「安心R住宅」が4月1日にスタート

「安心R住宅」(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)がスタートする(2017年11月6日:告示公布、12月1日:告示施行、2018年4月1日:標章使用開始)。

「安心R住宅」が既存住宅(中古住宅)流通市場あるいは不動産広告のなかで目立つ存在になるまでには、まだしばらくかかるだろう。だが、これまで新築物件に重点が置かれがちだった住宅市場が変わるためのきっかけになることが期待されている新制度である。
消費者の立場からも「安心R住宅」とは何なのか、おおまかなポイントは理解しておきたい。

そこで、2018年4月1日のスタートを前に、「安心R住宅」の仕組みや特長などについて国土交通省住宅政策課住宅活用・国際調整官:中澤篤志氏、住宅局住宅政策課住宅経済係長:田中俊行氏にお話を伺った。

既存住宅に対するマイナスイメージを払拭したい

お話を伺った国土交通省住宅局住宅政策課:中澤氏、田中氏お話を伺った国土交通省住宅局住宅政策課:中澤氏、田中氏

長らく新築住宅の供給を中心に考えられてきた国内の住宅市場において、ストック重視への方針転換が明確に示されたのは、2006年6月に施行された「住生活基本法」である。その後、いくつかの取組みがなされ、既存住宅に対する一般消費者の関心も少しずつ高まりつつあるといえるだろう。しかし、新築主体の住宅市場の構造が大きく変わることはないまま、近年は空家が深刻な社会問題となっている。

国の制度・施策のうえでも「既存住宅の流通」に主眼を置いたものがなかなか実現しなかったなかで、今回の「安心R住宅」は一つの方向性を示すものになりそうである。「安心R住宅」の制度をつくった背景には「住宅ローンは超低金利ですが、将来への不安などから若い世代の住宅購入が難しくなっています。また、高齢者の住み替えに対する受皿に欠け、選択肢が少ない状況も考えなければなりませんでした」という問題意識もあったようだ。

既存住宅の状態は物件によりさまざまだが、一般的にマイナスイメージを持たれるケースが少なくない。「既存住宅は品質面で不安、古くて汚い、選ぶための情報が少ない、などといった要因で購入者から敬遠されることも多いのですが、この3つのマイナスイメージをどうすれば払拭できるのかを念頭に制度づくりをしています」とのことである。

「安心R住宅」の「R」とは、Reuse、Reform、Renovationの3つを意味するとしているが、これによって一般消費者が「住みたい」「買いたい」既存住宅を選択できるようにすることがこの制度の目的とされている。

「安心R住宅」の主な要件は3つのキーワードで表される

「安心R住宅」では、新耐震基準等に適合していることやインスペクション(建物状況調査等)を実施し既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に適合していることによる「安心」、リフォーム工事が実施されている(または費用情報を含むリフォーム提案書がある)ことによる「きれい」、過去の点検記録等の保管状況や詳細情報が開示されることによる「わかりやすい」の3つのキーワードをもとに、従来の既存住宅がもつマイナスイメージを払拭しようとしている。

【基礎的な品質があり「安心」】
□ 新耐震基準等に適合
□ インスペクション(建物状況調査等)の結果、既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に適合

【リフォーム工事が実施されていて「きれい」】
□ リフォーム工事によって従来の既存住宅の「汚い」イメージが払拭されている
□ リフォーム工事を実施していない場合は、費用情報を含むリフォーム提案書がある
□ 外装、主たる内装、水廻りの現況の写真を閲覧できる

【情報が開示されていて「わかりやすい」】
□ 広告時に点検記録等の保管状況が示され、さらに求めに応じて詳細情報が開示される

耐震基準については木造住宅に対する基準強化が2000年に実施されているが、今回の制度開始にあたっては1981年基準と区別することはしないという。「今後はそれぞれの項目でカテゴリ分けをしていくことも検討していますが、いったんはベースラインの基準でスタートし、消費者や事業者の声を聞きながら段階を追って充実させていきたいと考えています」とのこと。

インスペクションについては、買主が求めれば既存住宅売買瑕疵保険を締結できるようにするため、保険の要件に定められた手順の検査が必要だ。また、既存住宅の売買では個人の売主が多くを占めるため、必ずしもリフォーム工事を実施済みであることが要件ではない。代わりに費用の情報を含む「リフォーム提案書」を付し、買主の求めに応じてリフォーム事業者をあっせんすることでも足りる。その場合、実際にリフォーム工事を実施するのかどうかは買主次第となる。

国交省は安心R住宅の理解促進のための冊子も作成。国交省のHPからダウンロードできる国交省は安心R住宅の理解促進のための冊子も作成。国交省のHPからダウンロードできる

詳細なルールを設定するのは、それぞれの事業者団体

「安心R住宅」の標章(ロゴマーク)「安心R住宅」の標章(ロゴマーク)

「安心R住宅」の要件に該当する既存住宅は、その物件広告時に標章(ロゴマーク)を使用することができる。
売主会社または仲介をする不動産会社に対して標章使用の許諾および指導・監督をするのは、あくまでもそれぞれが所属する事業者団体(一般社団法人等)だ。

「この制度は国が直接的に一定の既存住宅へ『お墨付き』を与えるものではなく、事業者団体を通じて間接的に関与することになります。リフォームの基準や標章の使用について事業者が守るべきルールを設定するのも、それぞれの事業者団体になります」ということだ。

リフォームの基準などが事業者団体ごとに異なることにより、消費者が混乱することも心配されるが、「それほど大きな差は生じないでしょうが、それぞれの基準の違いなどをwebページ上で比較できるようにすることも予定しています」との説明だった。

肝心の事業者団体だが、その登録は任意だ。
国が設定した要件に従い、標章の使用を希望する事業者団体が国の審査・登録を受けることになる。しかし、2017年12月1日に登録規程が施行されてから登録を受けたのは、一般社団法人優良ストック住宅推進協議会(スムストック)(2017年12月25日登録)、一般社団法人リノベーション住宅推進協議会(2018年1月26日登録)、 公益社団法人全日本不動産協会 (2018年3月13日)の3事業者団体である。(2018年3月末現在)。

「それぞれの事業者団体でルールを設定する必要があるために申請までに時間がかかる面もあるでしょうが、今後、全国規模の不動産業界団体や工務店団体、さらには都道府県単位くらいの地域レベルでの住宅生産者団体による登録に向けた動きもいくつかあるようです」という。
登録を受ける事業者団体は徐々に増えていくことになりそうだ。

「安心R住宅」の制度はこれから成長する!? 柔軟な対応も視野に

「安心R住宅」が普及するためには、制度の周知とともに、これを活用することによるメリットが認知されることも欠かせない。
「安心R住宅の標章の有無が既存住宅の販売価格や資産価値に反映されるような状況を目指したい」ということだが、既存住宅をめぐる他の制度と相乗効果を高めていくことも必要だろう。売買契約前のインスペクションを盛り込んだ宅地建物取引業法の改正法も2018年4月に施行される。

「既存住宅、中古住宅に注目してもらい、購入物件の選択肢としてしっかりと消費者に意識してもらうための環境づくりをしていきたいと考えています。そのためには事業者のみなさんの協力も欠かせません。安心R住宅は、事業者のみなさんと一緒に育てる制度だともいえるでしょう」。

そして、事業者に対し要望を伝えていくのは消費者の役割である。
既存住宅に対する消費者の視線を「品質が良く、安心して購入できる」「既存住宅だけどきれい、既存住宅ならではの良さがある」「選ぶ時に必要な情報が十分に提供され、納得して購入できる」というプラスイメージに変えたいという今回の新制度。私達消費者の意識改革も含めて、今後の動向にも注目していきたい。

■国土交通省:安心R住宅
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000038.html

「安心R住宅」制度で、既存住宅に対する消費者の視線はプラスイメージに転じるか「安心R住宅」制度で、既存住宅に対する消費者の視線はプラスイメージに転じるか

2018年 03月26日 11時06分