明治時代に駐日外国人が発見した、別荘地としての『葉山』の魅力
“7日間だけの海辺の暮らし”が、葉山の別荘減少問題の救世主に?!

神奈川県三浦郡葉山町。“葉山の別荘”という響きは日本全国に通じるブランド力があり、現在もバカンスシーズンには多くの別荘利用客が現地を訪れているのは皆さんご存知のところだ。

もともと葉山が別荘地として注目されるようになったのは明治20(1880)年代のこと。レナード・D・マルチーノ駐日イタリア公使や、ドイツ人医師のエルヴィン・フォン・ベルツ博士等の外国人が、温暖な気候と風光明媚な情景に惹かれてたびたび葉山を訪れ、その魅力を紹介したことから『別荘地』としての歴史がスタートしたとされている。

明治22(1889)年、大船~横須賀間を結ぶ横須賀線の開通をきっかけに、政府の要人たちが別荘を建てはじめるようになり、明治27(1894)年には天皇御一家の保養地として『葉山御用邸』が開邸したことなどを受けて、葉山の『別荘地』としてのブランド力が確立されることになった。

しかし、近年は『別荘所有者の高齢化』や『建物の老朽化』が課題となっており、“古き良き葉山の別荘”の多くが取り壊しや改修を余儀なくされ、葉山独自の『別荘文化』が存続の危機に面しているという。


そこで今回は、葉山をはじめとする海辺の別荘地で“消えゆく古き良き別荘を守り、景観を維持するための取り組み”について取材した。

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一生に一度で良いから、海辺の家でのんびりと“何もしない休日”を過ごしてみたい…そんな願望をお持ちの方も少なくないのではないだろうか。

筆者もそのひとり。『休み下手』と言われる日本人の典型で、バケーションを取るとなれば、ここぞとばかりに朝から晩までぎっしり観光スケジュールを詰め込み、休日が終わる頃にはぐったりと疲れきっているのがいつものパターンだ。

そんな『休み下手』な日本流バケーションの在り方に一石を投じる『リゾート貸別荘』がいま注目されているのをご存知だろうか?今回は“7日間だけの海辺の暮らし”を提案するバケーションレンタル『Nowhere resort(ノーウェアリゾート)』を訪れてみた。

▲『海辺のリゾート貸別荘』をコンセプトに6年前に誕生した『Nowhere resort』は、<br />現在、葉山・佐島・秋谷の湘南・三浦半島エリアで4物件を展開中。<br />今回取材に訪れた『Nowhere but Hayama』は、葉山御用邸の隣地に位置し、<br />すぐ目の前が一色海岸という絶好のロケーションだ。<br />※住所:神奈川県三浦郡葉山町一色 面積:165平米 駐車場1台(無料)▲『海辺のリゾート貸別荘』をコンセプトに6年前に誕生した『Nowhere resort』は、
現在、葉山・佐島・秋谷の湘南・三浦半島エリアで4物件を展開中。
今回取材に訪れた『Nowhere but Hayama』は、葉山御用邸の隣地に位置し、
すぐ目の前が一色海岸という絶好のロケーションだ。
※住所:神奈川県三浦郡葉山町一色 面積:165平米 駐車場1台(無料)

Nowhere=どこにも無い、という名前の海辺の貸し別荘。

▲『Nowhere but Hayama』は、別名“ロイヤルビーチ”と呼ばれる一色海岸から上がって一軒目に建つ日本家屋。空気が澄んだ冬の晴れた日には海の向こう側に雄大な富士山の姿を眺めることができる▲『Nowhere but Hayama』は、別名“ロイヤルビーチ”と呼ばれる一色海岸から上がって一軒目に建つ日本家屋。空気が澄んだ冬の晴れた日には海の向こう側に雄大な富士山の姿を眺めることができる

『Nowhere resort』を展開する『STAYCATION~ステイケイション~』(本社:東京都渋谷区神宮前)の吉村真代代表は、バケーションレンタルの企画を発案した当初、湘南エリアのリゾートマンションの一室をリノベーションして貸し別荘にしていた。

「マリーナを望む広さ10坪ほどのリゾートマンションを別荘として貸し出していたのですが、わたし自身がそこに滞在してみて感じたのは、『この空間で本当にバケーションと言ってしまって良いのか?』ということでした。一般的なリゾートホテルと変わらない空間を作るなら、ホテルを利用すれば良い訳ですから、『わざわざ別荘を借りてバケーションを取る』ということにどんな意味があるのかを考えました」(吉村氏談)。

普段の生活とは違う空間で、“非日常”を過ごす時間こそがバケーション。そんな想いから、吉村代表は『Nowhere resort』の展開を海辺の一軒家に特化し、コンセプトにマッチした物件探しを始めたという。

廃屋になりかけの築90年の日本家屋を別荘として再生!

▲左上:カラカラと玄関の引き戸を開けると、ハンモックがぶら下がった居間が出迎えてくれる。ここは以前土間だった場所で、工事途中に竈の跡も発見されたそうだ。右上:真っ白なモザイクタイルが美しい洗面室。目地はすべてスタッフが手作業で磨き上げたという。下2点:2階ベッドルームとジャグジー。大きなガラス窓を開けると、心地良いさざ波の音が聞こえてくる▲左上:カラカラと玄関の引き戸を開けると、ハンモックがぶら下がった居間が出迎えてくれる。ここは以前土間だった場所で、工事途中に竈の跡も発見されたそうだ。右上:真っ白なモザイクタイルが美しい洗面室。目地はすべてスタッフが手作業で磨き上げたという。下2点:2階ベッドルームとジャグジー。大きなガラス窓を開けると、心地良いさざ波の音が聞こえてくる

「物件探しをはじめてしばらくした頃、“一色海岸の目の前で、2年間空き家になっている日本家屋がある”という情報をキャッチして訪れたのが、この『Nowhere but Hayama』でした。

初期の謄本が確認できないので正確な築年数は不明ですが、おそらく築90年は超えているだろうと推測されました。

最初に訪れた時は“廃屋になりつつある一軒家”という印象で、あちこち痛みが激しい状態でしたが、よくよく観察してみると、屋根にはわざわざ九州から取り寄せた瓦が使われていたり、和室の障子の組子細工がとても繊細で美しかったり、外国人のお客様を迎えるために一般的な日本家屋よりも天井高が高めに設計されていたり…と、丁寧な仕事がなされた建物であったことがわかったのです。

現代の技術ではもうおそらく再現することができない“日本の生活文化が凝縮した空間”に、もう一度息を吹き込んであげることができればと思い、リノベーションをスタートしました」(吉村氏談)。

失われつつある伝統的な建築文化を、
後世へ継承することも大切な目的のひとつ

▲巨大な一枚板のダイニングテーブルを支える2本の柱は、耐震上どうしても取ることができなかった構造柱だという。「築90年を超える日本家屋なので、設計図面が残っておらず“開けてみないとわからない”という手探りの状態でリノベーションを進めました。耐震補強するにもどのように壁量を確保できるのか考えたり、建具を修復しようにもすでに手に入らない素材だったり…と様々な苦労がありましたが、こうして伝統的な建物と向き合い再生していく作業は、わたしたちスタッフにとっても楽しい時間でした」(吉村氏談)▲巨大な一枚板のダイニングテーブルを支える2本の柱は、耐震上どうしても取ることができなかった構造柱だという。「築90年を超える日本家屋なので、設計図面が残っておらず“開けてみないとわからない”という手探りの状態でリノベーションを進めました。耐震補強するにもどのように壁量を確保できるのか考えたり、建具を修復しようにもすでに手に入らない素材だったり…と様々な苦労がありましたが、こうして伝統的な建物と向き合い再生していく作業は、わたしたちスタッフにとっても楽しい時間でした」(吉村氏談)

推定築90年を超えるという日本家屋は、『海から一軒目の家』という立地の特性もあって地元の人たちにも良く知られた存在だった。

工事着工の際には、「どんな工事をするのか?取り壊してしまうのか?」「思い出のある建物なので、佇まいを変えないでほしい」などと、近所の方たちが心配そうに現場の様子を見学に来たそうだ。

「“外観は変えずに、内装と耐震工事のリノベーションをおこなうんですよ”とご説明すると、皆さん安心して帰っていかれましたね(笑)。こんな風に、地域の人たちから愛されている建物は、地域の財産でもあります。

『Nowhere resort』では、非日常のバケーションを楽しんでいただくという目的はもちろんですが、バケーションレンタルという形でビジネス化を図ることで、後世に継承したい建築文化を持続しながら、その美しい空間に触れる時間を楽しんでいただくことも目的のひとつ。また、こうした別荘地でのバケーションレンタルが広く認知されることは、日本の古き良き別荘文化の維持にもつながるのではないかと考えています。

場所や空間が変わることで、同じ人と同じお茶を飲むにしても普段と違う会話が弾むこともありますから、“観光目的の休日”ではなく、ヨーロッパの人たちが楽しむ“あえて何もしない休日”を、『Nowhere but Hayama』で皆さんに満喫していただけたら嬉しいですね」(吉村氏談)。

“人に会わずに済む”ことも、バカンスを満喫するための大切な要素

ちなみに、今回訪れた『Nowhere but Hayama』は、6泊7日の利用で、料金は26万9000円~54万円まで(利用参考人数4~8名程度、別途8%の管理費、シーズンによって5タイプの賃料設定)となっている。

こうして賃料だけ見ると、海外旅行並みのゴージャスなバケーション料金だが、ハイシーズンとなる夏季の予約は6月頃からほぼ満室状態になるという。もちろん、バケーション目的だけでなく、ハウスウェディングでの利用や、家族・友人同士で6泊をシェアすることも可能だ。

また、『Nowhere but Hayama』の建物は伝統的な日本家屋だが、他の3物件はスタイリッシュなモダン建築が特徴。いずれの物件も、『STAYCATION~ステイケイション~』と7日間の賃貸契約を結び、その都度変更される暗証番号を使って入退居するシステムで、基本的には対面での鍵の受け渡し等はおこなわない。吉村氏は「“人に会わずに済む”という点も、非日常のバケーションタイムを提供する『Nowere resort』の大切なサービスのひとつ」と語る。


次の休暇は、海辺に建つ美しい別荘で“時間に追われない7日間”を過ごす…
皆さんも、最上級の贅沢とも言える“非日常な休日”を体験しつつ、日本の別荘文化継承のお手伝いをしてみてはいかがだろうか?

■取材協力:STAYCATION
Nowhere but Hayama
http://www.nowhereresort.com/house_h.html

▲上から:大きな一枚ガラスから海を見下ろす『Nowhere but Sajima』、<br />約30畳のルーフバルコニーを持つ『Nowhere but Akiya01』、<br />2014年7月にオープンしたばかりの最新物件『Nowhere but Akiya02』、<br />それぞれの建物の意匠性にも注目したい
▲上から:大きな一枚ガラスから海を見下ろす『Nowhere but Sajima』、
約30畳のルーフバルコニーを持つ『Nowhere but Akiya01』、
2014年7月にオープンしたばかりの最新物件『Nowhere but Akiya02』、
それぞれの建物の意匠性にも注目したい

2014年 09月28日 10時56分