空家だけでなく、山林、田畑でも大きな問題が

前回、【空家に関する相談は「活用」が一番の問題?~司法書士会連合会が取り組む空家対策①】で空家対策に関することについて日本の司法書士を束ねる日本司法書士会連合会の理事の今川嘉典氏と理事の峯田文雄氏に空家と司法書士の関わりについてお話を伺ってきた。空家だけでなく山林、田畑や相続に関する時代の変移についても伺ってきたので今回お届けしたい。

住まい以上に進まない山林や田畑の相続登記

所有者が分からない山林、田畑が増えている所有者が分からない山林、田畑が増えている

空家とは別に山林や田畑の放置も大きな問題となっている。

「空家はまだ見える現状なので問題視されていますが、実は土地のほうがもっと深刻です。権利は見えないものなので山林や田畑など、普段あまり目にしないところで大きな問題になっています」と今川氏は語る。

地方の山間部などで、樹木が伸び荒れ放題の山林や原野になった田畑が多くある。実はこうした山林、田畑はまず民有地か国有地かという境も分かりにくく、そのうえ明治時代の登記のまま残っている土地も多い。そのため、所有者を特定するのが困難だという。次代に引き継ぐ際、相続登記をしないまま放置していることが原因のようだ。

何故、山林や田畑に関しては住まい以上にきちんとした相続登記が進まないのだろうか?

勘違いから生まれる非相続

左:今川理事、右:峯田理事左:今川理事、右:峯田理事

峯田氏はそうした進まない理由として「勘違い」が挙げられるという。

「山林や田畑などは相続登記しないで、住宅だけしてくれという依頼がありますね。こうした理由として勘違いからきている場合があると思います。登記すると管理や固定資産税など負担がかかるから、登記しないで放置というケースなのでしょうか。登記しないほうが後々、まわりにも本来の相続人にも迷惑がかかるので、登記したほうがいいと思います。また、何代も前から相続登記していない山林があり、先代がやらなかったからやらなくてもいいだろというケースもあります。しかし、登記しないで置いておいたら自分達のものでなくなるという誤解からのイメージであり問題を先送りしているだけなので、きちんと相続登記してほしいですね」(※)

自分で管理ができないといっても、現在では山林組合に管理をお願いするという選択肢もでてきている。また、山林と農林については現在「斡旋」制度が整い、森林組合などを中心に林業に従事する人などに山林を貸すなどの制度もあるという。

こういうケースもあり実は自治体によっては、空家よりも山林、田畑の所有者確認について積極的に行っているところもあるようだ。どちらにしても、現在空家に目が行きがちだが日本の土地全体で考える必要があると思う。

※相続人は相続開始があったのを知ったときから3カ月以内に相続の承認または放棄する必要がある。家庭裁判所に相続放棄の申し立てをしてきちんと受理してもらわずに期間が過ぎると単純承認(通常の相続)をしたものとみなされ、プラスの財産もマイナスの財産も相続することになる。そのため、相続登記しなかったからといって相続放棄になる訳ではない。

「相続」から「争続」へ

空家だけでなく、山林、田畑と、日本全体の土地を見ると、所有者が分からない土地が年々増えている。地方創生と声高く謳っても結局のところ一見たくさんの土地があるように見えて、活用できる土地がなければ住民は住むこともできず仕事もできない。その根本の原因は、今までもある通り「相続」だ。

相続についてここ10年大きく変わってきたという。特徴的なことなのが「遺言」の数の増加だ。遺言があれば何も騒動なく次の人に受け継げると思うが、逆に遺言の増加に伴い「相続争い」も増加しているという。

「相談件数は年々増えています。特に増えたのは遺言です。また、遺言があっても遺留分のことで争いに発展するケースもあります。相続という言葉が、最近では『争続』という言葉に変わってきてしまったような印象も受けます」(今川氏)

しかし一方でこうした相続は価値のある家のみで、価値のない家に対しては親族間での押し付け合いがあるという。こうした風潮はここ10年間で特に感じるようになったとのこと。家族と家の関係が崩れた結果からこうした事が出てきたようだ。以前は実家に残った人が相続すればいいという傾向があったが、最近では価値のある資産であれば相続人は「権利」を主張することが多く遺産分割調停が長引く傾向にある。

全国の司法書士総合相談センターの相談件数の推移全国の司法書士総合相談センターの相談件数の推移

日本の国土はどうなるか?

日本の人口がこのまま減少すると、2060年時は予測で約9000万人になっているという。大幅な減少は否めないが、しかし例えば明治元年(1868年)の頃で言うと日本の人口は約3500万人。その頃も国として日本はきちんと成り立っていたのだから、人口減においては対応ができなくなる訳ではないだろう。

しかし、それよりも気になるのが空家を始め、山林、田畑の土地活用だ。2060年時に、今よりもさらに所有者不明の土地が増えて、人口は減るが実質使用できる土地が今よりもないという状況は非常に問題である。空家特別措置法により、空家対策に関しては一歩進んだ形になったが、しかしまだまだ抜本的な解決に至っていない。

空家に関しても土地に関しても、例えば相続の間違った情報認識や家や土地の流通問題など、様々な要素が絡む。地方創生の中、こうした問題解決も含めてすすめないと流行だけで終わってしまう感も否めない。現在の団塊世代層が亡くなったときに、更にこうした問題が顕著化するだろう。

国だけでなく日本司法書士会連合会に今回お話を伺ったが、様々なところで国家的な問題に対する対策が練られている。私たちも国任せ人任せにせずに、例えば相続などまずはきちんと正しい情報を知ることから始めてみたい。

2015年 10月21日 11時08分