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不動産を相続したらどこに相談する?無料の窓口や費用相場を徹底比較

相続が開始されると、相続財産の確定や遺産分割協議、相続放棄する場合はその対応など、さまざま手続きが必要になります。

相続手続きには法律や税金、登記などの専門知識が必要になります。また、相続人同士の調整が難しくトラブルに発展するケースも少なくありません。これから相続手続きを進める予定のある人のなかには、「専門家に相談したい」と考えている人もいるでしょう。

相続に関して相談できる窓口は区役所・市役所や弁護士、司法書士、税理士など多岐にわたります。なかには無料で利用できるものもあり、相談先ごとに対応できる内容や費用相場が異なる点を理解しておくことが大切です。

この記事では、不動産相続に関する代表的な相談先を一覧で比較し、それぞれに相談できる内容・タイミング・費用相場を詳しく解説します。

この記事で分かること

  • 相続に関する内容ごとの主な無料相談先
  • 不動産相続で無料相談する流れ
  • 不動産相続に関する相談をするときの注意点

もくじ

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不動産を相続したらどこに相談する?比較一覧表

以下は、相談先ごとに相談できる内容と依頼した場合の費用相場をまとめたものです。

次章からそれぞれの相談先について詳しく解説します。

相談先 相談できること 依頼した場合の費用相場
区役所
市役所
相続全般
(相談内容に応じて各士業が担当)
相談のみ(業務の依頼は不可)
弁護士 相続全般。相続トラブルにともなう調停や審判、代理は弁護士のみ可能 着手金、報酬金について、依頼したことで得られた経済的利益をもとに計算(後述)
司法書士 相続不動産の登記手続きを中心に、相続人や相続財産の調査も可能 相続登記:6~8万円※
相続人の調査:2~4万円
相続放棄の申述書作成:4~5万円
遺産分割協議書の作成:2~4万円
税理士 相続税の申告・納税に関すること。相続人や相続財産の調査も可能 遺産総額の0.5~1.0%
行政書士 相続に必要な書類の収集・相続関係図、遺産分割協議書の作成など 相続人・相続財産の調査:約3〜10万円
相続関係説明図作成2〜3万円
金融機関や証券口座の解約・変更:2〜3万円/行
自動車の名義変更:8,000〜1万円/台
税務署 相続税の申告・納税に関すること 相談のみ(業務の依頼は不可)
銀行 相続全般 相続財産の0.数%〜数%(銀行によって異なる)
ハウスメーカー 土地活用の相談(アパート建築、駐車場経営など) 数百万円〜数千万円単位
不動産会社 相続不動産の売却や査定、買取相談 売却時に仲介手数料(売却価格の3%+6万円+税)
※売却価格400万円以上の場合の速算式

※1土地1筆、建物1棟の所有権移転登記の場合

費用は依頼した場合の報酬の目安であり、必要書類の入手費用や登録免許税などの実費は含まれません。また、依頼先や相続時の状況によっても異なります。

無料相談先1.区役所・市役所|不動産相続全般

不動産を相続したとき、最も身近な相談窓口といえるのが区役所や市役所です。区役所・市役所に相談するメリット・デメリットとして、以下が挙げられます。

メリット デメリット
● 内容にあわせた専門家(弁護士・司法書士・税理士など)に相談できる
● 公平でフラットなアドバイスを受けやすい
● 相談は無料で利用可能
● 相談時間が30分程度に制限されているケースが多い
● 同じ内容で繰り返し相談できない場合がある
● 実際の業務依頼はできない(登記や申告などは不可)

法律や税金に関する無料相談を設けている自治体も多く、まずは気軽に足を運べる点が特徴です。ここでは、以下3つのポイントについて解説します。

  • 区役所・市役所に相談できること
  • 区役所・市役所に相談すべきタイミング
  • 区役所・市役所に依頼する場合の費用相場

区役所・市役所に相談できること

区役所や市役所では、相続に関する基本的な疑問や全体像を把握するための相談が可能です。

自治体は市民サービスの一環として市民相談室や法律相談窓口を設けており、弁護士・司法書士・税理士などの専門家が日替わりで対応している場合があります。専門家に直接依頼する前に、広く中立的な意見を聞ける点が特徴です。

【具体例】
● 東京都中央区役所:弁護士による生活全般の法律相談を実施
● 東京都北区役所:オンラインでの法律相談に対応
● 神戸市役所:市民相談室で相続や税務の無料相談を提供

※参考1:法律相談|東京都中央区役所
※参考2:区民相談室|東京都北区役所
※参考3:市役所(市民相談室)での相談(無料)|神戸市役所

区役所・市役所は、どの専門家に依頼すべきかまだ決めていない段階で利用するのに最適な窓口と言えます。

区役所・市役所に相談すべきタイミング

相続には登記や税申告、遺産分割など多岐にわたる業務があり、誰に依頼するのが正しいか分からないことも多いため、相続の手続きに着手する前段階や、全体の流れを整理したいときに相談するのがおすすめです。

役所の相談窓口では、依頼を前提としない立場からフラットにアドバイスをもらうことができ、判断の手助けになります。

【相談すべきタイミングの例】
● 不動産の名義変更手続きの依頼先が分からないとき
● 相続税がかかるかどうか確認したいとき
● 遺産分割協議を始める前に全体像を整理したいとき など

役所での相談はあくまで”道しるべ”として利用し、実務的な依頼はその後に専門家へ進むのがスムーズです。

区役所・市役所に依頼する場合の費用相場

自治体に居住する住民であれば、費用をかけず無料で相談できます。

区役所や市役所は、行政機関の市民サービスの一環として相談業務を行っています。法律や税務上の専門的な内容に関する助言を行い、相談者自身による自主的な解決を支援することが目的です。

そのため、区役所や市役所で相談した弁護士などに仕事を依頼することはできず、区役所や市役所から専門家をあっせんしてもらうことは不可能です。専門家の紹介を希望する場合は、管轄エリアの弁護士会や司法書士会などに問合せてみるのも良いでしょう。

無料相談先2.弁護士|不動産の相続トラブル

相続に関して専門的かつ幅広く対応できる職業の一つが弁護士です。特に相続人同士の争いや遺産分割協議でもめている場合は、弁護士への相談が欠かせません。

弁護士に相談するメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリット デメリット
● 相続人同士の紛争解決を相談できる
● 遺産分割調停や審判の代理人を依頼できる
● 相続人や相続財産の調査も依頼できる
● 遺言の有効性や遺留分侵害請求など、裁判手続きまで対応可能
● 無料相談は初回のみで、2回目以降は有料になる場合が多い
● 相続税申告や相続登記に対応できる弁護士は少ない
● 業務依頼すると費用が高額になりやすい
● 費用体系が複雑で、事前見積りが必須

弁護士の業務範囲は幅広いため、ホームページやSNS、著作物なども参考にしながら相続問題の解決実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

ここでは、以下の3つのポイントについて解説します。

  • 弁護士に相談できること
  • 弁護士に相談すべきタイミング
  • 弁護士に依頼する場合の費用相場

弁護士に相談できること

弁護士は相続分野において唯一、裁判や調停で依頼者を代理できる資格を持つ専門家です。司法書士や税理士では対応できない、法的な判断や紛争を伴うケースに対応できます。

【具体例な相談内容】
● 遺産分割協議でもめて話し合いが進まない場合、家庭裁判所へ調停を申し立て代理人として対応してもらえる
● 遺留分(最低限の取り分)が侵害されている場合、遺留分侵害額請求を代理してもらえる
● 遺言書の有効性をめぐる争いがある場合、裁判所での有効性判断をサポートしてもらえる
● 相続放棄や遺産分割協議書の作成を依頼できる(代理権が必要な場合を含む)
● 預貯金や有価証券の名義変更手続きを依頼できる

相続人には、法律で最低限の取り分(遺留分)が保証されています。たとえば、長男に全財産を残す遺言があっても、配偶者や次男が一定の取り分を請求できる権利です。

法的トラブルに発展する可能性がある場合は、弁護士への相談が必須といえます。

弁護士に相談すべきタイミング

相続人同士の話し合いが難航した時点、または訴訟に発展しそうな段階で弁護士に相談すると良いでしょう。

早期に弁護士に入ってもらうことで感情的な対立を避け、法律的な判断基準に基づいて冷静に解決を進めることができる可能性が高まります。

【相談すべきタイミングの例】
● 遺産分割の話し合いで誰がどの不動産を相続するかで意見が食い違ったとき
● 特定の相続人が財産を隠している疑いがあるとき
● 遺言書の有効性や内容について異議を唱える相続人がいるとき

相続で家族間の信頼関係に亀裂が入りそうなときは、できるだけ早く弁護士に相談しておくのが得策です。

弁護士に依頼する場合の費用相場

弁護士への法律相談料は30分あたり5,000円前後が相場で、初回相談を無料にしている事務所もあります。

正式に依頼した場合は着手金と報酬金が発生し、経済的利益(解決によって得られる財産の額)を基準に計算するのが一般的です。

平成16年4月以降、弁護士報酬は自由化されましたが、それまでに日本弁護士連合会が規定していた報酬基準が1つの目安となります。

事件の経済的な利益の額 着手金もしくは報酬金の額
(経済的利益に対する割合)
着手金 300万円以下 8.8%
300万円超え3,000万円以下 5.5%+9万9,000円
3000万円超え3億円以下 3.3%+75万9,000円
3億円超え 2.2%+405万9,000円
報酬金 300万円以下 17.6%
300万円超え3,000万円以下 11%+19万8,000円
3000万円超え3億円以下 6.6%+151万8,000円
3億円超え 4.4%+811万8,000円

※参考1:(旧)日本弁護士連合会報酬等基準|日本弁護士連合会

日本弁護士連合会が実施したアンケート(※2)によると、相続人同士で遺産分割協議がまとまらず、家庭裁判所に遺産分割の調停申し立てを依頼した場合、着手金として30〜50万円程度、報酬金として100万円前後の割合が高くなっています。

弁護士報酬は各事務所によって異なりますので、事前に確認するようにしてください。

※参考2:市民のための弁護士報酬の目安|日本弁護士連合会

弁護士ドットコムバナー

無料相談先3.司法書士|不動産の相続登記など

不動産がある場合、相続財産のなかでも、大きな割合を占める可能性があります。

国税庁の調査によると、相続財産に占める土地・家屋の割合は36.5%となっており、多くの相続で登記手続きが必要になります。この登記の専門家が司法書士です。

司法書士に相談するメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
● 法務局への相続登記申請をスムーズに進められる
● 相続人や財産の調査を依頼できる
● 遺産分割協議書や相続放棄の必要書類を作成可能
● 弁護士より費用を抑えやすい
● 相続人同士の交渉や代理はできない
● 相続税の申告はできない
● 家庭裁判所での手続きは代理できない
● 紛争性のある案件には対応が限定される

2024年4月から相続登記が義務化されたため、司法書士の役割はさらに重要になっています。ここでは、以下の3つのポイントについて解説します。

  • 司法書士に相談できること
  • 司法書士に相談すべきタイミング
  • 司法書士に依頼する場合の費用相場

司法書士に相談できること

司法書士は不動産の相続登記をはじめ、相続人や財産の調査、遺産分割協議書などの書類作成を中心に幅広い業務をサポートしてくれます。

【具体例な相談内容】
● 相続した土地や建物の名義を相続人に変更する相続登記
● 戸籍謄本を収集して法定相続人を確定する相続人調査
● 預貯金や不動産などを対象に相続財産を洗い出す相続財産調査
● 相続人間で合意した内容を有効な書面にまとめる遺産分割協議書の作成
● 不要な不動産や借金を引き継がないための相続放棄の書類作成
● 預貯金や有価証券の名義変更・解約手続き
(認定司法書士のみ)簡易裁判所での紛争解決支援

相続人間でトラブルが発生していない限りは、司法書士が相続手続きを進める代表的な相談先の一つと言えるでしょう。

司法書士に相談すべきタイミング

不動産の名義変更(相続登記)は2024年4月から義務化されており、相続開始を知った日から3年以内に手続きをしないと、10万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります。

「まだ3年ある」と思っていると、必要書類の収集や相続人調整に時間がかかり、気づいたときには間に合わないという状況に陥るリスクもあるため、早めに司法書士に相談すると安心でしょう。

また、相続放棄は期限が短く、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。負債や不要な不動産を相続したくない場合は、早期に司法書士へ依頼すべきです。

【相談すべきタイミングの例】
● 両親の持ち家を相続したが、名義変更していないとき
● 相続人が多く、誰が相続人か分からないとき
● 相続放棄したいが、手続きに必要な書類作成が不安なとき

登記や放棄といった期限がある手続きは、迷わず司法書士に相談するのが得策です。

※参考:相続登記が義務化されます|東京法務局

司法書士に依頼する場合の費用相場

司法書士も初回相談料を無料にしている事務所が多く、有料の場合は1回5,000円前後が目安です。正式に依頼する場合、業務内容によって以下のとおり費用は変わります。

内容 費用相場
相続人の調査 2~4万円程度
相続放棄の申述書作成 4~5万円程度
遺産分割協議書の作成 2~4万円程度

相続登記については、司法書士会連合会が実施した報酬に関するアンケート結果が参考になります。以下は、相続を原因とする土地1筆・建物1棟の所有権移転登記を申請した場合の報酬を、地域別にまとめたアンケート結果です。

地域 報酬額(平均)
北海道地区 6万983円
東北地区 6万667円
関東地区 6万5,800円
中部地区 6万3,470円
近畿地区 7万8,326円
中国地区 6万5,670円
四国地区 6万5,578円
九州地区 6万2,281円

※参考:報酬アンケート結果(2018年1月実施)|日本司法書士連合会

相続による所有権移転登記は、相続人の数や不動産の個数、抵当権の設定などで費用は変わりますので、事前に見積もりを取って確認しましょう。

無料相談先4.税理士|不動産の相続税申告・節税など

相続で欠かせないのが税金の手続きであり、税理士は税務の専門家として相続税の申告や節税アドバイスを担います。

税理士に相談するメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリット デメリット
● 相続財産を正しく評価してもらえる
● 節税対策のアドバイスが受けられる
● 相続税の申告・納付を代理してもらえる
● 不動産売却が必要な場合の資金計画に役立つ
● 相続人同士のトラブル解決には対応できない
● 不動産の名義変更はできない
● 相続税がかからないケースも多い
● 報酬が財産総額や案件の複雑さで変動する

ここでは、以下の3つのポイントについて解説します。

  • 税理士に相談できること
  • 税理士に相談すべきタイミング
  • 税理士に依頼する場合の費用相場

税理士に相談できること

税理士は、相続税の申告・納付から財産評価、節税対策まで税務全般の相談が可能です。

【具体例な相談内容】
● 準確定申告:被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得を計算し、4ヶ月以内に税務署へ申告・納付
● 相続税申告:相続財産の評価を行い、基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数)を超える場合に10ヶ月以内に申告・納付
● 相続財産に土地が含まれる場合の評価(路線価や固定資産評価額を基準に正確に算出)
● 納税資金が不足する場合の対策(延納や物納、不動産売却のアドバイス)
● 節税策の提案(例:被相続人の空き家を売ったときの特例 など)
● 相続財産調査や相続人の確認、遺産分割協議書作成のサポート

「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」は、被相続人が一人で住んでいた家を引き継いだ相続人が一定の条件を満たして売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる制度です。相続した空き家を活用して、売却益にかかる税負担を大幅に抑えることができます。

このように、税理士に相談することで税務に関わる様々なリスクを回避し、適切な節税を実現できます。

※参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

税理士に相談すべきタイミング

税務に関する手続きには厳格な期限があるため、相続開始を知った段階で早めに相談するのが安心です。

【相談すべきタイミングの例】
● 準確定申告:相続開始から4ヶ月以内
● 相続税申告:相続開始から10ヶ月以内

特に、相続税の申告は財産調査や評価、分割協議など多くの作業を伴うため、時間的な余裕をもって着手しなければ期限に間に合わないリスクがあります。

なお、国税庁の調査によると、令和5年分で相続税が課税された割合は9.9%(約10件に1件)でした。一見少ないように見えますが、不動産を含むケースでは課税対象になりやすいため注意が必要です。

※参考1:B1-2 相続税の申告手続|国税庁
※参考2:令和5年分 相続税の申告事績の概要|国税庁

税理士に依頼する場合の費用相場

税理士への相談料は1回あたり5,000〜1万円程度が相場で、初回相談を無料にしている事務所もあります。正式に依頼した場合の報酬は、遺産総額の0.5〜1%前後が目安です。

ただし、税理士の報酬は実際に相続財産の調査や申告書の作成を進めるなかで、相続財産の評価が難しかったり、新たな相続財産が見つかったりなどで変動するケースも少なくありません。税理士の報酬に影響しやすい要因として、以下の点が挙げられます。

  • 相続人の数が多い
  • 不動産の評価が難しい(非整形地など)
  • 非上場株式が遺産に含まれている
  • 申告期限まで時間がない など

相続税は事例ごとに難易度が変わるため、相続税申告の実績が豊富な税理士を選ぶことが重要です。経験豊富な税理士であれば評価額を適切に下げるノウハウを持ち、納税額を抑えられる可能性も高まります。

無料相談先5.行政書士|不動産売却における書類作成・収集など

行政書士は、国や都道府県、警察署など官公庁に提出する書類の作成や相談、手続きを代理する専門家です。

行政書士に相談するメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
● 書類収集・作成のみを依頼できるため柔軟に利用可能
● 車やバイクの名義変更、廃車手続きも依頼できる
● 弁護士や司法書士に比べて費用が抑えやすい
● 相続人同士のトラブル解決は対応でない
● 不動産の名義変更や相続税の申告はできない
● 書類収集・作成のみでは割高になる場合もある

ここでは、以下の3つのポイントについて紹介します。

  • 行政書士に相談できること
  • 行政書士に相談すべきタイミング
  • 行政書士に依頼する場合の費用相場

行政書士に相談できること

行政書士は相続の手続きについても、戸籍謄本など必要書類の収集や遺産分割協議書、相続関係図の作成について相談、依頼できます。

戸籍謄本や住民票といった公的書類を集めるには複数の役所を回る必要があり、一般の人にとっては大きな負担となりがちです。そのため、書類収集などの手続きを代行できる行政書士の存在は、相続を円滑に進めるうえで大きな助けとなります。

【具体例な相談内容】
● 戸籍謄本・除籍謄本・住民票など相続人調査に必要な書類の収集
● 遺産分割協議書の作成
● 相続関係説明図の作成
● 金融機関や証券口座の解約・名義変更
● その他、相続に関連する行政機関への提出書類作成

ただし、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士の業務範囲となるため、行政書士には依頼できません。

行政書士は「身近な街の法律家」と呼ばれるように、弁護士や司法書士に比べて料金面でも相談しやすい点がメリットです。「自分で相続の手続きを進めたいけれど、何から始めればよいか分からない」という場合には、行政書士に相談してみると良いでしょう。

行政書士に相談すべきタイミング

相続人同士でトラブルがなく、必要書類の収集や名義変更を効率的に進めたいときに相談するのがおすすめです。

【相談すべきタイミングの例】
● 仕事が忙しく、戸籍や住民票を取りに行く時間がないとき
● 遺産分割協議はまとまっているが、正式な書面にして残したいとき
● 不動産以外の名義変更(銀行口座や車)をまとめて任せたいとき

行政書士は交渉や紛争解決はできませんが、手続きに必要な書類や協議書の作成は得意としています。

行政書士に依頼する場合の費用相場

行政書士の報酬も依頼する行政書士によって異なります。

日本行政書士会連合会の統計によると相続人、及び相続財産の調査費用の平均が約6万4,000円、遺産分割協議書の作成が約6万8,000円となっています。

その他の費用相場は、以下のとおりです。

  • 相続関係説明図の作成:2〜3万円
  • 金融機関や証券口座の解約・変更:2〜3万円/行
  • 自動車の名義変更:8,000〜1万円/台

なお、戸籍謄本や印鑑証明書などを取得するための実費や交通費が別途かかります。

※参考1:令和2年度報酬額統計調査の結果|日本行政書士会連合会
※参考2:料金一覧|あいきょう行政書士事務所
※参考3:料金案内|行政書士てしろぎ事務所

無料相談先6.税務署|不動産の相続税など

相続税の申告・納税に関して最も公的で身近な窓口が税務署です。一般的な税務の仕組みや申告方法を確認したいときに利用できますが、節税策や実務の代行までは対応できません。

税務署に相談するメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
● 電話や対面で無料相談できる
● 繰り返し何度でも相談できる
● シンプルな相談なら即解決しやすい
● 国税局電話相談センターを利用できる
● 節税対策の相談はできない
● 相談時間が限られている
● 基本的に被相続人の住所地の管轄税務署に出向く必要がある
● 相続関係が複雑な場合は対応が難しい

ここでは、以下の3つのポイントについて解説します。

  • 税務署に相談できること
  • 税務署に相談すべきタイミング
  • 税務署に依頼する場合の費用相場

※参考:国税に関するご相談について|国税庁

税務署に相談できること

税務署では、相続税の仕組みや申告・納付に関する一般的な相談が可能です。

【具体例な相談内容】
● 相続税が課税対象になるかどうかの確認
● 相続税申告書や納付書の入手・記入方法の案内
● 国税局電話相談センター(平日8:30〜17:00、通話料有料)での一般的な税務相談
● 管轄税務署で職員に直接相談(要予約)

税務署は、基本的な税務の確認や申告の方向性を把握する場としての利用に適しています。

税務署に相談すべきタイミング

相続税の基礎的な仕組みを確認したいとき、あるいは申告に必要な書類や手続きを把握したいときに相談するのがおすすめです。

税務署では中立的な立場で制度の説明が受けられるため、初めて相続税の手続きを行う人にとって参考になります。

【相談すべきタイミングの例】
● 相続税が発生する可能性があるか確認したいとき
● 申告に必要な書類の種類や記入方法を知りたいとき
● 納付期限や納付場所など手続きの流れを知りたいとき

具体的な節税策や複雑なケースには不向きですが、相続税について入口段階で確認する窓口として有効です。

税務署に依頼する場合の費用相場

税務署は税金一般に関する相談を受け付けていますが、具体的な申告・納付手続きは依頼できません。そのため、相談自体は無料です。

ただし、相続税の申告に必要な申告書や納付書の作成は、自分で行うか税理士に依頼しなければなりません。相続財産の評価や申告書の記載方法に誤りがあると、場合によっては相続税を払いすぎてしまうケースもあるので注意が必要です。

また、税理士に依頼した場合とは異なり、税務署で相続税の節税対策を含めたアドバイスを受けることは困難となります。

税務署へ相談する場合でも、税理士への依頼を想定した上で、相談すると良いでしょう。

無料相談先7.銀行|不動産の相続財産など

相続が発生し金融機関にその旨を連絡すると、共有財産である預貯金を勝手に処分できないように、預金口座の保全措置がとられます。このとき、普段から取り引きのある金融機関に相続について相談することもあるでしょう。

相談だけであれば費用はかかりませんが、金融機関側から遺産整理業務の提案を受けることがあります。遺産整理業務とは、銀行や信託銀行が窓口となって、遺産相続の手続きを代行するサービスです。

銀行に相談するメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリット デメリット
● 相続手続き全般をワンストップで依頼できる
● 司法書士や税理士を探さなくても済む
● 保険・資産運用などの金融サービス提案を受けられる
● 専門家に直接依頼するより費用が高い
● 相続財産の活用について営業を受ける可能性がある
● 最低手数料が高額に設定されていることが多い

ここでは、以下の3つのポイントについて解説します。

  • 銀行に相談できること
  • 銀行に相談すべきタイミング
  • 銀行に依頼する場合の費用相場

銀行に相談できること

銀行では日常業務のなかで司法書士や税理士と提携しており、相続全体の窓口として機能できるため、預金口座の相続手続きから不動産を含む遺産整理業務まで幅広く相談可能です。

【具体例な相談内容】
● 預金口座の解約・相続人への分配手続き
● 遺産整理業務(司法書士・税理士を窓口として紹介し、全体の進行管理を銀行が代行)
● 不動産の相続登記や相続税申告を専門家につなぐ役割
● 保険金の請求や投資商品の整理など金融資産に関する対応

銀行は、手続きを一括して任せたいときに便利な相談先と言えます。

銀行に相談すべきタイミング

自分で専門家を探す手間を省き、相続手続きをまとめて依頼したいときに銀行への相談が適しています。

【相談すべきタイミングの例】
● 忙しくて司法書士や税理士を自分で探す余裕がないとき
● 相続財産に現金・預金が多く含まれているとき
● 保険や資産運用を含めた総合的なアドバイスを受けたいとき

自力で調整が難しい人にとって、銀行は相続の総合窓口として頼れる存在です。

銀行に依頼する場合の費用相場

銀行に遺産相続の手続きを依頼した場合、司法書士や税理士に依頼する費用のほか、銀行に対して各専門家の窓口となり、相続遺産手続きとしての手数料が発生します。

費用は金融機関によって違いがありますが、相続財産の0.3%〜1.8%(最低手数料110万円)程度の費用がかかります。そのため、費用面で考えると、専門の士業に直接依頼したほうが抑えやすいといえるでしょう。

※参考:遺産整理業務費用|三菱UFJ信託銀行

無料相談先8.ハウスメーカー|土地活用

相続した不動産を売却せずに活用方法を検討する際に有効な相談先が、ハウスメーカーです。

空き地や古家をそのまま放置すると固定資産税の負担や老朽化リスクが高まりますが、ハウスメーカーに相談すればアパート経営や駐車場経営など、土地活用の提案を受けることができます。

ハウスメーカーに相談するメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリット デメリット
● 賃貸住宅や駐車場経営などの活用方法を提案してもらえる
● 節税(小規模宅地等の特例の活用など)につながる場合がある
● 相談は無料で行える
● 初期投資額が高額になりやすい
● 立地条件によっては収益が安定しない
● 建築後の維持管理コストや空室リスクがある
● 売却に比べて現金化までに時間がかかる

ここでは、以下の3つのポイントについて解説します。

  • ハウスメーカーに相談できること
  • ハウスメーカーに相談すべきタイミング
  • ハウスメーカーに依頼する場合の費用相場

【あわせて読みたい】
▶︎土地活用はどこに相談する?おすすめの専門家やポイントも解説

ハウスメーカーに相談できること

ハウスメーカーは建築・開発の専門知識を持ち、立地条件や市場ニーズにあわせた土地活用プランを立てられるため、相続した土地の収益化や資産運用する方法に関して相談できます。

【具体例な相談内容】
● 駅近の土地であれば、アパートやマンション経営として活用できる
● 狭小地や不整形地であれば、コインパーキングとして運用できる
● 郊外の日当たりの良い土地であれば、太陽光発電による売電収入を得られる

売却せずに土地を活かしたいなら、まずはハウスメーカーに相談するのが有効です。

ハウスメーカーに相談すべきタイミング

相続した不動産を維持するか売るかで迷っている段階で、ハウスメーカーに相談すると効果的です。特に、遺産分割協議や名義変更が完了し、所有者が明確になった後であれば、土地活用の提案をスムーズに進められます。

ハウスメーカーに相談することで、売却以外の活用方法を具体的に提示してもらえるため、長期的に収益性を高められる可能性が見えてきます。

【相談すべきタイミングの例】
● 空き家を取り壊した後の土地の活用方法を検討したいとき
● 相続税の納税資金は確保済みで、将来的に安定した収益を得たいとき
● 更地にすると固定資産税が高くなると役所に指摘され、対策を考えたいとき

なお、相談先は1社に絞るのではなく、できれば3社以上から提案を受けて比較検討することが重要です。

土地の形状や立地条件によっては、大手ハウスメーカーでは対応が難しい場合もあり、中小規模のメーカーも候補に含めるとより幅広い選択肢が得られるでしょう。

土地を守るだけでなく、有効活用する方向で考えたいときにハウスメーカーへの相談が役立ちます。

ハウスメーカーに依頼する場合の費用相場

ハウスメーカーへの初回相談や提案書(基本計画図)・見積書・事業計画書の提示までは、大手では無料が一般的です。

一方、中小規模のメーカーは基本計画の作成費を請求する場合もあるため、無料範囲と有料化の条件(図面作成の回数・詳細度など)は事前確認が必須です。

実際に建築・開発を進める段階では、設計・建築費など数百万円〜数千万円規模の投資になります。土地活用は初期費用が大きい一方、計画が適切であれば家賃収入や節税効果で回収を目指せるケースも少なくありません。

【概算の目安例】

土地活用例 費用相場
木造アパート(2階建・6戸程度) 3,000万〜5,000万円
平面駐車場の舗装 1台あたり20〜30万円前後
太陽光発電システム設置 約150万円前後(容量・屋根形状で増減)

初期費用はかかりますが、長期運用の収益見込みとリスク(空室・修繕・金利)を並べて精査すれば、投資に見合う選択肢を見極めやすくなるでしょう。

無料相談先9.不動産会社|相続不動産の売却など

相続した不動産を現金化したい場合は、不動産会社に相談するのが最適です。

相続人が複数いる場合は不動産を売却して換価分割(現金で分ける)する方法が公平でトラブルを避けやすくなっています。

不動産会社に相談するメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリット デメリット
● 相続不動産の査定・売却が可能
● 相談・査定は無料で受けられる
● 即時買取サービスを利用すれば早期現金化できる
● 複数社を比較すれば高値売却が狙える
● 売却価格は市場に左右される
● 仲介手数料が発生する
● 買取は相場より安くなるケースが多い
● 売却完了まで時間がかかる場合がある

ここでは、以下の3つのポイントについて解説します。

  • 不動産会社に相談できること
  • 不動産会社に相談すべきタイミング
  • 不動産会社に依頼する場合の費用相場

不動産会社に相談できること

単に売却価格を提示するだけでなく、現地調査・市場調査・役所調査を行い、最適な売却方法や対処法を提案してくれます。

たとえば、築年数の経過した建物についてリフォームしてから売却すべきか、解体したほうが良いかを迷う場合でも、調査に基づき適切なアドバイスを受けることが可能です。

さらに、買主がなかなか見つからない場合には、不動産会社が直接買い取ってくれるケースもあります。

【具体例な相談内容】
● 相続した自宅や実家の売却・現金化
● 遠方の土地を売却し、維持管理コストを削減
● 空き家特措法の対象になる前に売却

相続財産を分けやすいお金の形にしたいなら、不動産会社への相談が選択肢となります。

不動産会社に相談すべきタイミング

不動産は現物分割が難しいため、遺産分割協議が長引く大きな要因となります。

そのため、不動産を維持する意思がなく、売却して相続人間で公平に分配したいときには早めに相談するのがおすすめです。

特に、相続放棄や相続税の納付には期限があるため注意が必要です。

【相談すべきタイミングの例】
● 相続放棄の期限:相続発生を知ってから3ヶ月以内
● 相続税の申告・納付期限:相続発生を知ってから10ヶ月以内

これらの期限内に売却資金が必要な場合は、できるだけ早く不動産会社に相談すべきです。また、以下のようなケースでも、不動産会社への相談が有効だといえます。

【相談が想定されるケース】
● 相続人が複数いて誰もその家に住まない場合
● 相続税の納税資金を不動産売却で確保したい場合
● 老朽化した空き家を手放したい場合

不動産を資産から現金に変えることでトラブルを防ぎやすく、相続手続きを円滑に進められます。

不動産会社に依頼する場合の費用相場

不動産会社への相談や査定は無料ですが、実際に売却する場合は仲介手数料がかかります。

仲介手数料の上限額は法律で定められており、計算式は以下のとおりです。

売却価格 仲介手数料の上限(速算式)
200万円以下 売却価格×5%+消費税
200万円超から400万円以下 売却価格×4%+2万円+消費税
400万円超 売却価格×3%+6万円+消費税

たとえば、3,000万円で家を売った場合、仲介手数料の上限額は以下のとおり計算します。

3,000万円 × 3% + 6万円 + 消費税= 105万6,000円(税込)

また、仲介手数料以外にも、以下のような費用・税金がかかります。

項目 内容 相場
印紙税 売買契約書に貼付する印紙代。売却価格に応じて変動 売買価格が1,000万円超〜5,000万円以下であれば印紙税は1万円
譲渡所得税 売却益が出た場合にかかる税金。所得税+住民税(合計約20%程度) <計算式>
● 譲渡所得 = 売却価格 – 取得費 – 譲渡費用 – 特別控除
● 譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率
登録免許税 抵当権抹消登記の費用と、司法書士報酬 2~3万円程度

なお、上記以外でも住み替えに伴う引越しや残置物の処分など、状況によってかかる費用もいくつかあります。スケジュールに余裕を持ちながら、あらかじめ費用・税金を把握しておくことが重要です。

不動産相続におけるその他の無料相談先

不動産相続では、前述した相談先以外にも以下が選択肢として挙げられます。

相談先 主な相談内容 特徴
法テラス 相続トラブル、裁判手続き、法律全般 国が設置した公的機関。弁護士相談や費用立替制度も利用できる
公証役場 公正証書遺言の作成や、相続手続きに関する一般的な相談が可能 公証人が関与するため法的効力が強く、遺言の信頼性を高められる
消費生活センター 相続に関連した悪質業者やトラブル相談 相続不動産売却やリフォームに関する詐欺被害などの相談に対応

自身の状況に応じて、適した相談先を見極めることが重要です。

不動産相続で無料相談する流れ

不動産相続について無料相談できる機関や専門家は複数あります。ここでは、無料相談する一般的な流れについて解説します。

  • STEP1.日時を予約する
  • STEP2.必要書類を準備する
  • STEP3.実際に相談する
  • STEP4.正式に依頼する

STEP1.日時を予約する

まず、相談日時を予約する必要があります。弁護士や司法書士、税理士など専門家の場合だけでなく、役所や税務署で直接相談する場合は事前に予約が必要です。

市役所・区役所では相談内容に応じて1週間のなかで、特定の時間帯のみ受け付けている場合があります。そのため、余裕をもって予約するようにしましょう。

STEP2.必要書類を準備する

一般的な相談だけでなく、個別の事情を踏まえ相談したい場合は、必要書類の準備が大切です。具体的には、以下が挙げられます。

  • 相続関係が分かる資料
  • 相続財産が分かる資料(財産目録や通帳など)
  • 被相続人(亡くなった人)の戸籍(除籍)謄本
  • 相続人の戸籍謄本
  • 不動産の登記簿謄本や登記識別情報(権利証)
  • 固定資産税評価額が分かるもの
  • 相談者の身分証明書(免許証など)
  • 遺産分割協議書や遺言書(ある場合) など

相談先によって必要書類は異なるので、事前にしっかりと準備しましょう。

特に、相続人同士でもめている場合やトラブルになりそうな場合、他の相続人の意見などを聞かれることがあります。うまく伝えられるように整理しておくことも必要です。

STEP3.実際に相談する

相談の際には、相続に関する現状やトラブルとなっている点、相続人同士の関係など相談内容を正確に伝えることが求められます。限られた時間を有効活用するためにも、可能であれば図表を作成するなど、分かりやすい資料を準備しても良いでしょう。

1回目の相談で終わらない場合、2回目以降の相談は有料となったり、同じ内容での相談ができなかったりします。そのため、要点をまとめながら優先順位をつけることが大切です。

STEP4.正式に依頼する

無料相談を行い正式な依頼が発生すると、内容に応じた委任契約書を締結します。報酬や業務内容の範囲をしっかりと確認し、不明点をなくしたうえで依頼することが重要です。

相続人や相続財産が多く、複雑であればあるほど、サービスを依頼したあとに新たな事実が判明するなど、料金や要する時間が変動する可能性があります。

また、見積もり金額が高いと思った場合は、他の専門家の見積もりを取るなど比較して決めることも大切です。

不動産相続に関する相談をするときの注意点

不動産相続の相談をスムーズに進めるためには、以下の注意点を押さえておきましょう。

  • 遺言書は手元にあるか
  • 相続人は確定しているか
  • 相続財産は把握しているか

遺言書は手元にあるか

不動産相続の相談前には、遺言書の有無を確認しておくことが非常に重要です。

遺言書が存在する場合、その内容が法律的に優先されるため、相続の進め方や分割方法が大きく変わります。遺言書がなければ相続人全員で話し合う必要がありますが、手元にあれば指示に従うことになるでしょう。

遺言書と一口にいっても複数の種類があり、それぞれ保管方法や家庭裁判所の手続きが異なります。以下で具体的に確認しておきましょう。

種類 保管場所 家庭裁判所の検認 特徴
公正証書遺言 公証役場 ・不要 公証人が作成するため、偽造防止・効力が確実
自筆証書遺言 自宅または法務局 ・保管が自宅:検認必要
・法務局保管:検認不要
自分で作成可能、費用がかからないが形式不備のリスクあり
秘密証書遺言 自宅など ・必要 内容を秘密にできるが、結局は検認が必要で利用は少ない

自宅で保管されている自筆証書遺言や秘密証書遺言は自分で勝手に開封せず、必ず家庭裁判所での検認を経てから効力を確認する必要があります。

遺言書の有無と種類は、相続のスタート地点を決める大切な要素です。相談に行く前に、保管場所や検認の有無まで含めて整理しておくとスムーズに話が進みます。

相続人は確定しているか

相続人の範囲があいまいなままでは分割協議が無効になったり、後から相続人が判明したりしてトラブルになるリスクがあるので、誰が相続人になるのかを確定させておきましょう。

法定相続人は、被相続人の生まれてから死亡までの戸籍謄本を遡って取得することで確認できます。戸籍は被相続人の本籍地がある市区町村役場で取得可能で、遠方の場合は郵送請求も可能です。

また、相続人の範囲は以下のように法律で定められています。

該当者 範囲
配偶者 常に相続人となる
第1順位 子ども
第2順位 父母・祖父母などの直系尊属
第3順位 兄弟姉妹

なお、相続人が確定していない場合に起こり得る、主なトラブルは以下のとおりです。

  • 戸籍を遡ったら隠れた相続人(前妻の子など)が判明した
  • 複数いる法定相続人のうち1人だけ参加せずに、遺産分割協議が無効になった
  • 相続人を誤認して遺産を分割したら、後に無効とされ裁判に発展した

専門家に相談する前に戸籍を収集し相続人を確定させておくことが、トラブル防止につながります。

相続財産は把握しているか

不動産や金融資産など、相続財産の全体像を把握してから相談に臨むことが重要です。

財産の範囲が不明確だと相続税の計算や分割協議の前提条件が整わず、相談内容も抽象的になってしまいます。プラスの財産だけでなく、借金や未払いの税金などのマイナスの財産も正しく把握することが、遺産分割や税務手続きの円滑化につながります。

以下の表では、どのような種類の財産を確認し、どのような資料を準備すれば良いかをまとめました。

種類 主な内容 確認方法・資料
プラスの財産 土地・建物などの不動産 固定資産税納税通知書、登記事項証明書、登記識別情報
預貯金・現金 通帳、キャッシュカード、金融機関からの通知書、残高証明
株式・債券などの有価証券 証券口座の取引報告書、残高証明
自動車 車検証、保険証券
宝石類・美術品 購入証明書、鑑定書など
マイナスの財産 借金・ローン 契約書、返済予定表、残高証明
未払いの税金 税務署や自治体からの通知書
未払いの家賃など 契約書、請求書
信用情報 信用情報機関での情報開示請求

相続財産をリスト化し、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も把握したうえで相談することが、正確なアドバイスを受けるために重要です。

相続の無料相談に関するよくある質問

最後に、相続の無料相談に関するよくある質問を紹介します。

  • 相続の無料相談は24時間電話で対応してくれる?
  • 結局のところ不動産相続ではまずどこに相談すればよい?
  • 相談先が分からないときはどうすればよい?

相続の無料相談は24時間電話で対応してくれる?

相続の無料相談が24時間いつでも対応しているケースはほとんどありません。自治体や国の相談窓口は、基本的に平日昼間の限られた時間帯に相談受付を行っているからです。

たとえば、以下のような例があります。

窓口 対応時間・対応方法(一例)
自治体の無料相談 平日の日中に実施されることが多く、1回あたり30分程度の制限付き
国税局電話相談センター 平日8:30〜17:00の受付
オンライン相談や予約制の窓口 自治体によっては平日夜間や休日に対応している場合もある

原則として24時間対応はなく、平日昼間に予約制で相談するケースが一般的です。夜間や休日に相談したい場合は、対応している自治体や専門家の無料相談会を確認してください。

結局のところ不動産相続ではまずどこに相談すればよい?

不動産相続でまず相談するなら、区役所・市役所などの自治体窓口や無料相談会を利用するのがおすすめです。

自治体では、弁護士・司法書士・税理士といった専門家が日替わりで担当しており、中立的な立場から全体像を整理する助言を受けられます。

自分の置かれている状況に対して、初めの段階で誰に依頼すべきかを判断するのに役立ちます。たとえば、以下のように判断することが有効です。

● 相続人や財産の確認段階であれば司法書士が得意分野となり、相続登記や相続人調査を依頼できる
● 相続税がかかりそうなケースであれば、税理士に早めに相談することで納税や節税に備えられる
● 相続人同士で話し合いが難航している場合であれば、弁護士による法的サポートが不可欠になる

まず自治体の無料相談で方向性を掴み、その後、登記なら司法書士、税金なら税理士、トラブルなら弁護士といった形で適切な専門家につなげるのが効率的です。

相談先が分からないときはどうすればよい?

相談先が分からないときは、まず市役所や区役所の無料相談がおすすめです。

市役所・区役所では、それぞれの相談内容に応じて、弁護士や税理士、司法書士などの専門家に無料相談できます。そのため、内容や相続の状況を踏まえて、最適な相談先を紹介してもらえる可能性があります。

どこに相談すべきか良く分からない場合、まずは市役所や区役所の無料電話相談、もしくは窓口で相談してみましょう。

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不動産相続の相談先は内容とタイミングの見極めが重要

不動産相続の相談先には、区役所・市役所などの公的機関から、弁護士・司法書士・税理士といった専門家、不動産会社やハウスメーカーまでさまざまな選択肢があります。

大切なのは、自分の状況に応じてどの相談先が適切かを見極めることです。特に不動産が相続財産に含まれている場合、名義変更や評価のほかに売却や活用の検討が必要になるケースも少なくありません。

相続税の納付期限にあわせて売却が必要な場合や、相続人同士で公平に分けるために売却して現金化する場合には、不動産会社へ相談することが有効です。

その際は、1社に絞らず複数の不動産会社に査定を依頼し、価格や売却方法を比較することが成功のポイントとなります。一括査定サービスを活用すれば効率的に条件を比較できるため、相続不動産の売却を検討する人におすすめです。

ホームズの不動産一括査定は、大手から地域密着の会社まで幅広い不動産会社に同時査定を依頼できる便利なサービスです。相続不動産の売却を少しでも有利に進めたい人は、まずは無料査定をご検討ください。

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記事執筆・監修

新川 優香(あらかわ ゆうか)

大学卒業後、不動産仲介業務に従事し売買を経験。現在は不動産賃貸の事務職に従事。不動産売買仲介から賃貸仲介、物件管理に関わる執筆経験もあり。宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、FP2級の資格を保有。