便利な保証会社。でも落とし穴も

4月に国土交通省から発表された「マンション総合調査」でも、60歳代以上のマンション世帯主は1999年の25.7%から2013年では50.1%という結果に4月に国土交通省から発表された「マンション総合調査」でも、60歳代以上のマンション世帯主は1999年の25.7%から2013年では50.1%という結果に

老後の経済的安定を考えるとき、マンション投資は選択肢の一つだ。しかし、マンションは大きな買い物の上、トラブルもある。特に心配なのは、賃借料の滞納だろう。滞納しては転居を繰り返す悪質な入居者が存在するだけでなく、日本全体の高齢化が進む中で、入居者の高齢化に伴うトラブルも増えているとか。時間的、経済的、精神的に大きな負担のかかるトラブルを未然に防ぐよう、常日頃から気を配る必要がある。

その方法の一端を知るため、大阪資産活用倶楽部主催の定期セミナー『賃借人の高齢化と滞納、トラブル事例と対策セミナー』に参加してきた。講師は、賃貸トラブルを得意とする章司法書士法人代表の司法書士、的場順子先生だ。

セミナーは、保証人制度の理解から始められた。連帯保証人は契約者の代理として賃借料支払いの義務があり、親族間の関係が希薄になりつつある現在、なり手が減少している。そこで、保証会社の利用が増えてきた。保証会社とは保証人を代行してくれる会社のこと。家主と入居者、保証会社の間で契約を結び、賃借料の滞納が起こると、保証会社が立て替え、入居者に賃借料を請求してくれる。

保証会社の出現により滞納のトラブルは減ったが、それに安心して家主が責任を放棄すると、トラブルの原因となるという。
いったいどんなトラブルだろうか。
「保証会社によっては強引な取り立てや追い出し行為を行う場合があり、家主も責任の一端を負わされるのです。家主さんとしては不本意かもしれませんが、最初から賃借料を払う気がない入居者に対しても、違法行為は許されません。ちなみに違法行為とは、
・鍵の交換
・ドアロックをして中に入れなくする
・家財の撤去
・夜間の取り立て(21時から8時)
・貼り紙をする
などで、こういった行為をする保証会社は「追い出し屋」とも呼ばれています」
とのこと。

裁判所は「追い出し屋は決して許さない」という姿勢を鮮明にしており、トラブルになった際に賠償金が高額になる場合もあるから、あくまでも、法的手段によって解決を目指さねばならない。

契約解除の手続きとは

章司法書士法人代表の的場順子先生。得意分野は賃貸トラブルで、年間の処理件数は100件を越える章司法書士法人代表の的場順子先生。得意分野は賃貸トラブルで、年間の処理件数は100件を越える

では、法的な賃貸借契約の解除の手順とはどのようなものだろうか。
一度でも滞納すれば即契約解除に踏み切れるわけではなく、一般的には3ヶ月以上滞納された場合に解除手続きを開始できると判断されるので、一定期間の猶予以内に支払いを請求する「条件付契約解除通知」を内容証明郵便で送る。猶予期間に全額支払われた場合は過去に滞納されていても契約解除は難しいが、まったく支払われなかった場合や、過去にしばしば滞納しているにもかかわらず一部しか支払われなかった場合は、建物を明け渡して滞納家賃を支払うように訴訟提起。これで多くの場合は一ヶ月程度で判決が下り、建物明け渡しと滞納賃借料の支払い命令が出る。
判決後も退去しない場合は、強制執行。裁判所の執行官が入居者の部屋へ行き、誰もでてこない場合は部屋に入り、引渡し期限までに退去しない場合は荷物を運び出して鍵を取り替える旨を記載した公示書を貼りつける。そして期限の日まで退去が行われなければ、ここでやっと入居者の荷物を運び出すことができるのだ。

賃借料を滞納する入居者を退去させるだけで、これだけの手続きが必要で、退去まで最低でも5ヶ月程度はかかる。その間の精神的負担も想像するにあまりあるだろう。そうならないためには、入居審査を厳密に行った方が良い。
では、具体的にどのような人に気をつけるべきなのだろうか?
「不自然に急いでいる人や、何度も転居している人は要注意です。以前に住んでいたマンションやアパートなどを退去させられたのかもしれません」(的場先生)

「あまり厳しく審査すると、入居者に逃げられるのではないか」との心配は無用。常識的な入居者は、審査が厳しければ先に入居している住民の質も高く、安心できると考える傾向があるそうだ。
しかし、入居者に悪意がなくてもトラブルは発生し得る。高齢者問題だ。認知症や、安否確認の問題を考え、契約更新の時などにタイミングを逃さず、身元引受人を確認しておくことが重要。身内がいない場合は、地域の福祉課に声をかけておくと良いそうだ。

高齢者独特の問題とは

ここからは、事例に沿って進められた。

築40年以上の文化住宅を父から引き継いだ家主。父の代から住んでいる男性がいて、20年ほど前から女性と暮らし始めた。ところが賃借料の滞納が発生し、督促に部屋を訪れても女性しかおらず、彼女は認知症らしいという。未払家賃もたまっているので退去してほしいが、保証人である賃借人の兄には連絡をとったこともなく、存命かどうかさえわからない。

対処の第一歩は、契約者の状況を特定するところから。この事例の場合は住人男性が存命かどうか確認するために、住民票を取得すると良い。個人情報が厳格になってはいるが、「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するため」など一定の要件を満たせば、「第三者請求」で住民票を取得できるのだ。

住民票を確認したところ、契約者の死亡が確認されたので、連帯保証人に連絡することとなった。契約時に提出された連帯保証人の住民票を元に居場所を探すことになるが、住民票の移動後5年で移住前のものは廃棄されてしまうという。だから、連帯保証人とまったく連絡をとっていない場合、住民票が見つからない可能性もある。その場合は本籍地へ行けば、戸籍の附票で住所変更の沿革を確認できるので、可能ならば、保証人の本籍地を確認しておくと良い。それが難しい場合は、契約更新の度ごとに、連帯保証人宛てに挨拶のハガキを送る習慣をつけると良いという。もし宛先不明で戻ってきた場合は、入居者に確認をとれるからだ。
この事例では、連帯保証人も亡くなっており、連絡をとることはできなかった。

そこで契約解除の手続きとなるが、ここで注意しておきたいのは、契約者の死亡により、自動的に契約解除となるわけではないこと。賃貸借契約は継続しているとみなされているから、勝手に退去の手続きはできない。しかしその反面、滞納分を相続人に請求できる。
契約者の相続人を確定し、相続人全員に対して、契約解除の催告と通知を行うのが順当だろう。相続人が住み続ける場合でも、賃借権を誰が相続したのかはっきりさせるため、賃貸借契約を締結し直すのがベターだ。

また、この事例では連帯保証人は死亡しているが、連帯保証人も相続されるので、保証人の相続人に支払い義務が生じる。ただし、連帯保証人本人と連絡をとっていない場合、その相続人にとっては思わぬ借金となることが多く、相続の放棄をされてしまうかもしれない。
やはり、連帯保証人とは定期的に連絡をとっておくべきなのだ。

入居者が認知症にかかっている場合

事例に沿ってわかりやすく説明してくださる的場先生。事例に沿ってわかりやすく説明してくださる的場先生。

この事例の場合、同居人は内縁の女性。相続人の範囲は、配偶者、子供、兄弟までなので内縁の女性には相続権はないが、それだけを理由には立ち退きを求められないという判例がでている。
家賃滞納しているので明け渡しは請求できるが、認知症などの病人、高齢者の場合、家を追い出せば生きていけないという事情から、強制執行ができない場合がある。

次の受け入れ先を準備した上で、強制執行や手続きを進める必要があるが、まったく身寄りのない高齢者はどうすれば良いのだろうか。方法の一つは、法定後見人の選任。成年後見制度とは、高齢や精神障害で判断力が衰えている人の後見人を、裁判所が選ぶもの。後見人は財産管理や契約の代行などを行ってくれるので、立ち退きの交渉も可能だ。
この事例でも後見人と話し合うことで、退去に至ったという。

「このように、いざトラブルが起きれば、気の遠くなるほど多くの手続きが必要になります。そうならないよう、賃貸借契約者が元気なうちに、もしもの場合どうするかを話し合っておくことが重要なのです」
と、的場先生。

トラブルはなるべく未然に防ぎたいものだが、高齢者は増加する一方で、高齢者というだけで入居を断るのは難しい。また、若かった入居者が過日とともに高齢化していくことも考えねばならない。
日頃から入居者の様子を伺い、身元引受人や行政などと提携して、もしもの場合への備えが重要なのだ。



■参考リンク
株式会社資産パートナープランナーズ:http://progress-pp.jp/

2014年 08月20日 11時03分