昔の日本家屋の原点を見直し、人と人が助け合って健康に暮らせる居心地のいい家づくりを行う

自然素材を使い、光と風の通り道に配慮した心地いいオーガニックハウス。リビング中央に天井まである磨き丸太の大黒柱を配置自然素材を使い、光と風の通り道に配慮した心地いいオーガニックハウス。リビング中央に天井まである磨き丸太の大黒柱を配置

九州・福岡市にある博多リバレインにおいて(株)フォルツァによる「家とくらし」に関するセミナーなどが開催された。同社は建築家と施主様が出会う場を提供し、満足のいく家づくりをトータルにサポートすることを目的としている。セミナーの1つ「オーガニックな家づくり地球にやさしい住宅とは」というタイトルにひかれ、セミナーに出かけてみた。

講師は一級建築士である植本阿良樹氏(有機建築研究所代表取締役)。植本氏は有機農業指導者の宇根豊さんと出合って「有機とは生きとし生けるものがつながって、助け合って存在していること」との言葉に、まさに自分が追い求めている家づくりだと有機建築研究所を設立したとのこと。「人と人がつながって助け合うことでコストを抑えて居心地のいい家を建てよう」「最後は土に還る素材(土・木・紙など)を使って地球環境にやさしい家を建てる」をテーマに、天然素材のみを使用し、身体によくない化学物質を一切使わない「オーガニックな家」を提案している。さらにオーガニックな家づくりの基本は、材料はできる限り地域内で調達する、健康的に暮らせる家、エネルギーをあまり消費しない家、できることは自分たちで行うことだという。

ひと昔前まで日本の家は木と藁を入れた土壁など、いずれは土に還る素材だけでつくられており、たくさんの人が力を合わせて建築していた。オーガニックな家とは、まさに日本の民家への回帰だといえるかもしれない。

オーガニックの家が心地いいのは、物理的ストレスなど4つのストレスを軽減しているから

現在生活の中にはストレスがたくさんあるが、家づくりにおいても解消したい4つのストレスがあると植本氏は話す。それは、
①暑さ・寒さ、湿気、電磁波などの「物理的ストレス」
②揮発性有機化合物や環境ホルモンなどの「化学的ストレス」
③ダニやカビ、花粉などの「生物的ストレス」
④プライバシーの欠如、使い勝手の悪さなどの「精神的ストレス」だ。

①の電磁波はシールドクロスをカーテンとして使ったり、Low-Eガラスを使用したりすることで軽減できる。②は接着剤や畳の床など、表面に現れない部分にも揮発性有害化学物質を出さない素材を使用し、有機物分解性能を持つ素材を活用することで化学的ストレスを防ぐ。③はダニやカビの繁殖を防止するために、ほこりがたまりにくく掃除しやすい設計とし、さらに有機物分解力のある内装とすることでリスクを軽減できる。④も設計によってほとんど解消できるとのことだ。

土や木など天然素材が持つ高い調湿作用によって温度や湿度が一定に保たれる快適な室内空間が生まれ、木材やしっくいなど水分を含んだ素材が電磁波の影響を和らげてくれるそう。オーガニックな家は、身体に害を及ぼさない健康にいい素材のみで建てる家、いい空気に包まれた安心して深呼吸できる住まいだといえよう。

ウッドデッキに備えた2本の柱は神社の鳥居を思わせる太い木を使用。今、この中央に子どもたちのためのブランコがかかっているウッドデッキに備えた2本の柱は神社の鳥居を思わせる太い木を使用。今、この中央に子どもたちのためのブランコがかかっている

間取りを自分たちで考えるなど5つのポイントを実践すると、「家づくりはオ・モ・シ・ロ・イ」

しっくい塗りを家族や友人などで楽しみながら行い、コスト削減にもつながる。また、みんなが愛着をいつまでも感じられる家になるしっくい塗りを家族や友人などで楽しみながら行い、コスト削減にもつながる。また、みんなが愛着をいつまでも感じられる家になる

セミナーでは家づくりを楽しみ、満足度の高いマイホームを完成させるための5つのポイントについても触れていたので紹介しよう。
①間取りを一生懸命考える。
ライフスタイルや家族数はそれぞれに違うもの。設計士に任せきりにしないで自分たちで時間をかけて考えると、実際に暮らし始めてからのトラブルを避けることができる。鉛筆書きの下手な間取図でも設計士には十分伝わるとのこと。ママはキッチン、パパはホビールーム、子どもは自分の部屋についてなど家族みんなで希望を出し合い、新しい暮らし方を考えるのは楽しいに違いない。

②材料の由来がわかると家に愛着が湧く。
有機建築研究所では設計が終わった段階で柱や梁に使用する木を選びに熊本県小国地方などの林業家の山に施主家族と一緒に入って原木を選んでいる。そして、木を切り倒す際には最後の斧を家族に入れてもらう。新しい家の見える部分に使う木の由来や歴史を知ることによって家への愛着がより強まるのだという。

③現場に通い、職人さんたちと仲良くなろう。
時間を見つけては建築現場へ足繁く通うことも大切だ。職人さんは建築途中でも、もう少しこうしたらいいのではと考えてくれることもある。毎日のように通っているとそういった声かけがあり、より住みやすい家への実現につながる。さらに仲良くなれば「『ここに棚があったらいいな』と相談するとサービスでつけてくれるなんていうオマケもあるかも・・・」と笑顔の植本氏。

④簡単な工事はセルフビルドしよう。
例えば、しっくいや自然塗料での壁塗り、テラスの板貼りなど家族で作業できそうな部分は自分たちで行うのもいい。しっくい塗りなどは子どもたちも大喜びで手伝うし、大人も童心に返って楽しめるそうだ。プロのように均一にはいかないが、それなりに味わいが生まれ、愛着も深まる。さらにいいことはコストが抑えられること。楽しくて安くなるプチセルフビルドをぜひ取り入れてみよう。

⑤家づくりに精通し、周囲にアドバイスできる
①~④を行いながら存分に家づくりを楽しむことによって木や天然素材など、さまざまなことに詳しくなるので、ゲストや周りの人たちに家づくりについてきちんと説明でき、さらに、これから家を建てようとする人へアドバイスも行えそうだ。満足度の高い家が完成するだけでなく、人の役にも立てる家づくりができる。

さらに植本氏は上棟式を行うことも勧めている。理由は、家族の素敵な思い出になる。ご近所に住む方々と仲良くなるきっかけづくりができる。そして、職人さんと親睦が深まり、その後の工程や完成後のメンテナンスのスムーズさにもつながっていくからだという。

「オーガニックな家づくりを建築士の方とめいっぱい楽しめました」と実際に家を建てた川池さん

オーガニックハウスを植本氏と一緒に建てた川池さんご家族(写真右側)。家づくりから数年、植本氏との深いつながりは今も続いているオーガニックハウスを植本氏と一緒に建てた川池さんご家族(写真右側)。家づくりから数年、植本氏との深いつながりは今も続いている

セミナーには植本氏とともに楽しい家づくりを体験した川池さんファミリーも参加し、オーガニックな家がスライドで紹介された。2009年、母親の家での同居を決意した川池さんは改築か新築かで悩んだという。家づくりの本を読んだり、メーカーや工務店を訪ねたりしたが、なかなか答えは見つからない。そんなとき「住まいと住環境講座」が開催されているのを知って参加し、講師の植本氏の考えに共感して建築士に依頼することも選択肢に加わった。それまで金銭的なこともあって建築士を加えるのは敷居の高いものだったが、自分たちで考えていたときは「どんな家に住みたいか?」だったが、植本氏の質問は「どんな生活をしたいですか?」だった。建築士・植本さんとの家づくりには何かいいことがあるに違いないと思えて依頼を決断したという。

打ち合わせを始めたとき、植本さんの「せっかくですから、やれることは極力自分たちでやりましょう」という一言にワクワクしたそうだ。原木選びはもちろん、建築時には自然塗料やしっくいを塗って内壁や天井の仕上げ、外壁や玄関アプローチの仕上げ、さらには玄関アプローチに使用する溶岩石を熊本県阿蘇市まで引き取りにも行ったとのこと。「プチセルフビルドの面白さは言葉には表せないほど。それがきっかけになって自分でウッドデッキにブランコを作ったり、原木を選んだ山に薪ストーブの薪拾いに行ったりもしています」と川池さんは微笑みながら家づくりを振り返っていた。

2014年 02月14日 09時26分