本棚に耐火の秘密あり

前回の“【「みんなの森 ぎふメディアコスモス」ってなに?①】岐阜市の中心市街地にヒノキの香り漂う複合施設が誕生!”では、岐阜市市民参画部ぎふメディアコスモス事業課課長の石原さん、同課の畑上さん、図書館副館長の中島さんに話を伺い、まちづくり「つかさのまち夢プロジェクト」について、また、ぎふメディアコスモスの役割である「知」「文化」「絆」の拠点機能についてお伝えした。

今回は、ぎふメディアコスモスの特長や施設運営の取り組みについてさらに詳しく紹介していく。まずは、この建築物そのものについて伺ったところ、驚きの事実があることがわかった。

「実はここは“準防火地域”に指定されている場所で、本来この規模の建物を建てるときには耐火建築物とする必要があります。そこで、万が一のことがあっても2階の木造屋根には燃え移らない耐火性能を施して、国に許可申請をして、特別な認定をいただいて建てることができました」

その耐火性能というのは、どこにどう施されているのだろうか?

「本棚が耐火になっています。よく見ていただくと、本棚と本棚を区切る背板がコンクリートになっていて、もし本が燃えるようなことがあっても反対側には燃え移らず、大きな火災にはならないという仕組みです」

耐火性能が施されている本棚。棚と棚の間に分厚いコンクリートが挟まれている耐火性能が施されている本棚。棚と棚の間に分厚いコンクリートが挟まれている

木造格子屋根とグローブで省エネに貢献

施設で最も目を引く部分といえば、やはり2階の市立中央図書館の上の木造格子屋根だが、もう一つ、その天井から吊り下がっている大きな傘のようなものがとても気になる。これは何の目的で付けられているのだろうか。

「これは“グローブ”といいます。機能としては小さな家としての“グローブ”と、大きな家としての“木造格子屋根”が組み合わさって、光や空調などの省エネに貢献しているんです。グローブの中に人のいる空間をつくり、その部分を特に温めたり涼しくしたりすれば大きな空間を冷暖房するよりも効率的ですし、グローブを介して太陽光が降り注ぐので自然で優しい明るさを得られます。グローブの中はとても居心地のいいスペースになっているんです」

言われてみれば、図書館にしては珍しく壁や間仕切りがなく本棚も低いので、より広々としているように感じられる。それでいて、グローブでスペースが区切られているので周りの視線が気にならず、落ち着いて本を選んだり読んだりできる。

また、窓際にカウンターの席が設けられていたり、屋外テラスが用意されていたりする。目の前の金華山を眺めながらテラスでゆったり好きな本を読めるとは、とても贅沢なシチュエーションだ。

岐阜市のシンボル金華山を眺めながら読書ができる屋外テラス岐阜市のシンボル金華山を眺めながら読書ができる屋外テラス

市民が参加できる図書館イベント

前回、公募で選任された図書館の館長が面白い取り組みをしているとお伝えしたが、その内容について紹介しよう。まずは本棚から。通常、図書館の本棚というと、本の背表紙がずらりと並んだ光景が思い浮かぶが、ここでは本屋のように見せる陳列をしていて、館長や司書の方お手製の本の紹介ポップが飾られている。

「単純に本を並べるだけではなく、ワクワクして楽しくなるような空間をつくりたいという思いが館長にはあるようです。利用する皆さんが本を手に取りやすい、楽しめる雰囲気を作りたいということで、本棚をディスプレイしたり紹介ポップを作ったりしているんですね」

また、市民が参加できるような工夫もされている。展示グローブというスペースがあり、筆者が訪問したときには、ここで市民の皆さんがおすすめの本を紹介するイベントが開催されていた。本好きなら参加したくなるだろうし、あまり読書をしない人も、ちょっと本を手に取ってみたくなりそうな催しだ。

さらに、人と交流できる、話ができる空間づくりも大切にしており、「親子のグローブ」というスペースを設け、小さな子どもを連れて気軽に図書館を利用できるようにしている。

(左)手づくりの本の紹介ポップ<br />(右上)取材時に展示グローブで開催されていた市民の皆さんおすすめの本を紹介するイベント</br>(右下)子どもがのびのび本を楽しめる親子のグローブ(左)手づくりの本の紹介ポップ
(右上)取材時に展示グローブで開催されていた市民の皆さんおすすめの本を紹介するイベント
(右下)子どもがのびのび本を楽しめる親子のグローブ

大人は立ち入り禁止「ヤングアダルトのグローブ」

さまざまな人に利用してもらうために多彩な工夫がされているが、特に筆者が気になったのがヤングアダルトのグローブだ。

「ヤングアダルトというのは、図書館の分類でいう中高生世代向けの図書という意味です。ヤングアダルトのグローブは中高生世代専用のエリアで、中高生世代が心地よく図書館で過ごせるように、このグローブには大人が立ち入らないようにしています。特別な設えをしているわけではありませんが、大人から監視されている感じがしない、自由に過ごせるような空間をつくっています。これも、中高生世代にもっと図書館に親しんでもらいたいという館長の思いから始めたことです」

こうした工夫を凝らした取り組みが奏功してか、夏の終わりまでに中央図書館で新たに図書カードを作った人は、1万人余りにのぼったという。

「昨年度1年間に岐阜市全体で図書カードを新規作成した人数と比べると、とても多いペースで登録が進んでいます。もっと気軽に図書館を利用していただきたいという思いが皆さんに伝わっているのかな、という手応えを感じています」

この施設をオープンしてから図書も10万冊増やしたそうで、取材時点で30万冊所蔵とのことだった。書庫も含めて90万冊所蔵できるそうなので、取り組みと合わせて書籍の充実も期待できそうだ。

ヤングアダルトのグローブ。施設がオープンしたのが7月だったので、夏休み中は多くの中高生で賑わっていたという。</br>それぞれ好みの場所があるようで、早朝から並んでお気に入りの席に座る学生もいたとかヤングアダルトのグローブ。施設がオープンしたのが7月だったので、夏休み中は多くの中高生で賑わっていたという。
それぞれ好みの場所があるようで、早朝から並んでお気に入りの席に座る学生もいたとか

物珍しさで終わらせないために

オープン以来、拠点としての役割を果たし、順調に人の交流を生み出しているぎふメディアコスモスだが「建物の物珍しさだけで人が集まるだけではこの施設の意味がない」と担当課の皆さんは口をそろえる。本来の目的である司町の発展に向けて進み続けるために、さまざまなイベントを企画していきたいという。

「図書館では子どもさん向けのお話し会をはじめ、岐阜で活躍されている作家さんのトークショーや、図書を紹介する文学講座などを開催していきたいと考えています」(市立中央図書館副館長・中島さん)

「一度は建物を見に訪れるというだけでなく、何度も足を運んでいただけるよう、四季ごとに楽しめるさまざまなイベントを考えています。現在、企画しているのは施設の案内ツアーやワークショップ、冬のイルミネーションイベントなどです。私たちが企画するイベントだけでなく、市民の皆さんがホールやギャラリーを利用して開催する発表会や美術展なども見応えがありますので、そうした催しもぜひご覧いただきたいです。これからも皆さんが参加して楽しんでいただけるようなイベントを企画していきたいですね」(ぎふメディアコスモス事業課・石原さん、畑上さん)

未来への夢をつなぐプロジェクトは始まったばかり。他に類を見ない魅力的な施設だけに、何年経ってもその魅力が生かされるまちづくりが行われることを期待したい。

【取材協力】
◆岐阜市市民参画部ぎふメディアコスモス事業課


◆岐阜市教育委員会図書館



【関連リンク】

◆みんなの森ぎふメディアコスモス


昨年実施された冬のイルミネーションイベント。<br />施設の完成した部分だけを利用してイベントを行ったそうだが、<br />今年は全体を彩ることができるので、より一層華やかな催しになりそう昨年実施された冬のイルミネーションイベント。
施設の完成した部分だけを利用してイベントを行ったそうだが、
今年は全体を彩ることができるので、より一層華やかな催しになりそう

2015年 11月10日 11時05分