山の手住宅街の人気の凋落

坂道を登った閑静な住宅街の
人気は落ちている?坂道を登った閑静な住宅街の 人気は落ちている?

バブルと言われた平成2年位迄は「山の手の閑静な住宅地」の人気が高く、多くの人がそのような街で住む事に憧れを感じた。例えば関西圏で今でも住宅地として人気の高い阪神間。平成2年公示地価(住宅地)をみると、そのトップは芦屋市山手町。阪急「芦屋川」駅から山の手に向かう坂道を登り650mの「邸宅が建ち並ぶ閑静な高級住宅地域」である。上位10地点には、JR「芦屋」駅から約3,000mも離れた六甲山の麓、豪邸街として著名である芦屋市六麓荘町も含まれている。

ところが平成26年公示地価(住宅地)をみると、山手町、六麓荘町ともに阪神間の公示地価ランキングでベスト10圏外。阪神間以外の人気住宅地でも同様の傾向は見て取れ、北摂でも豊中市の丘陵部に位置する邸宅街東豊中町3丁目(地下鉄「千里中央」駅1800m)が平成2年豊中市内公示地価(住宅地)でTOPだが、平成26年では同じ東豊中町では2丁目(地下鉄「千里中央」駅2100m)の12位が最高。「坂道を登った閑静な住宅街」の人気凋落は数字からも見て明らかだ。

今の売れ筋は「都心部、駅近、フラットアクセス」

「山の手の閑静な住宅地」に変わって、昨今の人気エリアはどこか? 新築分譲マンションに限れば「都心部・駅近・フラットアクセス」である。ターミナル駅近接タワーマンションの売行きが良い事からもその傾向がわかる。

駅近物件の人気の高さは今も昔も変わらない傾向だ。「山の手の閑静な住宅地」が人気の高かった時代でも「駅近物件」のニーズはあった。しかし都心部ではなくその人気は郊外中心。それが今では都心部のマンション特にタワー物件の人気が高い。関西ではJR「大阪」駅徒歩圏である「グランフロント大阪オーナーズタワー」が特徴的な事例であるが、大阪~淀屋橋、本町、神戸~三宮等の駅近ビジネス立地のタワーマンションが数多く供給されており販売好調な物件も多い。

今のトレンドの真逆〜山の手住宅街は「駅遠、坂道、買物不便」

しかし、面白いものである。「山の手の閑静な住宅街」といえば、1.駅の喧噪から離れている、2.坂を上った高台エリア、3.周辺の建物は住宅のみ、というのが通り相場だ。かつて人気のあったこの3つの要素がいまや完全にネガティブ要素となってしまっている。

「1.駅の喧噪から離れている」に関しては、決して喧噪である事がプラスではないものの駅から遠いという事がマイナス要素。バス便の戸建て街ではバブル時に新築された築25年程度の一戸建ては「古家付き建物」として土地値相当額で売り出されている物もあり、物件数も多い。

「2.坂をあがった高台エリア」についても「山の手ステイタス」が無くなった今は、あまりない。眺望を求めるのであればタワーマンションの方が勝る。

「3.周辺の建物は住宅のみ」は裏を返せば「コンビニの一件も無い」という事だ。バブル時の平成2年(1990年)は全国にまだ17,408店しかなかったコンビニも、平成26年(2014年)5月末には50,480店と当時の4倍近い普及率。「あれば便利」だったコンビニも、いまではATM、宅配、各種支払い窓口等々の機能を揃え「無ければ困る」存在だ。若者だけにとどまらず、ファミリー層から高齢者迄コンビニが無いと生活に不便をきたす。

高齢化により、住宅のトレンドが変わった!

高齢者にも人気のタワーマンション高齢者にも人気のタワーマンション

トレンドが変化した理由は色々と考えられる。マンションストックが積み上げられたため本来は手が届かなかったエリアの物件に手が届くようになった、規制緩和や都市部の土地の流動化が進み「都心部・駅近」物件の供給が増えた等々。

しかし、有力な理由の一つとして考えられるのが高齢化だ。「駅遠=駅までの距離が遠い」「坂道=坂道を歩く」「買物不便=買物施設が周辺にない」という状況は、高齢者にはとりわけ辛い。物件毎の差もあるがタワーマンションの購入者には高齢者が比較的多いときく。「タワーマンション節税」等の需要もあるが、兵庫県宝塚市、大阪府高槻市等の「ターミナル駅前タワー」物件は、当該駅のバス便戸建ての買替えを伴う高齢者の需要も多かった。

住宅を資産と見るか、消費材と見るか?〜まずはそこから考えてみる

空き家は増え、人口が減り、高齢化はさらに進む。今後この傾向は加速する事こそあれ逆進する事は無いだろう。

ただし、それは日本全体を見渡しての事であり、市区町村や町丁目単位で見た場合、その進み具合に多少のまだら模様は出る。「山の手の閑静な住宅地」といっても、比較的人気を保っているところもあれば、空き家だらけで相場も散々に下がっている街もある。また、「駅近・フラット」エリアであっても、駅そのもののポテンシャルが落ち、相場がふるわない駅も少なくない。もちろん、「駅近・フラット」エリアのなかでも一等な都心部ではここ数年で価格がかなり上昇している。

住宅を資産と考えず、消費材と割り切ってしまう分には「山の手の閑静な住宅地」や「ニュータウン物件」を手当てするという選択肢は面白い。現実に、格安で手に入れた「古家付き土地」の「古家」をリノベーションして生活している例もあるし、ニュータウンで「隣接土地の2区画買い」をして遊び場に、菜園に、等々に活用している人もいる。

ただ、そのような利用方法では「出口」が考えにくい。次の「出口」すなわち売買もしくは賃貸を考えるのであれば、「都心部・駅近・フラットアクセス」だけを追うのではなく、もう一歩突っ込んで人口構成(高齢化率が低いエリア)や空き家率(空き家率が周辺よりも低い=需要が高い)も考慮しておきたい。

人口減少と高齢化の時代を迎え、不動産の資産価値を維持するには難しい時代である。一方、かつての「高級住宅街」を手に入れることもできる今後は、住宅取得のチャンスでもある。都心のタワーマンションには億ションがある一方、リセールバリューを考えなければ500万円程度でも都心通勤圏の住宅が手に入る。住宅を資産と見るか消費材と見るか? まずそこから考えてみることで選択肢は一気に広がる。

2014年 09月04日 11時12分