不動産屋さんは、物件を紹介し契約するだけの存在か?

賃貸物件を探して住んだことのある人なら、不動産屋さんを訪れてお部屋の内見をさせてもらったり、契約をしたりした経験があるだろう。

だが、不動産屋さんとは、部屋選びから契約までの一時期は頻繁にやりとりをしていても、契約・入居後は"なんという不動産屋さんだったか覚えていない"、または“次の更新までまったく関わらない”人が多いのではないだろうか?入居後も継続的に入居者と関わる不動産屋さんは少ないと感じる。

そんな中、入居後も入居者をサポートし続け、「おそらく日本一マメな不動産屋さん」を自負する会社が金沢にある。管理物件数7100件余、入居率95%を超える「のうか不動産」である。

「おそらく日本一マメな不動産屋さんが金沢にあります。」宣言

のうか不動産代表取締役である苗加(のうか)充彦社長(写真:右)と取締役の小﨑要介氏(写真:左)のうか不動産代表取締役である苗加(のうか)充彦社長(写真:右)と取締役の小﨑要介氏(写真:左)

のうか不動産は、金沢の東部エリアを中心に約7100の管理物件をもつ不動産屋である。金沢は、金沢大学・金沢美術工芸大学・金沢学院大学・北陸大学など、大学や専門学校が多くある。のうか不動産の管理エリアでのシェアは55%を超え一部のエリアでは70%を超える。さらに管理物件中80%は学生向けの物件で、入れ替わりが激しい学生をターゲットとしながら、入居率はなんと95%超えだという。ここまでのパフォーマンスを出せるのはどんな取り組みをしているからなのであろうか。
のうか不動産代表取締役である苗加(のうか)充彦社長と取締役の小﨑要介氏にお話を伺った。

「のうか不動産は、私で二代目なのですが、金沢のこのエリアで多くのオーナーさんの物件と学生さんを結びつけてきました。ただ、不動産業界もインターネットによる情報の流通や、大手フランチャイズが進出してきたりと、そのままではエリアで勝ち残っていくことが難しくなってきています。私たちは大きな展開をしていかなくとも、まずはエリアで第一に信頼され、支持される不動産屋であることを目指してきました」と苗加社長は話す。

「実は8年前に、もう少し親しみをもってもらおうと、ブランディングの見直しをはじめました。デザインやコンセプトを見直す際に、デザイナーさんに会社の取り組みや姿勢についてお話しました。"社長、それはすごくマメなことをやってらっしゃいますね。もっと訴求したほうがいいですよ"とアドバイスをもらったのがきっかけで、"マメな不動産屋"と名乗るようになりました。豆のさやをイメージしたデザインや、社名を苗加不動産から"のうか不動産"と平仮名で表記するようにしたのもこの時期からです」という。

入居者に向けて、「マメ」なこと

では、何が「マメ」なのであろうか?前述した通り、のうか不動産の管理物件の80%は学生向けである。一人暮らしをするのが初めての学生に向けて、のうか不動産のサービスは優しい。

例えば、トラブルサポートはカスタマーサポートの専門チームを設けて24時間365日対応している。
毎年出している「金沢ひとり暮らしガイド」は、金沢の管理エリアの物件や街情報・お店などが載っているのだが、"ひとり暮らし初心者に日本一やさしいガイドブック"を謳い、なんと編集から撮影まで、のうか不動産が自社で行っている。"学生がどう思うか"を大切にしているため、出来上がり前に学生にチェックをしてもらうという徹底ぶりだ。

また、エリア内では通学に便利なようにと、入居者専用の無料シャトルバス「マメバス」を毎日朝4便、夕4便運行している。
細やかな心配りも忘れない。入居者の誕生日には、手書きのお祝いのメッセージを書いたバースデーカードをメールボックスに入れる。合格発表前のお部屋予約の学生向けに先着で「合格祈願」の絵馬が用意されていたり、のうか不動産のもりの里店内には、なんと合格祈願のための神社まで造られている。

部屋の退去の際、一般にはもめることの多い敷金の精算についても定額式を導入している。苗加社長曰く、「今までせっかく良いコミュニケーションがお互い出来ていても、部屋を去る際にこちら側から計算し提示する敷金返却が、少しでも不明確と思われれば、良い気持ちにならないと思うのです」という。

物件に関わることだけでなく、本社のセミナールームを学生に無料で開放したり、ヨガやピラティス、マラソンなど「朝 L プロジェクト」と名付けた活動もしている。学生たちの「こんなことがしたい」というイベント開催やビジネスの相談にも、社長自らが相談にのることもある。また実際に、学生と一緒に運営するカフェを本社の近くにオープンさせているのだ。

まさに入居後も、学生生活で学外での暮らしの充実をサポートしてくれる不動産屋さんなのである。

エリアを走る入居者専用の「マメバス」(写真:左上)「金沢ひとり暮らしガイド」の2016年度版(写真:左上)</br>合格祈願の絵馬と鉛筆、緑の豆は裏がメッセージを書けるようになっているバースデーカード。鉛筆は“5択問題が出題されたら、転がしてお使いください。”と遊び心あるコピーも添えられている(写真:左下)</br>もりの里店内にある「のうか神社」。合格祈願を込めたたくさんの絵馬が掛けられている(写真:右下)エリアを走る入居者専用の「マメバス」(写真:左上)「金沢ひとり暮らしガイド」の2016年度版(写真:左上)
合格祈願の絵馬と鉛筆、緑の豆は裏がメッセージを書けるようになっているバースデーカード。鉛筆は“5択問題が出題されたら、転がしてお使いください。”と遊び心あるコピーも添えられている(写真:左下)
もりの里店内にある「のうか神社」。合格祈願を込めたたくさんの絵馬が掛けられている(写真:右下)

オーナーさん・取引業者さんに向けて、「マメ」なこと

空室対策のための部屋の改修ポイントをまとめ、工事費やそれぞれの費用も明確にしたわかりやすいパッケージサービス「マメチェン」空室対策のための部屋の改修ポイントをまとめ、工事費やそれぞれの費用も明確にしたわかりやすいパッケージサービス「マメチェン」

「マメ」なのは、入居者に向けてだけではない。入居率をアップさせるためのオーナーサポートも「マメ」だ。

オーナー向けのセミナーや説明会なども盛んに行っているが、普段から学生に接しているため、「今、学生が何を求めているのか」のノウハウが豊富にある。その中から、空室対策のための部屋の改修ポイントをまとめ、工事費やそれぞれの費用も明確にしたわかりやすいパッケージサービスを提供している。デザインも選べるようにし、物件ごとに個性がでるようにサポートをしたそのサービスは「マメチェン」と名付けられている。

また、物件の建替えの際はエリアのマーケティングデータから、周辺の部屋との差別化をするため、学生が就職後も住みやすい部屋に…ということで40平米以上の物件も提案している。実際に広い部屋は入居者に人気で、先に決まってしまう部屋が多いという。

また、退去後の部屋の改修やリフォームなどに関わる取引業者さんとも密接なコミュニケーションがとられている。
繁忙期は、電気工事屋さんや配管工事屋さん、リフォーム工事屋さんなどが、"臨時社員"としてのうか不動産の社員と共に学生のお部屋案内に同行するのだという。
「学生側から"ここは直せますか?"などの質問がでても、すぐに"この日までに直せますよ"と即答できるので、ありがたいです。私たちの仕事は、パートナーの方々なしでは行えないので、その方々に入居者の希望や部屋の問題を知ってもらえる機会でもありますし、一緒に仕事をしているという感覚をもてる、というメリットもあります」と小﨑さんは話す。

社員に課す4つの「マメ」さ

のうか不動産もりの里店。訪れた3月は学生の部屋探しのピークで、週末には100を超える契約があるというのうか不動産もりの里店。訪れた3月は学生の部屋探しのピークで、週末には100を超える契約があるという

どうして「マメ」にこだわるのか。のうか不動産は、"こうありたい"と思う気持ちを「マメ4カ条」としてまとめている。

1)まじめであること:どこの不動産屋よりも真面目に勉強する。
2)お客様の幸せを願うこと:お客様にしあわせを呼ぶ部屋をさがす。
3)労苦をいとわず働くこと:労苦をいとわずお客様の生活をサポートする。
4)丈夫で頼もしくあること:丈夫で頼もしいプロフェッショナルをめざす。

1の「どこの不動産屋よりもまじめに勉強する」宣言通り、宅地建物取引士の資格を社員全員に取得させることにしている。現在46名中40名が資格を取得しており、2016年中には100%を目指しているという。

「残念ながら宅地建物取引士の試験に落ちた社員が、"自分で案内をしたお客様に自ら重要事項の説明ができない"と涙を流してくやしがったこともあります。不動産屋さんに行ったら、お客様は当然全員が資格をもっているものだと思いますよね。わたしたちはプロフェッショナルなのですから、"看板に偽りない会社"でありたいと思っています」と小﨑さん。

なぜ、そこまでできるのだろうか?
苗加社長は、「実は、今の取り組みはずっとやってきていたことが多く、不動産屋として特別なことだとは思っていないです。最初にデザイナーさんから"社長、それはマメな取り組みですよ"と言われた時も、それが普通だったので、そんな特別なものかとびっくりしました。エリアの入居者さん・オーナーさん・取引会社さんに、のうか不動産のファンになって欲しいという想いは、当初からずっと変わらず持ち続けていますし、これからもそうありたいと願っています」と語ってくれた。

金沢の学生は幸せだと思う。
きっとこういった不動産会社で部屋を借りると、その後も不動産会社に対する信頼が大きいだろう。この後も、就職や結婚で住まい探しや住み替えを考えるとき、少なくとも不動産会社に対してネガティブではなくなるはずだ。

はたして、どれだけの不動産会社がこのような信頼関係を築けているのだろうか?取材を終えて、そう考えた。

2016年 04月11日 11時05分