形を変えて、地域を支えるために

2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大に伴って発令された緊急事態宣言。政府や各都道府県は外出やイベント開催の自粛を要請するとともに、人との接触を減らそうと呼びかけた。

「これにより日常生活にさまざまな制限が生まれ、地域福祉活動やボランティア・市民活動に取組む人々にも大きな影響が及びました」。そう話すのは、大阪市社会福祉協議会(以下、大阪市社協)地域福祉課の田淵章大さんだ。

「地域活動は、のきなみ中止。その状況に皆さん、戸惑いややりきれなさを感じていることはひしひしと伝わってきました」
居場所づくりや見守り活動の場をサポートしようと、“地域を支える”を方針の一つに掲げてきた大阪市社協もまた、シフトチェンジを迫られていた。
「『自宅に閉じこもらず集まりましょう』『顔の見えるつながりを大切にしましょう』という、それまで市民に伝えていたメッセージを発信し続けることが難しくなったんです」

つながりを途切れさせることなく、お互いの暮らしを気にかけ合うにはどうしたらいいだろうか。その考え方を指し示す必要性を感じたことから、大阪市社協は、ボランティアや職員を読み手として想定した冊子「集まれなくてもつながる方法」を4月30日に、さらにこれをベースに追加収録・更新をした「コロナの中でもつながる方法」を7月28日に作成・公開した。

全43ページの「コロナの中でもつながる方法」(最新は9月24日更新版)全43ページの「コロナの中でもつながる方法」(最新は9月24日更新版)

つながることが、日々を元気に過ごす原動力

写真上/外出しづらい高齢者宅に、自宅でできる体操チラシをポスティング 写真下/地域で28年間続く配食活動。コロナの影響下でも継続されている ※写真提供/大阪市社会福祉協議会写真上/外出しづらい高齢者宅に、自宅でできる体操チラシをポスティング 写真下/地域で28年間続く配食活動。コロナの影響下でも継続されている ※写真提供/大阪市社会福祉協議会

4月に公開された「集まれなくてもつながる方法」は、電話をする、手紙を出したり届け物をする、オンラインを活用する、家でできることを提案するという4つの方法について実践の仕方を紹介。訪問時の注意点、活動再開に向けての視点も整理されている。まずは、こちらの冊子ができた背景を、発案者であり執筆も担当した田淵さんに聞いてみた。

「活動休止が続く4月以降、大阪市の各区・地域では、つながりを絶やさないため、そして自宅にいる人たちが健康的な生活を送るため、さまざまな工夫がされていました。電話や訪問での見守り活動、自宅でできる体操を紹介したチラシの配布などがその例です。こうした活動を広げるための後押しができればと思ったんです」

そこには田淵さん自身の思いもあったという。
「大阪市社協で仕事をして10年あまり。その間、地域の集まりに足を運ぶ人の声から、つながりの大切さを感じることが多々ありました。例えば、会食会の帰り際に『また2週間、誰ともしゃべらないかも』とつぶやく高齢者がいらっしゃったんですが、その方にとって月に1、2回仲間と会うことが、日々を元気に過ごす力になっていたんだと気付いたんです。ですので、コロナ禍でこうした活動が止まることはつらかった。つながりを絶やしたくない気持ちがあったんです」

コロナ禍での実体験も冊子に反映

だが、当時は緊急事態宣言下。冊子作成のために地域活動について顔を合わせて話を聞くことは難しい状況だった。しかも、大阪市社協はもちろん各区の社協もコロナ関連の相談対応で多忙を極めていた時期である。とても新たな冊子作りに人手をさくことはできなかった。

「冊子作成の担当となった私が、所属組織、区の社協、行政などから電話やメールなどで情報・意見を集めました。実は、オンラインでのミーティングは作成中の4月に初めて体験しました。だからこそ、初心者が感じやすい抵抗感や恥ずかしさも理解できました。冊子の中で『オンラインでの集まりに誘われたら臆せずやってみよう!』という記述があるんですが、これはまさに実際に感じたことなんです」

冊子を作成するに当たり、田淵さんが意識したことがある。
「非対面の手法を提案する冊子ではありますが、『その方法をとれば集まらなくてもいいんだ』と思われないようにすることです。基本的な考え方は、対面でのコミュニケーションに勝るものはない、その価値は変わりません」

活動再開に伴う悩みや変化に対応するためにバージョンアップ

こうして4月30日に発行された「集まれなくてもつながる方法」。手にした人からは、「参考になった」「実践してみたい」といった声が届いたそうだが、状況はどんどん変化していく。5月から6月にかけて、ひとり暮らしの高齢者や子どもの居場所活動の利用者などへの配食、体操の集いといった対面での活動が少しずつ再開していったのだ。

「うれしい半面、『感染リスクがゼロにならないなかでの再開の判断に迷う』『ふれあいを制限しながらどのように再開していけばいいんだろう』という悩みも耳にしました。そこで今度は、活動再開に対応した改訂版を作成することにしたんです」

それが7月28日に更新された「コロナの中でもつながる方法」。以前の内容に「活動の目的と、この間の状況を見つめ直そう」「関連するガイドラインや資料を確認しよう」「具体的な準備・対策をして、再開へ」といった項目を入れた「気をつけながら集まる方法」が追加された。合わせて、感染対策を講じながら再開している各区の取組みも紹介されている。

つながるための方法や考え方の選択肢を広げるために活用してほしい

「ボランティアに携わっていない方にも自分の生活の中で役立ててもらえる内容です」と大阪市社会福祉協議会地域福祉課の田淵章大さん「ボランティアに携わっていない方にも自分の生活の中で役立ててもらえる内容です」と大阪市社会福祉協議会地域福祉課の田淵章大さん

「コロナの中でもつながる方法」の発行後、冊子はどのように活用されているのだろうか。

「居場所づくりをしているある団体は活動再開のきっかけがつかめずにいたそうですが、『コロナの中でもつながる方法』を読んで、集まることをやめてはいけないのではないか、気をつけながら集まれる方法を考えていこうと準備を始められました。このように、前向きに進んでもらえるとうれしいですね」
とはいえ、この冊子はあくまでもつながる方法や考え方の選択肢を広げるためのものと田淵さんは話す。

「いろいろな視点から選び取って、話し合ったうえで決定するのはそれぞれの活動団体。配食をしましょう、集まりましょうという直接的なメッセージを発しているわけではありません。ボランティアは自主性が活動の原則といわれているので、そこのスタンスは保てるように意識しました」

3ヶ月の間で更新版を発行したように、今後も状況に合わせて内容の追加・変更を検討していくという。
「別仕立てにする可能性もありますが、飲食を伴う活動を安心して行うための情報や感染対策に関する細かいアナウンス、介護予防の観点からの集まることの重要性も発信していきたいと思っています。活動を再開する、つながり続けるというときに壁になることをクリアしていけるような手立てを、この冊子を軸に展開していきたいです」

「コロナの中でもつながる方法」は大阪市社会福祉協議会のホームページ(https://www.osaka-sishakyo.jp/20200728/)からもダウンロード可。

2020年 12月01日 11時05分