環境問題に対する知恵が集結するエコプロダクツ2015

大阪会場でも話題だった「いらないものガチャ」。<br />自分のいらないものと、他の人のいらないものを無作為に交換することができる大阪会場でも話題だった「いらないものガチャ」。
自分のいらないものと、他の人のいらないものを無作為に交換することができる

2015年12月10日から12日の3日間、東京ビッグサイトで「エコプロダクツ2015」が開催された。
深刻化する環境問題に対し、環境性能の高い製品開発をする企業や、環境負荷低減に取り組む自治体が一同に集まるこのイベントには、総勢702社が出展し、総来場者数は169,118人(※主催者発表)にのぼった。
会場には、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」に登場する”ごみをエネルギーとして走るデロリアン”が登場。イベント参加者から不要になった衣料品を回収して、デロリアンの燃料にリサイクルする企画や、自分のいらないものと他の人のいらないものを無作為に交換しあう「いらないものガチャ」など、ユニークな展示も見られた。
また、初日には木材の優れた利活用を顕彰する「ウッドデザイン大賞2015」の授賞式も開催され、会場の注目を集めた。

環境問題は、2015年11月末からパリで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、世界全体で人間活動による温室効果ガス排出量をゼロにしていくこを目指す『パリ協定』が採択されるなど、全世界が取り組むべき課題として挙げられている。
そうした状況の中、日本政府は、環境や高齢化対応など人類共通の課題にチャレンジする11の市町村を、持続可能な社会の実現を目指す「環境未来都市」として選定している。

今回は、エコプロダクト2015の模様を①環境未来都市に選定されている横浜市と北海道下川町の取り組みの発表、②「ウッドデザイン大賞2015」授賞式の全2回の連載でレポートする。

「持続可能な都市づくり」を歴史で体現してきた横浜市

これまで横浜市が経験した環境問題、そうした困難を乗り切るために取り組んだ事業を発表する横浜市環境未来都市推進 課長 岩岡 敏文氏これまで横浜市が経験した環境問題、そうした困難を乗り切るために取り組んだ事業を発表する横浜市環境未来都市推進 課長 岩岡 敏文氏

1859年の開港以降、震災・戦災からの復興や、高度経済成長期の急激な人口集中による住環境の悪化など、多くの困難を経験してきた横浜市は、1980年代のみなとみらい21地区の開発をはじめ、時代の変化にあわせて都市的な機能や魅力を高める戦略を実行し続けてきた。
横浜市の歴史は、まさに「持続可能な都市づくり」の歴史そのものといえる。
横浜市の人口は戦後70年で3.5倍以上に膨れ上がっており、それに伴い温室効果ガスの排出量、エネルギー消費量も増加するなど、大幅な温室効果ガス排出の削減が課題である。

この課題解決に向けて、横浜市が民間企業等と協働で取り組んでいるのが「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)」である。
2010年に経済産業省から「次世代エネルギー・社会システム実証地域」として選定を受けた取り組みで、横浜市がエネルギー関連事業者や電機メーカーなどと連携し、大規模な既成市街地でのエネルギーの最適化に向けたシステムの導入や実証を行っている。この取り組みを通じて、2013年度までにHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を4200台、太陽光パネルを37MW(メガワット)、電気自動車を2300台導入するなど、当初の導入目標を1年前倒しして達成した。

さらには2013年から、みなとみらい21地区でエネルギー、エコ・モビリティ、アクティビティ、グリーン、ICT 等の要素を中心に「世界を魅了する最もスマートな環境未来都市」の実現に向けた「みなとみらい2050プロジェクト」に公民連携で取り組んでいる。地球温暖化対策や、東日本大震災を教訓としたBLCP(事業生活継続計画)への対応など、2050年という将来に向けた、まちの価値をより高める取り組みが今まさに動きだしている。

森林資源の活用で「森林未来都市」を目指す北海道下川町

自らも一の橋地区の住民だという下川町環境未来都市推進課 仲埜公平氏自らも一の橋地区の住民だという下川町環境未来都市推進課 仲埜公平氏

横浜市と同様、低炭素化やエネルギー自立を積極的に取り入れているのが、北海道下川町である。
人口3500人、町面積の約9割が森林に覆われており、林業や林産業といった一次産業を主要な産業としている。

「超高齢化が進み、鉄道も産業もなくなってしまった田舎の一地域が、環境未来都市の選定を受け施策を進めたことで、町民の快適で低炭素な暮らし、さらに産業の活性化の実現など、その成果が徐々に現れている。田舎には田舎の特徴を活かしたまちづくりがある」と語るのは、下川町環境未来都市推進課の仲埜公平氏である。

特に、林産業の最盛期だった昭和35年には2000人以上が住んでいた一の橋地区では、現在人口が140人にまで減少し、過疎化、高齢化が著しく進んでいる。しかし、平成25~26年にかけて完成した森林バイオマスエネルギーによる自給型集合住宅「一の橋バイオビレッジ」の完成により、まちの衰退を打開する兆しがみえてきたという。
ここには現在、若者から高齢者の26世帯が暮らしており、世代を超えた交流の創出に加え、これまで町の主要エネルギー源であった重油から、林地残材や端材などの生物資源を燃やすことで熱などのエネルギーとして利用する「木質バイオマスエネルギー」に転換したことで、エネルギーの自給を実現している。

現在は、約6割の公共施設の熱源を森林バイオマスエネルギーで賄っており、平成26年度においては約1600万の経費削減につながったという。
仲埜氏は、「このエネルギーの転換により捻出した経費削減の差額を、町民の中学生まで医療費無料化や2歳未満の子供がいる保護者への商品券交付などの費用に充てるなど、町民に対してバイオマスを利用することで豊かに暮らせているという実感を感じてもらいたい」と語った。
下川町は今後、より大きなエリアへの展開を図るためのモデル構築を実践中である。

棚田再生で田舎から日本を変える  岡山県英田上山棚田地区

イベントステージでは、岡山県美作市(旧英田町)上山地区で広さ100ヘクタールの棚田再生を手掛ける西口和雄氏と、この地域の棚田再生支援を続ける安倍昭恵内閣総理大臣夫人によるトークセッションが開催された。「田舎から日本を変えよう!」というテーマで”最先端の田舎”と呼ばれるユニークな地方創生術が語られた。

棚田は、山の傾斜地に階段状に作られた稲作地で、段状になっていることで雨水や灌漑用水が上から一段ずつ田を潤していくため水の無駄が少ない。また、高い保水機能によって水資源の確保につながるなど、人の暮らしや環境に有益な機能を備えている。
しかし、傾斜地での過酷な労働や中山間地域の過疎、高齢化により”活用されている棚田”は減少し続けている。1993年に農林水産省と日本土壌協会が行った調査によると、当時の国内の全水田面積の約8%が棚田を占めているものの、そのうちの12%は既に耕作放棄されていたという。

この状況に対し、西口氏は大手ゼネコンを退職後、自身のプロジェクトでもあるNPO「英田上山棚田団」の活動において、棚田再生に取り掛かることになる。
エネルギーに依存しない地域の自立を目指し、坂道を移動する高齢者の移動手段としてセグウェイを導入し、緊急用のヘリポートを建設するなどユニークな取り組みを行っている。
こうした活動によって20名もの移住者を呼び寄せ、同時に活動の支援者も増えているという。その支援者の一人が安倍昭恵氏である。

「地方創生の時代、日本の活性化にはそれぞれの地方によるユニークな取り組みが必要と考えているが、その一つのモデルがこの上山棚田地区だった。田舎に行くと、都会の人と比べて住人の一人ひとりが、"自分がこの地域にいなければ"という自分なりの役割を見出しながら生活しているように思う。地方から日本を変えるためには、各々の地域が自分たちの持ち味を見極めて、自分たちの力でどうにかしていくという開拓者の精神が必要なのではないか」と語る安倍氏。

こうした取り組みは、同じように棚田を有する過疎対策に課題を抱える台湾の八煙聚落と姉妹提携といった活動も評価され、2013年の日本ユネスコの「プロジェクト未来遺産」にも登録された。
活動の余波は上山にとどまらず、周辺地域の梶並地区や東粟倉地区などにも伝搬してるといい、"過疎高齢化地域であっても、持続可能な中山間地の地域づくり"のモデルとして、今も棚田の再生を続けている。

岡山県美作市(旧英田町)上山地区の棚田再生に対する想いを語る<br />
安倍昭恵内閣総理大臣夫人(左)とNPO法人英田上山棚田団理事 西口和雄氏(右)
岡山県美作市(旧英田町)上山地区の棚田再生に対する想いを語る
安倍昭恵内閣総理大臣夫人(左)とNPO法人英田上山棚田団理事 西口和雄氏(右)

与えられたエネルギーを使う時代から、主体性をもって考える時代へ

エコプロダクツ2015のテーマは「わたしが選ぶクールな未来」。
イベントを主催する日本経済新聞社の丸山利之氏 は、このテーマに対し、「地球温暖化を止めるような選択肢を見つけ、温暖化の防止に取り組むのは自分自身なのだという主体性を持って欲しいというメッセージを込めている」と述べた。
今回は、環境未来都市に選定された自治体と、限界集落になりつつある地域の取り組みを紹介したが、いずれも「持続可能な社会」を目指す上で求められることは、エネルギーを使用する一人ひとりの意識ではないだろうか。

いまや、供給されるエネルギーを一人ひとりが好き勝手使用するのではなく、いかにエネルギーをコントロールして使用していくか、という時代を迎えている。
今回紹介した地方におけるユニークな取り組みに、今後も注目していきたい。

次回は、本年度が第1回目の開催となった「ウッドデザイン賞2015」の授賞式の模様をお伝えする。

2016年 02月21日 11時00分