東京のどこで子どもが増えているか

自治体の魅力を計る基準はいろいろあるだろうが、子育て期の人々が住みやすいかは、少子化対策が叫ばれる現在においては重要な基準である。
かつて、高度経済成長期には、都心とその周辺はオフィスだけでなく工場がたくさんあり、煙をもくもく吐き出し空気は汚く、川はヘドロで魚も住まず、騒音はうるさく、公園は少なく、交通事故は多かった。だから人々は、特に子育て期の世帯は郊外に家を求めた。

ところが今は、工場は郊外や地方やアジアに移転し、空気はきれいになり、多摩川や隅田川にサケやアユが戻り、東京湾ですら海水浴が出来るかも知れないほどきれいになり、交通事故は減った。だから、工場や倉庫の跡地にマンションが出来て、人々が郊外から移り住んでくるようになったのだ。

2005年から15年にかけて23区内のどこで子どもが増えたか。15歳未満の人口の増加数を国勢調査の小地域集計で細かく見ると、江東区東雲(しののめ)、豊洲、有明、亀戸、港区芝浦、港南、中央区勝どきなどで1000人以上増加している。足立区新田、西新井栄町、荒川区南千住も600人以上増加しているが、いずれも大規模マンション建設によるものだ。

資料:国勢調査より三浦展作成
資料:国勢調査より三浦展作成

団塊ジュニア急増で南千住が地価上昇率ナンバーワン!

次に親に当たる団塊ジュニア世代が増えた地域を町別に見る。
すると、増加数の1位はなんと南千住である。10年で1477人も増えている。南千住は15歳未満の子どもの数の増加数も7128人で、町単位では23区内最大の増加数であり、10年で2.8倍の増加である。
また、夫婦と子どもからなる世帯の増加数を見ると南千住は1935世帯で2位である。0〜4歳の増加数を見ても南千住は1083人で第3位である。

以上のことから南千住が団塊ジュニア夫婦とその子どもが大量に移住してきた地域であると推測できる。江東区豊洲、港区芝浦、港南、中央区勝どきなどほどには話題にならないが、隠れた団塊ジュニアファミリー急増地帯なのだ。

資料:国勢調査より三浦展作成資料:国勢調査より三浦展作成

かつて大規模団地のあった地域は子ども人口が減少

おそらくそのためだと思うが、南千住は近年地価上昇率が23区内でナンバーワンになった。荒川区全体でも地価上昇率は都内トップクラス。
こう言っては失礼だが、南千住で若い子育て世代の人口が増えて地価上昇率が1位となっているのに、かつて子育てファミリーのために開発された多摩市では合計特殊出生率が後述するように1.16しかないとは、実に全く隔世の感がある!!

15歳未満の人口が減った地域を見ると、江戸川区春江町、南篠崎、東篠崎、南葛西、西瑞江、臨海町、足立区保木間、東和、扇、伊興など、足立区、葛飾区、江戸川区の一帯に広がっていることがわかる。
それらは、たいがいはURなどの団地、マンションがあった地域と思われる。かつては夫婦と子どもの世帯が急増した地域だが、子供が大学進学、就職、結婚の年齢になると一気に子どもが少ない地域になったのであろう。

資料:国勢調査より三浦展作成資料:国勢調査より三浦展作成

都心に子どもを奪われる郊外の将来は?

このように近年、都心に、未婚者や子どものいない夫婦だけでなく、子どものいる夫婦までが増えている。
そのため、これまでは郊外のほうが都心よりも出生率が高いというのが従来の常識だったが、現在は違ってきている。

23区の合計特殊出生率を見ると、2016年は港区が最も高く1.45である。港区は2004年には0.78しかなかったのが、10年ちょっとで急増した。
中央区も同様で、2004年の0.85から1.44に増加、千代田区も98年の00.75から16年は1.35に増加している。

対して、渋谷区、新宿区、中野区、目黒区、杉並区、豊島区は2004年にはほぼ0.7台だったのが、16年には1.0台に増加しているものの、1世代ごとに人口が半減するのだから、どうしようもない。東京の西側の山の手の、かつての高級住宅地を多く含む区ですら、今は都心に子育て世代を奪われていることがわかる。

また三多摩で人口規模の大きい八王子市、立川市は1.3台しかない。多摩ニュータウンのある多摩市はたった1.16である。つまり今、本来子育て家族のためにつくられた山の手の住宅地や郊外のニュータウンが嫌われているのだ!

とはいえ面積に限界のある都心部で今後ずっと人口が増え子どもが増えるのか。
実際中央区はマンションなどの住宅建設に対する容積率の緩和制度を廃止する方針を打ち出した。築地や月島など区内の8割の地域で地区計画を改定。住宅の容積率を最大4割上乗せする制度を廃止するという。
これでタワーマンション建設が減少することは間違いない。郊外自治体のがんばり次第では再び人口増加も不可能ではあるまい。

資料:東京都福祉保健局資料より三浦展作成資料:東京都福祉保健局資料より三浦展作成

2018年 03月20日 11時05分