仙台の起業家を繋ぐ場を作りたい

オフィスとは別に設けられたシェアオフィス、住戸へのエントランス。屋上からは広瀬川が望め、Wi-Fiが使えるオフィスとは別に設けられたシェアオフィス、住戸へのエントランス。屋上からは広瀬川が望め、Wi-Fiが使える

仙台のメインストリート青葉通りから少し入った春日町に誕生した「THE6」は元々、1~3階にオフィス、4~6階に住宅が入った、よくあるタイプのビルだった。以前は大手建設会社のビルだったそうだが、3年前に仙台でリノベーションを手掛ける株式会社エコラが購入した。

「その時点では築36年と古いこともあり、1~3階のオフィス、上階住戸の14室中5室が空いており、最初はそれを埋めることからスタートしました。空室は無くしたものの、次はもっと面白いものにしたいと考えたのが3階をシェアオフィスにし、上階住戸にその利用権を付加した、職住が一体になったような複合施設でした」と運営を担当するエコラの岩本忠健氏。

仙台では、2011年以降起業する人が増加、日本でも五指に入るほどだそうで、そうした人がスタートアップの場として利用しやすいシェアオフィスも市内にはすでに10カ所ほどある。だが、それらの人達は点として存在しており、起業家相互の連携、繋がりはほとんどない。それを繋げる場を作り、仙台の魅力を底上げ、育てていけないか。それがTHE6のコンセプトである。

「もうひとつ、仙台にはまだ象徴的なリノベーション物件がない。それを作りたいという思いがあり、元々エコラが入っていた3階を大幅にリノベーション、シェアオフィスにするとともに、それまで使われていなかった屋上を共用スペースとして開放することにしました」。

シェアキッチンもあり、多様な人たちが出入り

手前がフリースペース。全体にゆったりと作られている。キッチンはスペースの中央に備え付けられている手前がフリースペース。全体にゆったりと作られている。キッチンはスペースの中央に備え付けられている

シェアオフィスとなっている3階は仕切りのあるスモールオフィス、フリーに使えるデスクが並び、ミーティングスペース、会議室なども。フリースペースはイベントにも使われており、6月6日のオープン以来、約2カ月間で公開6回、非公開6回とハイペースで利用されている。8月からはシェアオフィス入居者主催のイベントも始まる予定で、入居者にとっては良いPRの機会でもある。

「仙台の若手が横に繋がれる、情報交換ができる場ということで、まずは多種多様な人が出入りするようになることを目指し、イベントを開催しています。フリースペースに加え、もうひとつ、役に立っているのがシェアキッチンです」。

フロアの中央にあるシェアキッチンは本格的な機材を揃え、複数人で使えるため、食に関するイベントで利用ができるのである。実際、仙台の老舗洋菓子店が主催する教室などに利用されており、一般的なシェアオフィスには出入りしないような高校生から60代以上の女性までの幅広い年代、職業の人たちが来訪しているという。岩本氏が特に力を入れたいとしているのは若い人達だ。

「仙台は高校、大学と学生が多い街。早いうちからシェアオフィスを通じて起業、フリーランスなどといった働き方もあることを知り、多様な生き方が選べるようになってくれたらと思い、大学、高校などとの連携も進めています」。

職住が同じ建物内にあるお得感

全体を広いワンルームとし、そこに寝室となる木製の箱を置いた室内。右側に見えているのが寝室。この住戸はバルコニーが広く、開放的全体を広いワンルームとし、そこに寝室となる木製の箱を置いた室内。右側に見えているのが寝室。この住戸はバルコニーが広く、開放的

運営の仕方も一風変わっている。エコラの岩本氏だけでなく、オフィス入居者の2人がスタッフとして手伝っているのだ。起業したてで安定しない収入をシェアオフィス運営に関わることで安定させようという意図で、パラレルキャリア、つまり2つの仕事を持つという働き方の提案でもある。

しかし、なんといっても他にないのが住宅との連携だ。空室がなかったことから現在リノベーション済の部屋は4階の1室だけだが、空いた部屋から順に手を入れ、最終的には全戸をSOHOにしていく計画だという。元々は32m2、和室2室でバストイレ一緒だった古い2DKはワンルームの中に箱状の寝室が置かれた形に改装されており、収納もたっぷり作られている。賃料は、従前の6万円から10万7,000円プラス5,000円の共益費に変更となっている。

ぱっと聞くとずいぶん、値上がりしたように思えるが、そもそも、このエリアで新築、35m2の1LDKを借りると相場は9万円ほどとか。当初の6万円がかなり安かったのだ。それに起業して自宅、オフィスの2つを借りるよりは安く付くはずだし、自宅をオフィスも兼ねた場として使う場合よりはオン、オフが切り替えられるようになる。同じ建物内で自宅もオフィスもというのは意外に魅力的かもしれないのだ。また、3階には会議室やミーティングスペースなど自分でオフィスを借りた場合にはないような設備も揃う。これなら自宅をSOHOにした場合にも魅力だろうと思う。

すでに生まれ始めたコラボレーション

賃料、同じ建物内という利便性に加え、シェアオフィス内で生まれつつあるコラボレーションもここで働き、住む人にとっては魅力だ。これまでにないタイプのシェア型複合施設ということで注目を集めており、そのなかから実際の仕事に発展している例があるのだ。

「弊社は元々工務店でハードを作ってきた会社。ところが入居者にはソフトに強い人が多く、両者が組むとこれまでできなかったことができるようになります。実際、仙台市近郊の利府町で10月に創業支援施設を作るという話があり、仕組み作りで関わっている入居者から建物建設をやってもらえないかと弊社に話が来ました。だったら、必要な設計は他の入居者に頼もう、そうだ、ロゴも作れる入居者がいるからその人に頼もうと、入居者複数人が組んだ仕事に発展しています」。

かつてのように建物さえ作れば良しという時代ではない。特に復興、街づくりなどでは建物と仕組みがセットになっていなければ、税金の無駄使いになりかねない。だが、ハードとソフトをまたいで働ける人は少なく、であれば、現在THE6で起こっているようなコラボレーションが生まれるようになれば、問題は解決する。

現在、シェアオフィスの利用者は10人ほど。スペース的には30人まで可能とのことで、10人の多様なプロが集まっただけでコラボが生まれるなら、今後はどうなることか。入居者からすると人間関係が仕事を生んでくれるオフィス、住居といえるわけで、この話が広まると入居希望者が大挙しそうだ。ちなみに現在の利用者は仙台在住者中心だが、東京からの問い合わせも多く、二拠点居住者も含まれるとか。東京からなら最速1時間半ちょっと。十分、可能な距離だろう。

株式会社エコラ
http://www.ecola.co.jp/

THE6
http://the6.jp/

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2016年 08月22日 11時05分