クレーム増トップは騒音、次いでごみ問題

在宅時間の増加によりごみが増え、クレームにつながってしまっている在宅時間の増加によりごみが増え、クレームにつながってしまっている

賃貸では暮らし始めてからも不動産会社とお付き合いが必要なことがある。そんなときに気持ちよく対処してもらい、楽しい暮らしを送るためには、不動産会社の仕事や役割、どんなことをしてもらえるのかなどを知っておくことは役に立つ。ここではさまざまなトラブルに対処してきた不動産会社の裏話に耳を傾け、よりよい暮らしのためのノウハウを学ぶ連載の14回目。今回はコロナ禍で増えたお隣さんとのトラブルについて。今住んでいる人はもちろん、これから探す人も必見である。

コロナ禍で管理会社への苦情が増えている。もっとも増えたのが騒音問題。これについてはさまざまなメディアで取り上げているほか、当連載でも第13回目で詳細に取り上げた。それに次いで増えたのがごみ問題である。

「在宅時間が長くなり、家で食事をする回数が増えたことなどにより、そもそも各家庭から出るごみの量が増えています。そのため、ごみ置き場が足りなくなっている物件もあるほど。また、毎回の、大量のごみ出しを面倒に感じ、ルールを守らずに捨てる人も。在宅しているのでそれが以前よりも目につく。それがクレーム増につながっています」とハウスメイトの伊部尚子氏。

在宅時間の増加によりごみが増え、クレームにつながってしまっているお問合せ傾向 ハウスメイト調べ

具体的な内容としては「分別されていないごみがある」「粗大ごみが回収されていない」「曜日を守らない人がいる」「道路沿いにあるごみ置き場の缶、瓶にタバコの吸い殻が捨てられている、火事になったら危険だ」「ごみ置き場からごみが散乱している」「外階段にごみが捨てられている」など非常にざっくりしたものから、細かく具体的なものまでさまざま。共通するのはルールを守らない人がおり、それによって迷惑をこうむっている、なんとかしてくださいという連絡であること。

これについては「すぐ見に来てください」という要請も多いそうだが、人手や回収時間の問題などから難しいことが多いと伊部氏。

「それより見つけたときにすぐ写真を撮ってそれを送ってください。今こうなっているという写真があれば状況が判断でき、対処の参考になります。住んでいる人が一番情報に近いはずなので、協力していただければ問題を解決しやすくなります」

現場写真があれば解決への糸口になることも

入居者によるものなのか、違法投棄なのか。まずは見極めが必要となる入居者によるものなのか、違法投棄なのか。まずは見極めが必要となる

ごみ問題については内部の人のマナーの場合のほか、外部の人による違法投棄というケースもあり、どちらの問題なのかを見極めた対処が必要になる。内部の人が分別などを知らずに捨てていると思われる場合には注意喚起を呼びかける掲示やチラシの配布が最初の対応策になるが、写真があれば写真付きのチラシを作れる。それを見て反省する人が出ればそれだけで問題は解決する。

それでもルール無視の投棄が続く場合には防犯カメラの設置を検討することもあるそうだが、その際にも入居者からの情報は役に立つ。いつ捨てられているかが分かれば、その時間帯、曜日に集中して防犯カメラの情報を分析できるからである。

外からの投棄に対しては通りすがりに捨てられないようにごみ置き場の位置を変える、部外者がごみ箱を開けられないようにする、明るくして人目につくようにするなどの手が考えられる。もちろん、この場合も防犯カメラ設置は対策として考えられる。

入居者によるものなのか、違法投棄なのか。まずは見極めが必要となる廊下など共用部に私物を置くことがクレームになるケースも

ごみ問題と似ているのが私物放置。これもクレームが増えた問題のひとつで、敷地内に私物が放置されているというもの。自室の前などに置かれている場合とごみ置き場を含む共用部に放置されている場合がある。

具体的なクレームとしては「部屋の前に靴、傘などが置いている人がいる」「避難扉の前に物を置く人がいる」「階段下に自転車が置かれている」「ごみ置き場の横に粗大ごみが置いてある」「共用部のエントランスに椅子が投棄されている」など。粗大ごみついては他のごみ問題同様、誰がいつ置いたのかが分かれば解決につながりやすい。

自室の前に傘などの小物類をつい置いてしまうのは悪気があってではなかろうが、美観を損ねるうえに火災、地震などの緊急時に足を取られるなどの危険も。消防署からも注意されるそうだ。また、ひとつ置かれていると真似して置く人が増えるのだとも。置かないようにしよう。

宅配利用者が増えて、宅配ボックスが足りない!

宅配ボックスはエントランスの面積などの問題からすぐに容量を増やすことは期待できないだろう宅配ボックスはエントランスの面積などの問題からすぐに容量を増やすことは期待できないだろう

使用頻度が増えて苦情、問合せが増えたのが宅配ボックス。管理会社への声は2種類あり、ひとつは開け方、暗証番号が分からなくなったという使い方の問題。そしてもうひとつが、いつもいっぱいで使えない、ずっと使われているといったもの。前者については入居時に使い方についての説明書を受け取っているなどしているはず。まずはそれを見返し、使い方をマスターしよう。一度理解してしまえば以降は問題はなくなるだろう。

もうひとつの足りないという問題については、玄関やエントランスホールにスペースがないなどで増やすのは難しい場合もあり、現在住んでいる物件で根本的な容量不足が解決されることはあまり期待できない。この場合は自宅周辺のコンビニエンスストアや集合宅配ボックスなど他の場所で受け取る手がないかを考えてみるのが現実的かもしれない。

また、最近では戸数の少ない集合住宅やテラスハウスなどで各世帯に用意された物件も出てきている。宅配ボックスが使えないことにストレスを感じる人や自分が受け取る荷物が多く、ほかの入居者に迷惑をかけているのではないかと気になる人はこういう物件を選んでもいいのではないだろうか。

迷惑駐車・駐輪も増えていた

駐車に関する苦情も駐車に関する苦情も

迷惑駐車・駐輪も増えている。まず迷惑駐車だが、これは居住者の知り合いが訪ねてきて駐車しているケースが多く、通路などに駐車していて邪魔、勝手にタダで停めているのはおかしいなどとの問合せが入る。それに対して管理会社は警告のチラシを配布。違法に駐車している人に苦情が出ていることに気づいてもらうようにする。これには他の入居者にも不法な駐車をしてはいけないという意識を醸成する効果があり、結果的に違法駐車を抑制することになるそうだ。

それでも迷惑駐車が続く場合は入居者、その関係者以外の駐車であることも考えられるため、管理会社は近くの運輸支局あるいは自動車検査登録事務所の窓口で「登録事項等証明書」を交付請求し、所有者を調べる。この時点で、もし入居者からの写真がれば非常に役に立つ。私有地に放置された車両の所有者、使用者の確認のためには車両が放置されている場所、その場所の見取り図、放置期間に関する情報、放置車両の写真が必要になるからだ。もし、違法駐車に対して管理会社へ連絡をするつもりなら、ぜひ写真を撮影、ナンバープレートを記録し、それを連絡していただきたいものである。

駐車に関する苦情も新たに駐輪場を利用したい場合は事前に管理会社に相談を

駐輪場でクレームが出やすいのは駐輪場がいっぱいで出し入れしにくくなっているとき。放置自転車を撤去していないから、こんなにいっぱいになり、使いにくいのではないかと言われるのである。管理会社が配布している駐輪シールを貼っていない自転車が置かれているというクレームもある。

たいていの管理会社は駐輪シールを配布し、入居者の自転車どうかの目安としているが、配布されても貼付しない人もいるため、シールが貼られていないから放置自転車とは決めつけられない。そこで管理会社はハンドルに調査票を付け、チラシを配布して、まずは一定期間、持ち主を探す。この間に駐輪シールを貼っていない人には貼ってもらう、持っていない人には配布するなどの作業を行うこともある。

しばらく時間がたっても名乗り出てくる人がいない場合には、当該自転車を駐輪場とは別の邪魔にならないところに隔離し、さらに呼びかけを続ける。早々に撤去するというチラシを見ていなかったと、後から名乗り出てくる人がいるからだ。隔離後も名乗り出る人がいない場合には、最後に地域を管轄する警察署に防犯登録ナンバーを照会、盗難車でないかの確認をしたうえで廃棄処分ということになる。

「放置自転車と疑われるもののうちのかなりの部分は、以前の入居者が引越し時にそのまま不要だからと置いていったもの。それ以外にも現在の入居者が単に使っていないものもありますが、自転車は粗大ごみとして地域の清掃事務所に連絡すれば安価で捨てられます。面倒がらずに自分で捨てるようにしてください」

解決が難しいたばこ問題

ペット飼育不可の物件でペットを飼った場合、大きなトラブルに発展する可能性があるペット飼育不可の物件でペットを飼った場合、大きなトラブルに発展する可能性がある

隠れてペットを飼っている人がいるという連絡の場合も写真があると早々に対処できる。

「本人にペット飼育を聞いても『飼っていません』と言われてしまうと、それ以上は追及できません。でも、写真があれば言い逃れできません。写真までなくても『何時ごろに散歩に行くのを見た』あるいは犬種や毛の色その他、本人に周囲から見られていることが分かるような具体的な情報があれば追及できます。逆に『飼っているみたい』では難しいですね」

ちなみに犬の場合はエレベーター内で抱っこしているところを、猫の場合は窓辺で日向ぼっこをしているのを目撃されることが無断飼育発覚のきっかけになるそうだ。最近はうさぎやフェレットのように散歩も日向ぼっこもしない、居住中は飼っていることがばれにくいペットも増えているそうだが、ばれるのが退去時。建具がボロボロになっていて発覚となると、その原状回復費用が多額に及ぶこともある。ルールは守って居住したい。

ペット飼育不可の物件でペットを飼った場合、大きなトラブルに発展する可能性があるたばこのにおいや煙が気になる人は、マンション内のルールを確認しよう

最近、苦情が減少傾向にあるのがたばこ問題。

「煙の出ない電子たばこの普及で全体としては苦情が減っています。このところ、禁煙物件も増えており、悩まされたくない人はそうした物件を選ぶのも手。ただ、禁煙物件でも室内は禁煙にしているものの、廊下、バルコニーは可、敷地内は可という物件もあるので、どこまでの禁煙かはチェックしてください」

減少傾向にはあるものの、それでもバルコニーなどでの喫煙への苦情はなくなってはいない。難しいのは禁煙物件でない限り、たばこを吸うなとは言えないこと。管理会社からはお願いという形で呼びかけるしかないのだ。それでも苦情を申し入れる際には「吸い殻がバルコニーから転がってくる」「洗濯物に匂いがつく」など具体的な困り事を挙げて相談してみよう。

自衛策としては下見時に隣戸の廊下、バルコニーなどに吸殻を入れた灰皿、空き缶などが置かれていないかを確認すること。ただ、これも隣戸の入居者が入れ替わってしまえば意味がなくなる。難しいところである。

内容によっては管理会社以外に相談する方法も

内容によっては管理会社以外に連絡するケースも内容によっては管理会社以外に連絡するケースも

隣人の行動が気になることもある。内容によっては管理会社ではなく、それ以外のところに相談したほうがいいケースもあるので、以下、簡単にご紹介しよう。

特定の住戸に不特定多数が出入りしている、異常に出入りが多いなどの場合には管理会社に連絡しよう。

「都心のワンルームでしたが、やたらに人の出入りが多く、電話の回線を大量に引いている部屋があり、おかしいと思ったらいわゆるオレオレ詐欺の拠点でした。住居をオフィスとして借りている場合でも不特定多数が出入りする業種が入ることはあまりありません。不審に思ったら問合せてみてください」

また、ここ数年は空室をネット通販詐欺(通販で購入したものを空室に送って詐取する)、口座詐欺、オレオレ詐欺などの品物、現金などの送り先として使う例も増えている。建物内に空室なのに大量の荷物が届く部屋があったら悪用されている懸念がある。

知らない高齢者が敷地内、建物内でうろうろしているような場合にはわが家が分からなくなったなどで徘徊している可能性が考えられる。この場合の連絡先は高齢者の暮らしをサポートするための拠点である地域包括支援センターが適任だろう。地元の自治体名と地域包括支援センターで検索すれば住んでいる地域を担当するセンターの連絡先が分かる。もし、その人が知っている人であればご家族に連絡する、ご自宅に同行するなどが妥当だろう。


頻繁に子どもの泣き声や怒鳴り声がするなど子どもの虐待が疑われる場合には児童相談所虐待対応ダイヤル「189」が連絡先である。これは全国共通の番号で、かけると自動的に地域が判別され、最寄りの児童相談所につながる。通告、相談は匿名で行うこともでき、通告、相談をした人、その内容に関する秘密は守られることになっている。通話は無料。

知り合いからのストーカー行為、見知らぬ人からのつきまといや待ち伏せについては警察、管理会社双方に相談を。ただ、管理会社にできるのは入居者以外立ち入り禁止となっている敷地内に無断で入り込んでいるなど、明らかに建物のルールに違反している場合に立ち入らないように通告する程度。この場合も写真などの証拠があれば動いてもらいやすい。

ストーカー行為に関しては、郵便受けから郵便物が盗まれているという相談もあるそうだが、ダイヤル式など一般的な郵便受けの場合、番号を変えても隙間から盗まれることがあり、完全に防ぐことは難しい。各種明細などを紙からWebにして郵便物を減らすなど、自衛策を考えるほうが現実的だろう。

いずれの場合にも大事なことは、管理会社は腹を立てる相手ではなく、一緒に問題を解決するためのパートナーであるということ。そのためには問題が発生したときに一緒になって取り組んでくれる管理会社を選ぶことが大事。部屋を借りるときには仲介をしてくれる会社にばかり目がいくが、住んでいる間ずっと付き合うのは管理会社なのである。


登録事項等証明書交付請求(関東運輸局)
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_gian/touroku/car_regist_shoumei.htm

児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dial_189.html

内容によっては管理会社以外に連絡するケースも入居後、長い付き合いになる管理会社。良好な関係性でありたいものだ

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