京都の老舗道具店がセレクトする道具とホテルの融合

“泊まれる道具店”という、聞いただけでもワクワクするようなホテルがある。2021年7月にオープンした「みまる道具店」は、都市型アパートメントホテル「MIMARU SUITES (ミマルスイート) 京都四条」で行われている、ホテルと道具店が融合した新サービスだ。

株式会社ブルーパドル ・ベースドラム株式会社も企画/道具プロデュース・ディレクションに携わっている株式会社ブルーパドル ・ベースドラム株式会社も企画/道具プロデュース・ディレクションに携わっている

「みまる道具店」が提携しているのは、京都市内にショップを構える2つの道具店だ。ひとつは、主に生活用品を扱う、1912年創業の老舗道具店の川端滝三郎商店。もう一つは、民芸品など、実用性やデザインの観点からセレクトされた商品を幅広く扱う倉日用商店だ。

1階ロビーの一角にある「みまる道具店」には、おちょこや茶碗、土鍋や茶道具など、100点以上のさまざまな生活道具が並んでいる。これらの道具はすべて無料で体験OK。宿泊者は、好きな道具を客室内で自由に使うことができる。

株式会社ブルーパドル ・ベースドラム株式会社も企画/道具プロデュース・ディレクションに携わっている食器や調理器具、さらには昔の玩具まで、いろいろな暮らしの道具が揃っている。※購入は不可
株式会社ブルーパドル ・ベースドラム株式会社も企画/道具プロデュース・ディレクションに携わっている道具のセレクトは京都にこだわらず、日本全国から集めている

ホテルの滞在時間をもっと魅力的に

アパートメントホテル「MIMARU」は、全室にリビング・ダイニングキッチンがついていることが特徴。広い客室に「みんなで泊まる」をコンセプトに、約40m2、4名から泊まれ、 冷蔵庫・レンジや調理器具などが用意されているので自宅のようにゆっくりとくつろいで滞在することができる。

今回紹介するMIMARU SUITES 京都四条は「MIMARU」から新しく誕生したシリーズで、これまでの特徴に加え、全室2ベッドルーム以上となっている。リビングダイニング・寝室が2つ以上と分かれており、バスルームも2つ用意されているため、家族だけでなく、友人同士や複数世帯で泊まりやすい設えだ。

さて、京都の古道具店がセレクトする道具が、ホテルの客室で使えるというコンセプトは、どのようにして生まれたのだろうか?

「MIMARU SUITES 京都四条のメインターゲットは、3泊以上の中長期滞在のグループ旅行。ご宿泊される家族連れや海外のお客様は、キッチンをよく活用されています。その理由としては、京都の観光名所は早く閉まるため、夜は早めにホテルに帰って来られるケースや、長期滞在で外食が続くと手作りの食事が食べたくなる、海外の方の場合、ヴィーガンや宗教上の理由で食べられるものが限られる、などが挙げられます。また、昨年からのコロナ禍の緊急事態宣言により、ホテル内での滞在時間も増えています」と、MIMARU SUITES 京都四条を担当するエリアマネージャーの汲田まどかさん(株式会社コスモスホテルマネジメント)は話す。

その他にも、日本で見つけた商品の使い方が分からないという海外のお客様からの声や、子ども向けに、日本文化を体験できる機会がほしいとの声も家族連れからよく寄せられていたのだそう。

スーペリア2ベッドルームスイートの部屋タイプ。写真提供:MIMARU SUITES 京都四条スーペリア2ベッドルームスイートの部屋タイプ。写真提供:MIMARU SUITES 京都四条

「お客様にどうしたら、施設内での時間を充実して過ごしていただけるか、多様化するホテルステイで、MIMARU SUITES 京都四条の個性をどう出していくかを試行錯誤する中、食卓を彩る生活道具の提供というアイデアが生まれたのです。昼は外を観光し、夜は客室で旅を振り返りながら、食卓を囲んでゆっくりと会話を楽しむ。そんな時間も大切な旅のワンシーンになるのではと考えています」

“京の台所”と呼ばれる観光名所・錦市場も徒歩圏内だ。食事は旅の楽しみのひとつというが、新鮮な土地の食材を自宅で過ごすように味わえるのは、なんとも贅沢な時間だ。

「実際に道具を使っていただけるサービスは、お客様に喜んでもらえるのではないかと。キッチンで使いやすいように、道具と一緒に使い方やおすすめレシピも添えています。また、現在は特別にホテルスタッフがごはん鍋でご飯を炊いて、お部屋にお届けする サービスを行っています(事前予約制)。客室内のIHコンロでは使用できませんが、炊き立ての土鍋ご飯は、ご飯の美味しさが違うと好評いただいています」

スーペリア2ベッドルームスイートの部屋タイプ。写真提供:MIMARU SUITES 京都四条レシピを見ながら、みんなで料理をするのもまた一興
スーペリア2ベッドルームスイートの部屋タイプ。写真提供:MIMARU SUITES 京都四条汲田さん一押しのごはん鍋(貸出対象外)

自宅のような客室で、くつろげる空間

それでは、MIMARU SUITES 京都四条の客室をいくつか紹介していきたい。

就寝分離が当たり前とされている海外文化を踏まえ、ベッドルームが個室にされている。大人ファミリー・複数世帯・友人同士での旅行を考えた際に、ベッドルームはそれぞれ各家族やカップルでリラックスして過ごせるようにするためだ。そうすることで、就寝時間の違いやひとり時間のニーズにも応えることができている。また増えつつある、時間や場所を限定しない働き方やワーケーションの普及も視野に入れている。

「これまで、高級シティホテルに数室ずつしかなかった『2ベッドルーム』を全室に採用し、みんなで集まる場とベッドルームを分けることで、旅行者同士の生活時間の異なりにも配慮しています」

個室を設けることで、ホテルステイの幅が広がる個室を設けることで、ホテルステイの幅が広がる

みまる道具店が、より楽しめる客室もある。客室ごとに、珈琲道具セット、お茶道具セット、調理道具セットなど、テーマ別に分けられた道具が部屋に用意されている。このセレクトにはホテルスタッフも参加し、自分たちが使ってよかったものを選んでいるのだそう。器による味の違いを楽しんでいただきたいと汲田さんは話す。

個室を設けることで、ホテルステイの幅が広がる9階10階の部屋に備え付けられている、みまる道具店「お茶道具セット」

道具屋まるごとホテルに!?「泊まれる川端滝三郎商店」

一番の目玉といえば、プレミアムルームの「泊まれる川端滝三郎商店」ではないだろうか。客室前には木の表札がかかっており、入り口の扉を開けると、道具とアンティーク家具が調和する、お店を再現したような空間が広がっている。

箪笥の中、ちゃぶ台の上などに置かれた民芸品たちの総数は60点以上。お店の中に泊まっているような感覚は、なんとも楽しい試みだ。もちろんこれらの道具たちは、すべて滞在中に利用することができる。

「泊まれる川端滝三郎商店」の様子。壁には、ちりとりや和菓子の木型なども飾られている「泊まれる川端滝三郎商店」の様子。壁には、ちりとりや和菓子の木型なども飾られている
「泊まれる川端滝三郎商店」の様子。壁には、ちりとりや和菓子の木型なども飾られている「泊まれる川端滝三郎商店」には座敷が用意されてる。写真提供:MIMARU SUITES 京都四条

キッチン・ダイニング付きの客室内で、京都の目利きがセレクトした日本の手仕事道具に触れながら、みんなで団らんする。旅先の楽しみが、またひとつ広がりそうだ。旅先を暮らしのように楽しむ、新しい旅のスタイルを提案するMIMARU SUITES。今秋には京都に、MIMARU SUITES 京都 CITYもオープン予定。東京エリアでも2022年春オープンに向け準備中だ。どんな施設になるのか、今から楽しみにしておきたい。

その前に是非一度、道具に囲まれた京都でのホテルステイを堪能してほしい。

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