メディアを賑わせているサブリース契約の問題

最近、頻繁に新聞やテレビなどでサブリース契約に関するトラブルのニュースを見聞きする。サブリース契約とは、アパートなど賃貸住宅をサブリース会社が一括で借り上げて、入居者へ転貸するものだ。

なお、サブリース契約そのものに大きな問題があるというわけではない。顧客に対して十分な説明を行わないまま、あるいは顧客を騙してサブリース契約を結んだ一部の事業者の問題として理解しておくべきだろう。

サブリース契約は、サブリース会社が一括で借上げることにより「家賃保証」「空室保証」などの効果が期待できるものの、貸主とサブリース会社の間で認識の相違も生じやすい。主な認識の相違に次のようなものがある。

貸主(オーナー)の認識、期待

・契約期間にわたり、一定額の家賃が入り続ける

・管理業務はサブリース会社がやるため、オーナーは何もしなくてもよい

・ローンの返済と所得税、固定資産税など以外のお金は手元に残る



一般的なサブリース契約の現実

・入居状況や賃貸相場によって「賃料減額請求」がされる

・賃料のうち10〜20%程度が手数料として差し引かれる

・新規募集時や入居者の退去による再募集時などに数ヶ月の免責期間が設けられる

・礼金や更新料はサブリース会社の取り分となる

・貸主からの途中解約は難しい(法律上、借主=サブリース会社が保護される)

・入退去に伴うリフォーム費用などの負担を求められる

・築年数が経てば設備更新のための費用が必要になる

・サブリース会社の倒産リスクがある



サブリース契約に関するトラブル例

最近の目立ったトラブル例には次のようなものがある。

・説明と異なる家賃の減額

大手サブリース会社がアパートオーナーに対して「30年間は賃料が減少しない」と説明し、サブリース契約を締結。ところがリーマンショックによる経営悪化を理由に契約後10年未満で家賃を減額。オーナー数十人が集団訴訟に踏み切る。

・サブリース会社の倒産

シェアハウスを運営するサブリース会社が、家賃保証を条件に700人以上のオーナーと契約。しかし2017年10月、突然に家賃を減額。2018年に入ると完全に支払わなくなった。さらに4月9日、サブリース会社は東京地方裁判所に対して民事再生手続きを行い、受理された。オーナーは30代から50代のサラリーマンが中心。彼らのほとんどは、銀行から1棟1億円前後の融資を受けて物件を購入しており、現在その返済ができないでいる。


昨今はこのようなサブリースに関するトラブルが頻発しており、消費者庁の消費者ホットラインにも多数の相談が寄せられている。

サブリース契約とは、アパートなど賃貸住宅をサブリース会社が一括で借り上げて、入居者へ転貸するもの。最近はオーナーとサブリース会社間のトラブルが続出しているサブリース契約とは、アパートなど賃貸住宅をサブリース会社が一括で借り上げて、入居者へ転貸するもの。最近はオーナーとサブリース会社間のトラブルが続出している

国交省が対処法やトラブル事例などを公表

このような背景から2018年3月27日、国土交通省は消費者庁と連携してサブリース契約に対する注意喚起のために注意点などを公表した。

資料は『サブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください!』と『サブリース住宅に入居する方はオーナーとサブリース業者の契約内容を確認しましょう!』と題されたの2種類の文書。

前者の『サブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください!』はオーナーに向けた文書で、次のような項目が記載されている。


国交省が公表したオーナー向け文書に書かれていること

●相談窓口

賃貸住宅のオーナーからの相談を受け付ける公的な相談窓口を紹介。
賃貸住宅管理業者に関する相談は国交省などでも受け付けている。

●賃貸住宅管理業者登録制度

国土交通省が実施している任意の登録制度である賃貸住宅管理業者登録制度の説明。同制度にはサブリースを含む賃貸住宅管理業の守るべきルールを設けており、登録事業者はこれを遵守しなければならない。おもなルールとしては、サブリース契約における将来の賃料変動の条件の説明などがある。登録事業者は国土交通省のホームページで確認でき、サブリース契約をする場合の判断材料の一つになる。

●サブリース契約をする際のおもな注意点

「賃料変更の可能性」「契約期間中の解約の可能性」「契約後の出費」などの説明。

●消費者ホットラインに寄せられた相談事例

消費者ホットラインでは、地方公共団体が設置している身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を紹介している。そこに寄せられた相談事例としては次のようなものがある。

「母がアパートの建て替えと一括借り上げをしつこく勧誘されている。対処法はないか」
「10年前建設会社に勧誘されてアパートを建てた。以来、一括借り上げや特約システムなど次々に契約や費用負担を強いられる」
「14年前に賃貸アパートのサブリース契約をした。2年ごとに契約を更新するが、条件が悪くなる一方。納得いかない」

国土交通省は消費者庁と連携してサブリース契約に対する注意喚起のために注意点などを公表。物件オーナーと入居者の双方にとって、とても役立つ情報になっている国土交通省は消費者庁と連携してサブリース契約に対する注意喚起のために注意点などを公表。物件オーナーと入居者の双方にとって、とても役立つ情報になっている

突然の退去通知も! 入居者側も注意が必要

入居先がサブリース契約された建物である場合、入居者も注意を払う必要がある。なぜなら、オーナーとサブリース会社間の契約が終了した際、入居者側が不利益を受ける可能性があるからだ。そこで後者の『サブリース住宅に入居する方はオーナーとサブリース業者の契約内容を確認しましょう!』には、賃貸住宅の入居者へ向けて、次のような項目が紹介されている。


国交省が公表した入居者向け文書に書かれていること

●相談窓口

賃貸住宅に関する相談を受け付けている公的な窓口を紹介。
メール、電話、ホットラインなどの連絡先がそれぞれ案内されているので、必要に応じて相談することができる。

●消費者ホットラインに寄せられた相談事例

相談事例には次のようなものがある。

「サブリース物件に住んでいる。オーナーより賃貸をやめるから2ヶ月後に退去するようにとの通知が届いた。納得できない」
「サブリースの賃貸マンションに入居中だが、サブリース会社がオーナーに家賃を滞納しており、オーナーから直接家賃請求されて困っている」

●サブリース住宅の入居者のおもな注意点

・オーナーとサブリース会社の契約(原賃貸借契約)が終了すると、入居者は退去しなければならない場合がある。ただし、原賃貸借契約に「この契約が終了したときは、サブリース会社の地位をオーナーが引き継ぐ」旨の規定があれば、退去する必要はない。そのため、入居前にこのような規定があるかサブリース会社に確認をするべき。

・オーナーは入居者に直接賃料を請求できるが、すでにサブリース会社へ支払っていれば二重に払う必要はない。ただし、サブリース会社へ前払いしているときは、その分をオーナーに対して二重に払わなければならない場合がある。

・入居前にサブリース物件か確認する方法は、仲介する不動産会社に直接聞けばいい。また、契約前に説明を受ける重要事項説明書には、貸主と建物のオーナーが異なる場合は、通常は両者を記載することになっている。そのため、入居前にこの説明書を確認するべき。


最近の賃貸住宅の管理会社の多くは、サブリース事業も行っている。もちろんそのほとんどは、しっかりルールを守っているはずだ。しかし、そもそもサブリースの仕組みを知らないがゆえにトラブルが発生することもあり得る。そういった基礎知識を得る意味でも今回の注意点の公表内容は、サブリース物件のオーナーにとっても入居者にとっても大変役立つものだ。関係する人は、ぜひ確認していただきたい。


■国土交通省
サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!~トラブルの防止に向けて消費者庁と連携~
http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000166.html

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