別荘は単なる「空き家」?!

現在日本には、820万戸の空き家がある。実に7戸に1戸が空き家という計算になる。しかしこの空き家数の算出方法は「総戸数」ー「総世帯数」という何とも単純な計算式で成り立っている。
つまり「別荘=空き家」にデータ上カウントされているということになる。時に別荘の建築やマーケットに携わる身としては、なんとも虚しい限り。

たしかに別荘は使われている時間が少ないため「二次的住宅」に分類される。しかしオーナーの思いが詰まった別荘を、主たる居住の拠点でないというだけで、単なる「空き家」と呼んでしまって良いものなのだろうか。

「空き家」問題と言っても様々ある中、別荘としての“空き家”はニーズがはっきりしている分、手の打ちようがあるように思われる。
別荘を使い切れなく、使わない時なら貸したいと考えるオーナーと、別荘を使いたい時だけ借りたいユーザーの間をマッチングする。そこにはマーケットがうまれる可能性がありそうだ。

出典:平成25年住宅・土地統計調査結果(総務省統計局)出典:平成25年住宅・土地統計調査結果(総務省統計局)

「暮らす」と「泊まる」の間

ゲストを招いたり、二世帯で使われることも多い。Nowhere but Sajima (佐島)ゲストを招いたり、二世帯で使われることも多い。Nowhere but Sajima (佐島)

通常「暮らす」と呼ばれる2年単位の”賃貸”と、「泊まる」と呼ばれる1泊単位の”宿泊”。
双方の間には大きな隔たりがあるが、この間を埋める中間的な利用形態こそ、不動産マーケットを流動化させ、建物や別荘の入手方法に魅力的なオプションを与えるのではないだろうか。そしてそれが、年の大半を使われずにいる別荘を、誰でも手の届くものに変え、閑散としてしまった別荘地を立て直すことにもなると考えるとワクワクする。
その「暮らす」と「泊まる」のボーダーを探る内、借り手や貸し手の需要、管轄機関との協議などを経て、やがて一週間という賃貸の単位が導き出された。

ではこの一週間賃貸を使って、別荘の使われていない時間をどれだけアクティブに仕立てられるか?

オーナーが建物を使わない時間をシェアするマーケットは、海外ではすでに確立している。「Vacation Rental(バケーションレンタル)」や「Holiday Home(ホリデーホーム)」といった言葉は、まだ日本では耳なじみが薄い。休暇をまとめて取る習慣のある欧米では、一~二週間の単位で違う国や街に腰を据え、その土地ならではの文化を楽しみながら、家族や友人同士でのんびり過ごす休暇が、一つの大きなオプションとなっている。観光名所を慌ただしくまわる休暇ではなく、あえて「何もしない休日」を過ごすことが目的だ。

バケーションレンタル大手のHomeAway(ホームアウェイ、米)や空き部屋のマッチングサイトAirbnb(エアービーエヌビー、米)のマーケットの大きさを見ても、その成熟度がわかる。個人の空き部屋を仲介するAirbnbに至っては、世界約3.4万都市で展開しており、2014年の年間宿泊仲介数は全世界で2000万件を超えている。
一方、一週間の連続した休みが取りにくい日本では、こうしたバケーションレンタルはなかなか浸透しにくい。また日本人の極度のきれい好きは「人様の家に泊まる」ことを容易には受け入れさせない現実もある。

しかし近年、自宅以外にもう一つの住まいの拠点を持ちたいというニーズは高まっているように感じる。平日は都会で、週末は自然豊かな郊外で過ごす「二拠点居住」や「多拠点居住」など、生活拠点を一つに絞らない多様な暮らし方を示すタームを目にする機会が増えてきた。

ならば別荘の管理にお金も手間もかかり、有効活用のため別荘を貸したいオーナー層と、環境の良い場所にある別荘を借りてのんびり過ごしたいと考えている家族の層をマッチングさせることで、日本でもマーケットが成立し得るのではないだろうか。

別荘を「所有」から「シェア」へ

都会と郊外を頻繁に行き来できるような、別荘の形はどうあるべきなのか?
まずは場所。都心から通勤可能な別荘地といえば、湘南。この地域は千葉や房総とは違い、鎌倉・葉山を中心とした稀少価値のある敷地は地価が都内並みに高い。ならば、別荘を購入するのではなく、シェアするのが合理的ではないか。別荘を「所有する」のではなく、「共有(シェア)する」ことへシフトできないかというポイントから、一週間賃貸のマーケットを湘南の地で探ってみることになった。

当時、設計事務所を始めたばかりだったこともあり、貸し出すことを前提に土地を探し設計を行い、“7日間の海辺の暮らし”を提案するバケーションレンタル『Nowhere resort(ノーウェアリゾート)』を始めた。それが今から7年前。一軒家を一週間単位で貸し出す「海辺のリゾート貸別荘」として、現在葉山、佐島など湘南を中心に直営物件として運営している。

Nowhere resortが地元の料理研究家やネイチャーガイドなどと連携して、湘南の生活文化を楽しめるバケーションレンタルとして動き出した様子をみて、近所の別荘オーナー達が声をかけ始めてくれるようになり、自社保有しない物件を委託されるようになった。

次第に湘南以外の地域からも相談も受けるようになり、2014年からは別荘を貸す側も、借りる側も楽しめるプラットフォームとして、別荘シェアリングサイト『STAYCATION(ステイケーション)』を始動させた。現在、沖縄、下田、ハワイなどの施設がリスティングされている。

住宅ストックを、「バケーションレンタル」や「リゾート貸別荘」というコンテンツとパッケージ化し、短期賃貸物件として運営する。
当初、リゾート滞在やスタジオ撮影に使用されることを想定していたが、借り手は貸し手の想像を軽々飛び越え、ハウスウェディング、ヨガ合宿、PRイベントや展覧会、企業のメンター合宿などに使用してもらっている。それが何より、家を用意する側として、心躍る。

“空き家”が地域にできることはまだまだありそうだ。

家族親戚・友人・お仕事関係者と3日間にわたって、違ったゲストを招かれハウスウェディングを開催されたご夫妻も家族親戚・友人・お仕事関係者と3日間にわたって、違ったゲストを招かれハウスウェディングを開催されたご夫妻も

2015年 04月30日 11時07分