少子高齢化、核家族化などの影響で無縁墓が増加傾向に

無縁墓は全国的に増えているという。無縁墓になると、お墓参りをする人もいなくなり、荒れ放題に無縁墓は全国的に増えているという。無縁墓になると、お墓参りをする人もいなくなり、荒れ放題に

墓の後継ぎがいないといった理由で「墓じまい」をする人が増えている。

墓じまいとは、管理ができなくなったお墓を解体・撤去してさら地に戻すことだが、埋葬・埋蔵されていた遺骨を別の場所に移す「改葬」の作業もあるため、きちんと段取りを踏んで行なう必要がある。では、どんな段取りが必要なのだろう? そこで専門家に指南を仰ぐべくお話を伺ったのは、吉川(きっかわ)美津子さん。大手葬儀社、墓石・仏具店で実務経験を積み、現在、お墓や葬儀のコンサルティングを手がけるアルック・葬儀ビジネス研究所の代表を務める。

「私のもとへ寄せられる相談で最も多いのは、『現在守っているお墓を今後どうしようか』という相談です」と、吉川さん。「今後、お墓を守る人がいなくなる」「お墓が遠くて、お参りに行けない」「自分は3人姉妹の長女。姉妹全員が結婚して家庭をもっていて、実家のお墓をどう管理したらいいのか困っている」…。このような悩みを抱えている人が多く、墓じまいという選択肢を考えるケースが増えていると、吉川さんは話す。

墓じまいが注目される理由には、少子高齢化、核家族化、人口減少といった社会的背景が挙げられる。
「お墓を守る人がいなくなり、無縁墓になってしまうと悲惨です。お参りする人がいないので手入れもされず、荒れ放題になります。墓所の周辺は雑草が伸び、墓石はホコリまみれになってしまったり…。こうした無縁墓は増加傾向にあります。2013年に熊本県人吉市が行なった調査によると、人吉市が管理する墓地にあるお墓の約4割が無縁墓でした。地方だけではなく、大都市圏でも無縁墓の増加は問題になっています」。

無縁墓は放置され、解体・撤去される

無縁墓地になると、このような立て札で掲示して公告。写真は東京都による公告無縁墓地になると、このような立て札で掲示して公告。写真は東京都による公告

無縁墓のまま放置されてしまうと、最終的には解体・撤去されることになる。

「墓地、埋葬等に関する法律(以下、墓埋法)」という法律があり、その法律で規定された行政手続き(官報への公告・墓地に立て札を立てる等)を行なって、墓所の使用者・縁故者から1年間申し出がなかった場合に無縁墓の解体・撤去ができるものとされている。無縁墓に納められていた遺骨は、納骨堂や無縁塚などに改葬される。

厚生労働省のこの10年の調査データ(衛生行政報告例)を調べてみると、全国で無縁墓の改葬が行なわれた件数は年間で約2500~7500件。年によって大きく異なるが、2014年度は2829件だった。

撤去して不要になった墓石は処分場で粉砕され、道路工事用の砂利などに再利用されるというが、墓石を扱う事業者のなかにはそうした時間と費用を惜しんで不法投棄するケースも出てきている。これもまた、現代のお墓事情が生んだ社会問題といえるだろう。

寺院に墓地がある場合は、墓じまいを検討している段階から相談を

さて、墓じまいの段取りに話題を移そう。手順は大まかに5つ。吉川さんからのアドバイスをもとに、注意点も交えて解説していこう。

■手順1 家族、親戚に相談し、理解してもらう

墓じまいをスムーズに進めるには、家族はもちろんのこと、親戚とも話し合い、理解を得ておくことが大切だ。
「お墓に納められている遺骨の血筋にあたる親戚には事前に相談し、話し合いをしてください。なかには『私はいつもお墓参りにきていたのに、なんで別の場所に移すのか?』とか、『先祖代々の墓だから、このまま地元のこのお寺にあってほしい』などと言われることもあるかもしれません。強引に推し進めたりせず、親戚に納得してもらえるよう、時間をかけて説得していくことが肝心です」。

■手順2 現在の墓地の管理者に「墓じまい」をしたい旨、伝える

今の墓地の管理者に「墓じまい」をしたいことを伝える。「特に寺院にお墓がある場合は、早めに相談を」と、吉川さんは言う。
「寺院は単にお墓を管理する場ではなく、『遺族に代わって先祖代々のお墓を供養している』という意識でお墓を守っています。それに対して何の前触れもなく、いきなり『お墓を撤去したいので、契約を解除してください』などと伝えたら、寺院としてはいい気持ちはしないと思います。また、寺院とは、長い間檀家としてお付き合いしてきたことでしょう。早めに寺院に相談するのが礼儀ですし、墓じまいを円満に進めるためにも必要なことです」。

寺院の檀家をやめたり、墓じまいをする際、それまでのお礼としてお布施を包むのが習わしといい、「離檀料」と呼ばれている。その離檀料をめぐり、寺院から高額なお金を要求されるといったトラブルも少なくないという。
「手順4」でも記述するが、遺骨を改葬するには墓埋法で規定された手続きが必要で、今の墓地の管理者による埋蔵(埋葬・収蔵)証明が欠かせない。が、「指定する離檀料を払えないなら、埋蔵証明のサインと捺印はしない」という態度に出る寺院もあるそうだ。寺院から要求された離檀料は、払わないといけないのだろうか?
「信教の自由は憲法でも保障されていること。離檀料を支払わないからといって、改葬を止める権利は寺院側にはありません。弁護士を立てて話し合うケースもありますが、私が知る範囲では深刻なトラブルになる前に解決することが多いようです」。

一般的な離壇料の相場は「寺院の格やそれまでのお付き合いなどでも違いますが、1回の法要で渡す額の2~3倍くらいが目安。だいたい5万円から20万円、多くても30万円くらいといったところです」と、吉川さん。

先祖代々、受け継がれてきたお墓。</br>お墓じまいを始める前に、親戚や寺院など関係者と話し合い、納得・理解を得ておくことが肝心だ

先祖代々、受け継がれてきたお墓。
お墓じまいを始める前に、親戚や寺院など関係者と話し合い、納得・理解を得ておくことが肝心だ

期限付き墓地、レンタル墓という形態も注目されている

「改葬許可申請書」は遺骨1体につき1枚必要。自治体ホームページからダウンロードできるケースが多い「改葬許可申請書」は遺骨1体につき1枚必要。自治体ホームページからダウンロードできるケースが多い

■手順3 遺骨の改葬先を決める

遺骨の改葬先となる墓所を探して契約する。別の既存のお墓に遺骨を移すという選択肢もあるが、吉川さんは「最近のお墓探しのキーワードは『継ぐ人がいなくてもよいお墓』です。お墓の後継者がいなくても、墓地の管理者が将来に渡って供養・管理をする永代供養墓に人気が集まっています」と話す。

永代供養墓といってもさまざま。まず運営主体では、大まかに寺院墓地、自治体が管理・運営する公営墓地、公益法人などが管理・運営する民間霊園に分けられる。

そうした運営主体のことや宗教・宗派、管理方法、費用、交通アクセスなどが、改葬先を探す際の要確認事項となる。ここで重要ポイントになるのは納骨方法で、次の3種類がある。
・合葬墓タイプ 遺骨を骨壺から取り出し、共同の納骨室に納める。合葬式墓地などとも呼ばれている。
・集合墓タイプ 遺骨を骨壺か納骨袋に入れた状態で、共同の納骨室に納める。
・個別墓タイプ 個人や夫婦、家族などの単位で、墓地の1区画を使用する。

費用の目安は合葬墓タイプで1人5万~20万円、集合墓タイプで1人10万~40万円、個別墓タイプで1人30万~150万円くらいが相場という。

このほか、将来に渡って遺骨を収蔵できる納骨堂の利用や、散骨といった方法もある。

「増えているのは期限付き墓地という形態です。墓じまいに限らず、新たにお墓を建てるケースでも選択肢のひとつになりつつあります。30年、40年などという具合に墓地の使用期限が決まっていて、使用期限が経過した後は永代供養墓に合葬されるというものです。同じく期限付きのお墓ですが、5年、7年など、使用期限を短く設定したレンタル墓と呼ばれるものも出てきています。『遺骨をすぐに合葬墓に入れるのは忍びない』と考えたり、『この先、お墓を継いでくれる人がいなくなるかも…』と不安を感じている方々のニーズに応えるお墓として注目されています」。

■手順4 手続きを進める

墓じまいのために遺骨を別の場所に移すことは「改葬」になるため、現在の墓地がある市区町村の役所が発行する「改葬許可証」が必要になる。

手続きの方法は自治体によって異なるケースもあるので、事前にしっかり確認しておきたい。
一般的に次のような流れになる。
(1)改葬先の墓地を決め、「受入証明書」(墓地使用許可証)を発行してもらう。
(2)現在の墓地がある市区町村の役所で「改葬許可申請書」をもらう。
ほとんどの場合、自治体ホームページから申請書をダウンロードできる。
(3)「改葬許可申請書」に必要事項を記入。現在の墓地の管理者から「埋蔵(埋葬・収蔵)の証明」をもらう。
「埋蔵(埋葬・収蔵)の証明」は、別に証明書を用意する場合もあるが、「改葬許可申請書」の中に項目が設けられている場合もある。いずれにしても、現在の墓地管理者の署名・捺印は必須。
(4)現在の墓地がある市区町村の役者に「受入証明書」と「改葬許可申請書」「埋蔵証明(書)」を提出。受理されると、「改葬許可証」が発行される。

墓地の解体費用の相場は1m2あたり8万~15万円くらい

■手順5 遺骨を取り出し、改葬先に納骨

まず、現在の墓地から遺骨を取り出し、墓石を解体・撤去。そして墓所を整地し、さら地の状態で管理者に返却する。その際、石材店に作業を依頼するが、石材店を自分で選べる場合と、寺院や霊園など管理者から指定される場合がある。

墓地の解体費用は1m2あたり8万~15万円くらいが目安だが、墓地の立地状況によっては重機の搬入が難しくなるため手間がかかり、さらに費用がかさむこともあるという。遺骨の取り出し費用は、1遺骨あたり1万~5万円といったところが相場。

そうして墓じまいの締めくくりの作業となる改葬だ。「改葬許可証」を改葬先に提出し、遺骨を改葬先に埋葬。寺院墓地であれば、納骨法要などを行なう。

墓じまいのだいたいの手順は以上である。お墓や葬送の様式は、地域や家などによって異なるので、墓じまいについても個々の事情に合わせて進めるのがいいだろう。
「墓じまいは、お墓の中に納められているご先祖を無縁にするのではなくて、縁をつなげるために行なうものだと私は思います。お墓を守る人がいなくなる前に、お墓を閉じてこの先、中の遺骨をどう守っていくのか考える。そうしたプロセスを通して、ご先祖との縁やご家族との絆を感じていただけたらと思います」と、吉川さんは話す。

このお盆シーズン、お墓という「終の棲み家」について、考えるひとときをもってみてはどうだろう。

※参考資料:
『ゼロからわかる墓じまい』(双葉社刊/吉川美津子著)

☆取材協力
アルック・葬儀ビジネス研究所
http://www.1sogi.com

葬儀・お墓・終活コンサルタントとして活動する吉川美津子さん。葬送業界に身を置いて約20年。葬儀マネジメントや終活、墓じまいに関するセミナー講師も務める。主な著書に『葬儀業界の動向とカラクリがよーくわかる本』(秀和システム)、『ゼロからわかる墓じまい』(双葉社)など。2016年8月には『お墓の大問題』(小学館)を上梓

葬儀・お墓・終活コンサルタントとして活動する吉川美津子さん。葬送業界に身を置いて約20年。葬儀マネジメントや終活、墓じまいに関するセミナー講師も務める。主な著書に『葬儀業界の動向とカラクリがよーくわかる本』(秀和システム)、『ゼロからわかる墓じまい』(双葉社)など。2016年8月には『お墓の大問題』(小学館)を上梓

2016年 08月01日 11時06分