災害をもたらす豪雨は確実に増えている

クルマや家屋を簡単に押しつぶす土砂災害。空振りを恐れず早めの避難を心掛けたい(資料提供:NPO法人日本防災士会)クルマや家屋を簡単に押しつぶす土砂災害。空振りを恐れず早めの避難を心掛けたい(資料提供:NPO法人日本防災士会)

近年、豪雨に見舞われる頻度が増えていると誰もが感じているのではないだろうか。実際に気象庁のデータを確認すると、東京都で1990年から1999年の10年間に1時間当たりの最大雨量が50㎜を超えた年は2回なのに対し、2000年から2009年の10年間では6回。1時間当たり50㎜以上といえば滝のように降り、土石流の危険が発生するレベルだ。やはり豪雨は確実に増えている。

8月20日に広島県広島市で発生した豪雨による土砂災害は、たくさんの犠牲者を出し、全壊24棟、床下浸水207棟(2014年9月8日現在。内閣府調べ)の大災害となった。豪雨から家族や財産を守るためにするべきことは何か。NPO法人日本防災士会常任理事 橋本茂氏にお聞きした。

ゲリラ豪雨を予感したら、とにかく外には出ない

―豪雨が降ることを事前に知る方法はありますか?

「最近、ゲリラ豪雨という言葉をよく耳にします。短時間に狭い範囲で大雨が降ることを指しますが、何㎜以上といった明確な基準はありません。そして実はこの種類の豪雨は、予測が非常に難しいのです。それは積乱雲があっという間にできて、ピンポイントで雨を降らせるので、現在の予測技術がまだ追いついていないからです。
今のところ一人ひとりが
・真っ黒い雲が見える
・急に暗くなった
・雷が鳴りだした
といったことに気づいたらゲリラ豪雨が来るかもしれないと注意するしかないでしょう」

―ゲリラ豪雨の被害とその対策は?

「ゲリラ豪雨は短時間で去ってゆくので、1回でただちに土砂災害につながる可能性はさほど高くありませんが、数日以上雨が続いた後にゲリラ豪雨が降ると、それが引き金となって土砂災害が発生することがあります。また、都市部では排水溝などから雨水があふれる内水氾濫と川の堤防などが決壊する外水氾濫に警戒が必要です。これらの可能性を感じたら、とにかく建物から出てはいけません。近場に買い物に行く程度でも足元をすくわれて流されることがあるからです。できるだけ外の状況が確認できる屋内にいるべきです。
もし、地下にいるときに降りだしてしまったら浸水の危険があるので、すみやかに地上階に上がってください。クルマに乗っていたら水がたまりやすいアンダーパスを通ることは避けてください。たとえたまった水が浅そうに見えても、濁っているので分からないからです。
屋内では1階のコンセントは抜き、床に置いた貴重品などを高いところへ移動させてください。また、日頃から排水候溝や雨どいなどは、雨水があふれないように掃除をしておいた方がいいですね」

交差する道路の下をくぐるなどで、周りよりも低くなるアンダーパス。ゲリラ豪雨の時に雨水がたまりやすい場所だ交差する道路の下をくぐるなどで、周りよりも低くなるアンダーパス。ゲリラ豪雨の時に雨水がたまりやすい場所だ

土砂災害は、ある程度予測可能。まずは危険箇所かどうかの確認を

NPO法人日本防災士会常任理事(事務統括)橋本茂氏。平成9年4月、阪神・淡路大震災の教訓を語り継ぎ最新の防災情報を提供する「防災情報新聞」を創刊。創刊より平成21年8月まで同編集長。また平成13年から本格化した防災士制度創設の活動に当初から参加。防災士教本の編纂、防災士研修講座の企画立案・指導にあたっているNPO法人日本防災士会常任理事(事務統括)橋本茂氏。平成9年4月、阪神・淡路大震災の教訓を語り継ぎ最新の防災情報を提供する「防災情報新聞」を創刊。創刊より平成21年8月まで同編集長。また平成13年から本格化した防災士制度創設の活動に当初から参加。防災士教本の編纂、防災士研修講座の企画立案・指導にあたっている

―土砂災害の予測方法はありますか?

「土砂災害は、ゲリラ豪雨と違ってある程度事前に危険を察知することが可能です。まず、自分の住む地域や職場が土砂災害危険箇所かどうかを各自治体のホームページなどで確認してください。土砂災害危険箇所とは、土石流、地すべり、急傾斜地の崩壊が発生するおそれのある場所です。もし、この場所に指定されていたら豪雨が続いた場合に土砂災害の可能性があると認識し、同じくホームページなどで最寄りの避難場所を確認しておきましょう。
通常の大雨は、テレビやラジオで注意を促すはずです。天気予報をまめに見て、大雨注意報や警報が出ていないかチェックしてください」

―大雨注意報・警報が発令された場合の行動は?

「注意報や警報が出たら早めの避難を心がけましょう。この際に心掛けたいのは、“空振りを恐れない”ということです。たとえ10回注意報が出て何も被害が無くても、11回目には大災害になるかもしれません。何度でも避難してください。また、避難は明るいうちに行ってください。夜間は足元が見えずに、側溝や流された後のマンホールの穴などに足を取られる危険性があるからです。
もし、避難前に床下まで浸水してしまったら、もう外へは出ない方がいいでしょう。2階へ上がって、山や崖とは反対側の部屋に避難すべきです。
実際に土砂災害が起こる前には、様々な前兆現象があります。
・山鳴りや異様な音が聞こえる
・山の木の根が切れる音が聞こえる
・斜面に割れ目ができたり、水がわき出る
・山が崩れ始めたときに生じる生臭い土砂の臭いがする
・川の上流部が土砂でせき止められるため、近くの川の水位が下がる
などです。
とくに土石流には迅速に対応しなければいけません。土石流が起こったら、襲ってくる方向とは違う方向の山に登るか、鉄筋コンクリート製など頑丈な建物の上層階へ避難してください。この際にもっともやってはいけないのは、土石流と同じ方向(川下方向)に逃げることです。土石流は時速40㎞ほどで襲ってくることがあります。ほとんどの人はどんなに一生懸命走っても飲み込まれてしまいます」

いざその時が来る前に準備を怠らない

最後に豪雨を問わず台風、地震なども含めた自然災害の被害を最小限に留める方法をたずねると、橋本氏はこのように回答した。

「先人には自然災害を乗り越えてきた知恵があります。各自治体のハザードマップとともに災害に関する言い伝えや地名の由来などにも留意しましょう。災害はいつ起こるか誰も分かりません。大切なのは、いざその時が来る前にインターネットなどでそのような教訓と身を守るノウハウを学び、どう行動すればいいか理解しておくことです」

木の根が切れる「メキ、メキっ」といった音が聞こえたらがけ崩れのサイン(資料提供:NPO法人日本防災士会)木の根が切れる「メキ、メキっ」といった音が聞こえたらがけ崩れのサイン(資料提供:NPO法人日本防災士会)

2014年 09月12日 11時10分