防災意識の高まる大阪

2018年は、大阪府北部地震や、台風21号で大きな被害を受けた大阪。大阪南部では特に台風の被害が大きく、停電で信号が使えず交通に影響があったほか、食料不足も大きな問題となった。
度重なる災害で防災意識の⾼まる中、⼤阪府住宅供給公社の管理する⾙塚中央団地にマンホールトイレが設置され、2019年2⽉17⽇の防災訓練の中で、使⽤⽅法の説明会も開催されたので、⾒学してきた。

この団地では公園にかまどベンチが設置されており、⾮常時にはベンチ上部をコインで開き、炊き出し⽤のかまどを取り出せるようになっている。太陽光で発電するLED街灯も設置されるなど、防災設備が充実している。
さらに⼤阪府住宅供給公社初となるマンホールトイレが設置され、今回の防災訓練ではその説明会も行われた。国交省の発表では、マンホールトイレの整備基数は2016年度末で約2万6,000基。まだ⼗分普及しているとは言いがたい状況だ。⾙塚中央団地がマンホールトイレの設置場所に選ばれたのは、近木川とつながる用水路の水を非常時に利用することを、水利組合から了承を得られたこと、トイレ⽤マンホールを設置するスペースがあったこと、住⺠の防災意識が⾼かったことが理由だという。

かまどベンチ(上)、ベンチの中に入っているかまど(下)かまどベンチ(上)、ベンチの中に入っているかまど(下)

貝塚中央団地の防災訓練

説明会は団地内の集会所で行われ、9時半ごろには、集会所前の広場でベンチから出されたかまどに火がくべられ、被災時さながらの炊き出しが行われた。薪は住民が山から集めてきたもの。手際よく火をおこせるのは、普段から餅つき大会などのイベントが開催されており、住民たちの役割分担がしっかりできているから。薪を用意する係も決まっているようだ。

10時になると、⾙塚消防署による防災訓練が始まり、住⺠代表による⽕災発⽣の通報訓練がなされた。⽕災通報の際は、初めに⽕事の発⽣場所を報告するのが重要だとか。どこに向かうべきかがわかれば、即時消防⾞が出動できる。逃げ遅れた住⺠がいるかどうか、炎の状態などの詳細な状況は、署から消防⾞に随時連絡がいくそうだから、場所を伝えた後でゆっくり報告すればいい。

次は実際に消⽕器を使⽤した消⽕訓練。消⽕器1本で消せる炎の大きさは、⽬線の⾼さまでが⽬安だとか。消火器は⼈が持ち運びできる⼤きさでないと使えないから、内容物の量にも限りがあり、10数秒しか使えないので的確に消⽕せねばならない。炎ではなく燃えているものにかけるのが肝⼼だと教えてもらった。

消防署の説明が終わると、⼤阪府住宅供給公社が提供するバールやハンマー、ジャッキ、自家発電機など災害時に使用する資機材の説明があり、いよいよマンホールトイレの説明となった。

誰にでも組み立てられるマンホールトイレ

マンホールトイレの組み立て方は、基本的にはテントと同じで誰でもできる。骨組みをセットして外側を布で覆って外形を完成させた後、地面の上に床材を敷いて、マンホールにトイレをセットする順序で組み上げていく。力を合わせて作業すれば、初体験の住民たち5~6人でも10分程度で完成した。

実際座った住⺠は、「頑丈だし、ちょうどいい⾼さで落ち着ける」「以前の災害では、新聞紙の上にしたという話を聞くので、こういう設備はありがたい」と⼝々に感想を⾔い合っていた。中には、「布で⽬隠しされているからプライバシーは守られるけれど、実際にここで⽤を⾜すのは少し恥ずかしいかもしれない」という声もあった。確かに布だけなので⾳が漏れるのは防ぎようがないし、臭いも気になるところだろう。しかし、⾙塚中央団地の住⺠は普段からコミュニケーションがとれているためか、「⾮常時に恥ずかしいとは⾔ってられない」「みんな使うんだから、私も絶対使う。我慢したくない」と、災害時の使⽤に対しては前向きな意⾒ばかりが聞かれた。みな、マンホールトイレの存在を頼もしく思っているようだ。

マンホールトイレは個室になっているので、一定のプライバシーは守られるマンホールトイレは個室になっているので、一定のプライバシーは守られる

マンホールトイレの仕組み

⾙塚中央団地に設置されたマンホールトイレは「流下型」と呼ばれるもので、マンホールトイレの下には下⽔道につながる排⽔管がある。汚物はこの排⽔管を通って下⽔道に流される仕組みだ。排⽔管に落ちた汚物が溜まり、臭いが籠もるのではないかと⼼配される⽅もおられるだろう。排⽔管の上流には「洗浄ユニット」と呼ばれる⽔洗⽤⽔投⼊⽳があり、そこから⽔を流すと汚物はスムーズに下⽔道まで流される。断⽔で⽔源もない場合は仕⽅ないが、⾙塚中央団地のように用水路の⽔が使える場合は、定期的に汚物を流せるから、こまめに⽔を使えば臭いはそう気にならないだろう。⼤災害で下⽔道が崩壊するなどして流せない場合は、下流にレジンコンクリート製の貯留槽を設置し、数⽇間分の汚物を溜めた後、汲み取られるようになっている。

この⽇は、洗浄ユニットから流す⽔をポンプで汲み上げる訓練も⾏われた。⾙塚中央団地の前には用水路が流れているので、災害時はフェンスを破って用水路までホースを運ぶことになるが、訓練時はバケツの⽔を汲み上げた。臭い対策として「用水路の⽔なら多めに利⽤しても⼤丈夫だから、実際に使⽤するときは、次の⼈のために毎回必ず流すようにしよう」と話し合うなど、実際の運用を想定した意見交換が行われていた。

ポンプで水を汲み上げる訓練も行ったポンプで水を汲み上げる訓練も行った

防災訓練で認識する共助の大切さ

⾙塚中央団地では年に⼀度防災訓練が⾏われており、この⽇は市⻑も参加するなど、⽇頃からさまざまなコミュニケーションがとられているようだ。だからこそスムーズにマンホールトイレの組み⽴てが完了し、実際の使⽤に対しても躊躇が少ないのではないだろうか。

災害時は⾃助・共助・公助の意識が⼤切だといわれている。「共助」は近隣の⼈たちの助け合いが基本。設備も必要だが、普段から近隣住⺠とのコミュニケーションをとる意識は、もっと⼤切かもしれないと思わせられる防災訓練だった。

2019年 03月26日 11時05分