各自治体が力を入れる移住促進 神戸市の暮らし体験事業とは?
これまでHOME'S PRESSでは、地方移住の取組みについていく度も取材をしてきた。政府が進める地方創生の流れもあり、今、全国各地の自治体が移住促進に力を入れている。
この背景には、歯止めのきかない人口減少にもかかわらず、東京への転入超過数が3年連続で増加するというような、一部の地域への人口の一極集中がある。(総務省統計局調べ)その一方で全国の市町村の7割以上が、転出超過している状態にあり、自治体はなんとか人口の減少を食い止めようと移住イベントを実施したり、特設サイトで情報発信をしたりとPRに取組んでいるのだ。
そんな中、兵庫県神戸市が、無料でお試し移住(試住)ができる神戸暮らし体験事業「LIVE LOVE KOBE」をはじめた。この事業は神戸市より受託した株式会社フェリシモ(以下、フェリシモ)が、企画から募集、運営までもしているという。
耳にしたことがある人も多いと思うが、フェリシモは衣類や雑貨など幅広い商品の通信販売を手掛ける会社である。何故フェリシモが神戸移住の支援をすることになったのだろうか?
「LIVE LOVE KOBE」の企画から運営までを担当し、実際に移住希望者の相談に乗ったりと幅広いサポートをしているフェリシモのビジネスコラボレーション部 事業開発プロジェクトグループ 源田 聡さんにお話しを伺った。
十人十色の神戸の魅力を知ってほしい
「フェリシモの事業内容は、"ダイレクトマーケティング事業"であり、通販販売はそのダイレクトマーケティング事業を担う一部であるという認識です。一人一人のお客さまに、直接価値のあるものを届けるダイレクトマーケティングが主軸にあり、商品やサービスの枠組みにはこだわっていません。この本質に合った取組みであれば新しいことも進めていく社風があり、今回の神戸暮らし体験事業の受託もそのひとつです。」
フェリシモの創立は1965年。創立時、本社は大阪にあったが、ちょうど神戸市に本社を移転しようとした21年前に、阪神・淡路大震災が起こった。暮らし体験事業には、神戸市に本拠地を置くフェリシモだからこその想いがあったという。
「大震災のあと徐々に復興が進み、震災から10年ほど経ち神戸市の人口は、震災直前の水準を上回りました。ただ、東灘区、灘区、中央区などの東部では人口が増加しているのに対し、西部では人口の減少が続いています。神戸市全体の人口も、平成 24 年に減少に転じてからは3年連続で減少という状況です。フェリシモのはじまりは大阪でしたが、震災の後に神戸に本拠地を移し、神戸の復興とともに成長してきた会社です。ご縁のある神戸の移住促進、事業機会の提供に少しでも貢献したいという想いが発端でした。」
観光地として人気もあり、知名度も高い神戸市。暮らすとしたら街の魅力はなんなのだろうか?
「神戸市は海と山に囲まれた豊かな自然があり、かつ、交通利便性がよく都市へのアクセスもしやすい立地にあります。大都市と比較して生活費もさほど高くなく、子育てがしやすいという点もおすすめできるポイントです。古くから港町として栄えたこともあり、多彩な国際文化が生活に息づき、住む人それぞれ十人十色の魅力が感じられる。神戸の豊かな生活文化を、まずは試しに暮らして実感していただきたいです。」
受付開始以降、全国から体験申込みがあり、2016年1月25日時点で応募者数は613組、倍率は30.6倍だそうだ。今回は、たまたま入れ替りのタイミングで空いていた、実際に"暮らし体験"ができるという「森を見る部屋」を見学させてもらった。
「森を見る部屋」は、3LDKで170平米のスペースを体験希望者でシェアできるようになっている。入ってみて驚いたのは間仕切りのない広々とした部屋のつくりだ。築44年の外国人向けにつくられた物件だそうで、玄関はフラット、キッチンは高さがあるつくりになっている。窓からはちょうど神戸の山が見え、自然を感じながら暮らし体験ができる。
こういった海外の雰囲気を感じられる物件に出会える点も、神戸の魅力のひとつと言えるだろう。
100を超える暮らし体験ツアーで神戸の人と触れあう
神戸暮らし体験事業「LIVE LOVE KOBE」は、試住体験に加え、暮らし体験ツアーに参加できる点が特色である。
試住体験は3泊から最大14泊まで無料で宿泊ができ、神戸暮らし体験ツアーはその宿泊日数に応じて必ず参加が必要となる。3泊~7泊であればツアーの参加は1回以上、8泊~14泊の場合は2回以上。ツアー参加費用各8000円は自己負担となる。
ここまでの内容を見ると神戸の観光ツアーなのか?と思われるかもしれないが、ツアー内容は神戸の多様な魅力を表現したと言っていいほど幅広く、神戸の生活が感じられるユニークなツアーが揃っている。「衣」、「食」、「住」、「遊」、「交」、「景」、「知・美」、「散」、「働」の9つのカテゴリーに分けられたツアーは100を超える。
例えば、ファミリーであれば食育と神戸の見どころをあわせた「食」の「神戸わかめの収穫体験&生海苔味わいツアー」で栄養講座が聞けたり、移住先でも趣味を広げたい人は「遊」のジャズやマラソン、六甲山の登山など、なにかしら興味が沸きそうなツアーがあるのだ。
さらに、本格的に移住を検討しはじめた人に向けた「どこに住もうか?」「住むとしたら仕事は見つかるのか?」という不安の解消に役立ちそうな、"移住先を考えるツアー"や、"移住を考えるフリーランサーや起業家のためのランチMTG"などもある。
「暮らし体験ツアーの選定は、単なる観光ツアーにならないようにすることを重視しました。神戸スイーツやパンなど神戸を代表するグルメツアーも、神戸に住む地元の人がオススメするお店を案内することで、人と人との交流が生まれています。お試し移住と体験ツアーでより神戸について知ってもらうことができるのでは、と考えています。」
観光地から移住地へ 「試しに住む」ことで見えるもの
この暮らし体験事業は2015年の12月から開始しており、すでに暮らし体験が終わった人たちもいる。実際に体験した人たちはどう感じたのだろうか?
参加者の感想は、「実際に住んでみて観光地としてだけでなく、移住地としても好きになった」、「ツアーに参加したことで神戸のイメージがガラリと変わった」など、神戸の街や住まい、人に直接触れることで新しいプラスの発見があったようである。
だれしも好きな街、旅行して気に入った街があると思う。「もしその街に移住するとしたら?」と考えた時、試しに住むことが大きな後押しになるのではと思う。観光で訪れただけでは分からない、街の温度感や雰囲気、その土地に住む人との触れ合いから感じとれることがあるのではないだろうか。
神戸暮らし体験事業「LIVE LOVE KOBE」は2016年2月27日まで実施している。最終の申し込み受付は2月17日だそうだ。この機会に神戸暮らしを体験してみたい人は、申し込みをしてみてはどうだろう。
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