素人でも参加しやすくなった不動産競売

不動産競売という言葉はどなたでもご存じだろう。
しかし、「怖い」「怪しい」「ゴミ屋敷」といったマイナスのイメージが、「安い」などのプラス面よりも先行し自分には関係ない世界の話と思っている人が多いのではないだろうか。
ところが競売は意外にも身近だ。東京23区の場合の落札件数は平成24年で1901件。毎日約5件が落札されている。
また最近は法の改正などが行われ、参加者の数も増加傾向だ。そのため以前は、不動産の格安な仕入れ先として一部の専門会社が中心となっていた市場だったが、一般の不動産会社だけでなく、素人である個人の参加も増えてきた。
とはいえ、まだまだ一般的にはブラックボックス的存在の不動産競売。「手続きは?」「怖いことはないの?」「本当にお得なのか?」などの疑問にお答えしよう。

競売情報の入手から落札、引き渡しまでの流れ

競売とは債務者(借金のある人)が、それを返せなくなったので、債権者が裁判所に申し立てをして担保となっている不動産を売却することだ。
そのため対象となる不動産は住居に限らず、事務所や店舗、アパート1棟などさまざま。
このような競売不動産の情報は新聞やインターネットで入手できる。特に最高裁判所が情報を提供している「不動産競売物件情報サイト」(Broadcast Information of Tri-set system)、通称BITは内容が充実していて便利だ。
http://bit.sikkou.jp/

物件の選択から物件の引き渡しまでの流れは以下のようになる。

1.物件の選択
BITなどから入札を希望する物件を見つける。同サイトは所在地や沿線などから物件を絞り込め、検索性が高い。

2.物件調査
BITから各物件の住所や面積、入札の最低価格(売却基準価格)といった基本情報を入手し、さらに3点セットをダウンロードして物件の調査をする。3点セットとは、権利関係が記載された「物件明細書」、執行官による占有者の状況などの調査結果である「現況調査報告書」、評価人が適正価格を算出した「評価書」。

3.入札
入札には裁判所への入札保証金の振り込みと振り込み証明書、入札書、住民票の提出が必要。入札保証金の金額は「売却基準価額」の20%で、落札できなかった場合は返金される。

4.開札
入札締切日から1週間後に最高買受人(落札者)がわかる。

5.物件引渡し
占有者の立退き交渉から引き渡しまでの手続きはすべて自分で行う。

最高裁判所が情報を提供している「不動産競売物件情報サイト」(Broadcast Information of Tri-set system)、通称BIT。各物件の今後の入札期間や過去の落札データなどを確認できる最高裁判所が情報を提供している「不動産競売物件情報サイト」(Broadcast Information of Tri-set system)、通称BIT。各物件の今後の入札期間や過去の落札データなどを確認できる

怪しい占有者の有無は「現況調査報告書」で確認

「現況調査報告書」に記載されている「執行官の意見」。これらから怪しい占有者の有無を確認できる「現況調査報告書」に記載されている「執行官の意見」。これらから怪しい占有者の有無を確認できる

上記の流れの中で、もっとも不安に感じるのは、怪しい占有者の有無とその立退き交渉だろう。
物件調査の占有者の有無は、BITからダウンロードできる「現況調査報告書」に記載されている「関係人の陳述等」や「執行官の意見」を読めばわかる。
競売物件は住居として使用されているものも多く、当然その場合は占有者がいる。しかし、ほとんどの場合は債務者ではあるものの、ごく普通の考え方を持つ人たちだ。きちんと交渉すればトラブルになることは少ない。
競売と聞くと「暴力団員が占有しているのでは?」と心配するかもしれないが、1991年に暴力団対策法が施行され、現在は暴力団関係者だとわかるような言葉を使うだけで逮捕の対象になる。そのためそのような人間の占有はまずない。
たとえ怪しい人間が占有していたとしても、最終的には強制執行によって裁判所の執行官が立ち退かせてくれる。

競売は意外に安く落札できない。さらに立退き交渉などに問題が生ずることも

このように多少の知識があれば素人でも落札できてしまう不動産の競売。宅地建物取引主任者のような資格は必要ないし、1998年の民事執行法改正によって住宅ローンも組めるようになった。
しかし、だからといって手放しでおいしい不動産市場とは言い難い。
おもな理由は以下の3つ。

1.意外に安くない落札相場
上記のように競売参加へのハードルが低くなっていることから、参加者の数は増加傾向だ。人気物件なら数十件の入札も珍しくない。そのため落札相場は、一般流通価格の1割から2割安といったところ。意外に安くない。

2.立退き交渉が難航することも
前述のように落札したあとの占有者に対する立退き交渉は基本的に自分で行う。大半は裁判所から引き渡し命令文を送達してもらうことで立ち退いてもらえるが、中にはそうはいかないケースもある。その原因の多くはお金の問題だ。そもそも債務者はお金がない。だから立ち退きたくても引っ越し費用がないのだ。そのような場合は、家賃の安い賃貸物件や家財道具の売却先を紹介するなどの手間がかかる。それでも交渉がまとまらない場合は、裁判所の執行官が強制的に建物内の物を撤去する強制執行となる。ただし、強制執行の場合の荷物運搬用トラック費用や人件費はすべて落札者の負担となる。

3.ゴミ屋敷問題
競売物件の占有者の多くは借金の返済が滞ってしまった人たちだ。生活に疲れている、またはそもそもルーズな人が多い。だからゴミ屋敷を落札してしまうこともある。落札前に内覧すればいいのだが、占有者の反対などでできない場合がほとんどだ。もしゴミ屋敷を落札してしまったら、必要経費とあきらめて専門会社に片づけを依頼するしかない。

このような問題から競売物件の購入は、素人にとってまだまだハードルが高いといえるだろう。もし挑戦するなら相当の勉強を覚悟しなければならない。
また、入札を代行する専門不動産会社もあるのでそちらを利用するという手もある。

2014年 01月25日 15時14分