トレーラーハウスとも違う、動く家「スマートモデューロ」

住む場所にとらわれず、小さく豊かな暮らしを実現してくれるトレーラーハウス。アメリカのタイニーハウスムーブメントから生まれたライフスタイルだ。そういった暮らしに漠然と憧れをもっている方も多いのではないだろうか。しかし、小さな家での暮らしは不便では?快適に暮らせるの?と一歩を踏み出すには至らない方が多いのも現実ではないだろうか。

そんな不安を覆し、新たな住まいの価値観を与えてくれるのが、動く家「スマートモデューロ」だ。
トレーラーハウスは、牽引して道路を走らせるため、どうしても空間の大きさに制限が出てきてしまうのがネックであった。しかし、スマートモデューロは、1つのユニットをつなぎ合わせることができるため、家族の人数や使い方次第で自由に広さを選ぶことができる。トレーラーハウスのように動かせる家には憧れるけど、広さに制限があるのは嫌、という人にとっても、選択肢のひとつになるかもしれない。さらに、国際規格を採用しているため、国内だけでなく、海外へも輸送することができるという。

移動ができて、広さも自由な家、スマートモデューロとはいったいどういうものなのか、開発した株式会社アーキビジョン21(本社:北海道千歳市)の代表取締役丹野正則さんに話を聞いてきた。

コンテナ用輸送トラックで移動中のスマートモデューロ(提供:株式会社アーキビジョン21)コンテナ用輸送トラックで移動中のスマートモデューロ(提供:株式会社アーキビジョン21)

海上コンテナと同一規格で実現した、高い可動性

同社は、もともと動く家「モデューロ」を販売していた。「モデューロ」は、工場で生産した複数のユニットをトラックで輸送し、現地で組み立てるという製品だ。

「『モデューロ』は自由につくれる反面、ユニットごとに大きさが違います。複数のトラックが必要になり、荷台に積んで、梱包をして、と輸送にかかる手間や時間、コストが膨大でした。」(丹野代表取締役)

もっと簡略化できないかと開発されたのが、幅2.4m x 長さ12m x 高さ2.89m(28.8m2)の海上コンテナと同一規格のユニットであるスマートモデューロだ。これにより、世界中に汎用している海上コンテナ用の輸送トレーラーの使用が可能になった。コンテナ輸送の技術さえあれば、特別な知識がなくても「家」を輸送することができるというのだ。
1つのユニットだけでは、広さや高さに限界があるが、スマートモデューロは、横にも縦にも連結させることができる。木造にも関わらず、最大4層まで積み上げることができる。

同社は長年、寒さの厳しい北海道で家づくりをしてきた。そのため、強度や断熱気密など高性能な家づくりのための技術の蓄積がある。スマートモデューロの耐用年数は、100年以上としており、輸送に耐えるため、強度は一般住宅の3倍だそうだ。また、断熱は外断熱工法に高性能なトリプルサッシを採用。

「私たちの家づくりは、性能重視なんです。高性能なものを使い、かつできるだけランニングコストを低くしようと考えています。そのために、メーカーから直接窓を仕入れるなど、生産コストを抑えられるように工夫しています。」(丹野代表取締役)

スマートモデューロの生産工場は、一般の人も見学できる。使われている建材の模型も展示されているスマートモデューロの生産工場は、一般の人も見学できる。使われている建材の模型も展示されている

購入だけでなく、レンタルして返却、買い取りもできる?!

マイホームは欲しいけど、35年ローンを組んで、ここにずっと住み続けるのかと思うと、なかなか決断できない方もいるのではないだろうか。
しかし、スマートモデューロは3、5、10年とレンタルすることができ、使わなくなったら返却も可能。そのまま住み続けたい場合は、買い取ることもできる。何年住んでも、買い取ることはできない賃貸物件とは、少し違った印象を受ける。レンタルが可能で、もし引っ越しが必要になったとしても、家ごと移動ができるというのは、新しい暮らしをはじめるハードルがさがるかもしれない。

スマートモデューロは、1ユニット750万円(レンタルは月々7.5万円)。キッチンやトイレなど水回りの設備も、基本的に工場で施工されているため、設置後すぐに使うことができる。水回りや部屋の造作などが施されていないスケルトンタイプは600万円(レンタルは月々6万円)。内装は自分でやってみたい方や、オフィス利用など部屋の造作が必要ない方には、スケルトンタイプがいいだろう。
基礎工事として、土地の整地や給排水などの付帯工事に150万円程度は初期費用として必要になるそうだ。

また、設置もスピーディーで、1ユニットだけだと設置には1時間もかからないそうだ。オーダーをしてから1~3ヶ月後には、スマートモデューロが運ばれてきて、数時間後には何もなかった土地にいきなり家が建ってしまうというから驚きだ。

気になる運搬費であるが、出発点から走行距離30キロ圏内が85,000円(税別)。そこから10キロ毎ごとに6,000円増加していくというのが目安料金となる(高速道路利用費用などは別途)。搬送先やルートによって、変動するそうだ。

スマートモデューロ設置中の様子。2階建ての社員寮をつくっている(提供:アーキビジョン21)スマートモデューロ設置中の様子。2階建ての社員寮をつくっている(提供:アーキビジョン21)

動く家がもたらす多様な暮らし

現在、スマートモデューロは、住居やオフィス、ホテル、社員寮などさまざまなものに活用されている。
北海道千歳市にある本社の工場で製造され、千歳と札幌合わせて3つの展示場がある。常時180棟以上のスマートモデューロが展示されており、実際に中に入って見学することができる。購入やレンタルしたいものがあれば、そのまま移設し、使うこともできるという。
千歳の展示場を見学させてもらったが、住居や店舗、オフィス、社員寮などさまざまなモデルルームがあった。構造上、取り外すことのできない壁(耐力壁)が数カ所あるが、あとは自由に窓をつけることもでき、意外に自由度が高い印象を受ける。
1ユニットのみのモデルハウスもあれば、さまざまな形に連結されたスマートモデューロも展示されている。ユニットを横に4つ連結し、広い空間をつくった店舗や、「通路連結」というユニットを組み合わせたH型という住居もあった。

内装は、木で仕上げられ、温かみを感じられるデザインだ。構造体をむき出しにし、棚をつくって空間を有効に使っているため、想像していたよりも広い印象を受けた。また、クロス張りや塗装などの表面加工を施さないことで、木材の呼吸を妨げないようにしている。そうして建材を長持ちさせることによって、スマートモデューロの耐久性が高まるのだ。

「最近は、シンプルな暮らしや物をなるべく所有しない、という価値観の人が増えていますよね。家も、所有するより借りるほうがいいという人もいるはずです。最初は1ユニットからはじめて、手狭になったらもう1ユニット増やしてみるといったように、増築減築もできます。スマートモデューロによって、いろんな生活スタイルにあった選択肢が増えていくのではないかと考えています。」(丹野代表取締役)

スマートモデューロは、2014年に誕生したため、まだレンタルしたものが戻ってきた事例はない。しかし、今後は住居として使われていたものが、店舗に転用される事例なども出てくると考えられる。

最近は、自治体が実施している「お試し居住」にも使われているそうだ。また、2拠点居住のうちの1拠点でスマートモデューロをレンタルしてみる、という選択肢もありそうだ。
移動ができて、100年以上耐久性のあるスマートモデューロだからこそ、今後どのように活用されていくのか、期待したい。

次回は、スマートモデューロが生まれた経緯や今後の展望を紹介したい。

取材協力:
株式会社アーキビジョン21 http://www.archi21.co.jp/
スマートモデューロ http://smartmodulo.jp/

左上:H型に連結した住居棟、左下:住居棟の寝室、右上:スケルトンタイプ、右下:4連結のオフィス棟左上:H型に連結した住居棟、左下:住居棟の寝室、右上:スケルトンタイプ、右下:4連結のオフィス棟

2018年 07月08日 11時00分