ニーズが高まりつつある猫OKマンション

東武東上線の成増駅から徒歩5分、猫と暮らせる賃貸マンション「feel CnB」(フィール シーアンビー)が2018年11月に竣工した。RC造のモダンな新築物件だ。猫の鳴き声になぞらえて、全22(ニャンニャン)室からなる。物件の施主が猫を飼っていることもあり、猫を飼うことに理解があって、このようなユニークなコンセプトマンションになった。

ターゲットは30代の猫好きな女性またはカップルであると、設計を担当した進藤強氏が言う。同氏は、2017年、葛飾区で猫専用マンションの設計を手掛け、駅から徒歩18分の物件でありながら、空き待ち状態になるほど評判になったことで、このコンセプトに手ごたえを感じている。入居は猫を飼っている人に限定し、さらに4匹までの多頭飼いを可能としたことが人気となったポイントだったと進藤氏。これを今回のマンションでも生かしている。

「ペット可」という物件には、ペットを飼っていない住人もいて、飼っている人は気遣い等で肩身が狭い。一般的に、飼っていない人がいるとトラブルになりがちな猫の足音等の問題は、全員が飼っていればお互いさまになり、気にならない。進藤氏によると、トラブルの原因は飼い主が猫を適正飼育しているかであり、防止のためには、例えば避妊・去勢手術をしているかなど、飼い主の意識が重要とのこと。

吹き抜けの天井にキャットウォークがたくさん設置されている吹き抜けの天井にキャットウォークがたくさん設置されている

上下動線の解を求めたら、猫が喜ぶ構造だった

「実はこの物件、当初から猫専用マンションを予定していたわけではないんです」と進藤氏。同氏は、収益不動産を得意とする建築家で、この物件も投資物件として手掛けていた。投資物件のためには、いかに多くの延床面積をとるかが肝となり、結果、長屋式を採用した。一般の共同住宅では、エントランスや廊下など共有部分が多く必要となるため、専有面積が小さくなり、戸数も少なくなってしまう。一方、長屋式は共有部分が少なく済むので専有面積が多くなり、各戸をメゾネットタイプにしたことで、全22戸を確保できたのだ。共同住宅であったなら、戸数はこれより少なくなっていただろう。結果、収益性が変わってくる。

ただ、メゾネットタイプとしたことで各戸が3階建てになり、なかにはロフト付きの部屋もある。階段がたくさんあって、上り下りのデメリットが生じることになった。縦動線をプラスに転換するアイデアとして、進藤氏は、猫ならば大喜びするとひらめいた。猫は上り下りが大好きだから、このスタイルを気に入り、飼い主も喜ぶのでは――。そこで2017年、施主に猫専用マンションにしてはどうかと提案し、コンセプトが決定したのだそうだ。

左:崖地を4層に分けたRC造のメゾネットタイプ 右:壁にキャットステップを設置して、幅や間隔は猫好みに設計左:崖地を4層に分けたRC造のメゾネットタイプ 右:壁にキャットステップを設置して、幅や間隔は猫好みに設計

メリハリのある間取りで住人の満足度を高める

この物件の特徴は、構造とデザインのユニークさ。もともとは、なだらかな崖地だったのを、4段階の層に整地し、それぞれに1棟ずつ建てたので、いわば4棟が合体したような建物だ。また各戸のすみ分けは、単純にケーキを切ったように同じにするのではなく、入り組んだ構造になっている。通常なら1フロアが10m2で3階建てのメゾネットの場合、同じサイズで3階分を合わせて30m2になる。しかし、この物件では、住戸によって間取りが異なり、例えば各フロアを15m2+5m2+10 m2で合計が30 m2とするなど、メリハリを持たせた。こちらのほうが、ユーザーが使いやすい設計を実現できると進藤氏。そのため間取りが各戸ごとに異なり、1階と2階が入り組んでいる。一般的には、玄関が北側と南側に分かれている物件では、当然、部屋もその上の南側と北側に位置するところ、こちらでは北側玄関の住戸にも南側の部屋を置いている。まさにジグソーパズルのような組み合わせだ。
内訳として、南側玄関の住戸は、猫を飼っていることが入居条件となっている物件で、北側玄関は猫を飼育してもしなくても入居可能な物件だ。

もちろん、猫に対応した内装も特徴だ。猫専用の木目調のフロアタイルや飛び乗れるキャットウォーク、キャットステップが装備されている。キャットウォークの配置や間隔は、猫の専門書を参考に設計したと進藤氏。掃除のしやすさ、猫の安全面、猫専用トイレを想定した間取りなど、猫の飼育に適した環境づくりをしていて、そのポイントは最終章に後述する。

躯体等、本格工事がほぼ終了している2018年の9月、施主が「ネコリパ不動産」という猫と暮らすことをテーマにした専門会社と提携して、よりエッジを立てた物件になった。同不動産会社に仲介管理を依頼するだけではなく、専門家の視点から改善点を提案してもらったのだ。それは主に猫の安全の観点からのアドバイスだった。
例えば、玄関に猫の脱走防止扉を追加した。屋内猫の場合、外に出てしまうと自分で餌を探す術を知らないので、死んでしまうことも珍しくない。飼い主の中には、猫が帰ってくるまで心配で眠れない人もいるそうで、脱走防止扉は重要とのことだった。他にも、吹き抜けからの落下防止ネット設置などなど、細かい提案が反映されている。

建物の断面図。左が南側、右が北側になっていて、右の住居の4階は南側にも窓がある建物の断面図。左が南側、右が北側になっていて、右の住居の4階は南側にも窓がある

飼い主のことを考えたソフト面も訴求ポイントに

ネコリパ不動産が参加したことで、猫を飼育するうえでのソフト面も充実してきた。それは、「toletta(トレッタ)」というIoTの猫トイレとスマートフォンをつなげるシステムだ。2019年2月22日に発売される予定で、入居特典として、月額500円(税別)かかるものを1年目は無料で提供する。

このシステムは、猫トイレで体重とおしっこの量を測り、その情報をスマートフォンアプリと連携させ、変化をグラフでみることができるというもの。飼い主は猫の健康状態を知り、糖尿病や腎臓病が重くなる前に察知することが可能だ。

またネコリパ不動産が仲介管理をすることで、猫の飼育がネックとなり住まい探しに困っている人も助かる。このマンションの特徴は多頭飼いができることで、猫好きにはうれしい情報。しかし一般の不動産マッチングサイトでは、この情報は埋もれてしまい、必要としている人たちに届かない。一般の仲介会社は猫好きだけをターゲットにしているわけではないので、訴求ポイントがフィットしないのだ。一方、ネコリパ不動産のマッチングサイトは、猫の飼い主目線の情報提供なので、写真やキャプションも一般とは異なる。また、猫の多頭飼いに適したトイレ置き場があるなど、ニーズに応じて選びやすい。

ネコリパ不動産では、もし一人暮らしの飼い主が外出先の事故等で急に意識がなくなってしまったなどの緊急時のために、レスキューカードを発行し、携行品として所持してもらっている。カードにはネコリパ不動産の管理部門の電話番号が記載され、飼い主の救助をした人に電話をしてもらうことで、残された猫の緊急対応ができる態勢となっているのだ。

猫のトイレをスマホでつないで健康管理が可能だ猫のトイレをスマホでつないで健康管理が可能だ

猫カフェで培ったノウハウをマンションに活かす

上:トイレには猫専用トイレが2台設置可能だ/下:挙げてもらった猫の飼育にオススメのポイントが3つ以上該当するとネコリパ不動産の認定となる上:トイレには猫専用トイレが2台設置可能だ/下:挙げてもらった猫の飼育にオススメのポイントが3つ以上該当するとネコリパ不動産の認定となる

ところで、このネコリパ不動産は、猫カフェ「ネコリパブリック」と、創業40年の不動産管理会社「イノーヴ株式会社」とのコラボレーションで誕生した仲介サイトで、仲介手数料の一部が「ネコリパブリック」の保護猫活動に充てられている。
猫と暮らせる不動産をもっと増やすことがミッションで、「引越し先で猫が飼えない等、不動産が原因で困る飼い主が1人でも減るようにしたい」と担当者。さらに保護猫を引き取って暮らせる家が簡単に見つかるようになれば、結果としてたくさんの猫たちが保護猫から卒業できるのではないかと考えているそうだ。

猫を飼育する物件について、オススメのポイントを担当者に教えてもらった。まず間取りは猫が走れる広々空間であること、室内に階段があること。キャットウォーク付き、キャットステップ付きだとさらに良い。風通し(角部屋や2面バルコニー)や眺望、陽当りが良好だと猫が昼寝でリラックスするのに良いという。安全面では、脱走予防対策がされていること、キッチンに立ち入れない(扉がある)こと。また、床、壁などが爪とぎに強い、掃除が簡単な床である、トイレを置くのにちょうどよいスペースがあるということも重要だ。
さらに多頭飼いを希望するなら、2匹以上飼えることも外せないポイントになる。なかには内緒で多く飼っていて、それが発覚して解約になるケースもあるからだ。

こちらの成増の新物件「feel CnB」は、多くのオススメポイントを網羅しており、猫も安心して暮らすことができそうだ。

2019年 01月28日 11時05分