増え続けている建築物のエネルギー消費量

産業、運輸のエネルギー消費量が年々減少している中、建築物は増加している(出典:国土交通省資料)産業、運輸のエネルギー消費量が年々減少している中、建築物は増加している(出典:国土交通省資料)

ご存知のようにエネルギーというものは無尽蔵にあるものではない。特に日本の場合は、東日本大震災以降その不足によって経済活動などへの影響が懸念されている。

エネルギーを消費する分野は、大きく産業、建築物、運輸に分けられる。近年の傾向を見ると、産業と運輸の消費量は減少しているものの、建築物だけは増加し、現在では全体の3分の1を占めている。産業では技術革新が進み、運輸では車などの燃費が向上している。一方で、住宅を含む建築物は各部屋のエアコン設置が当たり前になり、家電製品の種類も増えているといったことが原因だろう。したがって、省エネの実現には建築物への対策が急務となっているのだ。

このような背景から2016年4月、建築物の省エネ性能を表示するラベリング制度がスタートした。いったいどのような制度で、どのようなメリットがあるのかを解説しよう。

5段階の★で省エネ性能を表示するBELSマーク

今回スタートしたラベリングには2種類ある。1つは新築、既存問わず国が定めた建築物の省エネ基準をどれだけ上回っているのかを表示するBELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)マークだ。

各建築物の省エネ性能に応じて5段階の★を表示する。目安としては★2つが省エネ基準をクリアしたもので、★3つがそれより10%、★4つが15%、★5つが20%省エネ性能が高い(住宅の場合)。★一つに関しては既存(中古)建築物を対象としたもの。既存建築物は、たとえ省エネ改修を行ったとしても、現在の省エネ基準をクリアすることが困難な場合が多い。そのため、省エネ基準よりも10%低い性能で★を1つ付けることができる。

また、星の下には具体的にどの程度省エネ基準を上回っているのかを削減率で表示する。たとえ同じ★3つでも、1%単位で省エネ性能の差が分かる。

削減率の根拠は、一次エネルギー消費量だ。原油、太陽光、天然ガスなど自然から得られるエネルギーを一次エネルギーという。また、これらを加工して実際に建築物などで使用する電気、灯油、都市ガスなどを二次エネルギーという。一次エネルギー消費量とは、kWh(キロワットアワー)やL(リットル)といったそれぞれ異なる二次エネルギーの単位をMJ(メガジュール)またはGJ(ギガジュール)という一次エネルギーの単位に換算した建築物の総エネルギー消費量のことだ。

BELSマークは、全国各地にある評価実施機関へ申請し、同機関が評価を実施後に評価書と表示プレートが発行される。くわしくは一般社団法人 住宅性能評価・表示協会のサイトで確認してほしい。
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/bels/bels.html

BELSマーク例:5段階の★と一次エネルギー消費量の削減率で建築物の省エネ性能を表示するBELSマーク例:5段階の★と一次エネルギー消費量の削減率で建築物の省エネ性能を表示する

既存(中古)建築物の省エネ性能を認定する基準適合認定マーク

そしてもう一つのラベリングが基準適合認定マーク(eマーク)だ。これは竣工後の建築物の省エネ性能を、所管行政庁(※)が審査・認定するマーク。中古住宅などを省エネ改修して、省エネ基準に適合したことをアピールすることが可能だ。こちらにはBELSマークのように削減率の表示はない。2016年3月以前に竣工した建築物は、BELSマークの★1つ、2016年4月以降に竣工した建築物は★2つと同じ省エ性能が求められる。
(※)所管行政庁とは建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長、その他の市町村の区域については都道府県知事のこと。

国土交通省が行ったアンケートによると、住宅でBELSマークを取得したいとする事業者のうち40%が★3つ以上の取得を検討している。しかし、既存(中古住宅含む)の建築物の場合、★3つの取得は困難なことが多いため、基準適合認定マーク(eマーク)を取得する方を選ぶケースが多くなるかもしれない。

想定される取得ケースは、中古住宅の売却時だ。このマークがついてれば省エネな家だということが即座に分かるので、大きなアピールポイントとなる。また、賃貸物件でも、部屋を探す際に、このマークが付いていることが一つの判断基準になるのではないだろうか。今のところ申請を代行するサービスは見当たらないが、近いうちにホームインスペクター(住宅診断士)などが行うことを期待したい。

両マークとも、建売住宅や分譲・賃貸マンションなどの建築物の広告やパンフレットなどに表示可能だ。

基準適合認定マーク(eマーク)例。このマークがついてれば省エネな家だということが即座に分かる基準適合認定マーク(eマーク)例。このマークがついてれば省エネな家だということが即座に分かる

住宅も家電のように客観的に表示されている省エネ性能で選ぶ時代へ

では、建築物の省エネ性能を表示するメリットを考えたい。その最大のメリットは、購入・賃借検討者が「この家は冬でも暖かく過ごせる」「この建物よりあちらの方が冷暖房費がかからない」といったことが客観的な基準で判断ができるようになることだ。このような判断が一般的になれば、事業者としては競合物件との差別化が可能になり、消費者としてはより快適、ローランニングコストな暮らしが実現できる。そして建築物全体の省エネ性能が向上する。

また、BELSマークを見て、「どこかで見たような?」と思った人も多いだろう。そう、エアコンなど家電製品の省エネラベルだ。同ラベルの表示は2000年8月にスタートした。こちらも★の数で省エネ性能を表示し、国の省エネ基準の達成率も記載されている。現在ではこれを判断基準に家電を選ぶことが当たり前になっている。近い将来、新築・中古問わず住まいを購入する際は、家電のように省エネ性能を見比べて選ぶ時代が来るだろう。

今では店頭での表示が当たり前になっている家電製品の省エネラベル。</BR>住宅も家電のように省エネ性能を見比べて選ぶ時代が来るはずだ今では店頭での表示が当たり前になっている家電製品の省エネラベル。
住宅も家電のように省エネ性能を見比べて選ぶ時代が来るはずだ

2016年 05月31日 11時06分