自身の海外リモートワーク経験から得た着想

株式会社KabuK Styleの代表取締役・大瀬良亮氏。大学から長崎を離れているが、郷土への想いは強い。東京で長崎県人会を企画したり、長崎原爆の実相を世界に伝える多元的デジタルアーカイブズ「ナガサキ・アーカイブ」を発表するなどの活動を続けていた株式会社KabuK Styleの代表取締役・大瀬良亮氏。大学から長崎を離れているが、郷土への想いは強い。東京で長崎県人会を企画したり、長崎原爆の実相を世界に伝える多元的デジタルアーカイブズ「ナガサキ・アーカイブ」を発表するなどの活動を続けていた

「世界を旅しながら働こう」というコンセプトで、株式会社 KabuK Styleが展開している新進気鋭のサブスクリプション型住居サービス「HafH(ハフ)」。2019年1月から1号店となる拠点を長崎にオープンした。定額で世界中に住み放題というキャッチコピーがネットユーザーに響き、先にスタートしたクラウドファンディングは、目標金額200万円に対して500%超となる1,000万円超の支持を得た。

「ターゲットは、海外のワーカー・旅行客。現在、パソコンとスマホとネットがあれば地球の裏側でも仕事ができる、デジタルノマドやフリーランサーと呼ばれる人たちが世界中にいて、僕自身もそういう働き方を目指しています。例えば、僕がイスラエルにいって働けるのであれば、逆に、イスラエルの人が長崎に来て仕事をすることもできるということ。世界には、そういう働き方をしている人が大勢います。また、東京だけに住み続ける必要はもうないよね、というメッセージも含まれています。実際にクラウドファンディングをやってみてわかったのは、日本の中でも多拠点居住したいというニーズやトレンドも大いにあるということです」と、立ち上げメンバーであり株式会社KabuK Styleの代表取締役である大瀬良亮氏は話す。

長崎生まれの大瀬良さん。趣味や出張で世界を飛び回る機会も多く、あらためて長崎を見た時に、世界でも負けない魅力があると感じたそう。 英語が通じて、住むためのわかりやすい仕組みができていれば、長崎に住みながら働く外国人も増えるかもしれない。そういう人たちに向けた、光熱費も敷金も礼金もないシンプルなシステムの契約形態はどうかと発案した。”世界の人たちに旅しながら、長崎を味わってほしい”という想いがこめられた第1号となる拠点が、モデルルームも兼ねてオープンすることとなった。

働く・暮らす・交流するが一体化した一棟複合施設

1号店の「SAI」は、3階建て。1階はカフェ・フロント・テナントショップがシェアするオープンな空間。2階はコワーキングスペース。さまざまな机・椅子やスペースが用意されており、気分や時間帯、個人の仕事スタイルに合わせて選ぶことができる。シャワールームやランドリーもあり、そのまま仮眠したりすることも可能だ。3階は100平米を超える共有キッチンとラウンジが広がり、ドミトリーやツインベッドの個室など8部屋に最大20名が宿泊できる。個々のドミトリータイプには、棚や洋服掛けなどの収納スペースが用意され、中長期の滞在者に優しい設計だ。さらに、屋上とバルコニーなどのスペースも用意してある。

2019年内にハフの拠点は、どんどん増えていく。直営施設としては、長崎市内、マレーシアが決まっており、それ以外の提携の施設も含めると、年に50〜100店舗増える計画で進んでいるそうだ。サービスプランは、3つ。「いつもハフ(8万2,000円/月)」は、敷金・礼金・保証金不要、契約期間の2年縛りなし。すべての拠点に住み放題で、コワーキングスペースも使い放題のプラン。「ときどきハフ(3万2,000円/月)」は、毎月10日間、予約をした上で各拠点の空きベッドに泊まれるプラン。「はたらくハフ(1万2,000円/月)」は、ハフ直営のコワーキングスペースが使い放題というものだ。

「僕自身もリモートワークが日常化しています。働き方改革が進んでいる中で、大企業に勤める人たちも、どこでも働けるのではないかと気づき始めています。また、企業が制度としてリモートワークを取り入れていくというケースも増えていくのでは」と大瀬良さんは話す。

(左上)3階共有キッチンとラウンジ、(左下)2階コワーキングスペース、(右上)ツインベッド個室、(右下)ドミトリー(左上)3階共有キッチンとラウンジ、(左下)2階コワーキングスペース、(右上)ツインベッド個室、(右下)ドミトリー

東南アジアのマーケットを見据えて

今後、ハフの動きはより速度を増す。長崎での拠点のベースを築きつつ、福岡、大阪、東京などの都市、世界中に拠点と店舗を広げていく。各拠点となる各都市のゲストハウスやコワーキングスペースと業務提携しながら、コミュニティをつくっていく準備も進めている。多様なターゲットを見据えながら、まずはリモートワークが可能な外国人やグローバルな目線を持つワーカーを第一に狙う。特に東南アジアのワーカーに、いかに来日して住んで働いてもらえるかという基準でサービスやビジネスの仕組みづくりを進めている。

「まず、東南アジアと日本を繋ぐネットワークをつくっていきたいと考えています。マレーシア、シンガポールなどは、ITビジネスが活発で、日本もおちおちしていられないなと感じています。にもかかわらず、マレーシアやシンガポールの人たちは日本に来たい、住みたいという良いイメージを持ってくれているなか、受け入れる環境が日本にあまりないのが現状です。働きたい人や学びたい学生ががいるのに、住む・働くための状況が整っていないとなると、日本自体がビジネスの土壌として選ばれなくなってしまうかもしれない。彼らと同じグローバルの目線で、仕組みと土壌をつくっていくために、スピード感をもって進めているところです 。また、東南アジアの中でもシンガポールなどはシェアは当たり前の文化。オフィスも家もシェア。彼らは、家賃が高いという状況の中、そうせざるを得なかっただけですが、そのぶん文化がとても進んでいます」と大瀬良さんは話す。

「SAI」は長崎市内でメインの商店街のそばにある。カフェスペースは誰でも利用できる。ブルーボトルコーヒージャパンの初代リードバリスタの向山岳氏が監修。「コーヒーは世界の共通語」と大瀬良さん「SAI」は長崎市内でメインの商店街のそばにある。カフェスペースは誰でも利用できる。ブルーボトルコーヒージャパンの初代リードバリスタの向山岳氏が監修。「コーヒーは世界の共通語」と大瀬良さん

10年先、サスティナブルなハフコミュニティをつくっていく

ハフの提携先となる海沿いのゲストハウス「長崎ぶらぶら」。長崎らしい風景や海を見ながら、県内で拠点を移動して仕事をすることで長崎を堪能できるハフの提携先となる海沿いのゲストハウス「長崎ぶらぶら」。長崎らしい風景や海を見ながら、県内で拠点を移動して仕事をすることで長崎を堪能できる

これからの時代、固定の家を持たずに、いろんな場所を転々としながら生活するライフスタイルの「アドレスホッパー」や都心と田舎の2拠点で生活する「デュアラー」など、特定の拠点を持たない人たちが、一定層増えてくるといわれているなか、これからの暮らしにはサスティナビリティが大切なのではと考えている。

「僕がマレーシアに行った時に、シェアをして暮らしている人たち専用のSNSがありました。彼ら同士の中で仕事が生まれていたり、お金のやり取りもそのSNSの中で完結したりしていました。そういうコミュニティが既にあるんですよね。ハフも数年後には、300〜400拠点はつくりたい。そうなるとハフコミュニティが育ち、そのコミュニティ内がひとつの経済圏のようになって、円やドルでやり取りをするよりも便利な通貨、例えば、地域通貨のような”ハフドル”が生まれてくるかもしれません。
僕たちが目指すのは、多様な社会を多様なまま受け入れる、持続的可能な社会です。その中で、家をシェアするというのは、ひとつの選択肢になりえると考えています。ITを活用しながら、新しい社会のあり方、暮らし方を提案していきたいです」。

2019年 03月11日 11時00分