更新料とは
賃貸物件は、一般的に2年間が契約期間となっており、契約期間が終了した後も継続してその物件に住みたい場合、更新料の支払いが必要となる。更新料とは、その賃貸借契約の更新の際に、借主が貸主に支払う一時金のことである。更新料には法的な支払義務の根拠はなく、民法にも規定はないが、更新料の支払いに関して一定の要件を満たす約定がなされていれば、その特約は有効とされている。更新料の金額は地域によって差があり、場所によっては支払いの習慣がない地域もある。
更新料は敷金や共益費のように特定の目的で利用される用途があるわけではない。基本的には貸主の収入であり、礼金と同じく賃料の前払い的性質を有する金銭となる。
貸主が賃貸物件の管理を管理会社に委託していると、貸主は管理会社に更新事務手数料を支払うことが多い。更新事務手数料とは、管理会社が更新時に貸主と借主との間で更新の覚書を締結する等の事務作業を行う場合の報酬のことである。例えば、貸主は借主から更新料として家賃の1ヶ月分を受領すると、更新事務手数料として家賃の0.5~1ヶ月分を管理会社に支払っていることが多い。
よって、更新料の用途をあえていうならば、管理会社に支払う更新事務手数料の一部となっているということもできる。
また、最高裁平成23(2011年)年7月15日判決においては、「更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である」と位置付けられている。
更新料の費用相場は?
少し古い資料となるが、国土交通省が開示している「民間賃貸住宅に係る実態調査(平成19年6月)」によると、主な都道府県の更新料を徴収している割合と平均月数は下表の通りである。
民間賃貸住宅に係る実態調査(平成19年6月)
https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/07/070629_3/02.pdf
更新料は首都圏で徴収している割合が高く、首都圏では概ね0.5~1ヶ月程度が相場となっている。
更新料と消費者契約法
更新料については、重要な最高裁判例があるので紹介する。一時期、更新料は消費者契約法10条に反して無効ではないかということが裁判で争われていた時期があった。消費者契約法10条とは、以下のような条文である。
消費者契約法第10条:消費者の利益を一方的に害する条項の無効
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
更新料は民法に支払義務が規定されていないことから、賃貸借契約における更新料支払特約は、民法に比し消費者の義務を加重するものではないか、また消費者の利益を一方的に害しているのではないかという点で、裁判が行われたことがある。
結論からすると、最高裁平成23(2011年)年7月15日の判決によって、更新料支払特約は一定の要件を満たせば有効であると判決されている。判決の中には、以下のような文言が記載されていることがポイントとなっている。
最高裁平成23年7月15日判決の一部
賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当である。
ここでの事案では、更新料は「更新される期間が1年、更新料が賃料の2ヶ月分」となっていた。
つまり、裁判所は「更新される期間が1年、更新料が賃料の2ヶ月分」程度であれば、「消費者の利益を一方的に害するものには当たらない」と解している。よって、更新料が「更新される期間が1年、更新料が賃料の2ヶ月分」の範囲の前後であれば有効なものとなる。例えば、首都圏では「更新される期間が2年、更新料が賃料の1ヶ月分」とするケースが多いが、この程度であれば消費者の利益を一方的に害するものにはならず、有効とされている。
更新料特約の有効性
更新料は、一定の範囲内であれば消費者契約法に反することなく有効であるとされている。
ただし、更新料は民法で支払義務が定められているものではないため、貸主が更新料を受領するには賃貸借契約書に更新料特約が規定されていることが必要となる。
更新料特約とは、例えば以下のような約定である。
更新料
1.甲(貸主)及び乙(借主)は、協議の上、本契約を更新することができる。
2.前項の場合には、乙は甲に対し本契約における更新料として賃料の〇ヶ月分を更新時に支払わなければならない。
有効な更新料特約とするには、以下の2点がポイントとなる。
【有効な更新料特約であることの判断ポイント】
・住宅の場合は、消費者契約法を考慮して「一義的かつ具体的」に記載されていること
・住宅の場合は、更新料の額が不当に高額ではないこと
1つ目のポイントは、更新料特約が「一義的かつ具体的」に記載されているという点である。
前章で紹介した最高裁平成23年7月15日判決の一部には、「一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、・・・(中略)・・・消費者の利益を一方的に害するものには当たらない」という記載があった。
「一義的かつ具体的」のうち、「一義的」とは、借主(消費者)にとって更新料条項が二通りの解釈がされるようなことはなく、内容が明確であるという意味である。また、「具体的」とは、借主が負担するリスクがどのようなものか具体的に規定されているということを意味している。つまり、一義的かつ具体的に記載するには、「更新料の額が明確に記載され、いつ時点に支払うか」ということが明確に記載されていることが必要とされている。
2つ目のポイントは、更新料の額が不当に高額ではないことである。高額か否かの基準は、最高裁平成23年7月15日判決の事案である「更新される期間が1年、更新料が賃料の2ヶ月分」が基準となっている。「更新される期間が1年、更新料が賃料の2ヶ月分」を大きく逸脱したような更新料は、消費者の利益を一方的に害する恐れがあるとして、無効と解される可能性がある。国土交通省が開示している「民間賃貸住宅に係る実態調査(平成19年6月)」の更新料の平均月数では、ほとんどの都道府県が2ヶ月以内であることから平均的な更新料であれば不当に高額ではないということになる。
更新料の値下げ交渉は可能か
結論からすると、更新料の値下げ交渉は可能であるといえる。まず、更新料に法律上の支払義務はないことから、賃貸借契約書に有効な更新料特約が記載されていなければ、更新料の支払義務はない。
最近は減ってきているが、古い賃貸借契約書の中には更新料について一切記載されていない契約書も多い。仮に更新料特約が記載されていない場合には、それを理由に更新料を支払わないことが可能か、交渉をすることはできる。一方で、実際には更新料だけを減額交渉するのは根拠が通しにくともいえる。そこで、更新料を減額したいのであれば、賃料そのものを減額交渉していく方が主張を通しやすいだろう。
賃料に関しては、借地借家法第32条によって賃料減額請求権が定められている。
借地借家法第32条:借賃増減請求権
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
「近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき」は減額交渉できるため、交渉のタイミングとしては更新時とは限らないことになる。
賃料減額交渉の現場では、借主から賃料の減額を要求すると、貸主から賃料ではなく「更新料を免除する」といった回答をもらえることがある。
更新料だけをピンポイントで交渉するのは難しいが、賃料の減額交渉をすることで、更新料の減額を勝ち取ることもできるかもしれない。更新料の減額は、賃料減額交渉の中で減額の可能性がある1つの条件と捉えるのがいいだろう。
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