2016年4月に解禁? 「民泊」の動きが急になってきた

5年後の2020年に東京五輪が開催される。その是非をめぐってさまざまな意見はあるものの、国を挙げての一大イベントになることに間違いはないだろう。西暦ではちょうどキリのよい年でもあるため、この「2020年」を目標とする制度、政策も多いようだ。これから5年のうちに住宅をめぐる環境などで何が変わっていくのか、その主な動向を探ってみることにしたい。

まず、このところ急に動きが慌ただしくなってきたのは「民泊」だ。当初は国家戦略特区に指定された東京都大田区が2016年1月から、大阪府が2016年春をめどに「民泊」を認め、その実施状況を踏まえたうえで2017年に全国規模の解禁を目指すものとされていた。しかし、2015年11月下旬には「厚生労働省と国土交通省は2016年4月にも全国で解禁する方針」であることが報じられている。

「民泊」とは個人が所有する住宅の空き部屋などを旅行者に有料で提供するものであり、全国で急増する空き家の活用方法としても注目されている。2008年にアメリカで「Airbnb」(エアビーアンドビー)のサービスが始まり急速に世界へ広がっていること、円安によって訪日外国人が急増していることなどを背景に、国内でもその機運が高まっているといえるだろう。

しかし、民間の動きに対して国によるルールやガイドライン策定などの環境整備は後手に回り、旅館業法違反による逮捕や営業停止命令、書類送検などの事例も起きている。また、生活習慣の違いによる宿泊者と周囲のトラブル、ゴミや騒音の問題、マンションの空き部屋に不特定多数の旅行者が出入りすることによる生活上の不安など、さまざまな課題も提起されているようだ。マンションにおいては住民同士がよく話し合ったうえで、管理規約にルールを明記することも求められる。

いずれにせよ「民泊」が認知され、全国に広がっていくことは時代の流れだろう。これから数ケ月のうちに省令改正による基準の明確化が行われ、追って法改正もされるはずだ。しかし、それが過度に「民泊」を規制したり、過剰なサービスを求めたりするものになってはならない。ホテルや旅館と違うことは、旅行者自身が理解しているはずだろう。何よりも旅行者の利便性に配慮した内容とするべきだ。

日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」統計をもとに作成日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」統計をもとに作成

2016年4月には電力小売りが完全自由化される

2016年4月の電力小売り完全自由化まで半年を切り、新規参入を表明する企業も相次いでいる。2015年10月8日に経済産業省から公表された「小売電気事業者」の事前登録第一弾は40件で、その後10月26日に8件、11月9日にも8件が事前登録されている。それ以外に11月9日時点で119件の申請があるようだ。

50kW以上の高圧電力については、すでに10年前の2005年に自由化されているものの、店舗や工場などの対応は鈍く、新電力への切り替えはほとんど進んでいなかったようである。しかし、今回の一般家庭も対象とする自由化を前にした各種のアンケート調査などでは、消費者の高い関心を示す結果も多くみられる。

今後、2015年12月から2016年1月頃にかけて、各社が予定するサービス内容や料金体系の詳細が明らかにされる。その中身にも大きく左右されるだろうが、電気の契約を見直す家庭がかなりの割合にのぼることも考えられる。ただし、各社のサービス内容はさまざまであり、その比較検討がかえって難しい面もあるだろう。

なお、電力小売り自由化の詳細については「電力の完全自由化に向けた取組みが本格化してきた」および「2016年の電力完全自由化で、家庭の電気料金は下がるのだろうか?」の記事を参照していただきたい。ちなみに、電力の送配電業務を既存大手電力10社から切り離す「発送電分離」は2020年の予定となっており、それに合わせて国による電気料金規制も撤廃される予定だ。本当の意味での「完全自由化」は2020年である。

2017年4月の消費税率再引上げの前に駆込み需要が再発する!?

2017年4月には消費税率が8%から10%へ引上げられる。当初の予定を1年半先送りすることが決められた際に「景気条項」は削除されたため、よほどの事態が起こらないかぎり予定どおり増税が実施されることになる。

消費税の課税対象となる新築住宅などに対し、その引渡し時期に関係なく旧税率(8%)が適用されるのは、2016年9月30日までの契約分となる。前回の増税(2014年4月)前に比べれば小規模にとどまるとの見方もあるが、いずれにせよ2016年5月の大型連休あたりから徐々に駆込み需要が目立ってくるのではないだろうか。

2015年10月に明らかとなったマンションの杭問題が影を落とすものの、おそらく2016年の前半くらいには何らかの幕引きが図られ、マスコミや消費者の関心も遠のくだろう。新築マンションの販売現場では「杭問題が発覚した後の着工だから、かえって安心」といったセールストークも使われそうだ。杭問題を機に中古住宅へ向いた消費者の視線が、再び新築住宅に戻ってしまうかもしれない。

しかし、新成長戦略(2010年6月閣議決定)、日本再生戦略(2012年7月閣議決定)、日本再興戦略(2014年6月閣議決定)などにおいて、中古住宅流通・リフォーム市場の活性化が相次いで取り上げられ、その市場規模を10兆円(2010年)から20兆円(2020年)に倍増させるという目標も定められている。新築住宅市場の駆込み需要を横目にみながら、中古住宅市場の整備が次第に進められていくことだろう。

消費税率の再引上げ前に新築マンション需要が活発になる?消費税率の再引上げ前に新築マンション需要が活発になる?

不動産流通システムの改革は徐々に具体化している

中古住宅市場を活性化させていくためには、従来の枠組みにとらわれず新しいシステムを取り入れていくことが肝要であり、民間でもインターネットを活用した取組みが活発になっている。その一方で、国は「不動産流通システム改革」として「消費者にとって必要な情報の整備・提供」「不動産の価格の透明性の向上」「先進的な不動産流通ビジネスモデルの育成・支援と成功事例の普及」「宅地建物取引業者及び従業員の資質の向上」「住み替え支援など多様な手段による既存ストックの流動化の促進」を掲げ、さまざまな環境整備を推し進めている。

その中の一つに「情報ストックシステムの構築」がある。これは不動産に関する法令制限やハザードマップなどの防災関連情報、地域に関する情報など、従来はさまざまな機関に分散していた各種情報を集約し、宅地建物取引業者から消費者への情報提供を容易にしようとするものだ。2015年度はプロトタイプシステムの試行運用として、横浜市内の宅地建物取引業者で検証が実施されている。まだ課題は多く収集する情報の見直しも必要だろうが、2016年度から全国展開に向けたシステムの検討・開発を行い、2018年度以降に本格運用が開始される予定だ。

また、オンラインによる「IT重説」(重要事項説明)の社会実験が、2015年8月31日から2017年1月31日までの予定で行われている。登録事業者として246社が社会実験に参加しており、その対象は「賃貸取引」および「法人間取引」だ。社会実験の後に問題点などを検証し、本格導入へ向けた議論がされるだろう。そのスケジュールは現時点で明らかでないものの、それほど遠くない時期に解禁されるものと考えられる。

新築住宅における省エネ基準への適合義務化は2020年の予定

住宅に対する「次世代省エネルギー基準」は2015年4月に完全施行された。これがすべての新築住宅について義務化されるのは2020年の予定だ。さらに、2020年代早期に一般家庭を含めてスマートメーター化すること、家庭用燃料電池(エネファーム)は2020年に140万台の普及を目指すことなど、省エネ化やクリーン・経済的なエネルギー需給の実現に向けた目標も掲げられている。オフィスビルや商業施設などにおける省エネ基準適合義務化は住宅よりも先行しているが、いずれも2030年時点の新築住宅・新築建築物で「ゼロエネルギー化」の実現を目指すこととされた。

また、2009年6月にスタートした「認定長期優良住宅」だが、2020年度には新築住宅全体における割合を20%に引き上げる目標も定められている。その一方で「認定長期優良住宅」よりも普及に遅れが目立つのは、2012年12月に導入された「認定低炭素住宅」だ。制度運用開始から2015年9月までの累計認定戸数は一戸建て住宅が6,514戸、マンション以外を含む「共同住宅等」が4,927戸にすぎない。

新築住宅で2020年に適合が義務づけられる「次世代省エネルギー基準」と「認定低炭素住宅の基準」は異なるが、省エネ性能などを高めることによる建築コストのアップが、消費者から十分な理解を得られていない側面もあるのだろう。2020年の義務化以降、省エネ以外の住宅性能が落とされることのないように願いたいものだ。既存住宅や建築物における省エネ改修の促進も大きな課題となる。

2020年に開催される「宴」の後には、国内における世帯数の減少が避けることのできない課題として伸し掛かってくる。2020年を挟んだ今後10年間は、住宅市場にとっても大きな変革の時期となるだろう。

2015年 12月19日 11時00分