人気観光スポット・郡上八幡でも空き家や空き店舗の増加は大きな課題

人口減少や少子高齢化による空き家・空き店舗の増加が全国的な問題となっている。
それは、夏の郡上おどりでも知られる岐阜県郡上市八幡エリアでも例外ではない。

市町村合併後も「郡上八幡」と親しまれるこのエリアは、“天空の城”としても注目される美しい山城・郡上八幡城の旧城下町であり、古い町並みは江戸時代の面影を色濃く残している。
清らかな水が流れる水路が巡る水の郷は“奥美濃の小京都”とも呼ばれ、豊かな情緒が人気だが、その景観を織りなすのに欠かせないのが、市街地に残される1,000棟超の伝統的な「町家」。町家はまちの財産でもあるのだが、近年は空き家率が高くなっているという。

一般財団法人郡上八幡産業振興公社の調査によると、2000年に207軒、2013年には353軒が空き家となっており、毎年11軒ずつ増え続けていることが分かったそう。
そのペースでいくと2020年は更に増えているのかと思いきや、今年は354軒と7年前とほぼ同じ。依然として空き家率は高いものの、この5年ほどで新しい店舗も誕生し、古くからの趣きを生かしながら“再生”している空き家も少しずつ増えているようなのだ。

空き家増加に歯止めをかけている大きな一助となっているのは、空き家再生プロジェクト「チームまちや」の存在。代表の武藤隆晴さんに話を聞いた。

一般財団法人郡上八幡産業振興公社空き家対策「チームまちや」武藤隆晴さん/100年以上の歴史を持つ町家「玄鱗」内の事務局にて一般財団法人郡上八幡産業振興公社空き家対策「チームまちや」武藤隆晴さん/100年以上の歴史を持つ町家「玄鱗」内の事務局にて

空き家再生プロジェクト「チームまちや」とは?

郡上八幡の城下町エリアで空き家・空き店舗、老朽家屋が取り壊された後の空き地が増えたのは、人口減少や少子高齢化、既存商店の衰退が進んだ結果といえる。そこで、“街の底辺にある課題”に立ち向かうべく、2015年6月に起ち上がったのが「チームまちや」。主要観光施設の管理等を行う一般財団法人郡上八幡産業振興公社の、空き家再生に特化したプロジェクトチームで、所有者から相談を受けた空き家について、借り受けから改修、維持管理、そして再生物件と移住・起業希望者とのマッチングまでを一貫して行っている。

空き家オーナー側からみると、所有に困っている空き家を「チームまちや」が再生・活用するために最低10年間借り受けてくれる仕組みだ。長く空き家になっている物件は住める状態ではないものや物が残っている場合も多いが、その処理を手伝ってくれるほか、老朽箇所や水回り・屋根などは所有者負担ナシで改修。住める状態になった再生物件の入居希望者も探してくれて、支払われる家賃を空き家所有に係る必要経費に充てることができる。

一方の移住・起業希望者は、住める状態になった郡上八幡のさまざまな町家を、住居や店舗とすることができる。再生前の物件であれば、入居者の用途に合わせた改修をしてくれたり、「チームまちや」がオーナーや近隣の人たちへのさまざまな橋渡しもしてくれるため、スムーズになじみやすいのもメリットだろう。
「チームまちや」では、ホームページやFacebookで町家の“賃貸物件情報”を発信しているほか、改修済・改修予定の町家を見学できる「空き家拝見ツアー」などのイベントを年に数回開催。先日も「町家オイデナーレ」と銘打った体験型イベントが今年も行われ、郡上八幡の町家や町並み、そして人々と触れ合う参加者が多数あったそうで、移住に興味を持っている人が多いことがうかがえる。

郡上八幡の城下町エリアをフィールドに町家の空き家対策を行う「チームまちや」のプロジェクト説明図</br>町家の改修は「空き家活用基金」を元手に行われるが、入居者が「チームまちや」に支払う賃料と、「チームまちや」が空き家所有者に支払う賃料の差額収益で10年以内に基金に戻す・・・というシステムだ郡上八幡の城下町エリアをフィールドに町家の空き家対策を行う「チームまちや」のプロジェクト説明図
町家の改修は「空き家活用基金」を元手に行われるが、入居者が「チームまちや」に支払う賃料と、「チームまちや」が空き家所有者に支払う賃料の差額収益で10年以内に基金に戻す・・・というシステムだ

町家を活かし、「かつて」と「いま」と「これから」を大切にするまちづくり

郡上八幡で暮らしたい・お店を出したいという希望者たちが集まる「町家オイデナーレ」。改修済・改修予定の町家を見学できる「空き家拝見ツアー」や、空き家から出た骨董品などが並ぶ「骨董市」、トークリレーライブなど…町家を使った体験型イベントが2020年も11月下旬の2日間にわたって城下町一帯で開催された。郡上八幡で暮らしたい・お店を出したいという希望者たちが集まる「町家オイデナーレ」。改修済・改修予定の町家を見学できる「空き家拝見ツアー」や、空き家から出た骨董品などが並ぶ「骨董市」、トークリレーライブなど…町家を使った体験型イベントが2020年も11月下旬の2日間にわたって城下町一帯で開催された。

水とおどりの城下町・郡上八幡の町家の魅力

近くに山や川、用水路、井戸など水施設も多い郡上八幡には水辺に面した町家も見られる近くに山や川、用水路、井戸など水施設も多い郡上八幡には水辺に面した町家も見られる

使えるようになった空き家の情報発信にも力を入れながら、空き家所有者と移住・起業希望者をつなぐ活動が進められているが、借りたい人があれば誰でもOK…ではない。
郡上八幡の財産でもある町家を活かし、まちを盛り上げてくれるであろう人を移住者としたい考えのため、入居希望者へのヒアリングがしっかりと行われる。

「やはり暮らしの拠点を移すのは人生の一大事ですから、このまちに移住する目的や将来の展望などその方の人生設計を聞かせていただきます。
観光客も多い郡上八幡ですが、旅で訪れた際の美しさや賑わいに惹かれて住んでみたいと思うだけでは難しいです。冬は大変厳しい寒さですし、人出も少ない。『こんなはずじゃなかった…』と、観光地としてのイメージと日常のギャップに住み続けられないのは避けたいですし。
このまちで新たな暮らしを考えている方や、このまちに新しい仕事を作りたいという熱意を持った方々にご活用いただきたいと思っています」(武藤さん)

「チームまちや」による町家改修は年に5-6軒のペースで行われ、これまでに30軒(店舗12軒・住居8軒)が移住者・起業者に貸し出されている。※2020年12月現在

「郡上八幡に残る町家は、奥に細長い家が多く、通り土間や天窓、中庭や土蔵や離れを持つものが典型ですが、小さなものから元商家の壮大な町家、城下町時代の武家地は位によって家の大きさも違います。周辺は宅地化された元農村地で、規制のない中で発展していったものなので形もさまざまで多彩。表通りに面した町家だけでなく裏路地や水路に面した町家もあってバリエーションが豊かなんです。
また、通りと建物、つまり町と家が緩やかにつながっているという特徴も。塀で囲まれることもなく窓や戸が道路に面していて、通りからも家の中が見え、家の縁側に座って外の人と話せるような“開かれた”町家なので、『町家は地域の建物』でもあるのです」(武藤さん)

所有者に町家を借り、移住者に貸せるように改修するわけだが、昔の町家は、台所が通り庭にある、土間に下りてトイレに向かう、お風呂がない…なども少なくない。そこで、構造の強化とともに水回りを建物内に入れて、現代の暮らしや極寒の冬も大丈夫なように改修。古い家が好きな人や自分でDIYしたい人もいるため、バリエーション豊富な町家を、手をかけすぎることなく“暮らせる状態”で貸すことも決めごとの一つだ。

「Uターン・Iターン・Jターン・・・郡上八幡は、空き家を起爆剤に『縁ターン』を増やしたい」

郡上八幡に移住した人の中には、郡上八幡の風土に惹かれて日本産ジンをつくる醸造家や、地質や水の良さを活かした地ビールづくりで起業した人、著名ギタリストからも愛されるギター職人、日本の良さを感じる原風景のある郡上八幡で暮らしたいと移住を決めた国際結婚の夫婦などが。

「想定外の活動をされている移住・起業者が郡上八幡に来てくれて、この5-6年で通りも元気になり、まちの中でいろいろな変化が起きていると感じます。
ただ、これまでは“運良く”回っているので、この先は『郡上八幡をこうしたいから、こんな店・こんな人が来てほしい』と意図を持って進められたらと。

元からの住民は移住者・起業者たちにとても好意的ですが、素性のわからない新しい人が増えることや若い人のスピード感に付いていけず戸惑いがあるのも実際のところでしょう。それが変な溝になってはいけないので、これまでの郡上八幡を作ってきた人たちを一番に大事にしつつ新旧の住民をつなぐ・世代差を緩和するのも、空き家再生を仕掛けた側の責任かな。
できることなら、郡上八幡で暮らしたことがある・親戚や友人がいる…など何かしら縁のある人が入ってくれると、新旧住民のつなぎ役にもなってくれると思うので、そんな“縁ターン”も増やしたいですね」(武藤さん)

町家での暮らしや移住が気になる方に何かメッセージはありますか?と聞くと、

「田舎は仕事がないと見られがちですが、仕事の種はたくさんあります。都市部にしがみつく必要もありません。自分で仕事をつくり出しているたくましい先輩がたくさんいるので、思い切って飛び出してもいいのではないでしょうか?」と武藤さん。

コロナ禍においては人生のギアチェンジなり仕事の仕方を考えた人もいるだろう。
郡上八幡の町家への移住や起業は、歴史を重ねたまちの財産を次の世代に引き継ぐことにも貢献できそうだ。

■チームまちや https://team-machiya.com/

水路に鯉などが泳いでいる様子も、名水百選にも選ばれた「水のまち」郡上八幡 の特徴的な風景。まちのシンボル郡上八幡城は山城ゆえ、城下町エリアの全町家からお城が望めるそうで、移住者に喜ばれるのだとか水路に鯉などが泳いでいる様子も、名水百選にも選ばれた「水のまち」郡上八幡 の特徴的な風景。まちのシンボル郡上八幡城は山城ゆえ、城下町エリアの全町家からお城が望めるそうで、移住者に喜ばれるのだとか

2021年 01月22日 11時00分