DIY賃貸の申し込みが1年強で100件を突破

賃貸住まいは気軽でいいけど、壁にクギ1本打てないのが残念……と嘆いている人は少なくないだろう。そんななか、「DIY賃貸」が注目されている。大阪府住宅供給公社では、2017年から始めたDIY賃貸住宅『団地カスタマイズ』の申込件数が100件を突破したそうだ。人気の理由を聞きに行ってみた。

DIY賃貸とは、借りている部屋の壁に棚を付けたり、壁の色を塗り替えたりすることが可能な賃貸住宅のこと。通常の賃貸住宅では原状回復義務があり、たとえば壁にクギを打って穴を開けてしまうと、退去時に元に戻さなければならない。だが、DIY賃貸では原状回復義務を緩和し、DIYで模様替えをしても元に戻さず退去できる契約内容になっている。

国土交通省が2013年に「借主負担DIY型賃貸借」のガイドラインを提示して以来、このDIY賃貸が広がりつつある。大阪府住宅供給公社でも2017年1月からDIY賃貸住宅『団地カスタマイズ』制度をスタートさせ、約1年1ヶ月後の2018年2月に100件を超えた。団地カスタマイズの特徴を、大阪府住宅供給公社総務企画部経営企画課の小原旭登さんに伺った。

室内を自分好みに模様替えできるDIY賃貸が着実に増えている(画像提供:大阪府住宅供給公社)室内を自分好みに模様替えできるDIY賃貸が着実に増えている(画像提供:大阪府住宅供給公社)

20代・30代の申し込みが約半数を占める

「当公社では約2万1000戸の賃貸住宅を管理していますが、そのうち半数以上の約1万2000戸、47団地の全戸を団地カスタマイズの対象にしています。また、新しく入居する人だけでなく、対象団地にすでに住んでいる人でも、申請していただければDIYが可能になる点も大きな特徴です」

各地で増えつつあるDIY賃貸だが、特定の団地の特定の住戸のみを対象にしているケースが多く、47団地をすべて対象とする大阪府住宅供給公社は全国で最大規模だという。同様に、既存の入居者も対象とする同公社の制度は珍しい。

ではどんな人が団地カスタマイズを申し込んでいるのか。「申し込みのあった100件について、年齢別の内訳を見ると20代と30代が合わせて半数近い46%を占めています。対象物件全体の入居者では60代以上が半数以上を占めていることからも、若い世帯を中心に広がっていることが分かります。また、申込者のうち新規の入居者は約4分の3を占めています」と話すのは、大阪府住宅供給公社経営管理部住宅経営課の善家美紀さんだ。

大阪府住宅供給公社資料を参照して作成大阪府住宅供給公社資料を参照して作成

壁の塗り替えや棚の取り付けなどができる

具体的なDIYの内容はというと、壁の塗り替えやクロス(壁紙)の張り替え、床のクッションシート張り替え、棚やカーテンレールの取り付けなどが多かったという。DIYをした人の感想は「作業が楽しかった」「部屋の雰囲気が変わった」などが目立ち、「この制度があったから入居した」と答えた人もいたそうだ。

このように新しく団地に入居した若い世代を中心に人気が高まっているDIY賃貸だが、「以前から団地に住んでいる人たちにも挑戦してもらいたい」と、善家さんは期待する。「団地カスタマイズは築40〜50年の団地が対象ですが、なかには新築当時から住んでいる居住者も少なくありません。壁や床が古い状態のままのケースも多いので、そんな方にこそDIYで気持ちよく住める環境をつくってほしいですね」

上/DIY前の部屋 下/DIY後の部屋。壁にスノコを取り付けて棚を設置。腰壁風のクロスや飾り用の窓枠も付けてお洒落な印象に(画像提供:大阪府住宅供給公社)上/DIY前の部屋 下/DIY後の部屋。壁にスノコを取り付けて棚を設置。腰壁風のクロスや飾り用の窓枠も付けてお洒落な印象に(画像提供:大阪府住宅供給公社)

DIY初心者向けの体験イベントも開催

賃貸でも壁や床の雰囲気を自分好みに変えられるのは大きなメリットだが、DIYのやり方が分からず、敷居が高く感じる人も多いだろう。そこで大阪府住宅供給公社では、DIY賃貸に親しんでもらうための企画にも取り組んでいる。それが初心者向けDIY体験イベントだ。

このイベントは団地の中の実際の住戸を利用して、壁のペンキ塗りや棚の作り付けなどのDIYを体験してもらうというもの。参加は無料で、プロのインストラクターによる指導を受けられる。

「これまでに2度イベントを行い、それぞれ10〜15組が参加しました。団地の中で行うので、近くに住む主婦の方や高齢者などが見学に来てDIYへの関心を高められる効果もあります。ほかにDIY済みの住戸をモデルルームとして公開もしており、今後もそうした取り組みを進めていく考えです」(小原さん)

そもそも団地カスタマイズは老朽化した団地の空き家対策という意味合いが強い。大阪府住宅供給公社では老朽団地の建て替えやリノベーションなども進めているが、大掛かりな工事はコストがかかるのですべての団地をカバーすることは難しい。いわばコストを抑えて居住者に自ら老朽化対策をしてもらおうという仕組みだ。だが居住者にとっても古くて割安な家賃の部屋を、低コストで快適な環境に変えて住める点はメリットといえるだろう。

退去時には設置した棚や手すりは撤去する必要があるが、塗った壁や貼った壁紙などは元に戻す必要はない。写真は体験イベントの風景(画像提供:大阪府住宅供給公社)退去時には設置した棚や手すりは撤去する必要があるが、塗った壁や貼った壁紙などは元に戻す必要はない。写真は体験イベントの風景(画像提供:大阪府住宅供給公社)

2018年 04月12日 11時05分