各業界における対応策としてガイドラインが策定されている

一時期の拡大傾向は収まったように見えるものの、終息という根本的な解決はほど遠く、なお第2波・第3波の拡大が懸念される新型コロナウイルス。
各業界における対応策としてガイドラインが策定されているが、指針となっているのは、新型コロナウイルス感染症対策本部から公表されている「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(2020年3月28日公表、2020年5月25日変更)、また感染拡大を防ぐために厚生労働省から2020年5月4日に公表された「新しい生活様式」などがある。

国土交通省も、不動産業界団体向けに「不動産業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(業界団体向け) 」(2020年5月20日版)を通達した。
ガイドライン冒頭では「不動産業は、我が国の豊かな国民生活、経済成長等支える基幹産業として、その社会的使命を果たしていく必要があり(中略)不動産業は社会の安定の維持の観点から、緊急事態措置の期間中にも、継続を求められる事業として位置づけられている。(中略)一層感染防止のための取り組みを進め、新型コロナウイルス感染症のまん延を防止していく役割に加え、事業を通じた国民生活への貢献拡大という役割が求められる」(※国交省「不動産業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(業界団体向け) 」より引用)と述べられている。
ガイドラインは、事業者の店舗運営や取引等の実態に応じた感染予防対策を行う際の「講じるべき具体的な対策」について、以下の11の項目についてまとめられている。

1)感染予防対策の体制整備
2)健康の確保
3)勤務・通勤形態
4)事務所等における勤務
5)休憩・休息スペース
6)トイレ
7)設備・器具
8)従業員に対する感染防止策への啓発等
9)感染者が確認された場合の対応
10)事務所等における顧客との対応
11)取引物件の対象となる現場での対応

国交省「不動産業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」

事務所等における顧客との対応も今までと変化した対応を求められている事務所等における顧客との対応も今までと変化した対応を求められている

ガイドラインの基本的な考え方として「3つの密」を避けること、クラスター感染発生リスクの高い状況を回避することが述べられている。

1)の「感染予防対策の体制整備」では、国・地方自治体、不動産業界団体などを通じて新型コロナの正確な情報を常時収集すること、経営トップが率先して感染防止のための対策策定・変更について検討する体制を整えることに言及。2)の「健康の確保」3)の「勤務・通勤形態」では、従業員の体調や通勤に関するケアを。4)の「事務所等における勤務」では、事務所環境の整備について触れ、具体的な取組み事例として、消毒液の設置や体温管理などが紹介されている。5)の「休憩・休息スペース」では休憩時間中の3密を避ける対策、6)の「トイレ」7)の「設備・器具」ではハンドドライヤーの禁止やこまめな消毒などが、8)の「従業員に対する感染防止策への啓発等」では、新しい生活様式や感染予防、健康管理の強化の周知への取組みを促し、9)の「感染者が確認された場合の対応」は保健所、医療機関の指示に従う旨や複数の企業の従業員が出入りする施設では建物貸主の指示に従うことも追記されている。

10)の「事務所等における顧客との対応」11)の「取引物件の対象となる現場での対応」には、密にならないように、また万が一の感染の事態に備えるために顧客との面談の日時・場所・相手方等を記録するように記載されている。取組み事例としては、「来店を誘致するDMやチラシ配布等に代えて、メール、電話、インターネット、ビデオチャット等を活用し、対面での接客機会が増えないように工夫する」と記載され、今までは、対面が主であった顧客対応もできうる限りのリモート化を推奨している。

コロナ禍での不動産業、現場の状況とは

コロナのパンデミックが危惧され、自粛が行われた3月中旬以降は、不動産業界は通常であればまさに物件が動くピーク時にあたる。現場での市況・コロナ対応の状況はどうであったのだろうか。

多くの不動産業会員を抱える全国宅地建物取引業協会連合会(※以降、全宅連)の不動産総合研究所 鈴木氏は
「4月の市場動向データを見るとやはり、コロナの影響が出ており、成約件数、取引件数は下がっています。レインズの取引状況を見ても5月も引き続き減少傾向となっております。が、これは主に大手各社が外出自粛を受け、店舗閉めたりした影響が大きかったと思われます。一方、件数に対して価格はそれ程下がっていません。

賃貸についても、成約数が前年対比で落ちており、特に法人需要の減退が大きな影響を受けました。特にテナントを抱える物件については、家賃負担が苦しく、国から補助などが出ていますが、なかなか厳しい状況です。全宅連のモニター調べでも、賃料の支払いに関する相談は、4月時点での調査では4割くらいだったのに対し、5月上旬調べでは8割くらいまで増え、6割くらいが対応したとの結果でした。大家さんも物件のために借り入れをしていたり、光熱費や維持費・管理費等もかかるので、同様に痛みを受けている方々も多いです」という。

一方、新しい動きも出てきているという。
「在宅になったことにより、昼間の自宅周りの騒音が気になったり、自宅をリモートワーク対応するためリノベーションを考える例も増えてきています。職場と自宅だけを考えた今までの住まい選びではなく、仕事をするにもふさわしいかを含めた新しい住環境に目が向いてきていると感じます」(鈴木氏)

オンラインやリモート対応については、同じく不動産総合研究所 川島氏によると
「ITによる重要事項説明などへの対応もあり、コロナだからということではなく以前から業界として取り組むべきと準備はしていた」という。
具体的には、物件案内をオンライン上で行えるリコーのWEBサービス『THETA360.biz(シータサンロクマルビズ)』だ。

「コロナの自粛影響でなかなか対面での営業活動が行えないことなどにより、業務方法を見直す動きも出てきているようです。会員の非対面業務を支援するため、全宅連のグループ団体であるハトマーク支援機構が、(株)リコーと事業提携し、物件パノラマツアー作成サービスとして提供したのが『THETA360.biz(シータサンロクマルビズ)』です。不動産業界はIT化がなかなか進まないのでは、と思われていましたが、これを機に積極的に取り入れようという会員様も増えてきている状況です」(川島氏)という。

全宅連のグループ団体であるハトマーク支援機構が、(株)リコーと事業提携し、物件パノラマツアー作成サービスとして提供したのが『THETA360.biz(シータサンロクマルビズ)』全宅連のグループ団体であるハトマーク支援機構が、(株)リコーと事業提携し、物件パノラマツアー作成サービスとして提供したのが『THETA360.biz(シータサンロクマルビズ)』

全宅連のチェックリスト

国交省のガイドラインに見るように業界対応を求められているが、全宅連ではガイドラインをもとに、各社がそれぞれ自社の対策を考えられるようにチェックリストを作成したという。

「国交省のガイドラインは経団連のものを参考にした、とのことで内容はスペースの確保など大手企業を対象としているようなものもありました。全宅連では、中小不動産業者でも取り組めること・現地で案内する、店舗で接客するなど顧客と接触があることを前提とすること、および消費者等から住宅確保についての問合せがあった場合、国や行政の支援策についてもアドバイスできるように、と3つの視点を追加して策定しています」という。

実際のチェックリストでは、「社内体制」と「仲介業務上のチェック項目」にわかりやすく分けられている。
特に「仲介業務上のチェック項目」では、査定実査・媒介契約・募集広告・店舗接客・現地案内・重説・契約・ローン実行・引き渡しと一連の仲介業の場面ごとに対応項目のチェックができるようになっている。

『新型コロナウイルス感染拡大防止と事業再開にあたっての実務対応チェックリスト』の「取組べきこととチェック項目」『新型コロナウイルス感染拡大防止と事業再開にあたっての実務対応チェックリスト』の「取組べきこととチェック項目」

今後の業界の対応

コロナの影響はまだ続くと思われるが、今後の業界動向や役割についてはどうであろうか。まずは、市場動向については、同じく不動産総合研究所 岡崎氏によると
「今後についてですが、アベノミクスで恩恵をうけたのは富裕層と企業です。その結果商業地と都心の住宅地の価格が高騰しました。昨年からすでに供給過多の様相を呈していたホテルを中心に売却が増え、商業地は価格調整が入ると思います。実需市場は低金利が続けば底堅いと思いますが、立地や物件の条件で差が顕著になると思われます」という見解。

「ただ、金融が締まってきて建売業者や買取業者に対する貸し渋りが増えれば、実需市場もおかしくなる可能性はあり、若干の懸念は残ります」ともいう。

今後起こりえる社会に対応するための業界の役割としては、以下のように考えているようだ。
「こういった状況の場合は、社会的弱者にしわ寄せがきます。住宅確保要配慮者受入れについては、ガイドを作成しています。これは、一昨年度、高齢者の入居受け入れに関する研究会を立ち上げ、その成果物として取りまとめた冊子です。入り口となる不動産会社が高齢者の円滑な入居を行ううえで最低限確認すべき項目をまとめております。なお、同冊子は住宅を斡旋する際の対応ノウハウがメイン となっておりますが、今年度立ち上げる予定の研究会では、入居期間中~終了の内容を付加したものを取りまとめる予定です。
また、毎年のように起こる災害時にも業界として機能停止しないためにも今後はBCP(事業継続計画)観点も入れた業界対応も必要だと考えています」という。

住宅は健全な生活を支えるために、かけがえがないものだ。業界の様々な活動や動きも含めて、このコロナ禍で如何に対応できるかが、社会を支えるひとつの動きとなる。


■「新型コロナウイルス感染拡大防止と事業再開にあたっての実務対応チェックリスト 」
https://www.zentaku.or.jp/wp-content/uploads/2020/06/03.pdf

■ 「住宅確保要配慮者受入れガイド」
https://www.zentaku.or.jp/wp-content/themes/zentaku/pdf/research/report/research_project/archive2018/aged_society.pdf

『新型コロナウイルス感染拡大防止と事業再開にあたっての実務対応チェックリスト』の「仲介業務上のチェック項目」『新型コロナウイルス感染拡大防止と事業再開にあたっての実務対応チェックリスト』の「仲介業務上のチェック項目」

2020年 06月22日 11時00分