地域にあったまちづくりを考える6社がつくる「はるひの」

京都市の西部に位置する大原野。
向日市や長岡京市とも接し、田畑と竹林が広がるのどかなまちだ。ここには、「京春日」とも呼ばれる大原野神社が平安京以前、長岡京の時代に創建され、街道沿いの趣あるたたずまいが残るまちでもある。豊かな自然のなかで静かに子育てをしたいと、子育て世代の移住も多い。

この大原野で、2018年6月、新たに「はるひの」のまちびらきが行われた。この「はるひの」の特徴は、地元住宅会社など6社が共同で行っている分譲住宅であること。株式会社LIV、株式会社さかき建築工務、株式会社能見工務店、株式会社マサミガーデン、OKAMURA工房株式会社、株式会社小野建築設計。地元で住宅に関わる6社が、コンセプトを共有して造っている。

もともとこの6社は、地域にあったまちづくりを考える「NPO法人京都くらし方研究会」のメンバーで、同研究会の有志でこの共同の分譲住宅「はるひのプロジェクト(大原野上羽町プロジェクト)」を立ち上げた。

「はるひの」の現地の様子。統一された外観で、地域に溶け込む(提供:株式会社LIV はるひの事務局)「はるひの」の現地の様子。統一された外観で、地域に溶け込む(提供:株式会社LIV はるひの事務局)

大原野の街道筋に残る昔ながらの街並み…そこからヒントを得た外観も地域性を考えた設計に

「京都くらし方研究会」で、別の地域のまちづくりプロジェクトを見学に行った際に、ばらつきのある外観に課題を感じていたことが、今回のプロジェクトのヒントになっているとか。

「このプロジェクトでは、シンプルで上質な暮らしをコンセプトに、この場所に合う、地域性を考えたまちづくりを大切にしています。大原野の街道筋には、昔ながらの街並みも残っています。そんな雰囲気ともマッチするように、和モダンな外観を軸に、各社が設計しています」と語るのは、「はるひのプロジェクト」の事務局がある、株式会社LIV地域活性事業推進室の竹内良和さん。

現地を訪れてみると、周囲の景色となじむ統一感のある外観の家が、6軒並んでいた。家の前にはウッドデッキと芝生、そして土のままの庭もある。この庭の位置もこだわりのひとつだ。

「通常、こういう分譲地では、家の前に駐車スペースがあることが多いですが、駐車スペースは、家の前の通路部分を隔てたところに集約しています。天気がいい日はウッドデッキや芝生で食事をして寛ぐなど、リビングの延長として使っていただけます。家庭菜園ができるよう、土の部分も設けてあります」と同社まちづくり事業部新築分譲課課長の森上尋之さん。

庭もリビングの一部、〝ソトリビ〟も、このプロジェクトが提案しているライフスタイル。家族で庭を使えるだけでなく、ごこん近所同士で集まってバーベキューをしたり、まちとしての一体感を生むのにも一役買ってくれそうだ。

家の前の庭もリビングの続きのよう。〝ソトリビ〟の使い方は自由(提供:株式会社LIV はるひの事務局)家の前の庭もリビングの続きのよう。〝ソトリビ〟の使い方は自由(提供:株式会社LIV はるひの事務局)

共有エリアが生むご近所同士のコミュニティ

ゆとりは、各家の庭だけでなく、この分譲地全体からも生まれる。家と庭部分は各家の占有エリア、そこから先、家の前の道や駐車スペースはこのまちの共有エリアとなっている。道も含めた共通エリアで、ご近所同士でイベントをするなど、さまざまな共同の楽しみの場として利用することもできるのだ。この「はるひの」への入り口は、一カ所だけにして、安全性に配慮されている。
そんなまちづくりのコンセプトは、建築家で一級建築士の安田利宏さんに依頼し、6社で検討を重ね、たどりついたものだ。

「本来は家を建てる軒数を増やしたほうが、ビジネスとしてはいいのですが、必要なことはそれだけではないと思います。まちとして整っていて、なおかつ、ゆとりを感じる、ここはそんなまちにしたいという想いがあります」と森上さん。

家の前面が開けていて、日当たりや風通しもよい6軒の住宅。その奥にも建設予定地があり、「はるひの」は、将来的には、全11軒のまちになる予定だ。

「はるひの」の区画図。駐車場を含めた共有部分は、家とは別になっている(提供:株式会社LIV はるひの事務局)「はるひの」の区画図。駐車場を含めた共有部分は、家とは別になっている(提供:株式会社LIV はるひの事務局)

複数企業でひとつのコンセプトを共有しながら、それぞれの力を活かす

「街並みに統一感を持たせて、6社それぞれが設計した家が建っています。ですから外見は似ていますが、中は全く雰囲気が違う家なんですよ」と竹内さんに促されて、1軒1軒、家の内部を見せてもらった。

株式会社さかき建築工務の家は、南向きの大きな窓から日差しが入る明るいリビングが印象的。将来を考え、2階の子ども部屋を仕切ることができる造りになっているのは、実用性を重視する同社ならではのプランだ。
また、「愛着を持ち、住み続けられる家造り」を経営理念に掲げる株式会社能見工務店は、在来軸組構法を採用。メンテナンスのしやすい長期優良住宅の仕様で、吹き抜けのリビングは明るく、ウレタン吹付けで室温を一定に保つ。家族構成の変化によって部屋数を変えられる自由な間取りも特徴だ。造園やエクステリアを手がける株式会社マサミガーデンが参加しているのも興味深い。中に入ると、植物が映えるブルーの壁と、手洗い場があるおしゃれな土間玄関など、個性的なデザインが光る。
地元ならではの家族のようにあたたかで丁寧な家づくりを心掛けているというOKUMURA工房株式会社は、スッキリとした白い壁が印象的なスタイリッシュな空間を提案。
株式会社小野建築設計は二世帯住宅。玄関は別々にしてプライベートを確保しつつも、子育てや老後の暮らしを支え合うことができる距離の住まいを提案している。
そして事務局が置かれている株式会社LIVの家には、すでにこのまちの一番目の住人家族が生活をスタートさせている。

まち全体のコンセプトやデザインはひとつのものだが、それぞれの住まいには、それぞれの会社のコンセプトやデザイン力が生かされ、多様な住空間を提案しているのも、この「はるひの」のユニークな試みだ。

こうして、一軒一軒の家が集まってまちになる。だが、そのとき、既存の環境との融合はどの程度考えられているだろう。地域の歴史や自然、そして住む人同士の調和をはかることを重視したのは、地元企業ならではの気付きかもしれない。

まちは、各地で生まれ、ずっとその場所に残っていくものだ。複数の企業が参加する分譲プロジェクトでも、「はるひのプロジェクト」のようにひとつのコンセプトが共有できるという事例は、今後のまちづくりにとって参考になるだろう。

はるひのプロジェクトの事務局が置かれている株式会社LIVの竹内さん(左)と森上さん(右)はるひのプロジェクトの事務局が置かれている株式会社LIVの竹内さん(左)と森上さん(右)

2018年 11月10日 11時00分