まだまだ『男性社会』のイメージが払拭できない不動産業界に
一石を投じる32歳女性社長の活躍

みなさんは『不動産業界の人』というとどんなイメージをお持ちだろうか?

腕には高級時計とクラッチバッグ、恰幅の良いスーツ姿のオジサマたち…そんな“古き良き時代の不動産屋さん”は近頃少なくはなってきたものの、まだまだ不動産業界は“オトコ社会”のイメージが拭えない。

しかし、そんなオトコ臭い不動産業界のイメージを“女子力”で一新しようと活動している若き女性社長がいる。今回は、東京都世田谷区北沢に本社を構えるTender Living(テンダーリビング)株式会社の中村マリア社長(32)に、現在の取り組みと不動産業界への想いについてお話をうかがった。

▲こちらがTender Living株式会社の中村マリア社長(渋谷区のショールームにて)。<br />ふんわりカールのロングヘアにフリルのブラウス、タイトスカート姿で、よく喋りよく笑う。<br />“まさかこの人が不動産会社の社長さんとは…”と驚いてしまうほど女子力が高く、とても愛らしい人物だ▲こちらがTender Living株式会社の中村マリア社長(渋谷区のショールームにて)。
ふんわりカールのロングヘアにフリルのブラウス、タイトスカート姿で、よく喋りよく笑う。
“まさかこの人が不動産会社の社長さんとは…”と驚いてしまうほど女子力が高く、とても愛らしい人物だ

“はじめての女性の一人暮らしを応援したい!”の気持ちから起業を決意

飲食・テナント業を営んでいた祖父と、貸しビル業を営む父の姿を、子どもの頃から間近に眺めていたという中村社長。当初はまったく家業には興味がなく、短大卒業後は大手メーカーに就職して受付嬢をしていたが、ふと10年後の自分の姿に不安を抱き転職を決意。デザイナーズマンションを企画・分譲するデベロッパーに営業職として採用されたことが“不動産業界入りのきっかけ”となった。


「受付嬢は“若さ”が求められる仕事。いつまでも続けられるものではないという焦りがあり、ちゃんと会社を動かすコアな職種に就きたいと考えるようになったんです。父の仕事については“なんだか大変そうだなぁ”というぐらいの関心しかありませんでしたが、不動産業界へ進もうと考えるようになったのは、やはり父の影響だと思います」と中村社長。

その後、大手不動産販売会社の営業アシスタント職等を経てマンションの賃貸・売買に関するノウハウを学んだが、賃貸業務に関わる過程でさらなる転機が訪れた。

「東京で賃貸業務に携わっていると、“実家を出てはじめての一人暮らし”という女性のお客様がとても多いんです。でも、地方から出てきて、知らない土地で一人暮らしをするって、ものすごく不安だろうなぁ…と。

実は私自身も24歳のときに、親から“一人暮らしをしてみなさい”と言われて実家を追い出された経験があるものですから(笑)、そのときの不安な気持ちを思い出して、“女性の一人暮らしをもっと応援したい”という想いがより強くなったんですね。

そこで、“よし、自分で女性のための不動産会社を作ろう”と決意しました」(中村社長談)。

女性目線で厳選した、女性のための賃貸マンション

▲Tender Livingでは、入居日に合わせてオーダーカーテンが届けられる『オリジナルカーテンオーダーサービス』をおこなっている。女性にとっては、窓に設置するカーテンも『大切な防犯アイテム』のひとつ。こうしたこまやかなサービスが提供されるのも、女性ならではの発想と言えそうだ(オーダーカーテンの一例/Tender Livingショールーム)▲Tender Livingでは、入居日に合わせてオーダーカーテンが届けられる『オリジナルカーテンオーダーサービス』をおこなっている。女性にとっては、窓に設置するカーテンも『大切な防犯アイテム』のひとつ。こうしたこまやかなサービスが提供されるのも、女性ならではの発想と言えそうだ(オーダーカーテンの一例/Tender Livingショールーム)

「2011年7月に会社を設立したのですが、最初の1年間はホームページだけでPRをおこなっていたので、ほとんど問い合わせのない状態が続き、正直凹むこともありました」と中村社長。

しかし、転職後の人脈をたどってスタッフ数を増やし、2年目、3年目と経過するうちに『女性専門の不動産屋さんがあるらしい』と評判が広がって、問い合わせ件数が増えるようになった。

今では、オーナー側から『うちの物件は女性向けなので、ホームページに掲載してほしい』と依頼が入ることも多いそうだが、そうした場合にも必ずスタッフが現地を確認し、“女性が安心して暮らせる物件か否か”を判断した上で情報発信しているという。

駅からマンションまでの道のりはどんな雰囲気か、周辺にどんな人たちが暮らしているか、外観から受ける印象はどんな感じか、キッチンや洗面・洗濯機の使いやすさはどうか、日当たりはどうか、などなど“女性目線”での判断ポイントは様々だ。

「Tender Livingのスタッフは全員女性で、子育て中のママさんスタッフもいます。学生、一人暮らし、新婚、妊娠、子育て…スタッフが女性としてこれまでに経験したことは、女性のお客様の住まい選びのアドバイスに直結しています」

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ちなみに、世の中はちょうど春の引越しシーズンでもあるため、『女性目線で考える、賃貸物件を選ぶときのコツ』について、中村社長に聞いてみた。

「マンションを選ぶとき、男性の場合は“価格・駅距離・設備・広さ…”と物件の分析を理論的におこなう人が多いのですが、女性の場合は『直感』が決め手になる人が多いですね。

なので、まずは自分の中で“コレは外せない”という『優先順位』を決めて物件を絞り込み、現地を見学したときは『直感』に従うことをオススメします。

実は、女性にとってのマンション選びは、“彼氏選び”と全く同じ。同じ相手(物件)はふたつと無いので、躊躇しているとチャンスを逃がします。もしも迷ったときは、ちょっとだけ“上”を目指す…すると、ちゃんと後からその相手(部屋)に馴染むように自分がついてくるんです。ぜひ“オンナの勘”をフル活用してください(笑)」(中村社長談)。

国内外の“不動産女子”が集まる
不動産情報プラットフォーム『bijin estate(美人エステート)』

▲“不動産女子”たちの顔写真がズラリと並ぶ『bijin estate』のホームページトップ画面。参加者同士の交流会をはじめ、定期的に勉強会を開催するなどエージェントとしてのスキルアップを目指しながら、不動産業界内の女性ネットワークを広げ、相互の絆を強めている▲“不動産女子”たちの顔写真がズラリと並ぶ『bijin estate』のホームページトップ画面。参加者同士の交流会をはじめ、定期的に勉強会を開催するなどエージェントとしてのスキルアップを目指しながら、不動産業界内の女性ネットワークを広げ、相互の絆を強めている

会社設立から4年、中村社長は現在新たな取り組みをおこなっている。

「同じ志を持つ不動産業界の仲間たちと共に、ヒューマンネットワークを構築する一般社団法人『RE AGENT(リ・エージェント)』を2014年12月に設立し、私自身は理事の一人として役員に就任しました。

『RE AGENT』では、人と情報のネットワークを広げるという目的に加え、不動産業界で働く女性たちが、結婚・妊娠・出産といった女性ならではのライフスタイルの変化を迎えた時にも永続的に働き続けられる仕組みを作る、という大きな目標を掲げています」と語る中村社長。

その活動のひとつに挙げられるのが『bijin estate(美人エステート)』。

東京・札幌・名古屋・福岡など全国8都市と、北米10都市、東南アジア2カ国で活躍する不動産業に携わる女性たち、いわゆる“不動産女子”総勢58名が参加する不動産情報プラットフォームで、サイト内ではメンバー自身が『自分が担当している街の魅力』や『地元のグルメ・トレンド情報』、『自分が取り扱った物件の紹介』などをSNSを通じて発信することで、不動産エージェントとしての個人ブランディングを図る狙いだ。この『bijin estate』に参加してから、自社ホームページの閲覧数が8倍になったという嬉しい実績もあるという。

「従来の不動産業界では、お客様と営業担当者の関係が末永く続くというケースが少なかったのですが、これからは不動産仲介業に携わる担当者個人が、“かかりつけ医師”のようにお客様から必要とされ続ける存在にならなくてはいけないと考えています。

大きな会社の看板が無くても、個人のエージェントに安心して不動産仲介を任せられるような時代を、女性パワーで築き上げたいですね」(中村社長談)。


【取材協力】
■Tender Living株式会社
http://www.tenderliving.jp/
■bijin estate
http://bijin-estate.com/index.php

2015年 02月27日 11時06分