サブリース契約をめぐる集団訴訟が相次いでいる

2016年の秋以降、大手事業者を相手取った集団訴訟が相次いでいる2016年の秋以降、大手事業者を相手取った集団訴訟が相次いでいる

賃貸住宅のサブリースをめぐるいくつかの問題については、1年ほど前に「国土交通省が対策に乗り出した賃貸住宅における『サブリース問題』の背景」でお伝えした。改正した賃貸住宅管理業者登録規程および賃貸住宅管理業務処理準則が2016年9月1日に施行されたことに伴い、その主な内容や課題をまとめたものだ。

サブリース問題の背景などについては以前の記事をご覧いただきたいが、2016年の秋以降に大手事業者を相手取った集団訴訟が全国で相次いでいるという。主な争点は「一方的に賃料を引き下げられ、約束したはずの収入が得られない」「想定していなかった負担を求められた」などのようだが、いったいなぜそのような事態になっているのだろうか。

サブリース、一括借上げ、アパートローンをめぐる現状や課題などについて、改めて整理しておくことにしたい。

尚、きちんとした態勢でサブリース業務を取扱う会社も多いはずであり、サブリース契約そのものに大きな問題があるというわけではない。顧客に対して十分な説明を行わないまま、あるいは顧客を騙してサブリース契約を結んだ一部の事業者の問題として理解しておくべきだろう。

サブリースをめぐる貸主の期待と現実

サブリースとは、貸主(オーナー)からサブリース会社が一括借上げをしたうえで、借主(入居者)へ転貸する形態だ。貸主とサブリース会社の間は「マスターリース契約」、サブリース会社と入居者の間は「転貸借契約」となる。また、サブリース会社が賃貸管理会社を兼ねる場合のほか、それぞれが別会社の場合もあるが、別会社とはいえ関連会社のことが多いだろう。

投資目的でオーナーが所有するマンションの1室を対象にしたサブリースもあるが、大きな問題となっているのは主にアパート、賃貸マンションだ。2015年1月の課税強化を機に相続税対策としてのアパート・マンション建設も盛んになったが、なかなか投資に踏み切れない地主の背中を押すツールのひとつとして「サブリースの仕組み」が使われた側面も考えられる。

サブリース会社が一括で借上げることにより「家賃保証」「空室保証」などの効果が期待できるものの、貸主とサブリース会社の間で認識の相違も生じやすい。

【貸主(オーナー)の認識、期待、あるいは誤解】
□ 30年間(あるいは一定の契約期間)にわたり、一定額の家賃が入り続ける
□ すべて管理会社がやってくれるから、自分は何もしなくてもよい
□ ローンの返済と所得税、固定資産税などを支払えば、それ以外のお金は手元に残る

【一般的なサブリース契約の現実】
□ 入居状況が悪かったり、賃貸相場が下落したりすれば「賃料減額請求」がされる
□ 入居者が支払う賃料のうち10〜20%程度が手数料として差し引かれる
□ 新規募集時や入居者の退去による再募集時などに数ケ月の免責期間が設けられる
□ 礼金や更新料はサブリース会社(または管理会社)の取り分となる
□ 貸主からの途中解約は難しい(法律上は直接的な借主=サブリース会社が保護される)
□ 入退去に伴うリフォーム費用などの負担を求められる
□ 築年数が経てば設備更新やグレードアップのための費用も必要になる
□ サブリース会社の倒産リスクもある

貸主は「何もしなくてもよい」のではなく、あらゆる面で「お金を支払い続けなければならない」と考えるべきだろう。もちろん、サブリース契約をせずに自分自身で管理をしながらアパート経営をすれば、同様の費用はかかる。だが、サブリースでは本来自分がやるべきことをすべて他人任せにするぶん、割高な費用がかかると認識しておくべきだ。

サブリース会社から支払われる賃料(収入)が下がり、費用負担(支出)がかさめば、毎月の収支がマイナスとなって、次第に資産が目減りしていくケースもあるだろう。

金融機関にとってアパート建設は格好の融資対象!?

貸主とサブリース会社の間の問題の一つが、契約条件についての「説明不足」である貸主とサブリース会社の間の問題の一つが、契約条件についての「説明不足」である

貸主とサブリース会社の間で齟齬をきたす原因の一端は「説明不足」である。とくに借上げ賃料の改定(ほとんどの場合は引下げ)に関する説明が十分に行われず、数年後にトラブルへ発展している事例が多い。説明不足だけでなく、「30年間は賃料を下げない」などと虚偽の説明を受けているケースもあるという。

その一方で、サブリースが社会問題化している要因として、「相続税対策」の名のもとにアパート建設を推し進めてきたハウスメーカーや建設業者、さらに収支計画や収益性のチェックを十分にしないままで安易にアパートローンを貸し付けてきた金融機関の姿勢を問う声も強いようだ。

超低金利状態が続くなかで金融機関同士の貸出競争は激化している。だが、企業の設備投資に対する資金需要はあまり伸びず、個人の住宅ローンでは十分な収益が見込めない。それに対して、アパートローンは金利を高めに設定でき、顧客は「土地持ち」の富裕層が多くて担保も取りやすい。金融機関にとって都合のよい融資先なのだろう。

日銀による統計をもとに「個人による貸家業」向け融資の残高をみると、2016年後半以降、22兆円を超える水準で推移している。2015年1月に相続税が強化されてから、アパートローンなどが貸出し全体の伸びを大きく上回り、過去最高を更新し続けていたようである。

貸家着工、アパートローンは転機に

だが、増加が続いていた貸家の着工も潮目が変わり始めているようだ。国土交通省による建築着工統計によれば、「貸家」の着工戸数(前年同月比)は2017年6月から8月まで3ケ月連続の減少となった。2015年11月から2017年5月までは19ケ月連続で増加しており、一時は20%を超える増加もあったのだが、大きく様変わりしたといえるだろう。

その背景にあるのが、サブリース問題の顕在化とその監視強化だ。国土交通省による賃貸住宅管理業者登録規程および賃貸住宅管理業務処理準則の改正では、管理業者に対して一定の資格者(実務経験者等)の設置およびその資格者による「貸主への重要事項説明」の徹底などが義務付けられた。

これらの改定は2016年9月1日に施行された後、2018年6月30日までの経過措置も設けられているが、サブリースに関わる条件(将来の賃料水準変動に伴う改定条件など)の説明を徹底させることにより、貸主に甘い期待を抱かせたり誤解を生じさせたりして、強引に契約をまとめることは難しくなったのではないだろうか。サブリース契約に関するリスクの存在が一般に認識されてきたことも要因として考えられる。

それと前後して、2016年秋以降に日銀・金融庁がアパートローンに対する監視を強めているようだ。その実態把握とともに、金融機関に対して適切なリスク管理を促しているという。アパートローンの新規融資額も伸びが止まりつつあるようであり、日銀のまとめによれば「個人による貸家業」向けの新規融資額(前年同期比)は2017年1〜3月期におよそ2年ぶりの減少、4〜6月期に2期連続の減少となった。

国土交通省「建築着工統計」をもとに作成。2017年6月から減少傾向に転じた国土交通省「建築着工統計」をもとに作成。2017年6月から減少傾向に転じた

サブリース問題はこれから深刻化する?

アパートや賃貸マンションを建設してサブリース契約がスタートしても、すぐにトラブルが生じるわけではない。詳細な実態は分からないが、4〜5年あるいは10年ほど経ってから賃料の減額を請求され、貸主が慌てるケースも多いだろう。

そのため、いま全国で相次いでいる集団訴訟の当事者は2000年代にアパートなどを建てた人が多いと考えられる。貸家の着工戸数は現在よりも多い水準だったが、サブリース契約そのものは現在ほど盛んではなかった頃にアパート経営などを始めた貸主だ。

それに対して、2015年あるいは2016年にサブリースを使った事業スキームで勧誘され、相続税対策への焦りからアパート建設などに踏み切った貸主が、賃料改定などの問題に直面するのは数年後だ。貸主が高齢者のケースも多いほか、地域によっては人口減少による需要の低下にも拍車がかかっている。

また、アパートローンなど「個人による貸家業」向け融資は、日銀が統計を始めた2009年以降、大手銀行では減少が続いている一方で、地方銀行では大幅に増え続けていたのである。将来的な採算性が厳しいところほど、サブリース会社、賃貸管理会社、建設会社、金融機関が一体となってアパート建設を推し進めてきたという見方もできるだろう。

今後、サブリース会社からの賃料減額請求が厳しくなれば、アパート経営が成り立たなくなって資産を失う貸主が増えるケースもありそうだ。サブリース問題が深刻化していくのはこれからが本番なのかもしれない。

アパートや賃貸マンションを建設してサブリース契約がスタートしても、すぐにトラブルが生じるわけではない。</br>サブリース問題が深刻化していくのは、これからが本番なのかもしれない
アパートや賃貸マンションを建設してサブリース契約がスタートしても、すぐにトラブルが生じるわけではない。
サブリース問題が深刻化していくのは、これからが本番なのかもしれない

2017年 10月23日 11時00分