様々にある住宅性能の制度だが、品質確認のために賢く利用しながらも自分にとっての良い家をみきわめていくことが必要なようだ様々にある住宅性能の制度だが、品質確認のために賢く利用しながらも自分にとっての良い家をみきわめていくことが必要なようだ

2020年 07月07日 11時05分