荻窪家族プロジェクトとはどんなものか

荻窪家族プロジェクトが立地するのはゆったりした一戸建ての並ぶ住宅地。そこに合わせたデザインもポイントのひとつ荻窪家族プロジェクトが立地するのはゆったりした一戸建ての並ぶ住宅地。そこに合わせたデザインもポイントのひとつ

「【荻窪家族の話を聞いてきた①】高齢化、子育て課題に横串を刺す多世代交流の賃貸住宅」では4人の親たちを介護、看取ってきた瑠璃川正子さんが両親が住んでいた一戸建て、その隣にあった古いアパートを、多世代交流、地域に開かれた場を目指して建て直す荻窪家族プロジェクトの開始から、紆余曲折を経て確認申請にこぎつけるところまでをご紹介した。②ではさらに様々な人が関与しての設計終了から現在までの様子をお伝えする。

設計後に事前リノベーションを実施。より使いやすい施設を模索

年代、関心の在り方などの異なる人たちが集まり、空間の使い方を具体的に検討した事前リノベーション。30人ほどが集まった年代、関心の在り方などの異なる人たちが集まり、空間の使い方を具体的に検討した事前リノベーション。30人ほどが集まった

設計終了後、建築進行中の現在も利用者参加の方針は貫かれている。月に1回はワークショップ、シンポジウムなど広く人を集めるイベントを開催、並行して喫茶店を利用したふらっとお茶会、チョコっと塾と題した相談会、勉強会を開いて、幅広い人たちに参加を促しているのである。

こうしたワークショップのうち、珍しい試みが共用部分の事前リノベーション。リノベーションは通常、建物が古くなった後に行われるものだが、ここでは建築中に行われた。もちろん、建物はまだできあがっていない。どこを、どうリノベーションするというのか?

実施したツバメアーキテクツの山道拓人(さんどうたくと)さんと西川日満里(さいかわひまり)さんによると「事前リノベーションとは建物ができた後に想定される要望、クレームをあらかじめ拾い、クリエイティブなアイディアに変換するために行うもの。1階共用部のラウンジや集会室は地域の人たちにも開かれたもので、いろいろな人が、様々な用途で使うことになります。そこで趣旨を説明した上で、参加者に自分ならどう使うかを想定してもらい、そのためにはどのような設備、備品があればよいか、インテリアはどうあるべきかなど細かい点まで具体的に提案してもらいました。この作業を通じて、当初想定していなかった設備を用意したほうが良いことや、望まれる空間はどんなものかなどが明確になり、それを設計に反映することができました。当初用意された予算はそのままに、建物の想定を広げるという建築の新しい試みです」。

昨年9月創業、連さんの息子世代という若いツバメアーキテクツの面々と連さんが組むことで、作る側も多世代交流を行うという意図もあるそうで「ワークショップでは黒板設置など、それまで全く考えていなかった案も出て、多くの人の知恵を借りると面白いものが生まれることを再認識しました」(連さん)。

ツバメアーキテクツは共用部のインテリア設計だけでなく、プロモーション業務も担当しており、成功報酬の契約で仕事をしている。一般に建築家は建物を設計しても、その建物の収支とは直接は関係ないことが多いが、この例では完工時に入居が何戸決まっているかという評価軸が入るという。新しい建築家の在り方をも模索しているわけだ。

プライベート空間はきちんと確保、ふれあいたい時にふれあえる暮らし

さて、このプロジェクトで入居者として想定しているのは、サービスを受けるだけの、お客様になりたい人ではなく、積極的に参加をする人。「例えば趣味を生かして一階の集会室で小さな教室を開きたいなどという人なら大歓迎です。入居後には月に一度、意見を言い合う会を設けたいと思っていますが、そうした場で一緒になってより良い暮らしを考えてくれる人、そんな人に住んで頂きたいと思います」(瑠璃川さん)。

参加ばかりを強調してきたが、もちろん、プライベートな空間はきちんと用意されている。マイペースな暮らしをしながら、ふれあい時には入居者、施設の利用者ともふれあえる、そんな暮らしをイメージして頂けば良いと思う。ユニバーサルデザインを前提としているので高齢者はもちろん、子どもとの暮らしにも安全。年代、性別などを問わず、暮らしやすいはずだ。

我が家で父を看取った経験をまとめた『「自分の家で死にたい」と言われたら読む本』の著書関屋利治さんは「東日本大震災以降、身近にいる人とのつながり、特にご近所や地域コミュニティの重要性を再認識した人が多いはず。ただ、具体的にどうすべきかについては答えが見出せていません。そんな中、荻窪家族の取組みはこれからの共助のあり方の新しいスタンダードになるのではないかと思っています」とプロジェクトを応援している。

施設そのものの柔軟な発想、充実した共用部分はもちろんだが、こうした各方面の専門家が知恵を出し合い、熱意を傾ける物件である。いくつになっても、どんな状況にあっても自立した、能動的な暮らしを望む人なら楽しく暮らせるのではないかと思う。

個別の住居は25m2ほど。キッチン、トイレ、シャワー、洗面所などがあり、風呂は3階に共用のものが2室ある個別の住居は25m2ほど。キッチン、トイレ、シャワー、洗面所などがあり、風呂は3階に共用のものが2室ある

何度もリノベーションされたかのような模型

■記事でご紹介した情報についてはこちら

荻窪家族:http://ogikubokazoku.jimdo.com/
ダイヤ高齢社会研究財団:http://dia.or.jp/
連健夫建築研究所:http://www.muraji.jp
ツバメアーキテクツ:http://tbma.jp/
『「自分の家で死にたい」と言われたら読む本』:https://www.facebook.com/iejini

ワークショップの度にインテリアを更新し、竣工前からすでに何度もリノベーションされたかのような模型ワークショップの度にインテリアを更新し、竣工前からすでに何度もリノベーションされたかのような模型

2014年 09月24日 11時13分