管理費とは?
賃貸物件の契約時には、初期費用として礼金や敷金、仲介手数料といった費用などの支払いが必要となる。
また入居後は、毎月支払う家賃のほかに、管理費や共益費が徴収される物件がある。
管理費(共益費)とは、階段、廊下等の共用部分の光熱費、上下水道使用料、清掃費等の日常の維持管理に必要な費用のことである。管理費(共益費)の用途と相場について解説する。
管理費の仕組み
賃貸マンションのような賃貸物件は、建物が専有部分と共用部分に分かれている。専有部分とは借主が実際に借りている部分のことであり、共用部分とは共用廊下や共用階段、エレベーター、エントランスホール等を指す。
賃貸マンションでは、専有部分で発生する水道光熱費は借主が自ら電力会社やガス会社等と契約し、実費を支払うこととなっている。一方で、共用部分で発生するエレベーターや廊下の電気代等の水道光熱費は、貸主が電力会社等と契約し、支払っている。ただし、共用部分の水道光熱費等は借主が共同して費用を負担するという考え方が一般的だ。そこで、貸主は借主から管理費(または共益費)という名目で一旦お金を集め、そのお金を貸主が電力会社等に水道光熱費を支払っているという仕組みとなっている。
管理費(または共益費)は共用部分の維持管理に必要な諸経費であることから、本来であれば実費精算されるべきという考え方もある。しかしながら、賃貸物件で管理費を実費精算することは実際にはかなり難しい。例えば電気代は月末に使用料が確定して、その翌月に請求額が送られてくることが一般的である。賃貸物件の場合、入居者が10月に退去して、11月から別の入居者に入れ替わることもある。実費精算してしまうと、10月分の電気代を退去した入居者から後で徴収しなければならないため、手続きもかなり煩わしくなり、場合によっては管理費を徴収できないままとなってしまうこともある。
賃貸物件では入居者が入れ替わる前提であることから、共用部の水道光熱費を実費精算することは馴染まず、あらかじめ決められた固定費で徴収している。共用部の水道光熱費は、建物の規模や設備によって毎月発生する金額をある程度予測することができるため、予測額を戸数で割ることで実費に近い適切な管理費を割り出すことができる。
賃貸物件で徴収される共益費は、予測値から割り出したものであるが、実際には実費よりもやや多めに徴収していることが多い。理由としては、賃貸物件は空室も発生することがあるため、多めに取っておかないと空室が増えたときの貸主の負担が大きくなってしまうからだ。
入居者から集めた共益費と実費との差額は、貸主の収入となっており、管理費(または共益費)は家賃の一部を構成しているものとも解されている。
管理費と共益費の違い
賃貸物件の中には、「共益費」の名目でお金を徴収する物件もある。管理費も共益費も呼び方の違いだけで、賃貸物件の共用部分の日常の維持管理に必要な諸経費のことである。国土交通省が示す不動産鑑定評価基準では、共用部の維持コストについて借主から徴収する金銭を「共益費」、貸主が実費で支払う金銭を「管理費」と使い分けており、本来、借主から徴収する金銭は「共益費」と呼ぶことが適切といえる。
管理費という言葉を使っているのは、どちらかというと「アパート」や「複数戸まとまった一戸建て賃貸」といった物件に多い。アパートは、賃貸マンションと比べると共用部分に発生する水道光熱費がほとんどない。
廊下や階段は外廊下や外階段で、天井に電気が設置されていない物件や、自動扉やエレベーターがない物件も多い。
また、一戸建て賃貸においては、共用部すらないといえる。共用部で水道光熱費が明確に発生しないアパートや一戸建て賃貸では、「共益費」といった言葉が使いにくいといった理由もある。ただ、アパートや一戸建て賃貸でも、共用部の維持管理費が生じるケースはある。例えば、共用の受水槽や浄化槽を利用している物件や、セキュリティ会社に物件全体の保安を依頼している物件であれば維持管理費が生じる。
アパートや一戸建て賃貸でも、共用部の維持管理費が発生する物件は存在するため、物件によっては「管理費」という名目でお金を徴収している。それに対して、共益費という言葉は、「賃貸マンション」や「マルチテナントビル」のように共用部における水道光熱費の発生が明確な物件で使われる傾向がある。
借主に対して共用部の維持管理費の徴収が説明しやすい物件は「共益費」、説明しにくい物件は「管理費」という言葉を利用しているケースが多いといえる。なお、分譲マンションでは区分所有者が毎月負担する共用部の維持費は、「管理費」という言葉が使用されている。分譲マンションの管理費も固定費であり、実費精算されないことが一般的だ。
管理費や共益費がある物件とない物件の違い
賃貸物件には、管理費や共益費がある物件とない物件が存在する。まず、一棟貸しの物件は、共用部が存在しないことから、管理費や共益費の徴収はない。一棟貸しの賃貸物件としては、例えば郊外型のコンビニや1戸だけの一戸建て賃貸等がある。また、アパートも管理費や共益費を徴収しない物件は多いといえる。アパートは、構造的に水道光熱費が発生する共用部が基本的にほとんどないことから、管理費や共益費を徴収する必要がない物件が多いからだ。
一方で、賃貸マンション等であっても管理費や共益費を徴収しない物件もある。管理費や共益費を徴収することは義務ではないので、貸主の空き室対策によってはあえて徴収しない物件も存在する。インターネットの不動産ポータルサイトでは、物件の絞込検索機能で「管理費・共益費込み」という項目を設けているサイトもある。
一般商品のインターネット通販でも「送料込み」と表示されると、購入者は割安感を感じることがある。それと同様の効果で「管理費・共益費込み」とすれば借主に割安感を与えることができることから、貸主の判断であえて管理費や共益費を別途徴収しない物件もある。
ただし、「管理費・共益費込み」の物件は、家賃に共益費等が含まれているため、必ずしも含まない物件よりも総額が安いとは限らない。物件を借りる際は、類似の物件の賃料の相場を調べた上で最終的に判断するのがいいだろう。
管理費および共益費の相場
政府統計(e-Stat)の平成30(2018)年住宅・土地統計調査「住宅の1か月当たり家賃(19区分)別借家数、1か月当たり家賃及び1か月当たり共益費・管理費-全国、都道府県、大都市(昭和58年~平成30年)」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200522&tstat=000001127155&cycle=0&year=20180&month=0&tclass1=000001140366&tclass2val=0
によると、全国の主要都道府県の管理費および共益費の平均は以下のようになっている。
管理費および共益費は徴収していない物件もあるため、統計は「0円を含む」と「0円を含まない」の2種類に分かれている。「0円を含まない」は、管理費および共益費を徴収している物件だけの平均ということになる。
「0円を含まない」を見ると、全国平均では月額「4,464円」、東京都は一番高く「5,199円」となっている。全国的には大きな差はなく、概ね4,000~5,000円程度が管理費や共益費の相場といえる。
管理費または共益費は減額交渉が可能なのか
一般的には、管理費や共益費を交渉して減額することは難しいといえる。管理費や共益費も賃料の一部を構成するものであることから、理論的には近傍同種の賃貸物件と比較して不相当となったときは減額できるものと考えられる。
ただし、管理費や共益費は共用部の維持管理費の実費相当という前提があるため、貸主側からは管理費や共益費は引き下げることができないという回答となることが多い。
例えば、月額家賃が8.5万円、管理費が0.5万円の物件で賃料減額交渉をした場合、月額家賃は8.0万円まで下がっても管理費は0.5万円のままで据え置かれるというのが一般的だ。
そのため、減額交渉をするなら管理費ではなく賃料を交渉の対象とした方が成功確率は高いだろう。
ただし、管理費は実費相当であるがゆえに、実費が変わる状況にあれば減額できる可能性はある。
例えば、共用部の電気を蛍光灯からLEDに全て入れ替えたとき等は、実費が減るために管理費を減額できる余地があるかもしれない。
賃貸借契約書の中には、管理費または共益費についても「維持管理費の増減により共益費が不相当になったときは、協議の上、改定することができる」と定めているものもあるので、不相当となった可能性がある場合には、賃貸借契約書をもとに貸主と話し合ってみることも一つだろう。
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