フリーキャッシュの必要性

毎日300円が捻出できれば10年後には118万円2,600円に。手元に残すお金を増やすため、家計の見直しをしてみよう毎日300円が捻出できれば10年後には118万円2,600円に。手元に残すお金を増やすため、家計の見直しをしてみよう

マイホーム購入の資金計画の際に考えたいのは、手元に残すお金、いわゆる「緊急予備資金」だ。通常、生活費の6ヶ月分程度のフリーキャッシュを確保したいと助言しているが、それは収入が途絶えても緊急予備資金で持ちこたえ、その間に体制を整えようという意図である。だが、今回のように新型コロナウイルス感染症が拡大する状況では、体制を整えることは厳しい。住宅ローンの返済によって貯蓄残高が減っていくことを心細く思っている家庭もあるだろう。だが、緊急予備資金があれば、今日や明日に立ち行かなくなることはない。

住宅ローンを返済中の方だけでなく、マイホーム購入予備軍や賃貸暮らしの人にとっても、出口の見えない新型コロナウイルス感染症の拡大は不気味で、暮らしや家計への影響は計り知れない。政府は収入が減った世帯への支援策から、全国民への10万円給付に舵を切ったが、住居費は家族の人数に正比例するものではない。個々の環境と家計に応じた対策が必要となる。

〖今、必要なこと〗
自由にできるお金(フリーキャッシュ)を確保すること。
緊急予備資金を使い切らないよう、少しずつでも補充していくこと。


通常の住宅購入関連のコラムでは、何千万円という住宅ローンや何百万円という頭金のプランニングについてお伝えしているが、今回お伝えする家計の見直しは、何千何百何十円という話だ。だが、塵も積もれば山となる。毎日300円を捻出できれば、10年後には、118万2,600円となる。

〖塵も積もれば“宝の山”となる!〗
1日、300円。
1ヶ月で、9,000円。
1年間で、10万8,000円。
10年間継続し2%で複利運用すれば118万2,600円。


フリーキャッシュを確保するために、家計の見直しに取り組もう。

「収支」を最大化する

まずは、家計管理の基本を復習しよう。家計を構成する要素は、「収入」「支出」「収支」「資産」の4つだ(下図参照)。「資産」の中には、普通預金、定期預金、外貨預金、投資信託などの金融資産があり、緊急予備資金は緊急時にすぐ使えるよう流動性の高い普通預金等で管理することが望ましい。

フリーキャッシュを増やすことは、資産を殖やすことに繋がるが、その原資は「収支」である。収支は収入から支出を引いた残高のため、収入を増やして支出を減らせば、収支を最大化できる。平常時であれば、①収入を増やす、②支出を減らして収支を確保する、③収支を資産に組み入れて運用・投資で殖やすというプランが定石だ。だが、コロナショックで景気が後退する現状では、勤労収入を増やせる職種や業種、働き方は限られる。収入が激減していれば、④資産(緊急予備資金)を取り崩して収入を補てんし生活せざるを得ない。
※文中の①②③④は、下図参照。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響度にかかわらず誰もが取り組めるのは、②支出の見直しによる収支の増加作戦だといえる。その作戦は3ステップで遂行する。

Step1. 支出の把握&見える化
Step2. 見直し費目(ターゲット)の抽出と確定
Step3. 見直しプランの策定と実行


早速、作戦遂行のStep.1『支出の把握&見える化』にとりかかろう。

「収支」を最大化する流れ「収支」を最大化する流れ

支出の把握は、わからないことがわかればOK

Step.1『支出の把握&見える化』

今回の家計の見直しは、フリーキャッシュを増やすことが目的だ。前項で述べたとおり、支出を減らせばよい。折しも、緊急事態宣言が発動され、経済活動が制限されている状況だ。出歩けないため消費支出が減る。ストレスも溜まるがお金も貯まる。巷では証券会社の新規口座開設が増えたり、投資信託の購入が増えたり、株価が安いうちにと余裕ある個人マネーが動いている。

一方、外出できないからと健康器具、巣ごもり用のゲームや書籍、食料・日用品のまとめ買いなど、非常時ゆえの支出が増える傾向にある。この非常時が常態化する可能性もあり、専門家の中にも年内の平常化を危ぶむ声がある。さらに、企業の決算発表を見ていると、今年のボーナス支給は厳しそうだ。非常時の今、我が家の家計支出の傾向と対策を講じておこう。Step1.『支出の把握&見える化』のポイントは次のとおり。

『支出の把握&見える化』のポイント
◎わからないことがわかればOK
◎カード明細を見ればわかる、など参照先が明確ならばOK
◎わからないことが無くなることが、ゴール

【定期支出と不定期支出を区別する】
Step.1で肝心なことは、家計簿にいきなり書こうとしないこと。そして、金額の記入は後回しでよい。まずは、支出項目をすべてピックアップする。記録は、手帳、スマートフォン、パソコン、なんでもよい。お使いの家計簿アプリがあれば、活用しよう。


支出の中には、毎月決まって支出するものと不定期の支出いがある。「毎月」「毎年」「不定期」など、支払のタイミングで分類してみよう。分類の次は、支払い項目と金額の記入だ。項目は縦に書き出し、項目の右側をあけておき、次のステップで書き込む(見本を参照)。家計の見直し法は多々あるが、今回は定期支出にアプローチする。

【支出金額は、固定費と変動費を区別する】
金額の記入にあたって厄介なのは、変動費だろう。「今月は、たまたま外食が多かったから」「今月は、たまたま冠婚葬祭が重なったから」ともっともな理由が付くが、言外には「たまたまだから、仕方がない」という本音が透ける。突っ込みたいところだが、今回は固定費にアプローチするため、食費、交際費、外食費などは、「変動費」として分類しておけばよい。

ただ、「外食費は減額できる」「緊急事態のため、外食費は減るが食材費は増加しそう」などの見込みが立てば、目標額や予想額を備考欄に記入しておきたい。我が家の家計の把握に定型フォーマットは無い。柔軟に家計の状況に応じて工夫しよう。

【注意したい通販・宅配】
家計簿を見ていると、「共同購入」「宅配」などの項目に、食料品や日用品がまとめられていて、詳細がわからないケースがある。購入品は、食材や加工食品、化粧品や日用品とさまざまだが、カードで一括払いとなれば、個々の金額を記録するのは確かに面倒だ。だが、不要不急の品目購入の温床となるので注意したい。

複数人で購入していれば、自分だけが勝手に止めるわけにはいかないし、自分だけが少額というのも気が引ける。移動スーパーの類もそうだが自宅近くまで定期的に巡回してもらえることがありがたく、不要なものまで購入しがちだ。通販や宅配も定期配達は便利だが、注文が最低金額に満たないと発生する手数料や送料をゼロにしようと、優先度の低いものまで注文してしまう。

が、この際、共同購入や宅配においても不要不急は排除しよう。「本当に必要なものは何か」を検証できれば、注文時の納得度も増す。不要不急のオーダーを惰性で継続することは、フリーキャッシュを生み出す妨げとなる。非常時の今、余計な支出は避けたい。だが、緊急事態宣言で3密を避けたい買い物弱者にとって、宅配等は命を繋ぐ重要システムであることは言うまでもない。

【「何のお金が」「いつ」「いくら」「どこから」支払われるのか。を見える化する】
今回の家計見直し作戦のターゲットは、定期払いの固定費だ。それらは、財布からの現金払いよりも、口座引き落とし、クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード、スマホ決済などが多いだろう。スマートフォン料金とのおまとめ払いにも注意したい。カード明細や通帳、口座記録をチェックして、漏れがないようすべてを見える化する。少々面倒かもしれないが、これは見直しのための作業であって毎月延々とは続かない。安心してほしい。

支出項目一覧の例支出項目一覧の例

サブスク(定額制サービス)支出を見直そう

動画や音楽など、サブスクリプションサービスで利用していないものがないか見直してみよう動画や音楽など、サブスクリプションサービスで利用していないものがないか見直してみよう

Step2. 見直し費目(ターゲット)の抽出と確定

皆さんは、どれくらい定額制サービスを利用しているだろうか。トヨタ自動車がKINTOを発表し、新車にもサブスクが!と話題になったのが昨年。サブスク(サブスクリプション)といえば目新しいが、定期購読や頒布会、動画や音楽などの見たい放題、聞きたい放題となれば身近な話といえる。コロナショックで景気が低迷するなか、米ネットフリックスが「巣ごもり」による有料会員を増やし、2020年1~3月期で最高益を更新したのは象徴的だった。

一方で、「使いたい放題を申し込んだが、使っていない」、「飲食店の食べ放題会員だが、行ってない」などのケースも多く、今こそサブスク検証の好機だと考えたい。動画、ビデオ、CD、コーヒー豆、紅茶、食料品、飲料、衣類、日用品など、先に抽出した支出項目のうち、定期・定額払いを要チェック。「本当に必要なものは何か」という視点で検証し、利用頻度とお得度を評価しよう。遠ざかっているジムや習い事、休みがちな学習塾、読んでいない定期購読誌、使っていないアプリなど、定期・定額払いはすべてが対象だ。

Step3. 見直しプランの策定と実行

【低評価サービスは解約する】

支出項目の自己評価はいかがだろうか。お得度が70点以上であれば、満足&納得サブスクとして継続。だが、お得度が低いものは解約を検討しよう。「これっぽっちの金額だから続けていても」などと思わないこと。塵も積もれば宝の山だ。3ヶ月を過ごし問題が無ければ、今後もフリーキャッシュが確実に増額する。不具合があれば、再契約すればよい。

「もったいない」を避けるため、解約前には必ず利用規約を確認すること。解約以外のオプションでは契約プランの変更も検討したい。会員ランクがダウンしてもサービス内容に問題がなければ、会費が下がり支出が減る。数百円であっても確実にフリーキャッシュが増える。ほかに、年会費が発生しているものも要チェックだ。同じクレジットカード会社でも提携カードの種類によって、年会費が不要となる。契約中のクレジットカードを確認したい。いずれも、見直しの結果は、フリーキャッシュとなり、貯蓄の原資となる。

・会員プランの変更も要検討
・解約前に利用規約を要確認
・同サービスならば、年会費不要のカードへ切り替える

活用したい我が家のお宝

家計の見直しに加えて、商品券や図書券、ポイントなど、利用できるものがないか確認してみよう家計の見直しに加えて、商品券や図書券、ポイントなど、利用できるものがないか確認してみよう

自宅にいる時間が多くなっている今、我が家の宝探しもおすすめだ。引出しの奥に商品券や図書券などの金券がほったらかしになっていないだろうか。ご相談者に「我が家の宝探し」を提案したところ、存在すら忘れていた貯金箱に気付き、数千円をフリーキャッシュに充当できた、と後日連絡を頂いた。失念しているヘソクリなども思い出したいものだ。さらに、書籍や雑貨など、我が家に不用なものをフリマサイトに出品してキャッシュ化する方法もある。

【ポイントは貯めずに使う】
目的が無く貯めているカードのポイントもこの際、総動員しよう。割引になるポイントは、毎回使うことを提案したい。世の中には期限切れで失効するポイントが山ほどある。毎回使えば、毎回割引で購入でき、割引分だけフリーキャッシュが貯まる。失効も気にしなくて済む。「ポイントが貯まったらご褒美スイーツ」なども非常時の今は要検討。フリーキャッシュに充当したい。

【iDeCoやつみたてNISAは、一時停止や減額も可】
支出の見直しによるフリーキャッシュの確保について探ってきたが、iDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出額は一時停止や減額ができる。つみたてNISAも基本的には可能。契約中の金融機関に確認してみよう。将来の豊かな暮らしのためのお金を目前の必要性によって中断することは、十分に吟味したいところだが、現状を生き延びなければ将来もない。現在の緊急度と困窮度によって判断しよう。

【本当に必要なもの】
サブスクは、いったん見直すが、平常に戻れば、また始めればよい。非常事態の今、良くも悪くもライフスタイルの見直しを迫られている。大切なことの優先順位も変わるかもしれない。豊かな暮らしのため、いざというときのために、フリーキャッシュを準備しよう。フリーキャッシュは、本当に必要なものに充当すべきであって、それは貯金とは限らない。価値あるものにベストタイミングで使いたい。

2020年 05月19日 11時05分