家一軒に必要な要素を、ゾーンごとに紹介する“開かれた体験型研究施設”

奈良県との県境に近い京都府木津川市。近鉄・高の原駅から車で5分ほどの住宅街の中に、積水ハウス株式会社総合住宅研究所 納得工房がある。“開かれた体験型研究施設”として1990年に開設されたもので、生活者の体験を通じて理想の住まいのあり方にアプローチする体験施設・納得工房が研究施設に併設されている。

「ユーザーの声をフラットに聞き入れるような仕組みを含めて、開かれた研究所でありたいとつくられました。研究施設のほうは、なかなかお見せできませんが、納得工房のなかに、研究の成果も散りばめられています」と積水ハウス納得工房運営G・グループリーダーで部長の大谷康則さんは、その設立趣旨を話す。

1階には打ち合わせスペースのほか、和の暮らしゾーンやコーディネーションゾーン、2階には防災・防犯ゾーン、キッチンゾーンなど、3階には生涯住宅や収納といったゾーン、そして4階には性能・構造ゾーンと、住まいの総論ゾーンと、家にまつわるさまざまな要素が、広々とした施設内に設けられている。そして、この施設の大きな特徴は“体験型”ということ。それぞれのゾーンで、実際に身を置いて、立ったり座ったり、動いたり。生活するように動作をしてみることができるのだ。

吹き抜けが開放的な積水ハウス株式会社総合住宅研究所 納得工房。1階には打ち合わせスペースやレストランも吹き抜けが開放的な積水ハウス株式会社総合住宅研究所 納得工房。1階には打ち合わせスペースやレストランも

通路幅は? 高さは? これを動かすとどうなるかが分かるキッチンゾーン

例えば、キッチンゾーン。システムキッチンや食器棚、カウンターが可動式になっていて、どの高さが自分にとってベストなのかを体感できる。

「家のなかで水を使う場所はまとめた位置になることが多く、キッチンの後ろにお風呂があることがあります。お風呂を広くするために、キッチンを狭くしたとします。実際キッチンの通路が10センチ狭くなっても、縮尺1/100の図面上では1ミリ動かすだけです。それがどういうことなのか、プラン上では分かりにくい。でもここでなら、10センチ狭くした空間を再現できます。誰かがキッチンに立っているときに後ろを別の人が通ることができるか、家族で料理をするときに狭くないか、確かめられます。そのうえで、お風呂を広くするのか、キッチンの通路を広くするのか、決めることができるんです」(大谷さん)

このほか、システムキッチンやカウンターも、高さを変えることができた。自分が作業をしやすいシステムキッチンの高さは? カウンターの高さを変えると、ダイニングからキッチンがどのくらい見えるの? 実際に体をそこに置いてみないと分からないことが、たくさんあるのだ。

やってみないと分からない、それは、生涯住宅ゾーンでも実感できた。ここは実際の家のさまざまな場所が再現してあり、特殊な装具を使い、老化によって、どんな動きがしづらくなるのかを体験することができる。

玄関のあがりかまちを上がるという、毎日する動きも、若い時と年齢を重ねてからとでは全然違う。足が上がりづらいのだ。このときに、重要になるのは手すりの位置。どこに手すりがあると足を上げやすいのか。実際に体験してみると良く分かるだろう。

また、お風呂の浴槽に入る動作。これも、思いのほか上手くいかない。ここでもキッチン同様、浴槽が可動式になっていて、高さを変えられる。床と浴槽のバランス、腰掛を置く位置など、具体的に考えて体験してみると、浴槽の高さによってそのやりやすさには違いがあることが実感できる。
このほか、白内障の人の見え方や、高齢になった時に聞こえにくい音の体験ブースもあった。動きだけではなく、体のさまざまな機能が変化するのだ。

ものの高さ、位置、角度。それが玄関なのか、お風呂なのか、トイレなのか。1カ所、1カ所を検討する必要があることを実感した。家を建てる今の自分とは、20年後、30年後の自分は違う。また、高齢になった家族と同居することだってある。一生を共にする住まいだからこそ、将来の準備を〝今〟しておく必要があるのだ。

左)可動式のキッチンで実際のサイズを体感できる 右)生涯住宅ゾーンで、上がりかまちや浴室での動きを試すことができる(提供:積水ハウス)左)可動式のキッチンで実際のサイズを体感できる 右)生涯住宅ゾーンで、上がりかまちや浴室での動きを試すことができる(提供:積水ハウス)

断熱性能の比較や、泥棒目線の防犯対策。ストレートに必要性が伝わる

また、カタログにデータは載っていても、体感で比較しづらいのが断熱性能。

納得工房には、外気温5℃の冬のコンディションのもと、昭和55年基準の断熱性能の空間と、現在基準とされている平成25年に決められた断熱性能の空間、2つの部屋が設けられている。一歩なかに入った瞬間、その違いが足の裏や頬から伝わってくる。肌で感じる、とはまさにこのことだ。さらに、窓については、アルミサッシや高性能樹脂サッシ、複層(ペア)ガラス、真空複層ガラスなど、さまざまなサッシとガラスの組み合わせで、体感温度がどう違うか、結露の付き具合がどう違うかなども確かめることができる。

防犯の備えも、どのくらいすれば十分なのか、何をすれば万全なのか、なかなか分かりづらいところだ。それには、どんな危険があるのかを知ることが大切だ。
納得工房の防犯対策のブースは、家の玄関周りが再現されていて、泥棒にどんなところが見られているかが分かる。例えば、家族構成が分かる家の表札、住所や学校が書かれている自転車の置き方、2階に登っていきやすくしてしまうガレージの屋根。一見防犯とはかかわりのなさそうなことが、関係している。泥棒は5分以内に侵入できないとあきらめることが多いという。侵入しにくいと思わせる、狙われにくい家にすることが必要なのだ。もちろん、割れにくいガラスなど、設備の性能でも差が出る。細やかに、対応をしておくことで、防ぐことができるのだ。

上)窓の性能によって断熱性能がどれだけ変わるか感じることができる 下)防犯に関するゾーン。どこに危険があるか、チェックしよう(提供:積水ハウス)上)窓の性能によって断熱性能がどれだけ変わるか感じることができる 下)防犯に関するゾーン。どこに危険があるか、チェックしよう(提供:積水ハウス)

肌で感じることで変わるのは、理解度と納得度

こうして、家の細部にわたって具体的な体験ができる納得工房。家を新築予定の人や、学校の社会科見学など、年間3万人もの人が訪れるという。

体験すると、しないのと、その違いは何か。それは理解度と納得度だと大谷さんは話す。

「住宅の情報は、本やインターネット、カタログなどで、さまざまな情報が手に入ります。ですが、言葉や数字で飛び込んでくるのと、自分の体で感じるのとでは、理解度が違ってくると思います。多くの人にとって、家は一生に一度の大きな買い物。慣れていませんから、自分にとって何が大切か、どこにお金をかけるべきなのかが、なかなか分かりませんよね。住宅会社としては、自社でできることをお伝えする、それが当たり前なのですが、でもそのことが、ユーザーにとってのベストではないかもしれない。そのお客様にとって大切なことは何か。これとこれは、そのお客様にとってはどちらでもいいことだけど、ここにはこだわりたいからお金をかけたい、と思うかもしれない。それはひとりひとり違うんです。ここは、個人の納得度の高い住宅像が見えてくる施設です」

総合住宅研究所のさまざまな成果を落とし込んだ施設で、体験して、納得してつくる積水ハウスの住まい。プラン上の1ミリで後悔しない住まいづくりは、こうして生まれているのだ。

※積水ハウス総合住宅研究所 納得工房の見学は、事前予約制

積水ハウスのみなさん。左から、納得工房案内スタッフ・古野恵美子さん、納得工房運営G・グル―プリーダー部長の大谷康則さん、納得工房運営グル―プ主任・有岡弘美さん、広報部・辻井香奈さん積水ハウスのみなさん。左から、納得工房案内スタッフ・古野恵美子さん、納得工房運営G・グル―プリーダー部長の大谷康則さん、納得工房運営グル―プ主任・有岡弘美さん、広報部・辻井香奈さん

2018年 12月20日 11時05分