DIY、ペットに続き「アウトドア」がテーマのシェアハウスが誕生
「シェアハウス180°ZUIKOU」の吹抜けリビングに一歩入ると、高さ約8メートルものボルダリング、うんてい、ハンモック、ダーツといったさまざまなアクティビティに驚かされる。こちらは2018年名古屋市内にオープンした、「アウトドア」がテーマのシェアハウス。当サイトで紹介したDIYやペット共生シェアハウスをはじめ、多彩なコンセプト型シェアハウスを管理・運営する株式会社シェア180の新たな物件だ。
「当社のシェアハウスはビルや社宅といった既存の建物をリノベーションした物件が中心で、最小3室から最大で62室の物件まであります。ZUIKOUは初の新築物件ということで、入居者同士のコミュニケーションを高める設計を意識しました」(シェア180山口鈴華さん)
とくに吹抜けリビングをぐるりと囲むように、廊下と居室を配置したのがポイント。部屋のドアを開けて見下ろせばリビングに人が集まる様子が見えるため、コミュニティに参加しやすい。「皆さんの仲がとてもよく、リビングのプロジェクターでスポーツ観戦なども行っています」と山口さんは話す。
さて「人生の分岐点には、場所、仕事という3つの要素がある」というのは、同社の伊藤正樹社長の言葉だ。シェア180では「シェアを通じて人生を180°変えよう」を合言葉にして、“人と場所”を提供すべく愛知県と金沢で26棟のシェアハウスを展開している。
そして2019年12月からはついに仕事までサポートし始めた!?というから興味深い。「シェアハウスのキャリア支援サービス」という、意外かつ新しい取り組みについて聞いてきた。
イベントで入居者とスタッフが友達付き合い。「キャリアアップ部」も
シェア180のシェアハウスには、現在約250人の入居者が暮らしている。クリスマスパーティーや栗拾いといった毎月のイベントやクラブ活動が盛んで、入居者のコミュニティはハウス内にとどまらない。
まず月替わりのイベントは主にスタッフが企画・運営を行っており、スタッフと入居者の距離感がとても近い。山口さんは「プライベートでも、入居者さんとごはんに行くことが多いです」と笑う。他のスタッフも3ヶ月~半年単位で同社のシェアハウスを住み替え、コミュニティにすっかり溶け込んでいるそうだ。
一方でクラブ活動は、入居者主体で活動する趣味のサークルのようなもの。
「カメラ、サイクリング、カラオケなど、11のクラブ活動があります。専用アプリやメールで告知して活動し、ハウスを越えた繋がりが生まれていますね。珍しいものとしては『キャリアアップ部』があり、起業やキャリアチェンジした仲間をゲストスピーカーに招いたりして、ゆるく熱く交流しています」(山口さん)。
このようにイベントやクラブを通し、入居者と親しい一友人として付き合う中で、仕事の相談を受けることが増えてきたという。「『私にはどんな仕事が合っているのか』といった悩みを聞くものの、自分の経験でしか答えられないのがもどかしくて…もっとプラスになるアドバイスをしたかった」と話す山口さんは、個人的に「キャリアコンサルタント」の資格を取得することにした。
入居者の悩み相談から生まれた「キャリア支援サービス」
こうしてキャリアコンサルタントの資格を取得した山口さんは、学んだ知識をもとに「お仕事悩み相談」からスタートする。
「まず会話を通して自身と向き合ってもらい、職務経歴書風のプロフィルシートを一緒につくりました。自分の気づいていなかった強みを知ったり、本当に転職すべきかどうかも分かってきます。キャリアコンサルタントの立場では、専門分野以外で関わりをもつ“二重関係”を避けるべきと言われています。そこでプロの視点も取り入れるべく、信頼できる人材紹介会社を自分で探し出し、2社と契約を結びました」(山口さん)。
また相談だけでなく「企業とのマッチング」という出口を整えるために、有料職業紹介事業の許可申請を行い、2019年12月にキャリア支援事業をスタート。山口さん自身でも受け入れ先となる企業を開拓し、社長や人事担当者と求める人物像などの情報を共有した。転職希望者とは転職先を一緒に分析し、会社面談にも同行。この手厚いサービスが奏功し、すでに一人目のマッチングに成功したそうだ。
「私はシェア180の採用も担当していて『この会社で働いて楽しい、この人に働いてもらえてうれしい』という両想いを目指しています。この経験を生かして転職希望者と企業の両方に寄り添っていきたいですね」
コミュニケーション力に社会性…シェアハウスは人材の宝庫
伊藤社長の「人生の分岐点には人、場所、仕事があり、当社は人と場所を提供できる」という言葉からすると、キャリア支援サービスは新たな柱になりそうだが、「たまたま入居者さんから仕事相談があり、私も興味があって始めたもので、利益追求ではないんです」と山口さん。
でもキャリアという視点でシェアハウスを見直してみると、思わぬ発見があったそうだ。
「シェアハウス入居者のコア層は20代半ば~30代前半で、ルールを守って共同生活ができて社会性があり、ポジティブな方が多くて、コミュニケーション能力も高い。これは企業が求める人物像とマッチします。改めて住んでいる方々に魅力があると思いました」
とはいえ、いくら企業から求められても、本人に転職の意思がなければ紹介はしない。「ご本人からキャリアの相談を受け、一緒に考えてから初めてマッチングを検討します。入居者さんは大切なお客様であり、大切な友達なので、企業から求人のご要望があっても、対象者がいなければ無理なご紹介はしません。入居者さんの人生を変えるひとつのきっかけになればと始めたサービスですから」と揺るぎない。
イベントやクラブ活動を通して、ハウス内外の密な交流を生み出している同社のシェアハウス。アウトドアやペット共生といった珍しいコンセプトに目が行きがちだが、肝は人にあった。どんな人材が巣立っていくのか、人材育成という点でも今後に期待したい。
無料英会話、コワーキングスペースなど、住×仕事のコラボ続々!
さてシェア180では、キャリア支援につながるコンセプトシェアハウスを続々と手がけている。例えば英会話レッスン付きのシェアハウスは愛知県内に5カ所あり、入居者はネイティブ講師によるレッスンが無料、他のハウスの入居者も月2回まで無料で受けられる。駐在を伴う部署への異動や海外暮らしを考える方に好評だそうだ。
ほかにも、コワーキングスペースを備えたシェアハウス、ITスキルを高めたいエンジニア歓迎シェアハウスなど、キャリアアップを目指せるシェアハウスがオープン。起業を考える入居者には伊藤社長自ら事業計画の立て方をレクチャーするなど、「シェアハウスでここまで!」といったサービスが充実している。「変わりたい、でも何から始めれば?」という迷う若手世代にとって、シェアハウスがひとつの転機になるかもしれない。
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